王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue

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魔物討伐に行きます

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 今日は学園が休みなので、朝からライ兄様と一緒に騎士団棟へと向かう。
すっかり男装にも慣れ、今ではディアナ姉様の所に行かなくても自分で出来るようになった。胸の苦しさにはなかなか慣れないけれど。
「アンジー知ってるか?」
突然ライ兄様が聞いてくる。
「知らないわ」
「まだ内容言ってないだろ」
「だって知ってるか?って言うんだもの」

「言うまで待てよ。まあいいや、今日は魔物退治に行くぞ」
「ホント!?」
「ああ、ビッグベアが異常繁殖していた。このままじゃ西の森がハゲになる。だから第五部隊と合同で討伐に行く」
「そんなにいるの?」
「ああ、偵察隊の報告によると80から100。もうすでに森の一部がハゲかかってるってさ」
「それは大変。あの森には唯一シルバーウルフが生息しているのよ。森がなくなったら生きていけなくなってしまうわ」

「だから俺たちが行くんだ」
「ならこんなゆっくり歩いてる場合じゃないわ、早く行かなくちゃ」
「まだ出発の時間まで大分時間があるぞ」
「それでも。早く行きましょう」
ライ兄様の腕に掴まって引っ張るように進む。
「ああ、もうわかったよ、お姫様」

西の森は王都のすぐ西にある大きな森で、奥深くにはシルバーウルフが生息している。シルバーウルフはどういう訳か、この西の森にしか生息出来ないらしく、国の保護対象となっているため、ビッグベアの討伐は最重要事項だ。今回は、第一部隊と第五部隊、そしてルドルフォ副団長がいる。

「いいか、この辺りからビッグベアが出没するエリアだ。奴らは異常繁殖のせいで餌が不足して苛立っているはずだ。あまり時間をかけず、速やかに討伐しろ。時間をかければ凶暴になるだけだぞ。あとは、一人で行動はするな。以上だ」
ルドルフォ副団長の話が終わると、大きく二手に分かれて行動する。
外から内へ向かって追い込み、最後には一網打尽に出来るようにする作戦だ。

「魔物討伐は初めてかい?」
エミリアーノ副隊長が聞いてきた。
「初めてではないですよ」
「そうなのかい?」
「はい、実はライモンド隊長に領地にある森での討伐に連れて行ってもらった事があるのです。でもビッグベアは初めてです」
「そっか。そういえばライモンド隊長とも知り合いだったね。じゃあ大丈夫そうだね。でも一応新人君だから、私の傍を離れないようにね」
「はい、わかりました。足を引っ張らないように頑張ります」
「うん、頑張ろうね」

エミリアーノ副隊長は優しい笑顔を向けて言った。彼は侯爵家の次男という事もあってか、所作が美しい。剣の扱いもいいお手本になるような、癖のない模範的な使い手で強い。それに部下からの信頼も厚い。ライ兄様が暴走しても冷静に対処出来るので、いいコンビだと思う。一緒にいると穏やかな気持ちになれる、うちの家族にはいないタイプのイケメンだ。

「アンジーならビッグベアを一人で倒せそうだけどな」
グイドだ。最初の模擬戦から何かと私の世話を焼いてくれる。しかも、私の存在に火がついたのか最近、めきめきと力をつけている。
「グイドだって倒せるんじゃないか?」
「お?じゃあ勝負するか?」

「こらこら、お遊びじゃないんだから」
エミリアーノ副隊長に窘められる。

 ふと、私たちのいる場所から外れた所から葉擦れの音がした。
「シッ」
人差し指を口元に当て、静かにするのを促す。二人も緊張した様子で頷いた。

すると、右斜め前辺りから音がする。
「2時の方角から葉擦れの音がします」
小声で二人に告げる。
グイドがそっと近づいた。そしてこちらに振り返り大きく頷く。どうやらビンゴだったようだ。

「アンジェロ、行くよ」
「はい」
そっとグイドの傍まで行き三人で一気に攻撃に出た。
ビッグベアは全く気付いていなかったようで、抵抗する間もなく倒れた。
「よし、まずは一体」
「だね」
「はい」

そしてまた少しずつ中へと進んで行った。
中央に行くまでに四体ほど倒し待機場所に着く。他の団員たちもやはり数体ずつ倒してきたらしく半数近くに減っていた。

「あとは、副団長が攻撃を仕掛けたのを合図に一斉に行くよ」
エミリアーノ副隊長は中央に追い詰められた数十体のビッグベアたちを、木の陰から見張りながら私たちに支持を出した。

すると間もなく
「行くぞ!!」
鋭い掛け声が聞こえたかと思ったら、ルドルフォ副団長が木の陰から飛び出した。
私たちも一斉に飛び出す。
そこからは早かった。元々、魔物討伐に長けた第五部隊と、精鋭揃いの第一部隊。体長3メートル近くあるビッグベアを次から次へと倒していく。

両隊長に至っては一人で対峙している。
けれど、それより凄いのはルドルフォ副団長だった。わざと囲まれるように仕向け、一気に三体を切り倒した。

「相変わらず化け物級の強さだね」
周辺が片付いたところでエミリアーノ副隊長がしみじみと言う。
「本当に。剣の腕だけなら一番強いんじゃないっすか?」
グイドも目をキラキラさせている。

確かに、ルドルフォ副団長のあの強さは凄い。ライ兄様の言っていた通り、お父様よりも強いかもしれない。
私はルドルフォ副団長の闘う姿にドキドキしていた。家族以外で目に見えて強い人を見るのは初めてだった。そのせいなのか彼を見て、私の身体が熱くなるのを感じた。

 ビッグベアの遺体処理も終わって皆で帰路につく。
ルドルフォ副団長は報告するからとひと早く戻って行った。

皆は討伐の後だからかアドレナリン出まくりな状態で、興奮した様子で討伐の時の各々の活躍ぶりを語っていたけれど、私はどうも体調がすぐれない。呼吸がし辛い感じが続いている。

「隊長を呼んでくるからもう少し頑張れるかい?」
エミリアーノ副隊長が、私の顔色が良くない事に気付いてくれる。
「はい、大丈夫です。もう騎士団棟も目と鼻の先なので」

少し進めばすぐに騎士団棟が見えた。ここまで来ればもう大丈夫と思ったのがいけなかったのか急に体の力が抜けた。そのまま意識を手放す。その直前、私の視界は銀色になった。
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