白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。

美杉日和。(旧美杉。)

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「きゃー、アンリエッタ様!」

 考えごとをしたままボーっと動けないでいた私を見つけたミーアが叫びながら、近づいてきた。
 そしてそのまま私を抱き起す。

「どうして、どうしてこんなことになったんですか! ああ、酷い。なんてことなの」

 ぼろぼろとミーアは私の上半身を抱きしめたまま、泣いていた。

「大丈夫よ、ミーア。それよりもマリアンヌを呼んできてくれてありがとう」
「そんなのいいんです。でもあたしが呼んできたせいで、アンリエッタ様が怪我を。お医者様、お医者様を……」
「怪我ってほどではないわ、大丈夫よ、ミーア」

 そう言いながらミーアの手を借りて立とうとすると、背中の骨がきしむように痛んだ。

「うん、ちょっと痛いかな」
「やっぱりお医者様を」

「大丈夫よ。いつだって、平気だったでしょう。お医者様なんて、高いし、それに私になんてこの屋敷の人間は呼んでもくれないわ。にしても、マリアンヌ様のおかげで助かったわ」
「助かったって……」

 もしミーアがマリアンヌを呼んでこなかったら、どうなっていただろう。
 あんな風にダミアンが私に興味を示すなんて思わなかった。

 それにあの目も手つきもそう。
 明らかに私を女性として見ていたわよね。
 
 思い出すだけでもぞっとする。
 好きでもない人間に触れられたりするのって、あんなにも気持ちの悪いものだったんだ。

「まさかダミアン様が私なんかをねぇ……。たくさんの貴族女性に囲まれていたみたいだし、もっと目が肥えてると思ったのに」
「何を言ってるんですか。アンリエッタ様はそこらへんの令嬢様たちよりも、ずっとお綺麗ですよ?」
「そう?」

 この瞳も髪も珍しい色だとは思うけど。
 綺麗だなんて言われたのは初めてね。

 でもあながちミーアの言っていることは間違っていないのかもしれない。
 着飾った途端に手を出されそうになったぐらいだもの。

 ボロイ服装で、見た目が隠れていただけって感じかな。
 急にドレスなんて着たから、ダミアンは自分と同じ位置にいる女性のように私を見たのかもしれない。

「もう着飾るのは懲り懲りね」

 ミーアの肩を借り、私はゆっくりと自室へ歩き出す。
 視界の端に、転がったお菓子の包みが見えた。

 放り投げられた包みは、くしゃりと変形してしまっている。
 中はきっと、見なくても原型をとどめてはいないだろう。

 あの不思議な食感のお菓子は、柔らかかったものね。

「あー。せっかくのお土産だったのになぁ」
「もう。今はそれどころではないでしょうに!」
「でも美味しかったのよ? だからみんなに持って帰りたくてお願いしたの」
「まったくアンリエッタ様は……」

 ますます顔を歪めて泣くミーアの腕をぽんぽんとさすりながら、私たちはお菓子の包みを拾い部屋に戻った。
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