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047 お医者様
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父が私のために医者を手配?
さっきミーアと人じゃないだなんて言っていたわよね。
いや、あの見解は少しも間違ってなんかいないはず。
だってあの父よ?
金貨一枚の価値すらないって言い放った父よ?
もうこの恨み、ずっと引きずってやるんだからってくらいの相手なのに。
たかが私が怪我で熱を出しただけで、医者を手配したなんてあるわけないじゃない。
「え、なに。明日世界が終わるの? それとも私、また死ぬのかしら」
「また? アンリエッタ様、それはどういう」
やだ。
思わず口に出ちゃっていたじゃない。
あまりに衝撃的だったんだもの。
いけないいけない、訂正しないと。
「ほら昔仕事で死にかけたことがあるから」
「あー。そんなこともありましたね。地下に置き去りにされて」
「そうそう。あの時だって大けがしてやっと脱出したというのに、医者なんて呼んでもらえなかったのよ」
「たしかに」
父の仕事はいつだって命がけだった。
でもたとえそれで命を落としたとしても、あの人にとっては使える手ごまが一つ減ったくらいにしか思わない。
そんな認識だったのだけど。
ダミアンの子を生むまでは~って感じなのかしら。
それにしたって、薄ら寒いけど。
「とにかく私のためのお医者様なら、ここに通りてちょうだい。待たせたら失礼にあたるわ」
どう転んでも怖いなとは思いつつも、せっかく来てもらった人を帰すわけにも行かず侍女に部屋まで案内するように頼んだ。
侍女はまた小走りで部屋を出て行くのを見て、ミーアが頭を抱えていたが。
元より商会では侍女をしていたわけではないのだから、少しくらいは大目に見てあげないとね。
しばらくすると、部屋に医師が通される。
思っていたよりもずっと、いや、かなり立派な方だ。
歳は父よりやや上くらいだろうか。
真っ白な服に、診察用の大きなカバンを持っていた。
そして助手なのだろうか、二人ほど綺麗な女性を伴っている。
私はミーアに頼んで背中にあるだけのクッションを挟んでもらうと、なんとかベッドで体を起こした。
「初めてお目にかかります、ヴィドール夫人。わたくしは医師のビランドと申します」
やや屈みながら、医師は私に丁寧に挨拶をした。
どう見ても、貴族相手をする方よね。
どこかの町医者には見えないわ。
「初めまして、こんにちわビランド様。このような格好で申し訳ありません」
「何を言いますか。貴女は患者ですから、そのままで結構なんですよ」
ビランドはそう言いながら、眉を下げてふんわりと微笑む。
「いろいろ診させていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。お願いいたします」
人生初の診察にドキドキしながらも、診察が行われた。
途中背中を見たいというビランドの声にこたえ、連れ立った看護師さんだろうか。
彼女たちが私を支えつつ、服などが最低限しか剥がれないようにいろいろと配慮してくれた。
その丁寧な動きに、私もその場にいたミーアもただ感心するばかりだった。
「簡単に申し上げますと、夫人の背中の骨の一部にヒビが入っています」
「ヒビですか」
「そうです。木や石などでもそうですが、どこかに強くぶつけると壊れますよね。そんな感じで、人の骨も強くぶつけるとヒビが入ったり折れたりしてしまうのです」
ビランドの話ではそのヒビが入ったがために、熱が出ているとのことだった。
もちろん過労もそこに追加されたのだが。
完治するには数週間かかるという。
また完治したとしても、何かにつけて痛むこともあると。
「とにかく今は安静が必要です。包帯で背中を固定すれば、痛みは少し軽減されるはずですが、結局あまり動いてしまえば同じですからね」
ビランドの指示で、私の背中には固定するようにきつく包帯がまかれた。
看護師たちから包帯の変え方をミーアが聞いている中、私は疑問をビランドにぶつける。
「ビランド様は、どなたから派遣されていらしたのですか?」
私の問いに、彼はやや困ったように一瞬目をそらした。
どう見ても、父が雇った医師ではないのは明らかだ。
だって金貨一枚以上、この診察代はかかると思うもの。
いくら父の目的が私が子を成すことだからといって、ここまでは肩入れするはずがない。
だからこそ彼が誰に雇われ、誰の指示で私を診察しているのか。
それがどうしても気になった。
「そうですねぇ……」
「口外はいたしません」
「わたくしは公爵家の侍医なのですよ、夫人」
「ではブレイズ様が……」
ビランドはただ微笑むだけで、それ以上は答えてはくれなかった。
診察代はもう貰っていると言い、痛み止めの薬と替えの包帯を置いて彼らは帰っていった。
さっきミーアと人じゃないだなんて言っていたわよね。
いや、あの見解は少しも間違ってなんかいないはず。
だってあの父よ?
