【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)

文字の大きさ
28 / 52

028

しおりを挟む
「おくつろぎのところ、申し訳ございません。アーシエお嬢様宛にお手紙が届いたとのことで」


 いつもな朝のルドとの団欒を邪魔するように、その手紙は届けられた。

 あの時ルドに渡した手紙と同じ色の封筒に、一輪の花が添えられている。

 中身を見なくても、誰からか想像がつくあたりが嫌ね。

 手紙を私に差し出すサラは、いつもらしくなくおどおどしている。

 おそらくサラも差出人を確認したのだろう。


「燃やしてしまえばいい」

「え?」

「はい、承知しましたー!」

「ちょっと、ちょっと二人とも! それはさすがにダメでしょう」


 なんなの、この二人の息のぴったりさは。ノリノリで結構ひどいことを言っちゃってるし。

 そりゃあ私だって中身見たくもないし、触りたくもないし、燃やしてはしまいたいけど。

 ただ礼儀としてそれはマズイでしょう。仮にも向こうはなんだから。身分ってめんどくさーい。

 あ、でも私のが侯爵令嬢で格下とはいえ、ルドと婚約してしまえば次期王妃なんだもんね。

 身分とか関係なくなるんだ。だからこそ、今攻めてきてるのかなぁ。

 ルドの王宮内の調査が始まったことは、公爵家だって知っているはず。

 すでに数人の侍女が捕まったというのに、自分たちは大丈夫だって思ってるんだものすごい自信よね。

 見習いたくはないけど、それぐらい図太く生きなきゃココではダメなのかもしれないわね。


「とりあえず、読んで内容だけは確認してみないと」

「そんなの時間の無駄だ」

「でも何を言ってきているのか分からない以上、気になるじゃないですか」

「それはそうかもしれないが……」

「それにほら、今までの謝罪と今回の件の罪を認めるとかだったら、ルド様のお仕事が一つ減りますし」

「そんなこと、書いてあるとお嬢様は思っていらっしゃるんですの?」


 ある意味、純粋なサラの視線が突き刺さる。

 うん。思ってはないよ?

 一ミリも……。でもそんなこと言えないじゃないの。


「ソーネ、キットソウダッテオモッテルゥ」

「お嬢様、片言すぎます」

「えー。だって……」

「ほらアーシエだって、時間無駄だと思っているのだろう」

「だとしてもです! 見ずに捨てたら、気になって眠れないかもしれないでしょう?」

「そこは僕がちゃんと寝かしてあげるよ、アーシエ」

「いえ、それはさすがに……」


 ルドが言うと、18禁にしか聞こえないからダメです。


「サラ、手紙ちょうだい」

「本当にいいのですか、お嬢様」

「うん。見て、もし嫌な内容だったら燃やしてもらおうかな~」

「はい! 任せて下さい!」


 もう。燃やす気満々すぎね。

 まぁ、私もまともに相手する気はこれっぽっちもないんだけど。

 でも基本的に負けず嫌いなのよね。ここまで喧嘩売られてるのなら、ちゃぁんと買ってやり返さないとって思ってしまう。

 でも本当に何が書いてあるのかは気になるのよね。さてさて、何が出てくるのかしらね。

 作法がなってないだろうとは思いつつも、ビリビリと手紙を開ける。

 ルドとかからの手紙じゃないから残しておく必要性もないものね。


「えっと?」


 拝啓、クランツ令嬢様

『この度、王宮にてわたくし主催のお茶会を主催することとなりましたので、ぜひ次期王妃候補としては参加していただきたいと思います。他の令嬢たちにもすでに招待状は送ってありますので楽しみにしています』


 要約するとこんな感じのことが書かれていた。


「……はぁ」


 うん。馬鹿じゃないの。

 いや、馬鹿だよね。

 びっくりするくらいの馬鹿だわ。

 いくら私が貴族言葉に慣れていないからって、ここまで上から目線だとさすがに分かるわ。

 ああでも普通のか弱い貴族令嬢だったアーシエなら、これを見て泣きそうになったりしていたのかな。

 可哀想なアーシエ。

 そしてある意味、哀れなユイナ令嬢。

 中身、すでに違うのよね。残念だわ。


「……うん。とりあえず燃やそうかな」

「はい、お嬢様」

「ああ、そうするといい」


 二人の意見を聞いて、初めから燃やしてしまえばよかった。

 でも最後の方に書いてある言葉。他の令嬢にもすでに送付してあるって。

 つまり、私が逃げたらそのことを他の令嬢たちに言いふらすってことでしょう。

 しかも、嫌味のようにわざわざ次期王妃候補としてはなんて書いて。

 いやらしいっていうか、なんていうか。

 本当に嫌いなタイプだわ。

 一回、やっつけられたのにまだ全然懲りてなかったのね。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

処理中です...