元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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ヒロインがやって来た

転校生とルーベンス先生

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 Aクラスのメンバーから、白い目で見られているにも関わらず、今日もAクラスの前をウロつき、警備騎士と口論になっているピンク。
 しかし、彼女が来てから、クラスの結束が強くなったようにも感じる。義兄やその友人達以外にも、高位の令息が在籍しているのを知っているのか、Aクラスの他の令息をギラついた目で見ていたり、話し掛けてこようとしたり、隙を見せるとグイグイくるので、単独で行動しないで、数人で行動するようにしているらしい。
 しかも、私達Aクラスの令嬢とも、あわよくば友人になって、そこから令息との仲を取り持ってもらおうとする下心が見える。友人がいれば、クラスに堂々と遊びに来れるだろうしね。腹黒達は、登下校の時に話しかけられたりしているようだ。みんなスルーしているようだが、不気味なので、やはり単独行動はしないでおこうと言う話になった。

 Aクラスを狙う女狐のようなピンクに、担任のルーベンス先生もついにキレたようだった。廊下でのルーベンス先生と、ピンクのやり取りが聞こえる。みんな何を話しているのか気になったようで、クラスの中が急に静かになる。ドア付近にいた令息は、さり気なくドアを少し開けた。…廊下の会話が聞こえるようにしたのね。

「Eクラスのあなたは、いつもここで何をしているのかと聞いているのです。Aクラスからは、貴女に対して、沢山の苦情が出ているのですよ。」

 ルーベンス先生もあんなに、冷たい声で話すのね。

「偶然通りかかってだけですわぁ。それより、どうして私はAクラスじゃないのですかぁ?確か席は空いてますよねぇ?」

「何度言っても分からない方だ!テストの点数が低すぎてEクラスになったと言っているでしょう。あんなに点数が低い生徒は、初めて見たと他の先生方はみんな話してましたよ。こんなフラフラしている時間があるのなら、授業の予習でもしたらどうですか?」

 すごい言われようね。ルーベンス先生がそこまで言うって、よっぽどね。

「何よ!ちょっとカッコいいからって、調子にのらないでよ。優しくしてくれたら、付き合ってあげても良かったのに、やーめた!アンタなんか、伯爵家の三男で継げる爵位もないくせに!上の兄2人よりも、出来がいいのに、長男が跡継ぎって家で決まっているから、全く評価してもらえなくて、不満が溜まっているんでしょ。可哀想ね!若くて可愛い私が、センセーを癒してあげようか?ふふっ。」

 あの子、先生に向かって何を言ってるの?すると義兄と友人の令息達が立ち上がる。文句でも言いに行くのかしら?しかし、その前にルーベンス先生が黙ってなかった。

「ハァー。私も随分と生徒に下に見られていたようだ。知らないようだが、私は王太子殿下が私の仕事ぶりを認めてくれたおかげで、子爵位を賜っている。身分でいうなら、ただの男爵令嬢の君より上だ。まぁ、そんなことは、どうでもいい。学園で教員にそのような物言いは、許されないぞ!分かっているな!」

 優しいルーベンス先生の口調が変わってしまった。あんな風に言われたら、怒るのは当然か。

「えっ?どういうこと?王太子が認めて爵位をくれた?嘘よ!出来がいいのに、誰からも認められないことを不満に思っている時に、ヒロインがその能力に気付いて認めることで、センセーは癒されるはずなのに。シナリオが変わったの?」

 ぶつぶつ言うピンクの声は、大きいからこっちにまで聞こえてくる。なるほど、ルーベンス先生も攻略対象者だったのね。そして、アンタがヒロインか!