金貨一枚の価値すらないって言い放った父よ?
もうこの恨み、ずっと引きずってやるんだからってくらいの相手なのに。
たかが私が怪我で熱を出しただけで、医者を手配したなんてあるわけないじゃない。
「え、なに。明日世界が終わるの? それとも私、また死ぬのかしら」
「また? アンリエッタ様、それはどういう」
やだ。
思わず口に出ちゃっていたじゃない。
あまりに衝撃的だったんだもの。
いけないいけない、訂正しないと。
「ほら昔仕事で死にかけたことがあるから」
「あー。そんなこともありましたね。地下に置き去りにされて」
「そうそう。あの時だって大けがしてやっと脱出したというのに、医者なんて呼んでもらえなかったのよ」
「たしかに」
父の仕事はいつだって命がけだった。
でもたとえそれで命を落としたとしても、あの人にとっては使える手ごまが一つ減ったくらいにしか思わない。
そんな認識だったのだけど。
ダミアンの子を生むまでは~って感じなのかしら。
それにしたって、薄ら寒いけど。
「とにかく私のためのお医者様なら、ここに通りてちょうだい。待たせたら失礼にあたるわ」
どう転んでも怖いなとは思いつつも、せっかく来てもらった人を帰すわけにも行かず侍女に部屋まで案内するように頼んだ。
侍女はまた小走りで部屋を出て行くのを見て、ミーアが頭を抱えていたが。
元より商会では侍女をしていたわけではないのだから、少しくらいは大目に見てあげないとね。
しばらくすると、部屋に医師が通される。
思っていたよりもずっと、いや、かなり立派な方だ。
歳は父よりやや上くらいだろうか。
真っ白な服に、診察用の大きなカバンを持っていた。
そして助手なのだろうか、二人ほど綺麗な女性を伴っている。
私はミーアに頼んで背中にあるだけのクッションを挟んでもらうと、なんとかベッドで体を起こした。
「初めてお目にかかります、ヴィドール夫人。わたくしは医師のビランドと申します」
やや屈みながら、医師は私に丁寧に挨拶をした。
どう見ても、貴族相手をする方よね。
どこかの町医者には見えないわ。
「初めまして、こんにちわビランド様。このような格好で申し訳ありません」
「何を言いますか。貴女は患者ですから、そのままで結構なんですよ」
ビランドはそう言いながら、眉を下げてふんわりと微笑む。
「いろいろ診させていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。お願いいたします」
人生初の診察にドキドキしながらも、診察が行われた。
途中背中を見たいというビランドの声にこたえ、連れ立った看護師さんだろうか。
彼女たちが私を支えつつ、服などが最低限しか剥がれないようにいろいろと配慮してくれた。
その丁寧な動きに、私もその場にいたミーアもただ感心するばかりだった。
「簡単に申し上げますと、夫人の背中の骨の一部にヒビが入っています」
「ヒビですか」
「そうです。木や石などでもそうですが、どこかに強くぶつけると壊れますよね。そんな感じで、人の骨も強くぶつけるとヒビが入ったり折れたりしてしまうのです」
ビランドの話ではそのヒビが入ったがために、熱が出ているとのことだった。
もちろん過労もそこに追加されたのだが。
完治するには数週間かかるという。
また完治したとしても、何かにつけて痛むこともあると。
「とにかく今は安静が必要です。包帯で背中を固定すれば、痛みは少し軽減されるはずですが、結局あまり動いてしまえば同じですからね」
ビランドの指示で、私の背中には固定するようにきつく包帯がまかれた。
看護師たちから包帯の変え方をミーアが聞いている中、私は疑問をビランドにぶつける。
「ビランド様は、どなたから派遣されていらしたのですか?」
私の問いに、彼はやや困ったように一瞬目をそらした。
どう見ても、父が雇った医師ではないのは明らかだ。
だって金貨一枚以上、この診察代はかかると思うもの。
いくら父の目的が私が子を成すことだからといって、ここまでは肩入れするはずがない。
だからこそ彼が誰に雇われ、誰の指示で私を診察しているのか。
それがどうしても気になった。
「そうですねぇ……」
「口外はいたしません」
「わたくしは公爵家の侍医なのですよ、夫人」
「ではブレイズ様が……」
ビランドはただ微笑むだけで、それ以上は答えてはくれなかった。
診察代はもう貰っていると言い、痛み止めの薬と替えの包帯を置いて彼らは帰っていった。
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