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王子の想い
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ラフィ殿下の告白のような言葉に、私を見つめる深紅の瞳に、私の体温がぶわっと上がった。
「リーザは知らなかっただろう。俺が初めてリーザに会った時、どれだけ心臓が音を鳴らしていたか。実際に会った瞬間、当然のようにリーザを好きになったことを。前世も含めて初めての経験だったぞ。一目惚れなんてな」
熱がどんどん上昇する。
「あの時から、バイアルドになど渡さない、俺が幸せにしてみせると誓った。前の事は不幸だったかもしれないが、俺にとっては幸運のための礎だったんだ」
口をパクパクしても酸素が入って来ない。それどころか息の仕方がわからない。ラフィ殿下の想いが大きな炎のように私を包んでしまったように感じる。
「だからリーザ、覚悟しておいてくれ。前世から含めて俺の数十年の想いをこれからリーザは体感するんだ。どんなに苦しくなっても離してやれない」
ごめんなと笑いながら私の髪を優しく梳く殿下。その表情があまりにも切なくて私の心臓がキュウッと苦しくなった。
「ラフィ殿下、そんなのはドンとこい!です」
髪を梳いていた殿下の手を取り、私の頬に当てる。
「私の想いだって相当のものですよ。だって、初めてお会いした時、私の心臓は弓に射られてしまったのですから」
「弓?」
「そうです。殿下が思いがけず豪快に笑った姿を目にした時に、心臓に弓が射られたのを感じました」
至極真面目に言う私を見つめる殿下。その赤い瞳で見つめられるのは心臓が苦しくなるのでやめて欲しい。
「はははは、本当にリーザは可愛いな」
手を引かれ、フワッと浮いたかと思ったら殿下の膝の上にいた。
「キャー!殿下、これはダメです」
「なにがだ?」
「こんな、こんな格好ダメ……恥ずかしい」
殿下との距離が近すぎて、どこを見ていいのかわからず両手で顔を覆う。
『エリーザ?何が起きた!?』
『なに?どうしたの?』
私の悲鳴に反応してしまったのだろう。お腹を見せて寝ていた二匹が飛び起きた。
「ああ、違うの。何もないの。何もなくはないけどなんでもないの」
顔を覆って、意味のわからない事を言う私を見た二匹は溜息を吐いた。
『もう、何かヤバい事がまた起こったかと思っちゃったよ』
『ただのイチャイチャだったとは』
『よおし、僕も』
ルーチェが私の膝に飛び乗った。
『じゃ、俺はこっち』
オスクリタは殿下の肩に。
「お、なんだおまえ等、焼き餅か?」
殿下が笑いながら、私たちの重さを受け止める。まあ、二匹はちっとも重くないけど。
『あっつーい。でもなんだか幸せ』
『暑いけど、こいつの肩は安定していていいな』
暑いと文句を言いつつも、寛ぐ二匹と相変わらず顔が出せない私。
「冷たい飲み物をお持ちしました」
ジュリアがそんな私たちを見て、肩を震わせていたと、我慢するのが大変でしたと。その日の夜に教えてくれた彼女に、再び顔を真っ赤にさせられるのはすぐ後の事。
「これは!」
「流石と言うべきか」
「素敵ね」
「シクシク」
学園舞踏会当日。
ラフィ殿下から贈られたドレスに着替えた私を見た家族の反応。
「悔しいけれど似合っている。女神のようだよ、リーザ」
「うむ、本当は私が贈りたかったのだが仕方ない。本当に綺麗だよ、エリーザ」
「ふふ、ラファエロ殿下がどれだけうちの子を愛してるかがわかるようなドレスね」
「グスッ、なんだか嫁に行ってしまうようだ……やっぱりまだ、小僧にはやりたくない。エリーザはまだわしの孫だ!」
それぞれの反応に笑ってしまう。
「会場まではラフィ殿下とは別行動だからね。私がエスコートするよ」
「お兄様のエスコート、嬉しい」
ブルーがかったシルバーの細身のフロックコートがよく似合っている。タイとチーフは深い紫だ。普段は後ろで結っている髪を、今日は横で緩く編まれていた。そのリボンの色も紫だった。
「お兄様、これって?」
「ふふ、勿論リーザの色だよ。今日の私はリーザのナイトだからね」
ウィンクするお兄様。それ、他のご令嬢方にやったら失神ものではないかしら?
