悪役令嬢、冤罪で一度命を落とすも今度はモフモフと一緒に幸せをつかむ

Blue

文字の大きさ
36 / 40

もう一人の王子の成長

しおりを挟む
 二頭は更に続ける。
『そうだよ。だって、神はその女に神託など下していないもん』
『そうだ。再三言うが、その女は偽物だ』
二頭の声が聞こえた人々が騒然とする。ほとんどがやっぱりという感じだったが。

「聞こえていないようだから教えてやる。神は貴様に神託など下していないそうだ。まあ、そうだろうな。人を殺そうと画策するような人間が聖女になどなれるわけがない」
ラフィ殿下が会場中に聞こえるように言った。

「なっ、何を言っているんですか?私がそんなことするはずがないでしょう」
顔を引きつらせながらも、否定する偽聖女。

「ほお、捕らえた暴漢たちからはビビアナ・ソリダーノが依頼主だと聞いたが?」
「そんな!私がエリーザ様を殺そうとなんてするわけがないじゃないですか。きっと誰かが私に罪を被せようとしているんだわ」
ウルウルとした目でラフィ殿下を見上げる。事実を知らなければ信じてしまいそうだ。

「何のために?」
「私を聖女から引きずり降ろすためですよ、きっと。妬んだ誰かがやったに違いないわ。もしくは……そうよ、きっとエリーザ様の自作自演なのよ。私がバイアルド殿下と親密なのを妬んでやった、きっとそうだわ」
一人で盛り上がっている。

「私は別にあなたと親しくなってはいないが」
野次馬の中から声が聞こえた。周辺の人がさっと横に避ける。中から現れたのはバイアルド殿下とジュスト様だった。二人はそのままラフィ殿下の横に来た。

「それに、例えあなたと親しくなっていたとしても、兄上の婚約者候補であるエリーザ嬢が、それをどうこう言う事はない。あなたは何か勘違いをしている」
冷静に偽聖女をしっかり見つめ、諭すように言葉を紡ぐバイアルド殿下。前とは違ってしっかりしている。なんとなく成長を感じることが出来て少し嬉しくなった。

「え?婚約者候補?ラファエロ様の?エリーザ様が?」
「そうです。もう1年以上前から。因みに他の婚約者候補はいらっしゃいません。あくまでも婚約者になる予定の婚約者候補です」
ジュスト様が補足説明をしてくれた。偽聖女はまだ事態を飲み込めていないようだ。

そんな彼女に再び話をするバイアルド殿下。
「私は初めてあなたを目にした時、可愛らしい人だと思った。だが、知り合って間もなく、あなたは私に色仕掛けをしてきた。婚約者がいない者同士だとしても、すぐに身体を差し出すような人を私は信用する事が出来なかった。そして、私の予感は的中した。あなたは他の男性にも簡単に同じことをしていた」

「え?そんなこと。私がするわけないでしょ。あなたを本当に好きだったからー」
「これ以上嘘はいらない」
静かに怒りを込めた一言。さすがの偽聖女も次の言葉は出てこなかったようだ。

「調べはついている。まあ、調べなくても皆が知っている。ただ、今回の事で私は自分が愚か者なのだと気付くことが出来た。しっかりと自分と向き合い、勉強も武術もきちんと学び直している。将来、兄上の役に立てるように、兄上とこの国を更にいい国に出来るように。そう思えるようになったのはあなたのお陰と言っても過言ではない」

凛とした姿勢で話したバイアルド殿下にご令嬢方から溜息が漏れた。金髪に青い目の王子は見た目だけじゃなく、中身もちゃんと王子になっていた。
「やるじゃないか」
ラフィ殿下がバイアルド殿下の頭をワシャワシャと撫でまわした。

「ちょ、ちょっと兄上」
照れながら嫌がるバイアルド殿下。兄弟の仲の良さに、少しの間会場が穏やかな空気になる。

「ちょっと、なんなの?バイアルド様はそんなキャラじゃなかったでしょ。しかもなんであんたなんかがラファエロ様の婚約者候補になってんのよ。悪役令嬢が出しゃばんないで」
私に掴みかかろうとした偽聖女の手を払いのけるラフィ殿下。

