悪役令嬢、冤罪で一度命を落とすも今度はモフモフと一緒に幸せをつかむ

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学園舞踏会

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 私たちが会場に入った途端、一瞬、会場が静けさに包まれた。その静けさの後に来たのは拍手や黄色い声や悲鳴だった。
「凄い歓迎ぶりだな」
笑顔を浮かべたまま、私に話すラフィ殿下。
「本当に、まあ半分以上は前を歩く子達にではないかと」

会場の中ほどまで進む。もう既に皆集まっており、この学園で最高権力者であるラフィ殿下の到着を待つばかりだったようだ。

 ラフィ殿下の到着を合図に、学園長が簡単に挨拶をして会場を出た。それと同時に音楽が奏でられて舞踏会の始まりとなった。

「どうする?まずは一曲踊るか?」
ラフィ殿下がわざとらしく、私との距離を詰める。視線は真っ直ぐ前を見ながら。その視線の先には、私たちを見て驚愕の顔をしている偽聖女がいた。ピンクの髪はどこも結うことなくそのままに、全体にフリルがたくさんついた髪よりも少し濃いピンクのドレスを着ている。

数人の貴族令息に囲まれた偽聖女は、驚愕の顔のまましばらく固まっていたが、鬼のような形相に変わったかと思ったら、真っ直ぐこちらへとやって来た。

「ラファエロ様、どうしてエリーザ様なんかをエスコートしてるのですか?エスコートなら私がしてもらいたかったです」
上目づかいで頬をぷくっと膨れさせて怒っているポーズを取る偽聖女。

「おまえを?私が?何故?」
低い冷たい声で短く答えるラフィ殿下。開口一番、殿下を怒らせる偽聖女って凄い。
「だって、エリーザ様なんかより、絶対私の方がお似合いですもん。ほら、黒とピンクって凄く合うでしょ」

殿下が怒っているのを感じていないのか、よくわからない理論で自分をアピールする偽聖女。怒っていることは感知できないけれど、反応がイマイチなのは感じられたようで、今度は私に話しかけてきた。

「エリーザ様、しばらくお姿を見かけなかったのに、生きていたんですね」
そう。私は襲撃された翌日から、学園にはわざと行かなかった。偽聖女に作戦は成功したのだと思わせるために。

「生きていたって……まるで私が死んだと思っていたようですわね」
笑顔で切り返せば、口元を引くつかせる偽聖女。
「だって、暴漢だかなんだかに襲われたって聞きましたよ。生きて帰って来れたなんてラッキーでしたね。あ、でも、果たして身体は綺麗なままなのかしら?」
可愛らしい顔が下卑た笑みを浮かべる。ハッキリ言って美しさの欠片もない。

「ふふ、心配してくれたのですね。ありがとうございます。確かに馬車で連れ去られましたわ。でも、私にはこの子達がついておりましたので、傷一つなく帰る事が出来ましたの。暴漢も全員捕まえてね」
笑顔で二匹を見れば、嬉しそうにすり寄ってくれる。

「は?いくら使役獣だからって、そんな猫二匹で10人以上いる男達を捕まえられるわけないじゃない」
ふんと鼻を鳴らし、二匹を見下す。二匹は完全にキレていて、今にも飛びかかりそうな体制をする。

「あら?聖女ともあろう方が、この子達がただの猫だと?聖女であれば、この子達の真の姿がお分かりになるはずですのに」
その言葉であちらも完全にキレたようで、腕を組んで仁王立ちになった。周りはすっかり野次馬たちに囲まれている。

「何を言ってるの?どう見たって猫じゃない。それとも何?犬にでも変身するのかしら?」
高らかに笑う偽聖女。自分で自分をどんどん追い込んでいることもわかっていない。

「聖女ビビアナ様、本当におわかりにならないんですの?」
「わかるもわからないもないわ。ただの猫よ!」

「はああ、残念ですわ。この子達は神に仕える神獣であるのに。それがわからないなんて……」
「神獣?それが?ははは、ちょっと笑わせないでよ。そんな猫風情が神獣のわけないじゃない。どうやら暴漢に襲われたショックで、精神的に病んでしまったようね。猫を神獣だと思い込むなんて。ラファエロ様、そんな子からは離れた方がいいですよ」
私からラフィ殿下を離そうと、殿下の腕を掴もうとしたその時、二匹が輝き出した。

一瞬の目が眩むほどの強い光。そして二匹がいた場所には、美しい二頭の豹。金色の豹と黒色の豹が、偽聖女から私を守るように唸っていた。
『よくも僕のエリーザをバカにしてくれたな』
『おまけに俺らのこともな。この偽物が』

念話を飛ばす。ある程度の魔力を持った者ならば聞こえるはずだ。実際、周りにいる野次馬の半数以上が、聞こえる声がどこからなのかとキョロキョロしている。残念ながら偽聖女には聞こえていないようだけれど。

「やはり、貴様は偽物か。よくもまあ、ここにいる全ての者達を欺いたもんだな」
ラフィ殿下の言葉は聖女には聞こえていないようで、ルーチェとオスクリタを見て尻餅をついていた。どうやら腰が抜けたようだ。
「嘘……豹になった。な、なんなの?化け物じゃない」
『僕らの声すら聞こえない。どんだけ魔力少ないの』
『雑魚だな』
偽物から雑魚へ降格。

ルーチェがわざとらしく、一歩、偽聖女に近づいた。
「イヤーッ近寄らないで、化け物!助けて、ラファエロ様」
腰が抜けているせいで、歩くことが出来ずハイハイでラフィ殿下の方へ行こうとする。
「それ以上近寄るな。偽聖女」
「な!?偽聖女だなんて、酷いですラファエロ様」
「神獣たちがそう言っているぞ。魔力も碌にない偽物だとな。それに、神獣に向かって化け物と言っていること自体、偽聖女である証だ」
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