「お嬢様、神獣様方も用意が出来ましたよ」
ジュリアが赤いバスケットを持って来た。中には紫のタイを付けたルーチェと金のタイを付けたオスクリタが入っていた。
「これは!?」
家族の声が揃った時には、しっかり映写機が執事の手にあった。
「流石ね」
お母様が映写機を手にすると、魔力の限りを尽くして撮りまくっていた。ある程度満足のいくものが撮れた頃を見計らって執事とジュリアが馬車へと促す。
「さ、そろそろ行った方がよろしいですよ」
「そうだね、じゃあ行こうか、リーザ」
二匹を入れたバスケットを右手に持ち、左腕を曲げるお兄様。
「はい」
その左腕にそっと手を絡ませて馬車へと乗り込む。
「行ってらっしゃい。楽しんできてね」
お母様が手を振る。
「行っておいで。送りオオカミには気を付けるんだぞ」
おじい様はまた涙目になっている。
「行っておいで、エリーザ。私も後から行くから」
私の頬に手を添えてお父様が微笑む。
「チェーザレ、しっかりエリーザを守れ。そしておまえも……」
「わかってる。大丈夫だよ、父上」
途中、言葉を失ったお父様に笑顔を向けるお兄様。
「じゃ、行って来る」
「行ってきます」
私たちは最高の笑顔で、見送る家族に手を振った。
「リーザは知らなかっただろう。俺が初めてリーザに会った時、どれだけ心臓が音を鳴らしていたか。実際に会った瞬間、当然のようにリーザを好きになったことを。前世も含めて初めての経験だったぞ。一目惚れなんてな」
熱がどんどん上昇する。
「あの時から、バイアルドになど渡さない、俺が幸せにしてみせると誓った。前の事は不幸だったかもしれないが、俺にとっては幸運のための礎だったんだ」
口をパクパクしても酸素が入って来ない。それどころか息の仕方がわからない。ラフィ殿下の想いが大きな炎のように私を包んでしまったように感じる。
「だからリーザ、覚悟しておいてくれ。前世から含めて俺の数十年の想いをこれからリーザは体感するんだ。どんなに苦しくなっても離してやれない」
ごめんなと笑いながら私の髪を優しく梳く殿下。その表情があまりにも切なくて私の心臓がキュウッと苦しくなった。
「ラフィ殿下、そんなのはドンとこい!です」
髪を梳いていた殿下の手を取り、私の頬に当てる。
「私の想いだって相当のものですよ。だって、初めてお会いした時、私の心臓は弓に射られてしまったのですから」
「弓?」
「そうです。殿下が思いがけず豪快に笑った姿を目にした時に、心臓に弓が射られたのを感じました」
至極真面目に言う私を見つめる殿下。その赤い瞳で見つめられるのは心臓が苦しくなるのでやめて欲しい。
「はははは、本当にリーザは可愛いな」
手を引かれ、フワッと浮いたかと思ったら殿下の膝の上にいた。
「キャー!殿下、これはダメです」
「なにがだ?」
「こんな、こんな格好ダメ……恥ずかしい」
殿下との距離が近すぎて、どこを見ていいのかわからず両手で顔を覆う。
『エリーザ?何が起きた!?』
『なに?どうしたの?』
私の悲鳴に反応してしまったのだろう。お腹を見せて寝ていた二匹が飛び起きた。
「ああ、違うの。何もないの。何もなくはないけどなんでもないの」
顔を覆って、意味のわからない事を言う私を見た二匹は溜息を吐いた。
『もう、何かヤバい事がまた起こったかと思っちゃったよ』
『ただのイチャイチャだったとは』
『よおし、僕も』
ルーチェが私の膝に飛び乗った。
『じゃ、俺はこっち』
オスクリタは殿下の肩に。
「お、なんだおまえ等、焼き餅か?」
殿下が笑いながら、私たちの重さを受け止める。まあ、二匹はちっとも重くないけど。
『あっつーい。でもなんだか幸せ』
『暑いけど、こいつの肩は安定していていいな』
暑いと文句を言いつつも、寛ぐ二匹と相変わらず顔が出せない私。
「冷たい飲み物をお持ちしました」
ジュリアがそんな私たちを見て、肩を震わせていたと、我慢するのが大変でしたと。その日の夜に教えてくれた彼女に、再び顔を真っ赤にさせられるのはすぐ後の事。
「これは!」
「流石と言うべきか」
「素敵ね」
「シクシク」
学園舞踏会当日。
ラフィ殿下から贈られたドレスに着替えた私を見た家族の反応。
「悔しいけれど似合っている。女神のようだよ、リーザ」
「うむ、本当は私が贈りたかったのだが仕方ない。本当に綺麗だよ、エリーザ」
「ふふ、ラファエロ殿下がどれだけうちの子を愛してるかがわかるようなドレスね」
「グスッ、なんだか嫁に行ってしまうようだ……やっぱりまだ、小僧にはやりたくない。エリーザはまだわしの孫だ!」
それぞれの反応に笑ってしまう。
「会場まではラフィ殿下とは別行動だからね。私がエスコートするよ」
「お兄様のエスコート、嬉しい」
ブルーがかったシルバーの細身のフロックコートがよく似合っている。タイとチーフは深い紫だ。普段は後ろで結っている髪を、今日は横で緩く編まれていた。そのリボンの色も紫だった。
「お兄様、これって?」
「ふふ、勿論リーザの色だよ。今日の私はリーザのナイトだからね」
ウィンクするお兄様。それ、他のご令嬢方にやったら失神ものではないかしら?
「お嬢様、神獣様方も用意が出来ましたよ」
ジュリアが赤いバスケットを持って来た。中には紫のタイを付けたルーチェと金のタイを付けたオスクリタが入っていた。
「これは!?」
家族の声が揃った時には、しっかり映写機が執事の手にあった。
「流石ね」
お母様が映写機を手にすると、魔力の限りを尽くして撮りまくっていた。ある程度満足のいくものが撮れた頃を見計らって執事とジュリアが馬車へと促す。
「さ、そろそろ行った方がよろしいですよ」
「そうだね、じゃあ行こうか、リーザ」
二匹を入れたバスケットを右手に持ち、左腕を曲げるお兄様。
「はい」
その左腕にそっと手を絡ませて馬車へと乗り込む。
「行ってらっしゃい。楽しんできてね」
お母様が手を振る。
「行っておいで。送りオオカミには気を付けるんだぞ」
おじい様はまた涙目になっている。
「行っておいで、エリーザ。私も後から行くから」
私の頬に手を添えてお父様が微笑む。
「チェーザレ、しっかりエリーザを守れ。そしておまえも……」
「わかってる。大丈夫だよ、父上」
途中、言葉を失ったお父様に笑顔を向けるお兄様。
「じゃ、行って来る」
「行ってきます」
私たちは最高の笑顔で、見送る家族に手を振った。
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