「貴様の汚い手で私の大切な宝に触らないでくれないか」
「汚いって……私が汚いわけないでしょう、ラファエロ様」
今度はラフィ殿下の腕にすがろうとするが、またもや払いのけられる。
「おっと、私にも触らないでくれ。簡単に人を殺そうとする女なんぞに触れられたくないんでな」

「ラファエロ様、だから私はそんな事してないって言っー」
「うるさい、黙れ」
ラフィ殿下の低い声が響いた。

「じゃあ聞くが、先程のエリーザとの会話で、暴漢に襲われたと聞いたと言っていたな」
「ええ」
「リーザは学園を休んだだけだ。暴漢に襲われた事だって何にも、誰にも言っていない。知っているのは王家の者とオリヴィエーロ家、あとは犯人だけだ。それをなぜ貴様は知っている?おまけについ先ほども、人を殺そうと画策するような人間がとしか言っていないのに、貴様はエリーザを殺そうなんてと言っていたが?」

「え?えっとお……噂!噂で聞きました。エリーザ様が学園を休んでいるのは暴漢に襲われたからだって」
「ほお、誰かそんな噂を耳にしたことはあったか?」
ラフィ殿下が会場にいる皆に問いかける。誰もが首を振ったり隣同士で確認し合ったりしているが、誰も聞いたと言う者はいなかった。

「誰も聞いていないようだが?」
「そ、そ、そんなあ、おかしいなあ」
必死に誤魔化そうとしているのだろうが、もう全く誤魔化せていない。

すると、偽聖女のもっと後ろの方で笑う声が聞こえた。
「ふふ、ふふふふ。君って根性も悪いけれど、往生際も悪いんだね」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

働きませんわ。それでも王妃になります

鷹 綾
恋愛
「私は働きませんわ」 そう宣言して、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エルフィーナ。 社交もしない。慈善もしない。政務にも口を出さない。 “怠け者令嬢”と陰で囁かれる彼女を、王太子アレクシスは「王妃に相応しくない」と切り捨てた。 ――だが彼は知らなかった。 彼女が動かないからこそ、王家は自力で立つことを覚えたのだということを。 エルフィーナは何もしない。 ただ保証を更新せず、支援を継続せず、静かに席を外すだけ。 その結果―― 王家は自らの足で立つことを強いられ、王太子は“誰の力にも頼らない王”へと変わっていく。 やがて外圧が王国を揺らしたとき、彼は気づく。 支配でも依存でもなく、並んで立てる存在が誰だったのかを。 「君と並びたい」 差し出されたのは、甘い救済ではない。 対等という選択。 それでも彼女の答えは変わらない。 「私は働きませんわ」 働かない。 支配しない。 けれど、逃げもしない。 これは―― 働かないまま王妃になる、公爵令嬢の静かなざまあ恋愛譚。 優雅で、合理的で、そしてどこまでも強い。 “何もしない”という最強の選択が、王国を変えていく。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの

鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」 そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。 ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。 誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。 周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」 ――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。 そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、 家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。 だが、彼女の予言は本物だった―― 数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。 国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、 あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。 「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」 皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、 滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。 信じてもらえなかった過去。 それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。 そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。 ――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢だったわたくしが王太子になりました

波湖 真
恋愛
クローディアは十年ぶりに祖国の土を踏んだ。婚約者だったローレンス王子が王位を継承したことにより元々従兄弟同士の関係だったクローディアが王太子となったからだ。 十年前に日本という国から来たサオリと結婚する為にクローディアとの婚約を破棄したローレンスには子供がいなかった。 異世界トリップの婚約破棄ものの十年後の悪役令嬢クローディアの復讐と愛はどうなるのか!! まだストックが無いので不定期に更新します よろしくお願いします

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

処理中です...