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014 大きな星と期待
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「そうなのよね……。食事もほぼ自分たちで用意しなきゃいけないし」
「あの固いパン! 今時の貴族様って、ふかふかなパンを食べれるのかと思ってましたよ」
ミーアは食堂にあったパンのことをしきりに気にしていた。
確かに実家でも、平民が普通に食べる固く黒いパンを食べていたけど。
貴族の方たちが食べるパンって、一応は固くてももっと小麦色したものだとばかり思っていた。
しかし困窮具合が激しいせいか、ここでの食事は実家でのものとあまり変わりがない。
むしろそこだけは実家の方が少しマシだったかもしれない。
若く働き盛りが多い使用人たちへの食事は、倒れられても困るという観点からかなりなボリュームがあった。
もっとも給与から天引きされているから、それぐらいは食べさせてもらわなきゃ話にもならないのだけど。
でもここは違う。
固く黒いパンに、野菜くずのような味気ないスープ。
メインとなるものにも肉はほぼ入っていない。
動かない人にはそれでもいいのかもしれないけど、動く私たちからしたら全然足りないのだ。
前もよく三年間も耐えたものよね。忍耐力っていうのかな。
虐げられることに慣れすぎちゃっていたみたい。
我慢したって一つもいいことなんてないのに。
でもそれが当たり前すぎて、普通が分からなかったのよね。
「で、そろそろあたしを呼んだ理由を教えてもらえませんか? まさか掃除を~ってだけじゃないんですよね」
「ふふふ、そうね。掃除は確かに手伝ってもらいたかったけど。もちろん別件よ」
「何かするんですか?」
「父の元を離れた今がチャンスだと思ってね。今まで奪われてきた人生全部、まるっと取り戻すそうと思って。父の商会もこの家も、全部手に入れて……反撃しようと思って」
「……」
私の言葉に、珍しくミーアが考え込むように視線を外した。
いきなりこんなこと言われたら、やっぱり困惑するわよね。
今まで私はずっと従順に父の命令に従ってきたわけだし。
ミーアだってそう。
生きていくために、自分の居場所を確保するには、そうするよりほかなかったのだもの。
だからこそ、私たちにとってみれば父という存在は何よりも大きい。
逆らえないように刷り込まれているから。
いくら仲のいいミーアといえど、さすがに計画を打ち明けるには早かったかしら。
もう少し慎重にしてからのが、良かったかな。
考え込むミーアを見ていると、そんな不安が胸を襲う。
「ミーア?」
私は沈黙に耐えられず、声を上げる。
「結構大がかりな計画になりそうですね」
「ええ。ごめん、嫌だったかしら」
不安そうに私が顔をのぞき込むと、ミーアはきょとんとした顔をする。
そしてまた大きく笑って見せてくれた。
「まさか。むしろ、どうやってやってやろうか考えてたんですよ」
「ホント? さすがミーアね」
「でもあたしだけでは絶対に人が足りませんね。商会側もそうですけど、この家のことも」
「それはそうね。どちら側にも味方を増やさないと。しかも慎重にやらなきゃ、父に気付かれでもしたら大変だわ」
「人選を間違えたら大惨事ですね」
「そうなのよ。だからこそ、ミーアにも協力してほしくて」
「もちろんですよ、お嬢様。しっかりがっつり、やっつけちゃいましょう!」
私がにたりと微笑むと、ミーアも満更ではないようだった。
父は基本的に、自分以外をコマとしか見ていない。
金さえ払えばなんでも動くものだと思い、使用人たちからも恨みをかなり買っている。
彼女もそのうちの一人だ。
「今まで奪われてきたものは全部回収してしまわないとね」
「まずはどうします?」
「そうね。商会が私名義になったことだし、そっちにも数名送ってちょうだい。あとはこの屋敷のことを把握したいから、さらに侍女の追加が欲しいわ」
まずはなんとしても夫の弱みを握らないと。
前回は言われるままだったけど、せっかく結婚したんですし、妻には家のことを知る権利があるのですよ。
「これは忙しくなりそうですね」
「ええ。期限は籍を入れた時からぴったり三年後。それまでに全てを片づけるわ」
その前に流行るバラ病もなんとかしなきゃいけないし。
とにかくお金も必要になる。
だけど未来を知っているし、薬のありかも分かっている。
もう何も怖くはないわ。
