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深い兄妹愛
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「エリーザ」
ノックしたのはお兄様だった。
「エリーザ、話がしたいんだ。時間をくれないか?」
「どうぞ」
了承すると、ゆっくりと扉が開けられた。静かに入ってくるお兄様。扉の所から動かない。
「お兄様?」
声を掛けるとお兄様の顔が今にも泣きだしそうになった。
「……リーザは……記憶があるの?」
本当は隠し通すつもりだったのに。失敗してしまった。
「……はい」
お兄様の頬に涙が流れた。
「ごめん……ごめん……ごめん……」
嗚咽交じりに何度も謝るお兄様。
「私は、リーザを……断罪した挙句、死に、追いやってしまった」
「お兄様……」
「ごめん……ごめんね、リーザ。愛して、いたのに……最愛の妹だったのに」
私より頭一つ以上大きなお兄様が、小さくなり、肩を震わせている姿に胸がギュッと苦しくなる。
「お兄様!」
ベッドから跳び出して走り寄り、お兄様に抱き着いた。
「お兄様、お兄様、泣かないで。いいの、いいのです」
「リーザ、ごめん……ごめん」
手を伸ばし、そっとお兄様の頬を包む。
「お兄様は、あの時ちゃんと私を信じてくれたもの。家に帰ろうって。リーザって呼んでくれた時は本当に嬉しかったの」
「リーザ……」
「私はあの時、お兄様の全てを許せた。あんな事にならなかったら、きっとまた仲良しの兄妹になっていたわ」
頬を包んでいた手で泣き崩れたお兄様の顔を優しく撫で、正面から微笑んで見せる。
「リーザ!」
お兄様は私をきつく抱きしめて、ひたすら泣いた。私も一緒に泣いた。
その日の夜は、子供の時以来久しぶりに、同じベッドで眠った。
「ラフィ殿下には絶対に言えないな」
「ふふ、じゃあ内緒にしておきましょう」
『僕たちも内緒にするからね』
『マドレーヌ3個でいいぞ』
いつの間にか眠りにつくまで、ずっと私たちはおしゃべりして過ごしたのだった。
翌日、まるで恋人の如く、イチャイチャしながらやって来た私たちにラフィ殿下は呆れたような表情で、でも優しく笑って迎えてくれた。
「以前から思っていたんですけど、エリーザ様とお兄様のチェーザレ様は、とても仲がよろしいですよね」
「それ、私も思っておりました。今日もまるで恋人のような仲睦まじい姿を拝見しましたわ」
教室に着くなり友人たちに詰め寄られる。
「てっきりラファエロ殿下と仲がよろしいのだと思っていたのですけれど……まさかの禁断の恋?」
なかなかの妄想だ。
「ふふ、違いますわ。一つしか違わないせいなのか、話が合うんです。小さい頃は体術の訓練も一緒にしておりましたし」
「体術……そういえばエリーザ様のお家は魔の森の守護者でしたわね」
「という事は、やはり兄妹揃ってお強いんですか?」
「私はダメでした。でも、お兄様は本当に強いです。ラファエロ殿下も、3年以上私の父と祖父に兄共々鍛えられておりましたから強いですよ」
「ラファエロ殿下がずっとエリーザ様のお家で訓練なさってたってことですか?」
「はい」
「ああ、ラファエロ殿下とチェーザレ様が並んで汗をかきながら頑張る姿……見たかったですわ」
「私も見たかったですわ。それは素晴らしい光景だったのでしょうね」
なんだか増々妄想が激しくなっているけれど、どうしよう。本当の事を言った方がいいのかしら?限界までしごかれて、悪態付きながら地面に転がってた事とか、おじい様に投げ飛ばされて、池に落ちてしまった事とか。
瞳をキラキラさせ、周囲にハートが飛んでいるこの状況で言うのは良くないかな。そう思い、口をつぐんでニコニコするだけにした。
