笑い方を忘れた令嬢

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茶会

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 厳選に厳選を重ねて選んだお茶会。それでも結構な数のお茶会へ参加する事になっている。ほとんどはアリアンナの境遇を知った上で、何事も触れることなく普通に接してくれる者たちばかりだった。それでも、そうはならない貴族も一定数はいる。

「今日行くビガーニ伯爵はね、一時期、自分の娘をジョエルに嫁がせようと必死だったの。娘の方もジョエルに猛アピールをしていたけれど……残念ながらジョエルのお眼鏡にはかなわなかったようでね。それでもまだ諦めてはいないようなのよ。本当ならお断りしたかったのだけれどね。伯爵位の中でも上位に位置づけされているから……」
そう言って眉を下げた王妃だったが、ニコリと笑みを浮かべた。

「だからね、今日は護衛を連れて行きなさい。近衛は勿論だけれど、一人強力な護衛を呼んだから」

国王の執務室へ行くと、国王がニコニコとアリアンナを待っていた。
「今日もアンナは綺麗だな」
今日のアリアンナは、ライラック色のドレスを身に纏っている。
「これは私からだ」
国王はアリアンナの背後に周り、ハーフアップに結っている部分にドレスの色より少し濃い色の宝石で形作られている花の飾りを挿した。

「もしかしたらビガーニ伯爵は、アンナを取り込もうとするかもしれない。仕事はそれなり出来る男なのだが野心が強過ぎてな。今回、招待に応じておけば後はいくら断っても構わないからな。今日だけだ。くれぐれも気を付けるんだよ」
「はい、お父様」

そこへコンコンと扉をノックする者が現れた。
「来たようですね」
宰相が扉を開けると、入って来たのは紺色の騎士服を着たジルヴァーノだった。

「すまないな、今日はアリアンナの護衛をよろしく頼む」
「はっ」

再び会えた美しい銀の瞳に見入っていると、王妃がアリアンナの肩に手を置いた。
「いい?ジルヴァーノから離れてはダメよ。ジルヴァーノもアリアンナの事を頼むわね」

こうして万全を期した状態で、ビガーニ伯爵家の茶会へと向かったのだった。



「ようこそお越しくださいました、アリアンナ王女殿下」
満面の笑みで出迎えたのは予想通り、ビガーニ伯爵本人だった。夫人と二人でニコニコしている。
「こちらこそ。お招きありがとう」
アリアンナは笑えない分、優し気な声色で挨拶をした。

「ロクシード殿もおいででしたか?」
アリアンナの半歩後ろで待機しているジルヴァーノに声を掛けるビガーニ伯爵。
「本日はアリアンナ様の護衛に当たっている。申し訳ないが、アリアンナ様から離れる事のない様にと、陛下から直接お言葉を賜ったのでな。常にアリアンナ様の傍にいる事を了承して頂くがよろしいか?」

低く否とする事を許さない声色に、ビガーニ伯爵の口元が引くついた。
「勿論ですとも。どうぞご随意に」
なんとか平常心を保って言ったが、内心は面白くないのだろう。目は全く笑っていなかった。

今日の茶会は室内だった。人数的には決して多くはない。本来であれば、夫人で十分回せる人数なのに伯爵がいたという事は、やはり何がしかの行動を起こそうと思っていたのだろう。
「ジルヴァーノ様がいて良かったようです」
すぐ後ろで立っているジルヴァーノに小声で話しかけると、思っていたよりも穏やかな声が聞こえた。

「まだ気を抜かずにいてください。始まったばかりですから」
「はい」
アリアンナは素直に頷いた。

思惑が外れたからなのか、伯爵はいなくなっていた。茶会自体も何事もなく、平和に時が流れていた。参加している女性の視線が、全てジルヴァーノに集まっている点を除けば。
『美しい人だものね』
確かにジルヴァーノは美しい青年だった。王太子やドマニのような繊細な美しさとは違った、しなやかな野性動物を彷彿とさせる美しさを持っていた。女性の視線が釘付けになるのも頷ける。

程よく時間が経った頃。4人の令嬢たちが、アリアンナの席に集まって来た。
「アリアンナ様。せっかくですから私たちだけで、ゆっくりお話しませんか?」
ニッコリと笑みを浮かべ、声を掛けて来た。
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