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アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します
閑話 ある公爵令息の話 6
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※流血表現あり
王太子殿下とファーエル公爵令嬢に誘われて、マディソンとファーストダンスを踊るアンネマリーは、とても美しかった。
会場には、美しい2人に見惚れる子息と令嬢が沢山いるようで、「あの2人お似合いね」とか「マディソン様ってあんな風に微笑まれるのね。」「あの白薔薇はお揃い?」など話をしている声が聞こえる。すっかり2人が今日の主役になっていた。
アンネマリーが見せる笑顔に顔を赤くするマディソン。本人は自覚が無さそうだが、マディソンはアンネマリーに恋をしている。同じ男だからこそ分かるのだ。そしてアンネマリーは、恋愛感情は分からないが、マディソンに対してかなり信頼しているように見える。
ここ数年、自分には向けられることのなかった、アンネマリーの花の綻ぶような笑顔が、マディソンに向けられているのだ。
この現実を受け止めなくてはいけないと思うのだが、自分でもどうしたらよいのか分からない。
好きとか、愛だとかを通り越したこの感情をどうすれば。
パーティーの後、どう帰ったのか分からないが、気づくと、長期休暇に入っていたのだった。
そして、今日はエリックと王宮に来ている。卒業後は、本格的に王太子殿下の側近として働くので、長期休暇中などは、定期的に王宮に来て、他の側近候補達と顔合わせをしているのだ。
顔合わせを終え、王太殿下の執務室に帰りの挨拶をする為入室しようとすると、話し声が聞こえて来る。
「シリルはアンに伝えたの?」
「何をでしょう?」
「シリルの気持ちだよ。」
「相変わらず、人を弄るのを楽しんでいますね。この腹黒殿下は。」
「だって、アンは明後日には隣国に出発するらしいよ。しばらく会えなくなるでしょ。」
「アンネマリー嬢には隣国で入学式に会おうと伝えてますよ。」
「ふーん。そうなんだ。一緒に留学出来るなんて、良かったねー。あっ、でもアンのこと頼んだよ!ソフィーもシリルが一緒だから安心しているみたいだし。」
何の話をしているんだ?アンネマリーがマディソンと隣国に留学?明後日に出発だって?
私は2人の話を黙って聞いていることが出来ず、
「その話はどういうことですか?アンネマリーは隣国に行ってしまうのですか?」
殿下とマディソンは私が聞いていたことに、驚いたようだが、すぐに平然とした表情に戻る。
「侯爵領を発展させる為に、専門分野を学びたいようだよ。で、入学前に早めに隣国入りをして準備をするようだ。君もアンの旅立ちを応援してくれよ。元婚約者とは言え、幼馴染みたいに長い付き合いだったのだからね。」
殿下の感情の読めない笑顔。マディソンは無表情で何も言わない。
「くっ。…そうですか。失礼しました。」
今どうしても、アンネマリーと話がしたかった。私が悪いのは理解しているが、何も出来ずに別れるのだけは嫌だと。
今から侯爵邸に行こう。アンネマリーに会わせてもらえるか分からないが、頼んでみよう。
そんな私を見て、エリックが心配してついて来てくれるという。本当にいいやつだ。
急ぎなので、単騎で侯爵邸へ行く。エリックは外で侯爵邸の馬丁と喋って待っているという。
先触れも出さずに、突然来てしまったことを家令に詫びていると、アンネマリーの母である侯爵夫人が出てくる。
「久しぶりですわね。今日は突然の訪問、どうされましたの?」
「突然申し訳ありません。アンネマリー嬢に会わせて頂きたいのです。彼女に謝りたいのです。お願いします。」
必死なのが伝わったのか
「今、アンは出掛けているの。もうすぐ帰ってくると思うけど……、お茶でも飲んでお待ちになる?」
「ありがとうございます。」
応接室に通され、侯爵夫人がお茶の準備の指示を出している。その時だった。
「奥様、大変でございます。」
冷静で感情など全く出さない、優秀な侯爵家の家令が慌てて来る。
「アンネマリーお嬢様の乗っていたであろう馬車が、事故に合ったと、王都騎士団が来ております。」
「何ですって?」
アンネマリーの乗った馬車が事故?
