27 / 71
傷跡の変化
しおりを挟む
まともにジルヴァーノの顔を見る事が出来なくなってしまうアリアンナ。
「あ、あ、あの。今夜は……今夜はジルヴァーノ様もあの、舞踏会へいらっしゃるのですか?」
視線を外してなんとかそれだけ言う。
「はい、参加する予定です。よろしければ、ダンスを一緒に踊って頂けますか?」
「は、は、はい……あの……喜んで。で、では、あの、支度をし、しなくてはいけないので」
それだけ言うと、アリアンナは逃げるように事務所を後にした。
ドキドキと高鳴る心臓が鳴りやまないうちに、待ち構えていた二人にお風呂に入れられてしまう。
「お嬢様、これ……一体どうしたのです?」
背中を流していたベリシアが驚いた顔をした。
「これってなあに?」
「背中です。なんて綺麗なんでしょう……何を模っているのかと思っていたら……これって竜だったんだわ」
「え?本当!?」
サマンサも見る。
「本当だわ、竜です。羽を広げた竜です」
「これって……どういう事かしら?」
合わせ鏡でアリアンナも背中を見た。
「わかりませんが、王妃様にも見てもらいましょう」
サマンサが言うと「私、行って来ます」とベリシアが部屋を飛び出した。
間もなく、王妃が慌てたようにアリアンナの部屋に入って来た。
「一体どういう事なの?」
王妃が慌てた様子で浴室に入って来る。
「お母様……」
「アンナ、大丈夫だから見せてごらんなさい」
素直に背中を見せる。
「……本当に竜だわ……」
呟いた王妃は、不安げな表情になるアリアンナの肩にガウンを羽織らせて抱きしめた。
「心配しないで。きっと大丈夫だから。形が変わっていった経緯はわかる?」
「最初に気付いたのは、私が竜舎に初めて行った時だったわ。でもその時は、なんだか傷跡の形が変わっているように感じただけで、竜だとはわからなかったの。そして今日、ネックレスを見せに竜舎に行ったわ。そうしたら竜たちが一斉に鳴いたの。まるで皆で歌っているようだった。そうして戻って来たら……」
「竜の模様になっていたって訳ね……今日が終わったら、お父様たちに調べて頂きましょう。これは母様の勘でしかないけれど、悪い事ではない気がするわ。もしかしたら竜の加護、もしくは祝福を受けた証なのかもしれない。きっとアンナを守ってくれる、そんな気がするわ」
「実は、私もそんな気がしたの」
自分の考えが王妃と一緒だった事で安心感を覚えたアリアンナ。
「さあ、そうとなったらとびきり綺麗にならなくてはね。銀の竜たちがきっと見守ってくれているわよ」
「はい」
準備が終わり、控えの間へ移動する。既に国王、王太子、そしてドメニカとドマニも揃っていた。
「……」
「……」
アリアンナが入って来た姿を見た国王と王太子が固まってしまう。
「もしかしてどこかおかしい?」
何も言ってもらえない事で不安を覚えるアリアンナは、自分をあちこち見直してみる。
肩が大きめに開いた白いドレスは、胸元には見事なまでの銀糸の刺繍、スカート部分には重ね着のように、薄いブルーから濃いブルーのシルクのオーガンジーが重ねられ、ふわりふわりと空気が動く度に靡いていた。
胸元には全てがダイヤモンドで作られた豪華なネックレス。中心部分には、銀の竜から贈られたブルーダイヤモンドのネックレスがはめ込まれていた。
「ふふふ、どこもおかしくないわ。二人ともアンナの美しい姿に言葉が出ないだけだから。綺麗よ、アンナ」
そう言いながら控えの間に入って来た王妃もまた、この世の物とは思えない程美しかった。
「天国とはこういう所かもしれないな」
ぼそりと呟いた国王。
「いやだ、しっかりしてくださいな」
王妃が笑いながら、国王の頬を軽くペチペチとする。
「いや、本当に。私の愛する妻も娘も、天上の女神の如く美しい」
そう言ってアリアンナのおでこにキスを落とし、王妃の唇にキスをした。
「本当に綺麗だよ、アンナ。あんなに小さかった子が……すっかり大きくなって」
「だから、それって兄ではなく父親の言うセリフですって」
傍にいたドマニが王太子に突っ込んだ。
「だって本当の事だろ。天使のような愛らしい娘が、女神のように変身を遂げた。これはきっと馬鹿みたいに男たちがわんさかと集まってしまう……ドマニ、剣を用意してくれ」
「はいはい、物騒ですから」
二人のやり取りをみているうちに、自然と緊張が解けて行くのを感じたアリアンナ。
『ロワ、見ていてね』
そっと心の中で呟いたのだった。
「あ、あ、あの。今夜は……今夜はジルヴァーノ様もあの、舞踏会へいらっしゃるのですか?」
視線を外してなんとかそれだけ言う。
「はい、参加する予定です。よろしければ、ダンスを一緒に踊って頂けますか?」
「は、は、はい……あの……喜んで。で、では、あの、支度をし、しなくてはいけないので」
それだけ言うと、アリアンナは逃げるように事務所を後にした。
ドキドキと高鳴る心臓が鳴りやまないうちに、待ち構えていた二人にお風呂に入れられてしまう。
「お嬢様、これ……一体どうしたのです?」
背中を流していたベリシアが驚いた顔をした。
「これってなあに?」
「背中です。なんて綺麗なんでしょう……何を模っているのかと思っていたら……これって竜だったんだわ」
「え?本当!?」
サマンサも見る。
「本当だわ、竜です。羽を広げた竜です」
「これって……どういう事かしら?」
合わせ鏡でアリアンナも背中を見た。
「わかりませんが、王妃様にも見てもらいましょう」
サマンサが言うと「私、行って来ます」とベリシアが部屋を飛び出した。
