笑い方を忘れた令嬢

Blue

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惹かれ合う青と銀

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 そんなピアの頬を覆うように、ユラの手が触れた。
「本当に、あなたは小さい頃からジルヴァーノに懐いていたわね。ありがとう、あんなに愛想のない子を好いてくれて。ジルヴァーノ自身がそれを望んでいるのなら、私は喜んでお迎えするわ。でもね、ロワの事は別よ。ロワの事は諦めた方がいい。竜は一度決めた事を覆すような事はしないわ。だから、どんなに頑張ってもピアちゃんをロワが受け入れる事はないと思う。あまり刺激するとピアちゃんにケガを負わせるかもしれない」

ユラの言葉に、それまで黙って聞いていた王妃も賛同する。
「そうね。竜たちをこれ以上刺激しない方が私もいいと思うわ。もうずっと、モンタナーラ嬢がいる間は岩山から降りて来ないと聞いているし。これ以上、竜たちにストレスを与えるのは得策ではないわ」

二人に言われてしまい、俯いてしまうピア。そんな彼女が小さな声で独り言のように呟く。
「なによ、諦めるなんて嫌よ。もしかしたら仲良くなれるかもしれないじゃない」
あまりにも小さかったその声は、誰にも届いてはいなかった。

会場でアリアンナとピアが遭遇している頃。ジルヴァーノは、重い足取りで夜会の会場へ足を踏み入れようとしていた。母親に来いと言われて渋々、参加する羽目になったのだ。
『私が行けばまた噂されるだけだと言うのに』

最近のピアとの噂に、いい加減辟易していたジルヴァーノ。どんなに説得を試みても、ピアは竜舎に行く事を止めない。こちらも預かっている身として、彼女を無下に扱うことも出来ない。初めの頃、行きの馬車で同乗していた事もよくなかったと今更思ったところで、大きくなった噂はどうにもならなかった。

竜たちも最近は夜以外は、岩山から降りて来ない。ロワも怒っているらしく、全く言う事を聞く素振りを見せない。
『あれからアリアンナ様にも会えていないし』
ピアが来るようになってから、アリアンナが竜舎にやって来ないのだ。王太子からは「おまえと許嫁?だったか。二人の邪魔をしては良くないと思っているようだぞ」と嫌味ったらしく言われ、苦い思いをしたのだった。

『本当にいい加減にして欲しい』
全てが嫌な巡りを辿っている事に、イライラするばかりだった。そこに来て、この夜会だ。何度も溜息を吐きながら、ジルヴァーノは会場に入った。

『なんだ?』
入ってすぐに違和感を感じる。
『あれは……副団長か?』
深くスリットの入った黒と銀のドレスを着たドメニカが、令嬢と踊っているのが目に入る。他にも令嬢同士で踊っている姿が何組か見られた。

『なんだ?この状況は……待てよ……副団長が来ているという事は……』
淡い期待を抱くのは仕方のない事だ。ジルヴァーノは瞬時に周りを見渡した。
『あれは!?』
ダンスエリアよりも奥に、赤と銀のドレスと青と銀のドレスの美しい二人の女性の姿が目に入った。明らかにあそこだけ周りとオーラが違う。金色の髪を綺麗に結い上げた二人は、本物の親子ではないかと思う程雰囲気がよく似ていた。

『ドレスの青より瞳の青の方が美しい』
そう思っているジルヴァーノの周りには、彼目当ての令嬢たちが集まり出していたが、一刻も早く彼女のそばに行きたい、真っ青な美しい瞳を近くで見たいという想いしかないジルヴァーノは、周りを見ることもなく真っ直ぐ彼女へ足を動かした。

ピアの話とユラの話の違いに戸惑いを感じていたアリアンナだったが、視線を感じキョロキョロと周囲を見渡すと何やら入口の方が騒がしい気がした。なんだろうとそちらを見ていると、こちらにやって来るジルヴァーノの姿が目に入った。

『アリアンナ様』
走れない事がもどかしく感じるジルヴァーノは、気持ちばかりが急いて思わず心の中で名を呼んだ。すると、彼の声が聞こえたのかと思うタイミングで真っ青な瞳がジルヴァーノを見た。途端に鮮やかな青に囚われる。その瞬間から、ジルヴァーノの視界にはアリアンナしか映らなくなっていた。

アリアンナはアリアンナで、彼を見ただけで胸の鼓動があり得ないほど高鳴り苦しさを覚える。心臓を無意識に押さえながらも、彼の銀の瞳から目が離せなくなってしまう。
『あんなに泣いたのに。まだ私はジルヴァーノ様を……』
そう思ったアリアンナの視線と、ジルヴァーノの視線が絡み合った。

「ジル様」
ジルヴァーノが来た事に気が付いたピアが、嬉しそうに彼の名を呼んだ。ところが、ジルヴァーノは全く気付かない。銀の瞳と青い瞳は、まるで磁力で引き合っているかのようにお互いしか見ていなかった。
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