侯爵夫人と一緒に、玄関ホールに来ていた王都騎士団員のところへ。そこには騒ぎを聞いて来たであろうエリックも。
「アンネマリーは?馬車はどこで事故に?」
「大聖堂横の緩やかなカーブを曲がりきれず、塀に追突したようです。御者はすでに亡くなっていて、馬車の中に乗っている人物の安否はまだ確認されてません。…馬車のドアが開かないので、今、騎士団でドアを壊して開けようとしているのですが。」
大聖堂は戦争などの有事の際に、避難場所とされているので、塀は石造りで高くて頑丈に作られている。そんな所に追突なんてしたら…。
頭が真っ白になった。すぐに馬に飛び乗り、現場に急ぐ。
大聖堂の塀に追突している変形した馬車が。アンネマリーはどこだ?
馬車の中から、アンネマリーの護衛騎士が運び出されている。頭から血を流し、ぐったりしている。運んでいる騎士達は、エリックや私を見て、深刻な表情で頭を横に振る。
アンネマリーはすでに馬車から降ろされて、近くに寝かせられていた。虫の息で意識がない。側に付いている騎士も何も出来ないのだろう。手の施しようのない状況に、悲しそうに見つめているだけであった。
ドレスには多量の血が付着し、蒼白の顔には、涙の痕が。なんて事だ!
「マリー!」
私は無意識にアンネマリーに駆け寄って、抱きしめていた。一体何があったんだ?
「マリー!マリー、死ぬな。君に話したいことが沢山あるんだ。愛しているんだ。マリー。逝かないでくれ!」
「君がいないと駄目なんだ。マリー!…うっ。」
「マリーー!」
静まった現場に、私の声だけが響く。
かつて私だけが呼んでいた愛称で、何度も彼女を呼ぶが…。
いくら呼びかけても彼女が目を覚ますことは無かった。
こんな別れが来るなんて思っても見なかった。
何で彼女をもっと大切にしなかったのか。彼女を守る事も、謝ることも、愛を伝えることも、もう何もかも出来ないのか…。どうしてこんな事に…。
…………許さない。
王太子殿下とファーエル公爵令嬢に誘われて、マディソンとファーストダンスを踊るアンネマリーは、とても美しかった。
会場には、美しい2人に見惚れる子息と令嬢が沢山いるようで、「あの2人お似合いね」とか「マディソン様ってあんな風に微笑まれるのね。」「あの白薔薇はお揃い?」など話をしている声が聞こえる。すっかり2人が今日の主役になっていた。
アンネマリーが見せる笑顔に顔を赤くするマディソン。本人は自覚が無さそうだが、マディソンはアンネマリーに恋をしている。同じ男だからこそ分かるのだ。そしてアンネマリーは、恋愛感情は分からないが、マディソンに対してかなり信頼しているように見える。
ここ数年、自分には向けられることのなかった、アンネマリーの花の綻ぶような笑顔が、マディソンに向けられているのだ。
この現実を受け止めなくてはいけないと思うのだが、自分でもどうしたらよいのか分からない。
好きとか、愛だとかを通り越したこの感情をどうすれば。
パーティーの後、どう帰ったのか分からないが、気づくと、長期休暇に入っていたのだった。
そして、今日はエリックと王宮に来ている。卒業後は、本格的に王太子殿下の側近として働くので、長期休暇中などは、定期的に王宮に来て、他の側近候補達と顔合わせをしているのだ。
顔合わせを終え、王太殿下の執務室に帰りの挨拶をする為入室しようとすると、話し声が聞こえて来る。
「シリルはアンに伝えたの?」
「何をでしょう?」
「シリルの気持ちだよ。」
「相変わらず、人を弄るのを楽しんでいますね。この腹黒殿下は。」
「だって、アンは明後日には隣国に出発するらしいよ。しばらく会えなくなるでしょ。」
「アンネマリー嬢には隣国で入学式に会おうと伝えてますよ。」
「ふーん。そうなんだ。一緒に留学出来るなんて、良かったねー。あっ、でもアンのこと頼んだよ!ソフィーもシリルが一緒だから安心しているみたいだし。」
何の話をしているんだ?アンネマリーがマディソンと隣国に留学?明後日に出発だって?
