元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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ヒロインがやって来た

公爵家の夜会 1

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 今日はファーエル公爵家で、開催される夜会の日だ。公爵家の夜会は格式が高いから、伯爵家から上の身分の貴族しか招待されない。招待されている方のパートナーとしてなら、下位の貴族でも一緒に入れるが、上位貴族しかいないパーティーなので、子爵家だろうと、男爵家だろうと、もしパートナーして参加するなら、マナーやダンスはそれなりのものが求められると聞いている。

 友人の腹黒達はみんな招待されているので、数日前からドレスや、誰にエスコートしてもらうのかなどの話で、盛り上がっていた。みんな、恋人や最近仲が良い令息にエスコートしてもらうらしい。こんな話も楽しいよね。若いっていいわね。
 私も恋人が欲しい…と言ったら、貴女は独身の大物の中から、好きなのが選べるでしょうと言われた。いや、もっと歳が近くて中身は大人な人がいいのですけど、と言ったら、贅沢だと言われてしまった。
 老後が心配な私は、歳の差があり過ぎるのも心配になってきたのだ。だって中身は心配症のアラサーだからね。若い時は、愛があればとか思うかもしれないが、夫になる人と歳の差があって、女性の方が長生きすることを考えると下手すると、20~30年くらい自分が、長生きしちゃうかもしれないんでしょ。何かそれも不安なのよねぇ。1人寂しい老後というのもね。

 今日はフィル兄様がエスコートすると、すでに決まっていた。

「マリー、分かっていると思うけど、公爵家の夜会は私がエスコートするからね。母上から、フォーレス侯爵家には許可は取ってもらっているから。わかった?他の子息に誘われても、きちんと断るようにしてね。」

 他の子息で、誘ってくれそうな人なんていませんが!

 今日はおば様の趣味で、おば様が用意してくれた、薄めのサーモンピンクのドレスだ。花が散りばめられて、ふんわりとしたデザインだ。今しか着れない、かわいいデザインね。でも最近、いい感じに育ってきた胸を適度に主張しており、子供っぽくは見えないからいいか!

 フィル兄様は騎士服ではなく、珍しくフロックコートだ。この人は何を着ても似合うから問題無いけど、ネクタイが私のドレスと同じ素材と色のネクタイなんですけど。お揃いってやつだよね、それは?

「フィル兄様、そのネクタイでよろしいのですか?」

「いつも騎士服ばかりで、このネクタイしかないんだ。でも気に入っているから、いいんだよ。」

「…そうですか。」

 ネクタイなんて、いくらでも持ってんだろ!って言いたいのを我慢する。そんな笑顔で言われたら何も言えないよね。

 笑顔のおば様に見送らせて、出発する私達。馬車の中では、フィル兄様はぴたっと私にくっついて座る。

「フィル兄様。最近、座る位置が近過ぎるような気がするのですが?」

「そんな事ないけど。それとも抱っこして座りたかった?」

「いえ。大人なので、これで平気ですわ。」

「大人ねぇ。マリー、今日はあまりお酒は飲まないようにね。」

「はい。少しだけにしますわ。」

「他の令息について行かないようにね。」

「そのような令息はいませんから、ご心配なく。」

 心配症のフィル兄様とこんなやり取りをしていたら、ファーエル公爵家に着いたようだ。まあ、なんてすごいお屋敷。中庭が綺麗なのよね!ん?何で知ってるのだろう?でどこか懐かしさもあるような気がするが。気のせいか。

 会場入口では、ファーエル公爵と夫人、子息である生徒会長が迎えてくれた。3人に挨拶をして会場に入る。すでに沢山の招待客が来ていた。腹黒達の姿も見える。

「フィル兄様、もし誰かと話がしたいとか、ダンスがしたいとかあれば、私は待っていますから行ってきて下さいね。」

「そんなことを言って、マリーは何がしたいのかな?」

「私は壁の花をやってみたいのです。」

 美味しいものでも食べながら、人間観察したい!

「…それは無理だろうね。」

 今日は目立たず、地味にひっそりと、公爵家のご馳走様を食べるって決めてきたの。誰にも邪魔させないわ。
 気づくと、フィル兄様は近衛騎士団の友人達に話しかけられている。みんな騎士服が似合っていて、キラキラしているわ。他の令嬢達は、このモテ男軍団をチラチラと見ている。この人達が遊び人の巣窟と言われる近衛騎士団の人達なのね。ふーん。あの中の誰かが、フィル兄様にこの前のことをバラしたのかしら?口が軽くて嫌な感じだわ。あっ、なんか見られてるわね。フィル兄様の名誉の為に、愛想は良くしておくか。私は渾身の笑顔を向ける。すると、フィル兄様の友人達も笑顔を返してくれた。うわー!あの人達、絶対に自分達はかっこいいって分かってるわね。うん、苦手ね。あの人達は何だか楽しそうにしているから、私も少し自由にみて回ろうかなーと考えていると、私を呼ぶ声がする。

