笑い方を忘れた令嬢

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救出

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 国王は居間に集まった使用人たちをぐるりと見やる。
「ニヤニヤと笑っていたお前たちも同罪だ。この屋敷は取り潰しになる。今からその後の身の振り方でも考えておくんだな。笑っていたおまえたちには推薦状などという物はないからそのつもりでいろ」

それだけ言うと、国王はアリアンナを抱き馬車へと戻った。

「そこの二人はそのまま地下牢へ連れて行きなさい」
王太子の指示に二人の騎士が、シドニアとヴェリアを連れて行く。
「残った騎士たちは使用人、一人一人に事情聴取。少しでもおかしな様子を見せた者は縛り上げて構いません。あなたたちは屋敷内を隈なくチェック。アリアンナの部屋を探しなさい」

すると、一人の侍女が王太子の前に飛び出した。
「お嬢様の部屋は……屋根裏です。私がずっとお世話をしておりました……」
カタカタと震えながらも、しっかりと王太子の目を見て言う。
「そう……じゃあ、案内してくれますね」

「何もない……」
言葉を失った王太子に、侍女が言う。
「お嬢様は……終わる事のない恐怖から逃れようと……天窓へ登ろうとなさったのです」
「!」
「それを知った奥様が、死なれては困ると一切の物を出してしまわれました」

部屋にはマットレスと毛布だけが置かれていた。マットレスの横に何かがあるのを見つける。
「これは……」
小さな額に飾られた、アリアンナの両親。ダヴィデとナターラの姿絵だった。

「アンナ……」
悲しそうに、悔しそうに呟いた王太子は、姿絵を持って屋根裏部屋を後にした。

 主だった宝飾や絵画などを金庫へと収め、使用人たちの話を一通り聞いた後、王太子も城へと戻ったのだった。


 王太子が城へ戻ると、国王と王妃がアリアンナの眠っているベッドにイスを並べて座っていた。国王はしっかりとアリアンナの手を握っている。

「叔父上が亡くなってからすぐに、屋敷の使用人たちを入れ替えたそうです。アンナは誰も味方のいない……一人ぼっちでずっと……死のうとまでしたと……」
悔しくて涙が浮かぶ。王妃はすでに泣いていた。国王も目元が潤んでいた。

「私が倒れたばかりに……せめておまえにだけでも話しておけば良かった……」
国王が悔恨の表情を見せる。そんな国王の肩をそっと抱いたのは王妃だった。
「あなたが悪い訳ではないわ。悪い偶然が重なってしまっただけ。自分ばかりを責めないで。私だって、ダヴィデが亡くなった時に、もっとアリアンナの事を気にしてあげれば良かったのよ」

「それを言うなら私も同罪です。公務に一杯一杯で、アンナを蔑ろにしてしまった」
王太子までもが悔しそうに言う姿を見て、国王は溜息を吐いた。
「そうだな。皆が悪かったのだ。ここから。ここからはもう後悔しないようにしよう」
国王の言葉に、王妃も王太子も頷いた。



 アリアンナの伯父であるボノミーア侯爵は、奥方であるドメニカと息子であるドマニによって、拘束されていた。
「お兄様から話を聞いて、どれだけ私が驚いたかわかるかしら?」
銀の髪に薄めの緑の瞳を輝かせたドメニカは、国王のすぐ下の妹でありアリアンナの父、ダヴィデの姉だ。

「没落寸前の男爵家の女を愛人にしていた事は知っていたわ。でもまあ、それで大人しくなるならどうでも良かった。娘を生ませていた事は少しだけ驚いたかしらね。けれどそうねえ。一番驚いたのは自分の愛人と娘を、私の弟の後妻にした事かしら?流石にびっくりしちゃって、開いた口が塞がらなかったわ。あなたと過ごすのが嫌で、領地に引っ込んでいたのが仇になったわね」

そう言ってニッコリ笑っている。美し過ぎて恐ろしい。ドメニカによく似ている息子のドマニもいい顔で笑った。
「おまけにダヴィデ叔父上の奥方だったナターラ様に生き写しだったからって、自分の姪であるアリアンナを狙うなんてね。父上、わかってる?アリアンナは私より年下だよ。自分の子ども以上に歳の離れた姪を、成人になるのを待って囲おうとしていたなんて驚きだよ」
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