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010 一からやり直し
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それに元々、父の下でこき使われて生きてきた私には働くことは苦ではない。
前回の時も思ったのだけど、相当な額の持参金があったはずなのに、最後まで使用人を増やすことはしなかった。
私が一人増えたところで、この家が最後まで綺麗になることもなかったし。
そう思いながらも、私はそっと屋敷の中を見渡す。
元々赤だったはずの絨毯ははげて変色し、階段なども壊れかけたまま。
高いシャンデリアや、窓枠にはあり得ない量の綿ほこりも溜まっており、何年掃除をしていないのだろうか。
なんかこれだけは少し嫌ね。
前回頑張ったのに、ふり出しに戻るって感じ。
またあの掃除が一から始まるのは、うんざりするわ。
本当にこの家、汚すぎるんだもの。
「よく言ったわダミアン。元々貴族でもなんでもないのだから、あなたは身を粉にしてこの家のために働けばいいのよ」
「……はい、お義母様」
「貴族でもない娘がうちの嫁になるなんて。ああ、汚らわしい。この男爵家、末代までの恥だわ!」
「……」
はいはい。勝手に言っていて下さい。
そのうちそんなことすら言えないようにしてやるんだから。
この家も、あの商会も。
全部まるっと、手に入れて見せる。
それがあの時死んで、やり直す時に誓ったことよ。
奪われた人生を、今度こそ自分の手で。
「ああ、そうそう。中庭を抜けた奥に離れがある。そこが僕の執務室となっているから、そこは何もしなくていいからね」
「わかりました」
前回は言いなりになって近づかなかったけど、おそらくこの人の秘密はそこにあるのよね。
だいたい自分で怪しいって言っちゃているようなものだし。
夫のは前回、私と結婚するよりも前から付き合っていた女性がいた。
そう、貴族令嬢が。
最後まで彼女との接点はなかったけど、夫は私が元平民なのをいいことに、彼女を貴族の夜会などに連れまわしていたのだ。
そして父が無理やり私を嫁がせたことを知っている貴族たちはどこまでも夫に同情的で、誰一人本来の妻である私のことを気にする者はいなかった。
死ぬ間際に、妻の役目も出来ないでと父が怒鳴っていたのは、そのせい。
ダミアンは基本的には仕事と称して、離れから出てこなかった。
唯一こちらの母屋に来るのは、朝の食事の時だけ。
私たち三人が唯一顔を合わせる時間だ。
一回目の時は、それでも家にために尽くせば、夫がこちらを見てくれるんじゃないかって。
ただバカみたいに頑張っていたっけ。
ホント、無駄過ぎたわ。ただ疲れただけだもの。
今回は絶対に同じような道は通らない。
まずは隙を見て離れに忍び込み、この男爵家のお金の流れをつかまないとね。
あれだけの持参金が三年も経たずにどこへ消えたのか。
愛人のせいだとは思うけど、でもお金は後から重要になるもの。
ちゃんと押さえなくちゃ。
私が前回と同じ従順な妻だと思ったら、大間違いなのよ、残念ね。
「明日から掃除などを始めますので、今日はもう休ませていただいてもよろしいでしょうか?」
「まぁ、嫁のくせに主人より先に休むというの!」
「まぁまぁまぁまぁ。僕も母上も疲れでしょう? 今日はこのままゆっくりしよう」
「あなたがそういうならいいけども。でも、こんな嫁を甘やかしてはダメよ、ダミアン。最初が何でも肝心なのですからね」
「分かってますよ」
にこりと笑う夫。
でもこの笑顔すら、私や義母を気遣ってのものではない。
とっとと愛人の元へ行って、機嫌でも取りたいのでしょう。
見え見えよ。
むしろなんで一回目は、こんな簡単なものも見抜けなかったのかしら。
「アンリエッタ君の部屋は……」
「二階の奥か何かですか?」
「あ、ああ。そうだよ。よく分かったね」
「いえ、ありがとうございます。では、お先に失礼いたします」
貴族風にならって丁寧なお辞儀をしたあと、私は二人をその場に置き去りにして部屋へと向かった。