私は2人の話を黙って聞いていることが出来ず、
「その話はどういうことですか?アンネマリーは隣国に行ってしまうのですか?」
殿下とマディソンは私が聞いていたことに、驚いたようだが、すぐに平然とした表情に戻る。
「侯爵領を発展させる為に、専門分野を学びたいようだよ。で、入学前に早めに隣国入りをして準備をするようだ。君もアンの旅立ちを応援してくれよ。元婚約者とは言え、幼馴染みたいに長い付き合いだったのだからね。」
殿下の感情の読めない笑顔。マディソンは無表情で何も言わない。
「くっ。…そうですか。失礼しました。」
今どうしても、アンネマリーと話がしたかった。私が悪いのは理解しているが、何も出来ずに別れるのだけは嫌だと。
今から侯爵邸に行こう。アンネマリーに会わせてもらえるか分からないが、頼んでみよう。
そんな私を見て、エリックが心配してついて来てくれるという。本当にいいやつだ。
急ぎなので、単騎で侯爵邸へ行く。エリックは外で侯爵邸の馬丁と喋って待っているという。
先触れも出さずに、突然来てしまったことを家令に詫びていると、アンネマリーの母である侯爵夫人が出てくる。
「久しぶりですわね。今日は突然の訪問、どうされましたの?」
「突然申し訳ありません。アンネマリー嬢に会わせて頂きたいのです。彼女に謝りたいのです。お願いします。」
必死なのが伝わったのか
「今、アンは出掛けているの。もうすぐ帰ってくると思うけど……、お茶でも飲んでお待ちになる?」
「ありがとうございます。」
応接室に通され、侯爵夫人がお茶の準備の指示を出している。その時だった。
「奥様、大変でございます。」
冷静で感情など全く出さない、優秀な侯爵家の家令が慌てて来る。
「アンネマリーお嬢様の乗っていたであろう馬車が、事故に合ったと、王都騎士団が来ております。」
「何ですって?」
アンネマリーの乗った馬車が事故?
侯爵夫人と一緒に、玄関ホールに来ていた王都騎士団員のところへ。そこには騒ぎを聞いて来たであろうエリックも。
「アンネマリーは?馬車はどこで事故に?」
「大聖堂横の緩やかなカーブを曲がりきれず、塀に追突したようです。御者はすでに亡くなっていて、馬車の中に乗っている人物の安否はまだ確認されてません。…馬車のドアが開かないので、今、騎士団でドアを壊して開けようとしているのですが。」
大聖堂は戦争などの有事の際に、避難場所とされているので、塀は石造りで高くて頑丈に作られている。そんな所に追突なんてしたら…。
頭が真っ白になった。すぐに馬に飛び乗り、現場に急ぐ。
大聖堂の塀に追突している変形した馬車が。アンネマリーはどこだ?
馬車の中から、アンネマリーの護衛騎士が運び出されている。頭から血を流し、ぐったりしている。運んでいる騎士達は、エリックや私を見て、深刻な表情で頭を横に振る。
アンネマリーはすでに馬車から降ろされて、近くに寝かせられていた。虫の息で意識がない。側に付いている騎士も何も出来ないのだろう。手の施しようのない状況に、悲しそうに見つめているだけであった。
ドレスには多量の血が付着し、蒼白の顔には、涙の痕が。なんて事だ!
「マリー!」
私は無意識にアンネマリーに駆け寄って、抱きしめていた。一体何があったんだ?
「マリー!マリー、死ぬな。君に話したいことが沢山あるんだ。愛しているんだ。マリー。逝かないでくれ!」
「君がいないと駄目なんだ。マリー!…うっ。」
「マリーー!」
静まった現場に、私の声だけが響く。
かつて私だけが呼んでいた愛称で、何度も彼女を呼ぶが…。
いくら呼びかけても彼女が目を覚ますことは無かった。
こんな別れが来るなんて思っても見なかった。
何で彼女をもっと大切にしなかったのか。彼女を守る事も、謝ることも、愛を伝えることも、もう何もかも出来ないのか…。どうしてこんな事に…。
…………許さない。
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