間もなく、王妃が慌てたようにアリアンナの部屋に入って来た。
「一体どういう事なの?」
王妃が慌てた様子で浴室に入って来る。
「お母様……」
「アンナ、大丈夫だから見せてごらんなさい」
素直に背中を見せる。
「……本当に竜だわ……」
呟いた王妃は、不安げな表情になるアリアンナの肩にガウンを羽織らせて抱きしめた。
「心配しないで。きっと大丈夫だから。形が変わっていった経緯はわかる?」
「最初に気付いたのは、私が竜舎に初めて行った時だったわ。でもその時は、なんだか傷跡の形が変わっているように感じただけで、竜だとはわからなかったの。そして今日、ネックレスを見せに竜舎に行ったわ。そうしたら竜たちが一斉に鳴いたの。まるで皆で歌っているようだった。そうして戻って来たら……」
「竜の模様になっていたって訳ね……今日が終わったら、お父様たちに調べて頂きましょう。これは母様の勘でしかないけれど、悪い事ではない気がするわ。もしかしたら竜の加護、もしくは祝福を受けた証なのかもしれない。きっとアンナを守ってくれる、そんな気がするわ」
「実は、私もそんな気がしたの」
自分の考えが王妃と一緒だった事で安心感を覚えたアリアンナ。
「さあ、そうとなったらとびきり綺麗にならなくてはね。銀の竜たちがきっと見守ってくれているわよ」
「はい」
準備が終わり、控えの間へ移動する。既に国王、王太子、そしてドメニカとドマニも揃っていた。
「……」
「……」
アリアンナが入って来た姿を見た国王と王太子が固まってしまう。
「もしかしてどこかおかしい?」
何も言ってもらえない事で不安を覚えるアリアンナは、自分をあちこち見直してみる。
肩が大きめに開いた白いドレスは、胸元には見事なまでの銀糸の刺繍、スカート部分には重ね着のように、薄いブルーから濃いブルーのシルクのオーガンジーが重ねられ、ふわりふわりと空気が動く度に靡いていた。
胸元には全てがダイヤモンドで作られた豪華なネックレス。中心部分には、銀の竜から贈られたブルーダイヤモンドのネックレスがはめ込まれていた。
「ふふふ、どこもおかしくないわ。二人ともアンナの美しい姿に言葉が出ないだけだから。綺麗よ、アンナ」
そう言いながら控えの間に入って来た王妃もまた、この世の物とは思えない程美しかった。
「天国とはこういう所かもしれないな」
ぼそりと呟いた国王。
「いやだ、しっかりしてくださいな」
王妃が笑いながら、国王の頬を軽くペチペチとする。
「いや、本当に。私の愛する妻も娘も、天上の女神の如く美しい」
そう言ってアリアンナのおでこにキスを落とし、王妃の唇にキスをした。
「本当に綺麗だよ、アンナ。あんなに小さかった子が……すっかり大きくなって」
「だから、それって兄ではなく父親の言うセリフですって」
傍にいたドマニが王太子に突っ込んだ。
「だって本当の事だろ。天使のような愛らしい娘が、女神のように変身を遂げた。これはきっと馬鹿みたいに男たちがわんさかと集まってしまう……ドマニ、剣を用意してくれ」
「はいはい、物騒ですから」
二人のやり取りをみているうちに、自然と緊張が解けて行くのを感じたアリアンナ。
『ロワ、見ていてね』
そっと心の中で呟いたのだった。
59
あなたにおすすめの小説
元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)
モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。
そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!?
「わん!」(なんでよ!)
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜
大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。
みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。
「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」
婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。
「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。
年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。
世界一美しい妹にせがまれるので婚約破棄される前に諦めます~辺境暮らしも悪くない~
tartan321
恋愛
美しさにかけては恐らく世界一……私の妹は自慢の妹なのです。そして、誰もがそれを認め、私は正直言って邪魔者なのです。でも、私は長女なので、王子様と婚約することになる運命……なのですが、やはり、ここは辞退すべきなのでしょうね。
そもそも、私にとって、王子様との婚約はそれほど意味がありません。私はもう少し静かに、そして、慎ましく生活できればいいのです。
完結いたしました。今後は後日談を書きます。
ですから、一度は婚約が決まっているのですけど……ごたごたが生じて婚約破棄になる前に、私の方から、婚約を取り下げます!!!!!!
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる