38 / 68
037 初めてのお茶会➁
しおりを挟む
「大丈夫ですか?」
さすがにむせ込んだ私に、ブレイズは慌てて立ち上がろうとする。
しかし私は反対の手でそれを制止した。
いろんな意味で恥ずかしいからやめてぇ。
もっとも、口いっぱいに頬張った自分のせいなんだけど。
「だ、大丈夫です。いきなりそんなことを言われたのでビックリしただけで」
「そんなこと?」
あ。
そこまで言われてふと気づく。
彼が言ったのは、服装じゃない。
やだ、何を勘違いしてるの私。
ちょっと馬鹿すぎて恥ずかしいんだけど。
だって……綺麗だなんて初めて言われたんだもの。
自分のコトかって勘違いしちゃったし。
「ああ、服ですよね、服。これ借り物なんです」
「借り物?」
私の言葉にブレイズは眉をひそめた。
あれ。私、また変なこと言っちゃった感じ?
なんか墓穴掘りまくってる気がするんだけど。
「貴女の服ではないんですか?」
「えーあー。そうですね。私は貴族ではありませんし」
もういいや。
今さら取り繕ってもどうしようもないし。
別に私の扱いなんて今に始まったことでもないんだし、大丈夫でしょう。
「ですが貴女はウィドール家に嫁いだんですよね?」
「ええ。一応は?」
「一応って」
「所詮、契約結婚のようなものですし。貴族ですとそういうのも多いんですよね」
「ですが……」
私の言葉に、ブレイズは何か考えこんでいた。
貴族間の結婚って、親同士が決めるって聞いたことがあるんだけど。
今の時代はそうじゃないのかしら。
平民でも裕福な家になればなるほど、親が結婚相手を決めるっていうのが普通だと思っていたわ。
「一つお聞きしても良いですか?」
「ええ。どうぞ?」
安定にブレイズの眉間にはシワが寄ったままだ。
そしてややあらたまったように、口を開く。
「結婚は貴女が望んだものではないと分かりました。つまりは愛もないと?」
「まぁ、そうなりますね」
「かの男爵の話はよく聞いたことがあります。とある子爵令嬢に入れあげて、本来ならばその令嬢と結婚するはずだったと」
「ああ、みたいですね」
まさかうちの屋敷の別邸にいますとは言えないけど。
貴族の間でも、有名な話だったのね。
この人は、そういう話には興味なさそうだったのに。
なんか意外だわ。人は見かけで判断してはダメね。
「ではその女性が今でも自分の夫の元にいたとしても、何ら問題はないのですか?」
どこかとげのある言い方だった。
この言い方だと、マリアンヌが悪いみたいじゃない。
悪いのはダミアンであって、彼女ではない。
確かに愛人という立場は世間的にはダメなのは分かるけど。
私にとっては、マリアンヌが悪だとは一度だって思ったことないもの。
「問題があるとすれば、それは囲っている夫にでしょうか。ですが元よりこの結婚は契約的なものです。水面下で何が起きたとしても、こちらを尊重してもらえるのでしたら、本来は何も問題はありません」
そう。
仮面夫婦であっても、お互いが尊重さえできれば、もう少し私たちは上手くやれたのかもしれない。
今になってはすべて引き返すことも出来ないし、しようとすら思わないのだけどね。
私の返答に、ブレイズはただ沈黙した。
さすがにむせ込んだ私に、ブレイズは慌てて立ち上がろうとする。
しかし私は反対の手でそれを制止した。
いろんな意味で恥ずかしいからやめてぇ。
もっとも、口いっぱいに頬張った自分のせいなんだけど。
「だ、大丈夫です。いきなりそんなことを言われたのでビックリしただけで」
「そんなこと?」
あ。
そこまで言われてふと気づく。
彼が言ったのは、服装じゃない。
やだ、何を勘違いしてるの私。
ちょっと馬鹿すぎて恥ずかしいんだけど。
だって……綺麗だなんて初めて言われたんだもの。
自分のコトかって勘違いしちゃったし。
「ああ、服ですよね、服。これ借り物なんです」
「借り物?」
私の言葉にブレイズは眉をひそめた。
あれ。私、また変なこと言っちゃった感じ?
なんか墓穴掘りまくってる気がするんだけど。
「貴女の服ではないんですか?」
「えーあー。そうですね。私は貴族ではありませんし」
もういいや。
今さら取り繕ってもどうしようもないし。
別に私の扱いなんて今に始まったことでもないんだし、大丈夫でしょう。
「ですが貴女はウィドール家に嫁いだんですよね?」
「ええ。一応は?」
「一応って」
「所詮、契約結婚のようなものですし。貴族ですとそういうのも多いんですよね」
「ですが……」
私の言葉に、ブレイズは何か考えこんでいた。
貴族間の結婚って、親同士が決めるって聞いたことがあるんだけど。
今の時代はそうじゃないのかしら。
平民でも裕福な家になればなるほど、親が結婚相手を決めるっていうのが普通だと思っていたわ。
「一つお聞きしても良いですか?」
「ええ。どうぞ?」
安定にブレイズの眉間にはシワが寄ったままだ。
そしてややあらたまったように、口を開く。
「結婚は貴女が望んだものではないと分かりました。つまりは愛もないと?」
「まぁ、そうなりますね」
「かの男爵の話はよく聞いたことがあります。とある子爵令嬢に入れあげて、本来ならばその令嬢と結婚するはずだったと」
「ああ、みたいですね」
まさかうちの屋敷の別邸にいますとは言えないけど。
貴族の間でも、有名な話だったのね。
この人は、そういう話には興味なさそうだったのに。
なんか意外だわ。人は見かけで判断してはダメね。
「ではその女性が今でも自分の夫の元にいたとしても、何ら問題はないのですか?」
どこかとげのある言い方だった。
この言い方だと、マリアンヌが悪いみたいじゃない。
悪いのはダミアンであって、彼女ではない。
確かに愛人という立場は世間的にはダメなのは分かるけど。
私にとっては、マリアンヌが悪だとは一度だって思ったことないもの。
「問題があるとすれば、それは囲っている夫にでしょうか。ですが元よりこの結婚は契約的なものです。水面下で何が起きたとしても、こちらを尊重してもらえるのでしたら、本来は何も問題はありません」
そう。
仮面夫婦であっても、お互いが尊重さえできれば、もう少し私たちは上手くやれたのかもしれない。
今になってはすべて引き返すことも出来ないし、しようとすら思わないのだけどね。
私の返答に、ブレイズはただ沈黙した。
115
あなたにおすすめの小説
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる