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023 腹が減るから腹が立つ
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「まさか一般人に手伝ってもらえるとはな……」
「えっと、それは嫌味でしょうか?」
私は声のする方へ振り返る。
そこにはあの先頭にいた騎士がいた。彼はまじまじと私を見ている。
別に好きで私がやったことだからいいけど、なにもそんな風にいうことないのに。
その一般人に助けられたって自覚はないのかしら。
「いや、そういう意味ではないんだが」
「むしろ慣れないことはなさらないほうがよろしいのでは? 地下は騎士様たちの管轄外でしょう」
わざとらしく言えば、他の騎士たちが怒ったように視線をぶつけてくる。
助けてあげたのにお礼も言えない人たちなんて嫌いよ。
いくら自分たちの方が身分が上だからって、そういう問題じゃないでしょうに。
「では君は専門だとでも?」
「まぁ、少なくともあなたちよりかはそうですね」
「面白いことを言うな」
男は鼻で私を笑った。
なんなの、本当になんなの。鼻で笑うって、なに。
ますます感じ悪いじゃない。
あーーーー、助けるんじゃなかった。
もういいわ。無視しましょう。知らない。知らない。こんな礼儀のない人たちなんて、ネズミの餌になってしまえばよかったのよ。
こっちはお腹が減ってて、これ以上邪魔されたくないから、仕方なくついでに助けてあげたっていうのに。
だいたい私は一般人ですから? あなたたちと違って戦闘をしたところで給与も出ないのよ。
言いたいことは山ほどあるけど、もうそれすらどうでもいい。
私は騎士たちを無視しながらその脇をすり抜けようとすると、手を掴まれ引き留められた。
「まだ何か? だいたい、いきなり触るなど失礼ではないですか?」
「ああ、いや、すまない。君の機嫌を悪くさせたいわけではない。ただ先ほどのあの玉のことを聞かせてくれ」
なんで私がそんなことまで教えなきゃいけなんだろう。
だけど下手に危険物の所持とがで詰め所に連れていかれても困るし。
ため息を吐いたあと、腰ポーチにあったもう一つの球を取り出した。
小さな花火にも似た茶色い薬玉だ。
本当はさっき投げた奴も入れて、二個を道具屋で売って、小銭を稼ごうと思っていたのに。
一個はこんなことで消費しちゃったし。
なんて日なのかしらね。ついてない日は、本当にとことんダメね。
「これは本来地下などで使う対ネズミ用の専用の薬玉です。先ほど見ていただいたので分かると思いますが、地面に投げつけると大きな音と光が出たあと、灰色ネズミが嫌いな匂いが煙となって出てきます」
「どこでそんなものを手に入れた?」
「どこでって、これはうちのオリジナル商品ですわ」
「オリジナルって、君は……」
私は説明するのも面倒くさくなり、深くかぶっていたフードを取った。
銀色の髪に薄紫の瞳。
この帝都では、この組み合わせの髪と瞳を持つ人間は、うちの直系以外いない。
ある意味悪名高いダントレット商会。この髪や瞳を知らない人の方が少ないと思う。
「私はアンリエッタ・ダントレット。もっとも、先月結婚してアンリエッタ・ウィドールと申します、騎士様」
「君があのダントレット商会の娘……、そうか君がか」
どこか含みがあるような言い方。
嫌味ではなさそうだけど、良い意味とは思えない。
「ええ、そうですね」
騎士はただ驚いたように、ジッと私を見ていた。
私だって自分に向けられる人の評価なんか、ずっと前から知っている。
だってあの人の娘だもの。
いくら私があの人とは違うって言ったところで、そんなの信じてくれるのは使用人くらいだけ。
所詮、一括りにされる存在でしかないのだから。
「えっと、それは嫌味でしょうか?」
私は声のする方へ振り返る。
そこにはあの先頭にいた騎士がいた。彼はまじまじと私を見ている。
別に好きで私がやったことだからいいけど、なにもそんな風にいうことないのに。
その一般人に助けられたって自覚はないのかしら。
「いや、そういう意味ではないんだが」
「むしろ慣れないことはなさらないほうがよろしいのでは? 地下は騎士様たちの管轄外でしょう」
わざとらしく言えば、他の騎士たちが怒ったように視線をぶつけてくる。
助けてあげたのにお礼も言えない人たちなんて嫌いよ。
いくら自分たちの方が身分が上だからって、そういう問題じゃないでしょうに。
「では君は専門だとでも?」
「まぁ、少なくともあなたちよりかはそうですね」
「面白いことを言うな」
男は鼻で私を笑った。
なんなの、本当になんなの。鼻で笑うって、なに。
ますます感じ悪いじゃない。
あーーーー、助けるんじゃなかった。
もういいわ。無視しましょう。知らない。知らない。こんな礼儀のない人たちなんて、ネズミの餌になってしまえばよかったのよ。
こっちはお腹が減ってて、これ以上邪魔されたくないから、仕方なくついでに助けてあげたっていうのに。
だいたい私は一般人ですから? あなたたちと違って戦闘をしたところで給与も出ないのよ。
言いたいことは山ほどあるけど、もうそれすらどうでもいい。
私は騎士たちを無視しながらその脇をすり抜けようとすると、手を掴まれ引き留められた。
「まだ何か? だいたい、いきなり触るなど失礼ではないですか?」
「ああ、いや、すまない。君の機嫌を悪くさせたいわけではない。ただ先ほどのあの玉のことを聞かせてくれ」
なんで私がそんなことまで教えなきゃいけなんだろう。
だけど下手に危険物の所持とがで詰め所に連れていかれても困るし。
ため息を吐いたあと、腰ポーチにあったもう一つの球を取り出した。
小さな花火にも似た茶色い薬玉だ。
本当はさっき投げた奴も入れて、二個を道具屋で売って、小銭を稼ごうと思っていたのに。
一個はこんなことで消費しちゃったし。
なんて日なのかしらね。ついてない日は、本当にとことんダメね。
「これは本来地下などで使う対ネズミ用の専用の薬玉です。先ほど見ていただいたので分かると思いますが、地面に投げつけると大きな音と光が出たあと、灰色ネズミが嫌いな匂いが煙となって出てきます」
「どこでそんなものを手に入れた?」
「どこでって、これはうちのオリジナル商品ですわ」
「オリジナルって、君は……」
私は説明するのも面倒くさくなり、深くかぶっていたフードを取った。
銀色の髪に薄紫の瞳。
この帝都では、この組み合わせの髪と瞳を持つ人間は、うちの直系以外いない。
ある意味悪名高いダントレット商会。この髪や瞳を知らない人の方が少ないと思う。
「私はアンリエッタ・ダントレット。もっとも、先月結婚してアンリエッタ・ウィドールと申します、騎士様」
「君があのダントレット商会の娘……、そうか君がか」
どこか含みがあるような言い方。
嫌味ではなさそうだけど、良い意味とは思えない。
「ええ、そうですね」
騎士はただ驚いたように、ジッと私を見ていた。
私だって自分に向けられる人の評価なんか、ずっと前から知っている。
だってあの人の娘だもの。
いくら私があの人とは違うって言ったところで、そんなの信じてくれるのは使用人くらいだけ。
所詮、一括りにされる存在でしかないのだから。
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