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030 もっといらない……
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「んーーーー」
現実から目を背けようともう一つの手紙を見た瞬間、口にふくもうとしていた紅茶を吹き出しそうになるほど、その宛名に驚いた。
「ゴホっ、な、なにコレ‼」
「大丈夫ですか、アンリエッタ様」
正面で私の様子を見ていたミーアが駆け寄り、私の背中をさする。
いやこれはさすがに、大丈夫じゃないかもしれない。
むせ込みながら私はもう一度その宛名を確認する。
ブレイズ・ブロンド。
ブロンド家といえば、この帝都で知らない者などいないだろう。
「なんで私に公爵家からの手紙が来るのよ」
「そうなんですよ。ホントに、何をなさったんですか?」
「えー。なにって……あ」
「え? 思い当たることがあるんですか!?」
心底驚くミーアから、私は視線をそらした。
公爵家となんて接点はなにもない。
だけどこのブレイズという名前……。
確か、あの感じの悪い騎士団長さんと同じ名前よね。
もしかして、あの方は公爵家の人だったとかそういう感じ?
「ははははは」
思わず乾いた笑い声がもれる。
嘘でしょ。
あまりに感じが悪かったから、こっちも死ぬほど感じ悪く返しちゃったじゃない。
でも考えてみれば、帝国騎士団の人ってほぼ平民なんていないのよね。
しかも団長ともなれば、結構身分は上かなとは思っていたけど。
「あの騎士団長が公爵家の人……」
「確か広場で灰色ネズミが出て、騎士団の方を助けたって言ってましたよね」
「うん」
「それなら、そのお礼なのでは?」
いい風にとらえるなら、ミーアの言うことはもっともなんだろうけど。
印象最悪だったからなぁ。
名乗らなきゃ良かったかなぁ。
ほら、どこかの物語のように、名乗るほどの者ではありません、みたいな?
あー、でもあの薬玉を持ってる時点で怪しすぎて捕まるか。
「やーだー、どうしようミーア。私、公爵家の人だとは思わなかったからイラっとして怒鳴っちゃった」
「えええ、えええ? えー、ホントに何なさってるんですか」
「わかんないよぉ」
ただ驚いて大きな口を開けているミーアに、涙目になる私。
父の手紙以上にコレは、爆弾なのかもしれない。
「と、とにかく中を確認してください」
「しなきゃダメ?」
「そ、それは公爵家からのですし。しないと後が怖いじゃないですか」
「それはそうだけど」
散々一人唸り散らしたあと、観念した私は手紙を開封した。
中身はどこかよくあるような文面だった。
この前の広場でのお礼と、その際の話を聞きたいとのこと。
そのため自宅に招待してもよいかという問い合わせだ。
「えー。お礼ぽいと言えばお礼っぽいけど。貴族って、その言葉に裏表があるかんじじゃない?」
「で、どっちなんでしょう」
やだ、全然わかんない。
むしろこれ、なんて返事を書くべきなのかしら。
困ったなぁ。
これ、父のトコに行くより前に処理しちゃいたいのに。
「あ! そーだ。マリアンヌ様にお返事書いてもらおう」
「え、いいんですか、それ。あの方は愛人様なんじゃ……」
「まぁ、そうなんだけどね。お友だちだから大丈夫」
マリアンヌの話は一通りミーアにもしてあったけど、イマイチ信用してくれないのよね。
ミーアの気持ちは分かる。
いきなり本妻と愛人が手を組みましたなんて、あんまり聞いたこともないから。
でも利害が一致しているから、裏切られることもないし。
まだ貴族をよく知らない私には、本当に助かる。
「夜になったら向こうの侍女頭にこの手紙と私からの手紙を、マリアンヌに渡してもらうようお願い」
「はい、分かりました」
「でもあの騎士団長の手紙が本心だったら、ちょっと父を出し抜けるかもしれないわ」
私がそう言いながら微笑むと、ミーアは心配そうに私と手紙を交互に見ていた。
現実から目を背けようともう一つの手紙を見た瞬間、口にふくもうとしていた紅茶を吹き出しそうになるほど、その宛名に驚いた。
「ゴホっ、な、なにコレ‼」
「大丈夫ですか、アンリエッタ様」
正面で私の様子を見ていたミーアが駆け寄り、私の背中をさする。
いやこれはさすがに、大丈夫じゃないかもしれない。
むせ込みながら私はもう一度その宛名を確認する。
ブレイズ・ブロンド。
ブロンド家といえば、この帝都で知らない者などいないだろう。
「なんで私に公爵家からの手紙が来るのよ」
「そうなんですよ。ホントに、何をなさったんですか?」
「えー。なにって……あ」
「え? 思い当たることがあるんですか!?」
心底驚くミーアから、私は視線をそらした。
公爵家となんて接点はなにもない。
だけどこのブレイズという名前……。
確か、あの感じの悪い騎士団長さんと同じ名前よね。
もしかして、あの方は公爵家の人だったとかそういう感じ?