「マリーベル嬢、少しいいか?」

「はい。生徒会長お呼びでしょうか?」

「マリーベル嬢は、恋人とか婚約者とかはいないよな?」

「はい。いませんけど。」

「今日、一緒に来たスペンサー卿は?」

「従兄妹ですけど。」

「ただの従兄妹?ドレスとネクタイがお揃いだったが?」

「伯母のスペンサー侯爵夫人が用意してくれたのです。まあ、仲良し兄妹みたいな感じです。」

「…くっ、くっ。そうか!じゃあ、少しお願いがあるのだが。」

「はい。私が出来ることでしょうか?」

「ああ、この後のダンスを一曲お願いしたいのだが。よろしいか?他に頼めそうな人がいなくて。」

「生徒会長なら、どの御令嬢も喜んで引き受けてくれるかと思うのですが、私で良いのでしょうか?」

「ああ!ぜひマリーベル嬢にお願いしたい。」

「あまり、ダンスは得意ではないのですが、よろしいですか?」

「大丈夫だ。ダンスが終わったら、君が好きなスイーツを沢山用意しよう。さっきから食べ物を眺めていたようだから、好きなんだろう?」

「お恥ずかしいですわ。バレてしまいましたが、スイーツが大好きなのです。わかりました。ダンスを踊ったら、美味しいスイーツが食べれるのですね?」

「くっ、くっ。ああ、約束しよう。」

 すると、生徒会長の後ろから、生徒会長の両親である公爵様と夫人が登場する。げっ!大物が出てきたわ。

「まあ!マリーベルちゃんが、一緒に踊ってくれるのね。良かったわ!よろしくね。」

「マリーベル嬢、息子が突然頼んでしまって申し訳ない。この後、直ぐにダンスだから、よろしく頼んだよ。」

 公爵夫妻はご機嫌だ。この家族も、レジーナの家と一緒で美形だわね、眩しいもの。しかし、公爵様は直ぐにダンスって言った?それってもしかして…?
 すると、音楽が流れる。夜会が始まるようだ。

「マリーベル嬢、私と踊って頂けますか?」

 げっ!ファーストダンスだったの?聞いてないんだけどー!

「はい。喜んで。」

 多分、顔が引き攣ってるわね。また、変に目立ってしまっているじゃないの。公爵家に混ざってファーストダンスなんて。

「マリーベル嬢、今日は本当に悪かったな。」

「まさか、ファーストダンスを踊らされるとは、思っていませんでしたわ。」

「怒らないでくれ。他に誰もいなくてね。マリーベル嬢が引き受けてくれて良かったよ。殺気が気になるけど。」

「殺気?どこからでしょう?」

「気が付いてないなら、気にしない事だ。」

「もしかして、生徒会長に憧れる令嬢方では?私この後、虐められたりしないですよね?」

「マリーベル嬢なら大丈夫だろう。私もついてるし、アルベルトも、スペンサー卿もいるだろう?それに、向こうには、叔母上がいる。今来たばかりのようだな。」

 えっ?叔母上って?生徒会長の視線の方を見ると…。なんと、殿下と妃殿下、シリル様がいた!妃殿下の実家の夜会に来たのね。妃殿下が笑顔で手を振ってるわ。

「こんなこと、私が言うのもどうかと思うのだが…。君はそろそろ婚約者を決めた方がいいと思う。」

「婚約者ですか?今すぐ?」

「ああ。君は周りが放っておかないだろうから、見ていて危なっかしい。君をきちんと守れる立場の人を選ぶべきだな。」

「考えてみますわ。」

「でも、まだ自由にしていたいんだろう?君は年上の身分の高い人に好かれているようだからな。でも、年上過ぎると、若くて可愛い君を心配するあまり、束縛したり、急いで結婚しようとするかもしれない。それは、君は望んでないだろう?」

 可愛いって言ってくれた?ありがとう生徒会長。

「身内以外で、初めて可愛いって言われましたわ。嬉しいです!ありがとうございます。」

「…そこなのか?みんなそう思っているだろう!」

「でも、さすが生徒会長ですね。確かにまだ、自由でいたい気持ちはあります。生徒会長から見たら、バカらしいと思うかもしれませんが、普通に恋がしてみたいですし、学生でいる今を楽しみたいという気持ちがありますわ。」

「いや、バカらしいと思わないぞ。私もそう思う。そうか…、恋か。」

「こんな話をしたのは、生徒会長が初めてですわ。ふふっ。偶にはこんな話も楽しいですわね。」

「…ああ、そうだな。君と話していると楽しい。」

 楽しく会話をしているうちに、曲が終わる。そのまま公爵閣下にダンスに誘われて踊る私。ファーエル公爵家のことを色々と教えていただいた。まぁ、これも社会勉強ね。






 


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