笑い方を忘れた令嬢

Blue

文字の大きさ
6 / 71

見限り

しおりを挟む
 ドメニカがクスクスと笑った。
「ナターラが初恋だったのよね。惚れ込んでいたのよね。でも見事に振られて、挙句ダヴィデに奪われたって。まあ、ナターラからすれば、あなたはおじさんっていう位歳が離れていたものね。あの時の打ちひしがれた姿を見て、ほだされて結婚しちゃったのよねぇ。結婚なんてするんじゃなかったわ。ああ、でも。ドマニという素晴らしい息子を持てた事だけは感謝しなくてはね」

「私もだよ。ドメニカという偉大な母を持てた事は幸せだよ。だから父上、もう爵位を私に譲ってね。私が立派な侯爵になるよ」
息子の言葉に侯爵が首を傾げる。

「では私は?私はこれから何をすればいいんだい?」
「いやねえ、わからないの?」
ドメニカが楽しそうに笑った。
「あなたは罪を償うのよ。大丈夫、一生にはならないはずだから。炭鉱でたくさん掘ってらっしゃい。帰って来る事が出来れば、だけれど」

「え?どうして?私は何も悪い事はしていないよ」
「いやだ、あなたったら自分のした事覚えていないの?」
「犯罪なんて犯していない!」
「そう?じゃあ聞くけど。この国って王族だろうが何だろうが、一夫一婦制なのはご存じ?」
「そんなの当たり前じゃないか」

「ふふふ、そんな胸を張って言わなくていいわ。知っているのに愛人を作って子供まで産ませて?その愛人を王弟であるダヴィデの後妻におさまらせて?乗っ取りをしようとしたのよね。実際、あなたノヴェリアーナの屋敷に行っては、家の事に口出ししてお金を使いまわしていたのでしょう?」

「そ、それは……」
「言い忘れていたけれど。あとね、未成年に対する暴行未遂っていうのも加わるから」
これには侯爵は驚いた。

「どうして?私はまだ手は出していないよ。成人になるまで待とうって……」
「あら?言っちゃった」
「だから手は出していないんだ」
「そうかな?ノヴェリアーナの使用人たち数人の証言で、アリアンナを抱きしめている時に、お尻や腰を撫でまわしていたって証言が取れているらしいよ」

「そ、そんな!?」
「ああ、残念ね。とりあえず、もうすぐ騎士団のお迎えが来るから。大人しく刑に服しなさいな。こちらで爵位譲渡の手続きや、離縁の手続きはしておくわね」
「わ、私のサインがないとどちらも承認されないぞ」
悪あがきをする侯爵に、ドメニカがにっこり笑った。

「大丈夫よ。私を誰だと思っているの?元王女よ」
パチンとウィンクをする。そのタイミングで騎士団の迎えが来た。侯爵はそのまま連れて行かれてしまった。

「ああ、せいせいした」
「次に見つけるなら、もっとマシな男にしなよ」
「はいはい」
侯爵がいなくなった事を楽しむように、ドメニカとドマニは笑った。



 地下牢から連れ出されたシドニアとヴェリアは、一瞬外に出たと思ったら再び地下に続く階段を下った。簡素な作りながらも大きくて威圧感のある部屋に連れて来られる。
「よし、揃ったところで裁判を始めよう」
二人が入ると、先に座っていた国王の声が響いた。

裁判と言ってはいるが、確実に普通の裁判ではない。国王と王太子、宰相に数人の厳しい表情をした貴族らしき人たち。あとは、騎士たちが10人程立っているだけだった。

「まずは罪状を申し上げます。お二人には暴行罪、傷害罪、詐欺罪、横領罪。この四つの罪で裁かれる事となります」
宰相が巻紙を読み上げる。

「詐欺罪?横領罪?」
「順番に行きましょう。まずはその二つからですね」
王太子が立ち上がる。

「詐欺罪は心当たりありますよね?」
「知りませんわ」
シドニアが素知らぬ顔をする。

「どんなに誤魔化した所で、調べはきちんとついています。君は、ボノミーア侯爵と結託してノヴェリアーナ公爵家を乗っ取ろうとしていましたね」
「どうして乗っ取るなんて?私はボノミーア侯爵の紹介でノヴェリアーナ公爵と再婚をしたんです」
シドニアは、勝ち誇ったように言った。対する王太子も余裕の表情を浮かべた。

「あなたはボノミーア侯爵の愛人ですよね?そしてそこのヴェリア嬢はボノミーア侯爵の娘」
「なっ!?」
「調べはついていると言ったでしょう」

しかしシドニアも言われているだけではなかった。
「過去は愛人だったとしても、ノヴェリアーナ公爵と再婚したことは事実。それに横領罪の意味がわからないわ」

「その辺りの説明は私がしよう」
国王が立ち上がった。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)

モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。 そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!? 「わん!」(なんでよ!) (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

世界一美しい妹にせがまれるので婚約破棄される前に諦めます~辺境暮らしも悪くない~

tartan321
恋愛
美しさにかけては恐らく世界一……私の妹は自慢の妹なのです。そして、誰もがそれを認め、私は正直言って邪魔者なのです。でも、私は長女なので、王子様と婚約することになる運命……なのですが、やはり、ここは辞退すべきなのでしょうね。 そもそも、私にとって、王子様との婚約はそれほど意味がありません。私はもう少し静かに、そして、慎ましく生活できればいいのです。 完結いたしました。今後は後日談を書きます。 ですから、一度は婚約が決まっているのですけど……ごたごたが生じて婚約破棄になる前に、私の方から、婚約を取り下げます!!!!!!

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

処理中です...