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043 怒りと悲しみ
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「ダ……」
「ダミアン!」
叫ぶような大きなその声に、私たちは肩をビクリとさせたあと振り返る。
そこには顔を真っ赤にさせ、激怒したマリアンヌがいた。
「アンヌ!」
「どういうことなの、ダミアン! 最近アタシのところに寄り付かないと思ったら、結局アタシより奥さんを選んだってことなのね!」
「ち、違う。これは違うんだ」
私から手を離したダミアンはそそくさとマリアンヌに駆け寄った。
もしかしたらミーアか誰かがマリアンヌを呼んできてくれたのかもしれない。
だけどこの状況は彼女にとったらどれだけ嫌なものだっただろう。
自分のことでもないのに、なんだか胸が痛くなる。
「この泥棒猫! ダミアンはアタシのなのよ」
マリアンヌはわざとらしく私に食ってかかる。
彼女の体をダミアンが押さえ、制止させていた。
「あ、あなたこそ誰なんですか? ダミアン様、これはどういうことなのです」
「いや、だから彼女は……」
私とマリアンヌに板挟みされ、ダミアンは狼狽えながらその瞳を泳がせる。
「アタシのことを愛しているのなら、ここでちゃんと言ってちょうだい」
「愛してる? ダミアン様はこの方を愛しているのですか? 私とは契約婚なのは分かっているつもりです。ですがこのように愛する方が別にいたとは知りませんでした」
こんな状況でもただアワアワするダミアンに、私が畳みかけた。
もちろん言うわよね?
自分にはマリアンヌだけだって。
少なくとも私も彼女もその言葉を待っているんだから。
この期に及んで誤魔化すなんてことはさせない。
外遊びも始めてるっていうし、それも兼ねての警告みたいなもんよ。
自覚しなさい、この浮気男。
「ぼ、僕は」
「言ってくれないのなら、もうアタシは……」
マリアンヌの大きな瞳に涙が浮かぶ。
出来ることなら今すぐこの男を殴って、彼女をさらって逃げたい気分よ。
「ダミアン様は私と彼女のどちらを選ぶんです? 愛はなくとも、私の方が活用方法はありますわよね?」
「なんですって⁉」
ダミアンの制止を振り切り、マリアンヌが私を押し倒す。
そしてそのままの勢いで、馬乗りになり彼女は私の手首をつかむ。
冷たい床に勢いよく転がり、その痛みが全身に広がった。
だけどそんな痛みよりも、私の顔にぽたぽたと落ちるマリアンヌの涙が熱かった。
「や、やめないか、アンヌ。僕はもちろん君のことを誰よりも愛しているよ。妻なんて所詮お飾りにしかすぎない。その女は金でもらってやっただけだ」
「この先もずっとアタシだけ?」
「ああ、もちろんだ。ずっと君だけだよ」
ダミアンはそう言いながら、私に馬乗りになったマリアンヌの手を取り、引きはがした。
そして彼女を抱きしめながら、床に寝転ぶ私を見下す。
「君とはただの契約だ。身の丈に合わせて、それ以上のことは望むな」
「……」
「僕は彼女だけを愛している。それはこの先も変わりはしない。変な期待など抱かぬ方がいい」
「……わかりました」
すべて言いたいことを言い切ると、まるでやり切ったと言わんばかりにダミアンは腹が立つほどすがすがしい顔をしていた。
肩を抱き合った二人が玄関から出て行くまで、ただ私は古く埃をかぶる天井を一人眺めていた。
「ダミアン!」
叫ぶような大きなその声に、私たちは肩をビクリとさせたあと振り返る。
そこには顔を真っ赤にさせ、激怒したマリアンヌがいた。
「アンヌ!」
「どういうことなの、ダミアン! 最近アタシのところに寄り付かないと思ったら、結局アタシより奥さんを選んだってことなのね!」
「ち、違う。これは違うんだ」
私から手を離したダミアンはそそくさとマリアンヌに駆け寄った。
もしかしたらミーアか誰かがマリアンヌを呼んできてくれたのかもしれない。
だけどこの状況は彼女にとったらどれだけ嫌なものだっただろう。
自分のことでもないのに、なんだか胸が痛くなる。
「この泥棒猫! ダミアンはアタシのなのよ」
マリアンヌはわざとらしく私に食ってかかる。
彼女の体をダミアンが押さえ、制止させていた。
「あ、あなたこそ誰なんですか? ダミアン様、これはどういうことなのです」
「いや、だから彼女は……」
私とマリアンヌに板挟みされ、ダミアンは狼狽えながらその瞳を泳がせる。
「アタシのことを愛しているのなら、ここでちゃんと言ってちょうだい」
「愛してる? ダミアン様はこの方を愛しているのですか? 私とは契約婚なのは分かっているつもりです。ですがこのように愛する方が別にいたとは知りませんでした」
こんな状況でもただアワアワするダミアンに、私が畳みかけた。
もちろん言うわよね?
自分にはマリアンヌだけだって。
少なくとも私も彼女もその言葉を待っているんだから。
この期に及んで誤魔化すなんてことはさせない。
外遊びも始めてるっていうし、それも兼ねての警告みたいなもんよ。
自覚しなさい、この浮気男。
「ぼ、僕は」
「言ってくれないのなら、もうアタシは……」
マリアンヌの大きな瞳に涙が浮かぶ。
出来ることなら今すぐこの男を殴って、彼女をさらって逃げたい気分よ。
「ダミアン様は私と彼女のどちらを選ぶんです? 愛はなくとも、私の方が活用方法はありますわよね?」
「なんですって⁉」
ダミアンの制止を振り切り、マリアンヌが私を押し倒す。
そしてそのままの勢いで、馬乗りになり彼女は私の手首をつかむ。
冷たい床に勢いよく転がり、その痛みが全身に広がった。
だけどそんな痛みよりも、私の顔にぽたぽたと落ちるマリアンヌの涙が熱かった。
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「ああ、もちろんだ。ずっと君だけだよ」
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「……」
「僕は彼女だけを愛している。それはこの先も変わりはしない。変な期待など抱かぬ方がいい」
「……わかりました」
すべて言いたいことを言い切ると、まるでやり切ったと言わんばかりにダミアンは腹が立つほどすがすがしい顔をしていた。
肩を抱き合った二人が玄関から出て行くまで、ただ私は古く埃をかぶる天井を一人眺めていた。
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