聖女が学園に入ってから1ケ月経った。流石に聖女の力に未だ目覚めない彼女に不信感を持つものが出始める。それでも、バイアルド殿下のお気に入りという事もあって、大々的に口にするものはいない。二人を除いて。
友人たちとカフェでランチをしていると、彼女が二人の男子生徒を伴ってカフェにやって来た。二人の腕を組み、両手に花とはこのことかという状態に、周りから明らかに嫌悪の目を向けられている。だが、その視線はすぐに更に向こうへと移った。
彼女たちの少し後ろから背の高い二人組が颯爽と現れたからだ。一気に周辺がざわつき出す。それに気付いた聖女は、腕を組んでいた二人からそそくさと離れ、二人組に寄って行った。
「ラファエロ様、チェーザレ様。良ければお食事をご一緒にいかがですか」
後ろで置き去りにされた男子生徒がポカンとしている。
見ていた私たちもポカンとしてしまった。
『ある意味、天晴れだね』
『頭、イカレてるな』
当の二人はというと、蔑んだ目と冷ややかな目で彼女を見下ろしている。
「あなたは後ろにいる、彼らとここに来たと思うのですが?」
お兄様が笑顔で聖女に問いかけた。目が一切笑っておりません。
聖女はくるりと後ろを向いて
「ごめんね、ランチはまた今度に」
何の躊躇もなく二人を追い出した。これで問題なしとでも言いそうな顔で、二人を見上げている聖女。周りはもう注目しまくりだ。
「さ、私たちも食事にしよう」
ラフィ殿下がお兄様に言って、スタスタ歩き出す。
「そうですね」
お兄様もラフィ殿下に続く。
二人は真っ直ぐ、こちらにやって来た。友人たちがわたわたし始める。
「リーザ、おまえも食事か?」
ラフィ殿下が笑顔で横に来た。
「はい、そうです」
「良かったら一緒に食べよう」
お兄様も極上の笑顔だ。
「レディたち、同席することを許していただけますか?」
その極上の笑顔で友人たちを見れば、皆すっかり固まって首だけがコクコクしていた。
ラフィ殿下は私の隣に、お兄様は友人たちの方に、それぞれ座ったところで背後から声が聞こえた。
「あの、私はどこに座ればよろしいんですか?」
ノックしたのはお兄様だった。
「エリーザ、話がしたいんだ。時間をくれないか?」
「どうぞ」
了承すると、ゆっくりと扉が開けられた。静かに入ってくるお兄様。扉の所から動かない。
「お兄様?」
声を掛けるとお兄様の顔が今にも泣きだしそうになった。
「……リーザは……記憶があるの?」
本当は隠し通すつもりだったのに。失敗してしまった。
「……はい」
お兄様の頬に涙が流れた。
「ごめん……ごめん……ごめん……」
嗚咽交じりに何度も謝るお兄様。
「私は、リーザを……断罪した挙句、死に、追いやってしまった」
「お兄様……」
「ごめん……ごめんね、リーザ。愛して、いたのに……最愛の妹だったのに」
私より頭一つ以上大きなお兄様が、小さくなり、肩を震わせている姿に胸がギュッと苦しくなる。
「お兄様!」
ベッドから跳び出して走り寄り、お兄様に抱き着いた。
「お兄様、お兄様、泣かないで。いいの、いいのです」
「リーザ、ごめん……ごめん」
手を伸ばし、そっとお兄様の頬を包む。
「お兄様は、あの時ちゃんと私を信じてくれたもの。家に帰ろうって。リーザって呼んでくれた時は本当に嬉しかったの」
「リーザ……」
「私はあの時、お兄様の全てを許せた。あんな事にならなかったら、きっとまた仲良しの兄妹になっていたわ」
頬を包んでいた手で泣き崩れたお兄様の顔を優しく撫で、正面から微笑んで見せる。
「リーザ!」
お兄様は私をきつく抱きしめて、ひたすら泣いた。私も一緒に泣いた。
その日の夜は、子供の時以来久しぶりに、同じベッドで眠った。
「ラフィ殿下には絶対に言えないな」
「ふふ、じゃあ内緒にしておきましょう」
『僕たちも内緒にするからね』
『マドレーヌ3個でいいぞ』
いつの間にか眠りにつくまで、ずっと私たちはおしゃべりして過ごしたのだった。