「ははははは」
思わず乾いた笑い声がもれる。
嘘でしょ。
あまりに感じが悪かったから、こっちも死ぬほど感じ悪く返しちゃったじゃない。
でも考えてみれば、帝国騎士団の人ってほぼ平民なんていないのよね。
しかも団長ともなれば、結構身分は上かなとは思っていたけど。
「あの騎士団長が公爵家の人……」
「確か広場で灰色ネズミが出て、騎士団の方を助けたって言ってましたよね」
「うん」
「それなら、そのお礼なのでは?」
いい風にとらえるなら、ミーアの言うことはもっともなんだろうけど。
印象最悪だったからなぁ。
名乗らなきゃ良かったかなぁ。
ほら、どこかの物語のように、名乗るほどの者ではありません、みたいな?
あー、でもあの薬玉を持ってる時点で怪しすぎて捕まるか。
「やーだー、どうしようミーア。私、公爵家の人だとは思わなかったからイラっとして怒鳴っちゃった」
「えええ、えええ? えー、ホントに何なさってるんですか」
「わかんないよぉ」
ただ驚いて大きな口を開けているミーアに、涙目になる私。
父の手紙以上にコレは、爆弾なのかもしれない。
「と、とにかく中を確認してください」
「しなきゃダメ?」
「そ、それは公爵家からのですし。しないと後が怖いじゃないですか」
「それはそうだけど」
散々一人唸り散らしたあと、観念した私は手紙を開封した。
中身はどこかよくあるような文面だった。
この前の広場でのお礼と、その際の話を聞きたいとのこと。
そのため自宅に招待してもよいかという問い合わせだ。
「えー。お礼ぽいと言えばお礼っぽいけど。貴族って、その言葉に裏表があるかんじじゃない?」
「で、どっちなんでしょう」
やだ、全然わかんない。
むしろこれ、なんて返事を書くべきなのかしら。
困ったなぁ。
これ、父のトコに行くより前に処理しちゃいたいのに。
「あ! そーだ。マリアンヌ様にお返事書いてもらおう」
「え、いいんですか、それ。あの方は愛人様なんじゃ……」
「まぁ、そうなんだけどね。お友だちだから大丈夫」
マリアンヌの話は一通りミーアにもしてあったけど、イマイチ信用してくれないのよね。
ミーアの気持ちは分かる。
いきなり本妻と愛人が手を組みましたなんて、あんまり聞いたこともないから。
でも利害が一致しているから、裏切られることもないし。
まだ貴族をよく知らない私には、本当に助かる。
「夜になったら向こうの侍女頭にこの手紙と私からの手紙を、マリアンヌに渡してもらうようお願い」
「はい、分かりました」
「でもあの騎士団長の手紙が本心だったら、ちょっと父を出し抜けるかもしれないわ」
私がそう言いながら微笑むと、ミーアは心配そうに私と手紙を交互に見ていた。
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