窓の外には、私たちの計画の成功を約束するかのように大きな星が輝いていた。
「あの固いパン! 今時の貴族様って、ふかふかなパンを食べれるのかと思ってましたよ」
ミーアは食堂にあったパンのことをしきりに気にしていた。
確かに実家でも、平民が普通に食べる固く黒いパンを食べていたけど。
貴族の方たちが食べるパンって、一応は固くてももっと小麦色したものだとばかり思っていた。
しかし困窮具合が激しいせいか、ここでの食事は実家でのものとあまり変わりがない。
むしろそこだけは実家の方が少しマシだったかもしれない。
若く働き盛りが多い使用人たちへの食事は、倒れられても困るという観点からかなりなボリュームがあった。
もっとも給与から天引きされているから、それぐらいは食べさせてもらわなきゃ話にもならないのだけど。
でもここは違う。
固く黒いパンに、野菜くずのような味気ないスープ。
メインとなるものにも肉はほぼ入っていない。
動かない人にはそれでもいいのかもしれないけど、動く私たちからしたら全然足りないのだ。
前もよく三年間も耐えたものよね。忍耐力っていうのかな。
虐げられることに慣れすぎちゃっていたみたい。
我慢したって一つもいいことなんてないのに。
でもそれが当たり前すぎて、普通が分からなかったのよね。
「で、そろそろあたしを呼んだ理由を教えてもらえませんか? まさか掃除を~ってだけじゃないんですよね」
「ふふふ、そうね。掃除は確かに手伝ってもらいたかったけど。もちろん別件よ」
「何かするんですか?」
「父の元を離れた今がチャンスだと思ってね。今まで奪われてきた人生全部、まるっと取り戻すそうと思って。父の商会もこの家も、全部手に入れて……反撃しようと思って」
「……」
私の言葉に、珍しくミーアが考え込むように視線を外した。
いきなりこんなこと言われたら、やっぱり困惑するわよね。
今まで私はずっと従順に父の命令に従ってきたわけだし。
ミーアだってそう。
生きていくために、自分の居場所を確保するには、そうするよりほかなかったのだもの。
だからこそ、私たちにとってみれば父という存在は何よりも大きい。
逆らえないように刷り込まれているから。
いくら仲のいいミーアといえど、さすがに計画を打ち明けるには早かったかしら。
もう少し慎重にしてからのが、良かったかな。
考え込むミーアを見ていると、そんな不安が胸を襲う。
「ミーア?」
私は沈黙に耐えられず、声を上げる。
「結構大がかりな計画になりそうですね」
「ええ。ごめん、嫌だったかしら」
不安そうに私が顔をのぞき込むと、ミーアはきょとんとした顔をする。
そしてまた大きく笑って見せてくれた。
「まさか。むしろ、どうやってやってやろうか考えてたんですよ」
「ホント? さすがミーアね」
「でもあたしだけでは絶対に人が足りませんね。商会側もそうですけど、この家のことも」
「それはそうね。どちら側にも味方を増やさないと。しかも慎重にやらなきゃ、父に気付かれでもしたら大変だわ」
「人選を間違えたら大惨事ですね」
「そうなのよ。だからこそ、ミーアにも協力してほしくて」
「もちろんですよ、お嬢様。しっかりがっつり、やっつけちゃいましょう!」
私がにたりと微笑むと、ミーアも満更ではないようだった。
父は基本的に、自分以外をコマとしか見ていない。
金さえ払えばなんでも動くものだと思い、使用人たちからも恨みをかなり買っている。
彼女もそのうちの一人だ。
「今まで奪われてきたものは全部回収してしまわないとね」
「まずはどうします?」
「そうね。商会が私名義になったことだし、そっちにも数名送ってちょうだい。あとはこの屋敷のことを把握したいから、さらに侍女の追加が欲しいわ」
まずはなんとしても夫の弱みを握らないと。
前回は言われるままだったけど、せっかく結婚したんですし、妻には家のことを知る権利があるのですよ。
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「ええ。期限は籍を入れた時からぴったり三年後。それまでに全てを片づけるわ」
その前に流行るバラ病もなんとかしなきゃいけないし。
とにかくお金も必要になる。
だけど未来を知っているし、薬のありかも分かっている。
もう何も怖くはないわ。
窓の外には、私たちの計画の成功を約束するかのように大きな星が輝いていた。
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