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しおりを挟む「……ああ、腹が立つ」
「アーシエ、そんなに嫌な手紙だったのなら僕から公爵家に直接クレームを入れてあげよう」
ぽつりと言った愚痴を、ルドは聞き逃さなかった。
本心を言えば、ルドからこのお茶会をお断りして欲しい。
でもそんなことにルドを使ってしまえば、お互いの立場が悪くなることも分かってる。
つまり断れない状況をわざわざ作ってまで、私を誘い出したいってことよね。
どうせ、お茶会に呼んだ令嬢たちもみんなユイナ令嬢の取り巻きばかりなんでしょう。
「ん-。ですが、正式なお誘いをお断りしたら角が立つではないですか」
「誰もそんなことは思わないよ、アーシエ。君が嫌だったらそんな手紙は捨ててしまって読まなかったことにしていいんだよ」
ルドの言葉は、今の私にはどこまでも甘く感じてしまう。
「ルド様は本当に私にはどこまでも甘いのですね」
「アーシエは僕にとっては特別だからね」
「でも……このままルド様の婚約者でいるのならば、どのみち避けては通れない道ですもの。こういうことには慣れて、対処できるようになっておかないと」
「手紙にはなんて書いてあったんだい?」
「他の令嬢たちをすでに集めたお茶会を王宮にて行うので、次期王妃候補として参加して欲しいと」
「危険すぎるだろう!」
ルドが私の肩を強く掴む。その拍子に手に持っていた手紙が床へと落ちた。
「ですが王宮で、しかも他の令嬢たちもいる前です。捜査も始まっていることですし、迂闊なことは出来ないでしょう」
「だとしても危険すぎる」
確かに、危険か危険じゃないかといえば前者だとは私も思う。
きっと自分のプライド云々ではなく、本来なら辞めるべきだって。
でも次期王妃候補として、ルドの隣にいる者としてふさわしくないって思われたくない。
限られたほんのわずかな人しか味方がいない今、心の底からそう思う。
「私は次期王妃候補として、ちゃんとしたいんです。逃げてこのままルド様と婚約が出来たとしても、きっと事あるごとに陰口を言われるようなのは嫌なんです」
「そんなことはさせない」
「ルド様だけを矢面に立たせたくもないんです。ちゃんと隣を正々堂々と歩きたい。逃げるのは嫌いなのです。逃げるくらいなら、私もルド様と同じように戦いたい」
「アーシエ……」
「だって逃げた結果が前のあれではないですか」
そう。弱いところを見せれば、前回の毒のような事態になりかねない。
一度失敗しても、向こうは何度も仕掛けようとしてるんだもの。
逃げてばっかりでは、きっと私が負けてしまう。
それに尻尾まいて逃げてあげるほど、私は優しくなんてないし。
「でもお嬢様、ユイナ公爵令嬢様がお連れになる令嬢様たちはきっとお嬢様の味方ではない者だけだと思いますよ。そんな中、お嬢様を一人で行かせるだなんて」
「ん-。でもほら、そこはね」
「どうなさるんですか?」
「よほどじゃない限り、みんなあちら側についてるのだって損得勘定だけでしょう。それならいくらでもやりようがあるわ」
向こう側についてる令嬢たちは、よほど仲がいい子以外は公爵令嬢だからって思われてるはず。
それだったら、今の私でも付け入る隙はある。
あわよくば寝返らせればいいし、それに反感を持っている子もいるかもしれない。
アーシエの友だちの話も一回も出てきてないことを考えると、実際問題なさそうだし。
これを機に、良さそうな子なら仲良くなれればいいな。
もっとも、権力に巻かれろって子でしかないならこちらから願い下げだけど。
そのためにはちょっと準備しなきゃね。
「今回のこのお茶会を乗り切るために、ルド様も協力して下さいますか?」
「アーシエのためならいくらでも協力はするが、無理をさせたくないんだ」
「ありがとうございます、ルド様。ちょっとだけ頑張ってみたいんです」
「……」
「でももしダメだったら、ココにまた逃げ込んでもいいですか?」
「もちろんだよ、アーシエ。そのためにここを用意したんだから」
ダメでも逃げ込める場所があると思えば、幾分か心が楽になる。
それにとっとと公爵家にご退場願いたいのは私なんだもん。
向こうにどんな思惑があったって、絶対にひっくり返してやるんだから。
差し迫った日数で準備をするために私は家にも連絡を取ってもらい、すぐに準備に取り掛かった。
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