元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

学業と副業

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 新学期が始まり、忙しい日々の中、私は空いた時間に刺繍をしている。芸術一家のエリーゼが、エリーゼの家の茶会に私の刺繍を飾ってくれ、それを見た商会を経営するマダムが気に入ってくれたようで、是非刺繍の作品を注文したいと声を掛けてくれたらしい。もちろん学園には内緒で、作品も匿名でいいらしいので、私はオッケーしたのだ。
 断罪とかで家を出されたら、お金が必要になるからね。今のうちに蓄えておかないと。

 刺繍のデザインなどはお任せで、私の自由でいいらしいので、マダムが気に入ってくれた、和柄シリーズでいいよね。
 私の好きな桜や秋桜、ゆり、牡丹とかが、日本っぽくていいかな。作品を仕上げるまで、すごく時間がかかるけど、お金に関わるものだから、妥協しないで、丁寧にやらないとね。とりあえずハンカチに刺繍していたのだけど、ハンカチばかりじゃつまらないかと思い、希望の布地を支給してくれるなら、その布に刺繍しますよと提案してみた。そしたら、ドレス用の大きめの布と、テーブルクロスの布を支給してくれたので、布が大きい分、気合いを入れて頑張りました。

 その作品が出来上がり、後日、謝礼をいただいた私はその額に驚くのであった。副業と言える額ではなく、贅沢しなければ、しばらくは生活出来そうな金額だったのだ。エリーゼにこんなにいいのか?と聞くと、一点物だし、かなり珍しいからいいと。貴族は珍しくて、新しくて、高い物が好きだからと言うので、有り難く頂いた。しかも、いつでもいいから、また作って欲しいと言うので、時間のある時にコツコツ制作し、蓄えを増やす事に決めた私であった。

 副業、バンザイ!!


 休みの日は、相変わらずシスターと病院に慰問に行き、治癒魔法での治療の練習と、患者さんからリクエストがあればピアノを弾いたりしている。治癒魔法は、更に力が強くなって来ているようで、治療の速度が速くなり、人数も多く診れるようになってきたような気がする。休暇中に騎士団で修行してきた甲斐があったわ。
 
 そんなある日のこと、シスターとの病院の慰問の帰りに、道に人が集まり馬車が進まない。近くの人に聞いたら、この先で馬車の事故があったようだという。事故なら、怪我人がいるかもしれないと思い、シスターも心配しているようなので、走って見てきますとシスターに言うと、走るなんて淑女たるもの…とか言われず、緊急だからその方がいいわねと言ってくれたので、先に私だけ走って向かった。

 人をかき分けて行くと、貴族の立派な馬車に女の子が轢かれてしまったようで、グッタリと倒れてしまっている。母親らしき人が、泣きながら名前を呼んでいる。…これは、意識を失ってるし、危険な状態かも。
頭打ってる?骨折は?呼吸は一応あるね。素人だからどこを一番痛めているのか分からないから、頭から順番に治癒魔法かけちゃおうか!元に戻れーと強く念じながら、頭の上から、つま先まで治癒魔法をかけまくった。すると、女の子が目を開けた!効いた?名前とか聞いてみる?サーラちゃんて言うのね。ちゃんと喋れてるね。手を握らせてみると、ぎゅっと握れてる。視線も合うし、痛いところもない。ゆっくり立てるかな?立てた!真っ直ぐに歩けるね!お母さんに大丈夫ですかね?と確認すると、大丈夫みたいです、ありがとうございますと返ってくる。遅れて来たシスターも、大丈夫そうねと言うので、サーラちゃんに気を付けて帰ってねと言って立ち去ろうとした時だった。

「御令嬢、助けてくれて感謝する。名前を伺ってもよろしいか?」

 ええ、忘れていました。この馬車は貴族の馬車ね。しかもこの豪華さは、高位の貴族にみえるぞ。私の本能が関わるなと警告している!!

 話し掛けて来た貴族を見ると、うわー!まだ10代くらいの華やか美形の貴族令息ね。ますます危険だわ。当たり障りなく、去ってしまおう。

 とりあえず、カーテシーをして…

「名を名乗る程のことはしておりませんので、どうぞお気になさらないでくださいませ。お騒がせして申し訳ございませんでした。急いでおりますので、失礼させて頂きますわ。ご機嫌よう。」

 にっこり微笑んで誤魔化し、相手の返事を聞く前に、シスターの手を引いて人混みの中に消えていく私。よし、これで逃げれたわね。

 馬車にてシスターから、あの方はここの領主のファーエル公爵家の子息ねと言われて、サーっと血の気が引く私。
 ここの領主の息子かい!しかも公爵家!危険な香りがするわね。名前を名乗らなくて良かったー。ふぅー。


 名前は名乗らなくても、シスターと一緒にいて、学園の制服を着用し、マナー講師が絶賛するカーテシーを見せ、王族が得意な治癒魔法を使い、王族に多い髪と瞳の色を見られていたら、調べれば簡単に身元がバレてしまうことなどを、私は気付いていなかったのだった…。


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