元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
46 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

助けてね

しおりを挟む
 目覚めると、すっかり体力が戻ったようで、体がスッキリしている。あーよく寝たわね。外の天気もいいし、今日は魔物討伐に参加したいな。
 ベッドから立ち上がると、私が起きた事に気づいたのか、ドアをノックする音。どうぞーと言うと、メイドが入ってきて、すぐお嬢様をお呼びしますと。すぐにレジーナがやって来た。

「マリー!目覚めて良かったわ。気分はどう?」

「もう元気。ごめんね!迷惑を掛けちゃって。今日は魔物討伐に行きたいわ。」

「もう!何言ってるのよ。あの後3日も死んだように寝ていたのよ。今日は無理させられないわ。まだゆっくりしていて。」

「3日も?そんなに?」

「みんな心配してたのよ。お医者様は、魔力を一度に大量に使ったから、休めば元気になるとは言っていたけどね。この後、お父様達が顔を見に来ると思うわ。それと、騎士達がかなり心配してたけど、大丈夫だからとは言っておいたわ。」

「騎士で思い出したけど、フィークス卿は大丈夫だったかしら?」

「ふふっ。後で本人が直接来るだろうから、その時に聞きなさい。」

 ということは、退院出来たのね。腕はちゃんと動いてくれたかな?見た目は戻ったようだったけど、気分が悪くなり過ぎて、そこまでチェック出来なかったのよね。

 3日も寝ていたので、湯浴みして、着替えてスッキリしたら、レジーナ達家族と昼食を取った。ずっと寝てたから、食欲が凄かった。
 おじ様・おば様には無理をした事を注意されたが、大切な騎士を助けてくれてありがとうと言ってくれた。

 そして、その日の午後にフィークス卿が訪ねてきた。
 私は挨拶や会話より、フィークス卿の腕がちゃんと動くのかが気になってしまい、部屋にやって来たフィークス卿の腕を自分の手に取って、ちゃんと腕がついているか、関節が動くのかなどをチェックし始めてしまった。うん!一応動くし、見た感じは大丈夫そうね。
 感動の対面を期待していた、レジーナやおじ様達が、私を残念な人を見るように見つめていたことを、私だけが気付かないのであった。

「腕に力は入りますか?試しに私の手を握ってもらってもいいでしょうか?」

 フィークス卿は無言で私の手をぎゅっと握る。しっかり握れているよね?これは大丈夫そうかも。嬉しくて思わず笑みが溢れ、そのままフィークス卿を見上げる。あれ?フィークス卿の顔が赤い?フィークス卿は、私の手を握ったまま跪き、私の手の甲にキスを!

「マリーベル嬢。貴女のおかげで、私は騎士としての命を取り戻すことができました。貴女は自分の体よりも、私の腕の治療を優先する心優しい方。そんな貴女に出会えたことを嬉しく思います。感謝の言葉が見つからない程、深く感謝しています。どうかこれからも、ここで過ごす貴女の護衛騎士としていることをお許しください。命を掛けて貴女をお守りしたい。」

 フィークス卿の熱のこもったような、真っ直ぐな目。イケメン騎士に跪かれたうえに、この上目遣いは危険だわ!心の中で非常ベルがなっているもの。気をしっかり持たないと!
 レジーナやおじ様達が早く返事をしろと圧力をかけるように、私と目が合うと頷いている。

「フィークス卿の腕が治って、私もとても嬉しいですわ。私の大切な騎士様、これからもどうぞよろしくお願いしますわね。」

 恥ずかしいから、微笑んで誤魔化す事にした。
 ここまで感謝してくれてるなら、断罪されたり、命が狙われたりしても助けてね!!

 その後、フィークス卿が恐ろしいほど過保護な護衛騎士になってしまった。いつも近くにいて、やたら世話を焼きたがるし。レジーナや他の騎士達の暖かい目もやめろー!と叫びたかった。

 そしてフィークス卿だが、実は怪我した右腕は昔怪我で痛めたことがあって、少しだけ動きがぎこちなくなっていたらしい。それが、今回の治癒魔法でぎこちなさがなくなり、動かしやすくなったと、また感謝された。
 ズルい私はここぞとばかりに、もし私が本気で命を狙われたりすることがあったりしたら、助けてくださいねと頼んでおいた。フィークス卿は呼んでくれれば、何処にでも駆けつけますだって。やったわー!最強と言われる、辺境伯軍のエース騎士を味方につけたわよ!更にあざとい私は、上目遣いで約束ですよと念を押して伝えたのだった。

 レジーナに古傷の治療も出来るようになったらしいと話したら、急に真面目な顔になる。診て欲しい人がいるらしい。その人は、辺境伯家の分家である子爵家の子息らしく、フィークス卿と同じく将来が期待されていた騎士だったらしいが、落馬で脚を痛めてから、速く走れなくなったので今は騎士ではなく、辺境伯家の事務官をしているようだ。
 そんな事を聞いたら、診てみないとね。早速、その人の所に案内してもらい、事情を話して脚を診せてもらう。銀髪にグレーの瞳の美人さんだね。モテそうな子息だわ。
 骨とか見た目には、素人にはどこが悪いのか分からないな。こんな時は、前のサーラちゃんの時のように、全体に治癒魔法をかけてみようか。横になってもらい、腰から足の指先まで治癒魔法をかけてみた。どうだろう?立ってもらうと、脚が軽くなったと言う。走れるかな?試しに外に走りに行ってしまった。数分後、息切れして戻ってきた彼は、走れるようになりましたといい、ありがとうございますと騎士の礼をとる。良かったですねーと言っていたら、彼はレジーナの方を見つめ、

「レジー、脚が治ったようだ。また騎士として一からやり直すよ。」

「良かったわ。またフランの騎士姿を見ることが出来るのね。」

 あらまあ、そういう関係なの?2人共、幸せそうに微笑み合っているわね。ふふっ。

 中身アラサーは若い2人に気を利かせようと、無言でフィークス卿の手を引いてその場を離れたのであった。フィークス卿の顔が赤くなっていたのは気づかない私であった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

処理中です...