元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
45 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

早いもので

しおりを挟む
 聖女子学園に入学したと思ったら、ついに初等部最後の学年になりました。そして、私は相変わらず、忙しい毎日を過ごしている。

 朝は相変わらず、レジーナと剣の鍛練をしている。レジーナはさすが辺境伯の跡取りだけあって、強い。強いレジーナに揉まれて、私もそこそこは強くなってきたと思う。
 授業では攻撃魔法を選択し、そのお陰か前よりも強力な攻撃魔法が出来る様になってきた。そして、休みの日はシスターと病院で治癒魔法の練習。放課後は図書室でミッシェルと勉強。夜の空いた時間に、副業の刺繍。
 刺繍は稼がさせてもらっています。うふふ。流石に大金を手元に置けないと困っていたら、エリーゼが学園近くのギルドに連れて行ってくれた。会員登録していれば、お金を預けられるし、預けたお金はどこのギルドでも払い戻し出来るからって。エリーゼ、詳しいなと感心したら、エリーゼは将来は芸術品の買い付けとかで、外国に行きたいという目的があるから、お金の出し入れについては両親に聞いていたそうだ。
 ミッシェルとは、首席争いをする程のいいライバルだ。でもお互い助け合って勉強しているから、親友兼、ライバルって感じ。ミッシェルはいずれは、お医者様になりたいから、貴族学園を卒業したら、学問の国の隣国に留学したいんだって。出来れば早く留学したいから、貴族学園では飛び級を目指して、早期の卒業を狙いたいから、今から気合いを入れて勉強しているらしい。
 ん?飛び級で早く卒業できるの?…それ、私も目指そう!だって、ヒロインが編入してくるかもしれないし、断罪がいつあるか分からないから、早く学園から去った方がいいもんね。早期の卒業をして、どこかに住み込みで就職して、実家をでる。よし!決めた!私も飛び級目指して、今から勉強頑張る!ってなり、ミッシェルと一緒にガリ勉の日々になった。

 そして、今年も長期休暇の時期になった。長期休暇は辺境伯領に行って、魔物討伐に参加するのが毎年の恒例になってしまい、それを口実に王都のタウンハウスには行っておりません!お父様・お母様、ごめんなさい。私は長生きしたいので、王都には近づきたくないのです。そのかわり、手紙のやり取りはマメに行うようにしているから、許してね!!

 長期休暇前に、荷物は先に辺境伯領に送ってもらい、私とレジーナは単騎で辺境伯領に行く。馬車だと1週間かかるが、単騎だと2日かからないで着くのだ。ミッシェル達には、騎士団の騎馬訓練でもしてるのか?と呆れられるが。ただそこそこ強いとは言え、15歳の女子2人では目立つので、辺境伯軍の騎士4名、迎えに来てくれる。

 レジーナの実家に着くと、レジーナの両親と妹、使用人達がいつも待っていてくれる。もうすっかり、レジーナの家族と打ち解けて、レジーナの両親からはマリー、妹のミリーナ嬢からはマリー姉さんと呼ばれ、私もおじ様・おば様、ミリーと呼んでいる。辺境伯は王家から信頼の厚い名門の貴族なので、お父様も安心して行かせてくれているらしい。レジーナの両親は、卒業後、うちにおいでと割と本気で言ってくれる。私もそれは嬉しいので、魔物討伐のお手伝いは頑張る事に決めているのだ。

 そういえば、いつもお世話になっていたフィークス卿の姿が見えない。挨拶がしたいと顔馴染みの騎士達に言うと、何だか気不味そうな表情を見せる。えっ!何かあったの?もしかして、駆け落ちでいなくなったとか。
 騎士の1人が重い口を開く。フィークス卿は能力を評価されて、最年少で部隊長になったのだが、魔物討伐に部隊で森の奥に入った時に、新人の騎士を庇って大怪我をして、病院に入院中のようだ。右腕を失くしてしまったと言う。…どういうこと?右腕が無かったら、騎士を辞めるしかないじゃない。レジーナも初耳だったようで、言葉を失っている。お見舞いに行きたいと言うと、今日はもう遅くて面会時間は終わっているから、明日にしましょうと言うことになった。

 次の日、私とレジーナと護衛騎士2人で病院にやって来た。何て声を掛けようか?いや余計な言葉は傷つけるよね。なんて考えていると、病室に着いてしまった。護衛騎士達は何度か見舞いに来ているようで、気さくな感じに挨拶をして、病室の中に入っていく。私とレジーナは視線を一瞬だけ合わせて、騎士の後ろについていく。フィークス卿は私達を見ると、お見舞いに来てくれたことのお礼を言った後、気不味そうに、こんな腕になってしまい、今後は騎士も護衛も出来なくなるので、故郷に帰るつもりだと。大変申し訳ありませんと言う。レジーナはその痛々しい様子に耐えられず、涙を流している。私も堪えるのは無理だった。涙が溢れ出している。しかし、そんなのは私は許さないぞ!
 
「騎士の仕事はお好きでしたよね?」

「…はい。誇りを持ってやっていたつもりです。」

 そんな事を言われたら、出来るか分からないけどやってみようか。
 フィークス卿に腕を見せて欲しいと頼み、包帯でぐるぐるの腕を両手で触らせてもらう。あの大きくて強い手、戻ってこーい!と願いながら手に力を集中させる。戻れ!戻れ!今までで一番強い力を込める。まだまだもっと…。強い光がピカっと光る。眩しいと思ったら………破れた包帯が見える。そして、あの大きな手が、再生していた。私、やりました。やったー!レジーナや騎士達が驚いている。フィークス卿は言葉を失っていた。

 その瞬間、ゲホッ。うっ、血の味がするー。魔力を一気に使い過ぎたようだ。ゲホッ、気持ち悪い。ダメだ、気分悪い。

「レジーナ、ごめんね。ハァ、ハァ。今日は気分が悪くなってきちゃったから、この後は休ませてもらっていい?」

「マリー!!あなた、奇跡を起こしたわね。魔力が切れそうだから、休んだ方がいいわ。私が責任を持って連れて帰るから、安心して。」
「フィークス卿は、嫌でも復帰が決定したわね。待ってるわよ!じゃあ、また。」

 フラフラの私をレジーナと騎士の1人が支えてくれて、馬車に乗せられ、辺境伯邸に戻り休ませてもらうことにした。ベッドに横になり、そのまま深い眠りにつく私であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

処理中です...