38 / 75
037 初めてのお茶会➁
しおりを挟む
「大丈夫ですか?」
さすがにむせ込んだ私に、ブレイズは慌てて立ち上がろうとする。
しかし私は反対の手でそれを制止した。
いろんな意味で恥ずかしいからやめてぇ。
もっとも、口いっぱいに頬張った自分のせいなんだけど。
「だ、大丈夫です。いきなりそんなことを言われたのでビックリしただけで」
「そんなこと?」
あ。
そこまで言われてふと気づく。
彼が言ったのは、服装じゃない。
やだ、何を勘違いしてるの私。
ちょっと馬鹿すぎて恥ずかしいんだけど。
だって……綺麗だなんて初めて言われたんだもの。
自分のコトかって勘違いしちゃったし。
「ああ、服ですよね、服。これ借り物なんです」
「借り物?」
私の言葉にブレイズは眉をひそめた。
あれ。私、また変なこと言っちゃった感じ?
なんか墓穴掘りまくってる気がするんだけど。
「貴女の服ではないんですか?」
「えーあー。そうですね。私は貴族ではありませんし」
もういいや。
今さら取り繕ってもどうしようもないし。
別に私の扱いなんて今に始まったことでもないんだし、大丈夫でしょう。
「ですが貴女はウィドール家に嫁いだんですよね?」
「ええ。一応は?」
「一応って」
「所詮、契約結婚のようなものですし。貴族ですとそういうのも多いんですよね」
「ですが……」
私の言葉に、ブレイズは何か考えこんでいた。
貴族間の結婚って、親同士が決めるって聞いたことがあるんだけど。
今の時代はそうじゃないのかしら。
平民でも裕福な家になればなるほど、親が結婚相手を決めるっていうのが普通だと思っていたわ。
「一つお聞きしても良いですか?」
「ええ。どうぞ?」
安定にブレイズの眉間にはシワが寄ったままだ。
そしてややあらたまったように、口を開く。
「結婚は貴女が望んだものではないと分かりました。つまりは愛もないと?」
「まぁ、そうなりますね」
「かの男爵の話はよく聞いたことがあります。とある子爵令嬢に入れあげて、本来ならばその令嬢と結婚するはずだったと」
「ああ、みたいですね」
まさかうちの屋敷の別邸にいますとは言えないけど。
貴族の間でも、有名な話だったのね。
この人は、そういう話には興味なさそうだったのに。
なんか意外だわ。人は見かけで判断してはダメね。
「ではその女性が今でも自分の夫の元にいたとしても、何ら問題はないのですか?」
どこかとげのある言い方だった。
この言い方だと、マリアンヌが悪いみたいじゃない。
悪いのはダミアンであって、彼女ではない。
確かに愛人という立場は世間的にはダメなのは分かるけど。
私にとっては、マリアンヌが悪だとは一度だって思ったことないもの。
「問題があるとすれば、それは囲っている夫にでしょうか。ですが元よりこの結婚は契約的なものです。水面下で何が起きたとしても、こちらを尊重してもらえるのでしたら、本来は何も問題はありません」
そう。
仮面夫婦であっても、お互いが尊重さえできれば、もう少し私たちは上手くやれたのかもしれない。
今になってはすべて引き返すことも出来ないし、しようとすら思わないのだけどね。
私の返答に、ブレイズはただ沈黙した。
さすがにむせ込んだ私に、ブレイズは慌てて立ち上がろうとする。
しかし私は反対の手でそれを制止した。
いろんな意味で恥ずかしいからやめてぇ。
もっとも、口いっぱいに頬張った自分のせいなんだけど。
「だ、大丈夫です。いきなりそんなことを言われたのでビックリしただけで」
「そんなこと?」
あ。
そこまで言われてふと気づく。
彼が言ったのは、服装じゃない。
やだ、何を勘違いしてるの私。
ちょっと馬鹿すぎて恥ずかしいんだけど。
だって……綺麗だなんて初めて言われたんだもの。
自分のコトかって勘違いしちゃったし。
「ああ、服ですよね、服。これ借り物なんです」
「借り物?」
私の言葉にブレイズは眉をひそめた。
あれ。私、また変なこと言っちゃった感じ?
なんか墓穴掘りまくってる気がするんだけど。
「貴女の服ではないんですか?」
「えーあー。そうですね。私は貴族ではありませんし」
もういいや。
今さら取り繕ってもどうしようもないし。
別に私の扱いなんて今に始まったことでもないんだし、大丈夫でしょう。
「ですが貴女はウィドール家に嫁いだんですよね?」
「ええ。一応は?」
「一応って」
「所詮、契約結婚のようなものですし。貴族ですとそういうのも多いんですよね」
「ですが……」
私の言葉に、ブレイズは何か考えこんでいた。
貴族間の結婚って、親同士が決めるって聞いたことがあるんだけど。
今の時代はそうじゃないのかしら。
平民でも裕福な家になればなるほど、親が結婚相手を決めるっていうのが普通だと思っていたわ。
「一つお聞きしても良いですか?」
「ええ。どうぞ?」
安定にブレイズの眉間にはシワが寄ったままだ。
そしてややあらたまったように、口を開く。
「結婚は貴女が望んだものではないと分かりました。つまりは愛もないと?」
「まぁ、そうなりますね」
「かの男爵の話はよく聞いたことがあります。とある子爵令嬢に入れあげて、本来ならばその令嬢と結婚するはずだったと」
「ああ、みたいですね」
まさかうちの屋敷の別邸にいますとは言えないけど。
貴族の間でも、有名な話だったのね。
この人は、そういう話には興味なさそうだったのに。
なんか意外だわ。人は見かけで判断してはダメね。
「ではその女性が今でも自分の夫の元にいたとしても、何ら問題はないのですか?」
どこかとげのある言い方だった。
この言い方だと、マリアンヌが悪いみたいじゃない。
悪いのはダミアンであって、彼女ではない。
確かに愛人という立場は世間的にはダメなのは分かるけど。
私にとっては、マリアンヌが悪だとは一度だって思ったことないもの。
「問題があるとすれば、それは囲っている夫にでしょうか。ですが元よりこの結婚は契約的なものです。水面下で何が起きたとしても、こちらを尊重してもらえるのでしたら、本来は何も問題はありません」
そう。
仮面夫婦であっても、お互いが尊重さえできれば、もう少し私たちは上手くやれたのかもしれない。
今になってはすべて引き返すことも出来ないし、しようとすら思わないのだけどね。
私の返答に、ブレイズはただ沈黙した。
157
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。
そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、
死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。
「でも、子供たちの心だけは、
必ず取り戻す」
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。
それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。
これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる