元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

これから

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 卒業認定試験を終えたある日の休日、私はお父様と2人で、お母様が王家から頂いてきた領地を見に来ている。

 元々の侯爵領より南部に位置し、温暖な気候で、植物や野菜の栽培に適した土地。王都から馬車で2時間位で、便はいい方だと思う。
 確かにリタイアしたら、住むには良さそうな雰囲気ね。のんびりしているし、領民も気の良さそうな方ばかりに見える。

 今は領主代理として、王宮で文官をしていたという初老の男性が夫婦で住んでいる。穏やかで優しそうなおじ様に見えるが、…多分やり手ね。お父様とお母様が選んだ方のようだから。年齢的にも、あと数年で引退を考えていたようだ。

 領地経営に興味を持ち、特産品の薬草・野菜を学ぶ為、隣国に留学するということをすでに知らされていた様で、お待ちしてますとの事であった。
 未来の師匠になる方なので、よろしくお願いしますと挨拶をする。もし、他にも人が必要なら、今のクラスに優秀な方がいることも一応伝えておいた。クラスメイトの文官志望の人達、本当に優秀だからね。

 領地を見学出来て良かった。気が引き締まったと思う。


 隣国の高等学園の入学式まで、あと4ヶ月あるが早めに隣国入りし、準備期間として隣国のマナーや高等学園での勉強の予習などをすることになった。叔母様が、一流の講師を準備して待っていてくれるらしい。
 本当に有難いと思う。結果を出せるように頑張らなくては。

 ちなみに、入学・卒業のシーズンは隣国も我が国も同じ時期である。
 高等学園は貴族学園からの推薦で入れるが、卒業試験が難しいらしいので、入ってからも気が抜けないようだ。


 私は長期休暇に入る前日まで貴族学園に在籍することになった。
 そして長期休暇前日に行われる学園主催のダンスパーティーで、学園長から在校生に向けて、私の卒業を正式に発表するので、必ず参加するようにねと、学園長から念を押されてしまった。

 ええ、参加しますとも。私の人生で初めてエスコートを申し込まれたのですから。

 ダンスパーティーに向けて、令嬢達がドレスはどうするか話をしている場面をよく見かける。みんな楽しみにしているのねぇ、なんて言ったら、レベッカが、いやいや、みんなアンとマディソン様は当日どうなのかって噂してるわよーだって。

 どうなのって言う関係ではない!仲良くさせてもらっている先輩と後輩ですわ。

 そして、私の周りでパーティーに向けて一番張り切っているお方がいる。
 そうです。うちのお母様でございます。こういうのって、日本の成人式みたいに母親が張り切るのかしら。お母様は、王女時代から贔屓にしている王国一の人気デザイナーを呼びだしていたのだった。権力って凄いデスネ。

 アラサー杏奈としては、あまりヒラヒラ・ゴテゴテしているのは嫌なので、Aラインのオフショルダーの形にしてもらいました。シンプルになり過ぎないように、生地はデザイナーオススメもの(これから売り出したいみたい)にして、小さな花や蝶々の飾りを散りばめるようにつけ、10代らしく?少しだけかわいい要素も入れてもらいました。色は迷ったのですが、青空のようなブルーに決めました。

 アクセサリーは、元婚活女子の憧れだったダイヤモンドのネックレスとリングにしちゃった。


 そして、いよいよダンスパーティー当日である。

 カーラ達が一週間前から、念入りにお肌のパックやマッサージ、髪のトリートメントをしてくれたので、一時期、レポート作成や試験勉強で寝不足による肌荒れなどが酷かったのが、嘘のようである。
 あぁ、杏奈はブライダルエステに憧れていたなぁなんて、今更思い出す私であった。

 湯浴み、トリートメント、マッサージをして磨かれる私。
 メイクはドレスに合わせていつもよりは華やかに。でもあまりキツくしないでと頼んでおいた。
 髪型は緩く巻いて、サイドハーフアップにして、下ろしている髪もサイドに流してもらい、花の髪飾りを着けてもらう。
 ドレスを着て、はい。できました!

 私よりカーラ達が喜んでいますよ。ありがとう。最高の侍女たち。なんて思っていると、シリル様がお迎えに来てくださったらしい。

 玄関ホールに降りて行くと、すでにお母様とフィル(弟)がシリル様を出迎えて会話をしていた。ん、お母様が喜んでいるわね!表情は淑女の綺麗な笑みを浮かべているが、私はお母様が本気で喜んでいるのが、何となくオーラで分かるのです。

 フィルも、元婚約者にはブスくれていたのに、今日はいつもの天使の笑顔だ。

 婚約を白紙にして、心配掛けてたからなぁ。シリル様みたいな大物がエスコートしてくれるって知って、「よくやったわ!」とか言ってたし、安心したんだろうね。パーティーで肩身の狭い思いをしなくて済みそうだし。

 シリル様は黒のフロックコートを着こなし、いつもサラサラの水色の髪は後ろに流している。
 …カッコいい!!貴族学園のミスターコンテストがあるなら、私はシリル様に投票します、絶対に!うちわ作って応援します!

 騎士のようにムキムキではなく、程よい身長と筋肉、そして眼鏡の似合うイケメン。フロックコートが似合わない訳がない。
 こんなステキな方に、貴族学園最後のパーティーをエスコートしていただけるなんて、幸せです。

 なーんて、考えていたら、ふいにシリル様と目が合う。

「……綺麗だな。」

 えっ?綺麗って言ってくれた?そんなの元婚約者は一言も言ってくれなかったのに。

 アラサーでも、ちょっと恥ずかしくなって、多分顔が赤くなってると思う。お母様と侍女たちの生暖かい目がキツい。

「シリル様もとても素敵ですわ。今日はよろしくお願い致します。」

「こちらこそ。それと、もし良ければ、これを着けてくれないだろうか?」

 シリル様が差し出してくれたのは、白薔薇の髪飾り。光にあたって綺麗にキラキラ輝いている。よくみると、透明度の高いダイヤが、薔薇の周りに散りばめられていて、とても高価そうね。ってあれ?シリル様の胸元に飾ってある白薔薇と一緒?お揃い?

 私がお礼を言う前に、

「まぁ、素敵な髪飾りね。カーラ、直ぐにアンに着けてあげて。」

「かしこまりました。お嬢様、こちらへ。」

 おい!お母様とカーラ、返事早いな。

 カーラがテキパキと髪飾りを付け替えてくれた。うん、とても綺麗。ドレスにも、ネックレスにも合ってる。そーいえば、少し前に、ドレスの色とアクセサリーについて聞いてきたのは、そう言うことか。

「シリル様、とても素敵な髪飾りありがとうございました。このような贈り物は初めてですので、とても嬉しいですわ。大切に使わせていただきます。」

 私は心からのお礼を伝えた。

「喜んでくれたなら、良かった。それに、よく似合っている。」

 その微笑みは、反則ですよー!

「それでは、お手をどうぞ。」

 シリル様の大きな手。私は迷わずその手を取るのだった。

 上手く笑えているかな?













 
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