何で部屋を知っているのか彼は疑問そうな顔をしていたが、私にはそれすらどうでもよかったから。
前回の時も思ったのだけど、相当な額の持参金があったはずなのに、最後まで使用人を増やすことはしなかった。
私が一人増えたところで、この家が最後まで綺麗になることもなかったし。
そう思いながらも、私はそっと屋敷の中を見渡す。
元々赤だったはずの絨毯ははげて変色し、階段なども壊れかけたまま。
高いシャンデリアや、窓枠にはあり得ない量の綿ほこりも溜まっており、何年掃除をしていないのだろうか。
なんかこれだけは少し嫌ね。
前回頑張ったのに、ふり出しに戻るって感じ。
またあの掃除が一から始まるのは、うんざりするわ。
本当にこの家、汚すぎるんだもの。
「よく言ったわダミアン。元々貴族でもなんでもないのだから、あなたは身を粉にしてこの家のために働けばいいのよ」
「……はい、お義母様」
「貴族でもない娘がうちの嫁になるなんて。ああ、汚らわしい。この男爵家、末代までの恥だわ!」
「……」
はいはい。勝手に言っていて下さい。
そのうちそんなことすら言えないようにしてやるんだから。
この家も、あの商会も。
全部まるっと、手に入れて見せる。
それがあの時死んで、やり直す時に誓ったことよ。
奪われた人生を、今度こそ自分の手で。
「ああ、そうそう。中庭を抜けた奥に離れがある。そこが僕の執務室となっているから、そこは何もしなくていいからね」
「わかりました」
前回は言いなりになって近づかなかったけど、おそらくこの人の秘密はそこにあるのよね。
だいたい自分で怪しいって言っちゃているようなものだし。
夫のは前回、私と結婚するよりも前から付き合っていた女性がいた。
そう、貴族令嬢が。
最後まで彼女との接点はなかったけど、夫は私が元平民なのをいいことに、彼女を貴族の夜会などに連れまわしていたのだ。
そして父が無理やり私を嫁がせたことを知っている貴族たちはどこまでも夫に同情的で、誰一人本来の妻である私のことを気にする者はいなかった。
死ぬ間際に、妻の役目も出来ないでと父が怒鳴っていたのは、そのせい。
ダミアンは基本的には仕事と称して、離れから出てこなかった。
唯一こちらの母屋に来るのは、朝の食事の時だけ。
私たち三人が唯一顔を合わせる時間だ。
一回目の時は、それでも家にために尽くせば、夫がこちらを見てくれるんじゃないかって。
ただバカみたいに頑張っていたっけ。
ホント、無駄過ぎたわ。ただ疲れただけだもの。
今回は絶対に同じような道は通らない。
まずは隙を見て離れに忍び込み、この男爵家のお金の流れをつかまないとね。
あれだけの持参金が三年も経たずにどこへ消えたのか。
愛人のせいだとは思うけど、でもお金は後から重要になるもの。
ちゃんと押さえなくちゃ。
私が前回と同じ従順な妻だと思ったら、大間違いなのよ、残念ね。
「明日から掃除などを始めますので、今日はもう休ませていただいてもよろしいでしょうか?」
「まぁ、嫁のくせに主人より先に休むというの!」
「まぁまぁまぁまぁ。僕も母上も疲れでしょう? 今日はこのままゆっくりしよう」
「あなたがそういうならいいけども。でも、こんな嫁を甘やかしてはダメよ、ダミアン。最初が何でも肝心なのですからね」
「分かってますよ」
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でもこの笑顔すら、私や義母を気遣ってのものではない。
とっとと愛人の元へ行って、機嫌でも取りたいのでしょう。
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「二階の奥か何かですか?」
「あ、ああ。そうだよ。よく分かったね」
「いえ、ありがとうございます。では、お先に失礼いたします」
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何で部屋を知っているのか彼は疑問そうな顔をしていたが、私にはそれすらどうでもよかったから。
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