「おい!先生を侮辱するのは止めろ!」

 義兄が怒ってるわね。義兄もルーベンス先生を認めているから、我慢出来なかったのね。

「君さー、若くて可愛いとか、先生を癒そうかとか言ってたけど、随分と性に奔放なんだってね。昨日は、カーン男爵令息で、その前はロベール準男爵令息、少し前はギロッグ男爵令息だっけ?友達がいないからって、そんな自分を安売りしなくても。ああ、一応言っておくが、私達Aクラスの子息は、アバズレは嫌いだから、近づかないでくれよ。本当に迷惑だから。」

 マジかー!ムーア侯爵令息、そこまで暴露しなくても。

「ああ。調べたけど、股を開くかわりに、自分が虐められていると噂を立てて欲しいって頼んだらしいぞ。本当に汚い女だ。」

「…どうしてバレてるの?アイツらがバラした?ちっ!せっかくヤってあげたのに。使えないわ。」

 ピンクの本性が出てきたようだ。
 しかし、デービス伯爵令息はどう調べたの?あの穏やかで優しいイメージの貴方から、股を開くって言葉は聞きたくなかったのだけど!
 廊下にいると思われる野次馬からは、「まあ!」とか、「やっぱりね」とか聞こえる。
 腹黒達は、笑いを堪えるのが大変らしい。みんな肩が震えている。私も涙が出てきそうだ。

「先生!私達はこの女が、先生に言っていた言葉を許すことが出来ません。学園の恥です。しかも、Aクラスはこの女のせいで、みんなピリピリしています。何とかなりませんか?」

 ウィリアムズ伯爵令息がルーベンス先生に訴えている。つーか、義兄と友人達による、ピンクの断罪劇みたいになってるわね。あの人たち、人の良さそうな顔して実は怖いのね。

「ええ、私もそう思います。今すぐ学園長に相談しようと思います。」

「私達も先生と一緒に行ってもいいですか?さっきの先生に対する、意味不明な言動も含めて、最近この女のせいで、いかに先生やAクラスのメンバーが迷惑を被っているのか、直接、学園長に訴えたいのです。よろしいでしょうか?」

「分かりました。では一緒に来てください。貴女も来てもらいます。」

「ふん!行けばいいんでしょ。」

 ルーベンス先生と義兄達と、警備騎士に連行されるピンクは、学園長の所に行ってしまった。

 ピンクはその後、無期限の謹慎処分になったようだ。いくら注意しても改善されないから、反省して改善されたと認められたら、登校の許可が降りるらしい。しかも、自分が虐められていると嘘の噂を流すようにしたなんて、かなり悪質と判断されたようだ。

 ピンクの体で買収され、噂を流した令息達も2週間の謹慎処分らしい。悪役令嬢にされそうになった、ミラー伯爵令嬢には、令息達の男爵家から謝罪をしたと聞いた。もちろん、ピンクの家のウッド男爵家も謝罪をしたらしいが、あまり意味のない謝罪になりそうね。ピンクは反省しなさそうだもん。

 ピンクが学園に復帰するのがいつになるのかは、誰にもわからない。進級も難しいだろうね。でも、貴族である以上はここは卒業しなければいけないらしいから、ちゃんと復帰しないといけないよねぇ。

 ピンクが謹慎に入って数日経った日、ユーリアがすごいことを口にする。
 ユーリアが面白がってピンクに影を付けているらしいのだが、その影の報告によると、ピンクは身分と年齢を偽って、娼館でアルバイトしているようだと言うのだ。はぁー!破天荒なヒロインだな。
 いや、もしかして生活が苦しいのかなと、みんな考えたようだが、ウッド男爵家は娼館で働かなくてはいけないほど、困窮するレベルではないという。裕福ではないが、貧乏というほどでもないらしい。ピンクも含めて、子供達は放置に近い状態だが、普通に生活は出来るはずだというのだ。恐らく、自分で自由にできるお金が欲しいのではとのこと。なるほど、女子大生が小遣い稼ぎに風俗でバイトする感覚か。
 しかも、見た目は若くて可愛いから、貴族や裕福な商人が利用する高級娼館で働いているらしい。これって、学園にバレたらヤバいよね?退学とかってあるのかしら?
 ピンクが何を考えているのか、全く分からないが、逞しい子ではあるわね。ユーリアは、あの子は何かやらかしそうだから、しばらくは影を付けておくと言っていた。

 頼もしい友人達や義兄のおかげで、今のところは平和な学園生活を送れている私だ。
 
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