笑い方を忘れた令嬢

Blue

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受け入れられない理由

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 ピアの身体をゾクリと悪寒が走る。ピアから視線を離さないギラリと光った金色の瞳は、明らかに彼女を敵と認定していた。そして伝播するように、いつの間にか下に降り立っていた他の竜たちも同じような視線を彼女に向ける。

逸らしたいのに逸らせない恐ろしい視線に凍りついていると、不意に視線が消えた。その代わりに見えたのはジルヴァーノだった。彼がピアの側に戻ってきたのだ。
「ジル様」
ウルウルさせた瞳で、彼を見上げたピアだったが彼の目を見た途端、ピキリと固まってしまう。

今の今まで感じていた竜たちの視線と同じような視線で見下ろしているジルヴァーノに、初めて恐ろしさを感じてしまったのだ。
『本気で怒っている』
ピアはごくりと生唾を飲む。

そんな彼女に声音を低くしたジルヴァーノ。
「金輪際、竜舎にも事務所にも来ることを禁じる。君はここでは歓迎される事はない。それどころかロワは躊躇なく君を攻撃する事がわかった。次はもうない」

それでもピアは、凍った身体を奮い立たせ食って掛かる。
「でも、私はジル様の妻になる身として頑張ったのよ。ジル様の妻になるのだから、ロワは私を認めてくれなくちゃ」
「そもそも」
しかし、ジルヴァーノが言葉を遮ってきた。

「私はピアと結婚するつもりはない。何度も言っているはずだ。君の事は幼馴染で妹のような存在だ。だからこそ多少の我が儘は許してきた。だが、それだけだ。それにピア……君が竜たちに受け入れられない理由はソレだ」
「ソレって何?」
ピアはジルヴァーノの言わんとしている事が全くわからない。彼にはっきりと拒絶されて苛つく表情を隠そうともせず睨みつけている。

「君が竜たちと仲良くなりたい理由だ。何故、竜たちと仲良くなりたいと思うんだ?」
「それは勿論、ジル様の妻になる身として、竜たちに認められたいからよ」
大きく息を吐くジルヴァーノ。黙って横で聞いていたユラでさえ溜息を吐く。

「ねえ、ピアちゃん。それって、あなた自身が仲良くなりたいと思っている訳じゃないって言っているわよ」
「え?」
「だってそうでしょ。ジルヴァーノの妻になるから。それしか言っていない。そんな気持ちで竜たちに近寄っても、竜たちが受け入れる訳がないわ。だって竜たちが好きだからじゃないって言っているようなものだもの」

「そんな……」
呆然としたピアは、放心したように言葉を失った。

『ピア様……』
銀の竜の足元で様子を見ていたアリアンナ。
『何か言葉を掛けてあげたいけれど……』
自分が言ってもピアが喜ぶことはないと理解しているし、そもそもどう言っていいのかわからない。少しのもどかしさに嘆息すると、銀の竜が鼻先を頬に擦り寄らせてきた。

「ふふ、私は大丈夫よ」
慰めてくれる銀の竜の鼻先を撫でる。若い竜たちも、アリアンナに素直に甘えて来た。
「そうだったわね。ジルヴァーノ様にちゃんと話をしなくちゃ。大丈夫、きっと二つ返事で了承してくれると思うわ」
順番に撫でてやると、嬉しそうにクウと鳴いた。他の竜たちも撫でて欲しいと寄って来て、あっという間に竜たちに囲まれてしまう。

「ちょ、ちょっと待って。今は、ほら。ジルヴァーノ様たちが真剣にお話をしているのだから静かにしていないと……あ、ちょっと。だから首は駄目だったら。撫でるのは順番にするから」
竜たちが空気を読むはずもなく、あっという間にアリアンナはもみくちゃにされてしまう。すると、竜たちの向こうから「ククク」と忍びきれていない笑い声が聞こえた。
「全く……どうしてあなたは」
言いながらズボッと腕を突っ込んだジルヴァーノ。アリアンナが咄嗟に伸びてきたその手に自身の手を重ねるとキュッと握り返され、そのままグンと彼女を引っ張り上げた。

引っ張り上げた手は、そのまま彼女を抱きとめる。
「はは、凄い姿になっていますよ。そう言えば、初めてここにいらした時にもこんな姿を見たような気がしますね」
そう言って笑いながら彼女の服を簡単に整え、手櫛で髪を梳くジルヴァーノをアリアンナは軽く睨んだ。
「もう、笑い事ではありません」
「ははは、そうですよね。申し訳ありません。クク」

少しも我慢出来ていないジルヴァーノを見て、アリアンナも笑ってしまう。
「ふふ、もうジルヴァーノ様ったら」
ひとしきり笑ったアリアンナは、急に顔色を変えた。
「私ったら……ピア様は?ごめんなさい。真剣なお話をされている最中だったのに」
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