翌日、まるで恋人の如く、イチャイチャしながらやって来た私たちにラフィ殿下は呆れたような表情で、でも優しく笑って迎えてくれた。
「以前から思っていたんですけど、エリーザ様とお兄様のチェーザレ様は、とても仲がよろしいですよね」
「それ、私も思っておりました。今日もまるで恋人のような仲睦まじい姿を拝見しましたわ」
教室に着くなり友人たちに詰め寄られる。
「てっきりラファエロ殿下と仲がよろしいのだと思っていたのですけれど……まさかの禁断の恋?」
なかなかの妄想だ。
「ふふ、違いますわ。一つしか違わないせいなのか、話が合うんです。小さい頃は体術の訓練も一緒にしておりましたし」
「体術……そういえばエリーザ様のお家は魔の森の守護者でしたわね」
「という事は、やはり兄妹揃ってお強いんですか?」
「私はダメでした。でも、お兄様は本当に強いです。ラファエロ殿下も、3年以上私の父と祖父に兄共々鍛えられておりましたから強いですよ」
「ラファエロ殿下がずっとエリーザ様のお家で訓練なさってたってことですか?」
「はい」
「ああ、ラファエロ殿下とチェーザレ様が並んで汗をかきながら頑張る姿……見たかったですわ」
「私も見たかったですわ。それは素晴らしい光景だったのでしょうね」
なんだか増々妄想が激しくなっているけれど、どうしよう。本当の事を言った方がいいのかしら?限界までしごかれて、悪態付きながら地面に転がってた事とか、おじい様に投げ飛ばされて、池に落ちてしまった事とか。
瞳をキラキラさせ、周囲にハートが飛んでいるこの状況で言うのは良くないかな。そう思い、口をつぐんでニコニコするだけにした。
聖女が学園に入ってから1ケ月経った。流石に聖女の力に未だ目覚めない彼女に不信感を持つものが出始める。それでも、バイアルド殿下のお気に入りという事もあって、大々的に口にするものはいない。二人を除いて。
友人たちとカフェでランチをしていると、彼女が二人の男子生徒を伴ってカフェにやって来た。二人の腕を組み、両手に花とはこのことかという状態に、周りから明らかに嫌悪の目を向けられている。だが、その視線はすぐに更に向こうへと移った。
彼女たちの少し後ろから背の高い二人組が颯爽と現れたからだ。一気に周辺がざわつき出す。それに気付いた聖女は、腕を組んでいた二人からそそくさと離れ、二人組に寄って行った。
「ラファエロ様、チェーザレ様。良ければお食事をご一緒にいかがですか」
後ろで置き去りにされた男子生徒がポカンとしている。
見ていた私たちもポカンとしてしまった。
『ある意味、天晴れだね』
『頭、イカレてるな』
当の二人はというと、蔑んだ目と冷ややかな目で彼女を見下ろしている。
「あなたは後ろにいる、彼らとここに来たと思うのですが?」
お兄様が笑顔で聖女に問いかけた。目が一切笑っておりません。
聖女はくるりと後ろを向いて
「ごめんね、ランチはまた今度に」
何の躊躇もなく二人を追い出した。これで問題なしとでも言いそうな顔で、二人を見上げている聖女。周りはもう注目しまくりだ。
「さ、私たちも食事にしよう」
ラフィ殿下がお兄様に言って、スタスタ歩き出す。
「そうですね」
お兄様もラフィ殿下に続く。
二人は真っ直ぐ、こちらにやって来た。友人たちがわたわたし始める。
「リーザ、おまえも食事か?」
ラフィ殿下が笑顔で横に来た。
「はい、そうです」
「良かったら一緒に食べよう」
お兄様も極上の笑顔だ。
「レディたち、同席することを許していただけますか?」
その極上の笑顔で友人たちを見れば、皆すっかり固まって首だけがコクコクしていた。
ラフィ殿下は私の隣に、お兄様は友人たちの方に、それぞれ座ったところで背後から声が聞こえた。
「あの、私はどこに座ればよろしいんですか?」
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