元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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ヒロインがやって来た

公爵家の夜会 2

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 公爵閣下とのダンスを終えた私。ふぅー、もう今日はダンスは終わりでいいわよね。

「マリーベル嬢、美味しいスイーツを用意させているから、テーブルに案内するよ。」

 おっ!生徒会長は早速約束を守ってくれるらしい。やったね。公爵家のスイーツは美味しいって聞いているからね。しかし、その時だった。

「マリー、私のかわいいパートナーはどこに行ってしまったのかと、心配していたよ。」

 笑顔の恐ろしい、フィル兄様だった。ひぃー、怖いわね。

「ファーエル公爵子息、私のマリーがお世話になったようですね。」

「兄様、偶然近くにいた私が、ダンスを頼まれただけですわ。生徒会長にはいつもお世話になっているのです。」

「スペンサー卿、パートナーのマリーベル嬢をお借りして、申し訳ありませんでした。良かったら、スペンサー卿も一緒に、お茶でもいかがでしょうか?」

「いや。私はまだマリーとダンスをしてないので。」

 えー!そうきたの?いや、スイーツを楽しみにしていた私は、ここは絶対に引けないわね。ちょっと痛い女に見えるかもしれないけど、やってみよう。

 私は得意の?上目遣いでフィル兄様を見つめ、あの辺境伯の夜会の男爵令嬢のように、腕を絡めてみた。

「兄様。私、ダンスが緊張し過ぎてしまって、少し喉が渇いてしまったのです。少しでいいので、休憩したいですわ。休憩したら、兄様とダンスは絶対に踊りたいので、一緒にお茶しましょう。ダメでしょうか?」

 『ダメでしょうか』に合わせて、こてんと首を傾げてみたぞ。自分でも恥ずかしいが、フィル兄様どう?公爵家のスイーツは、今日じゃないと食べれないの。お願い!

「……マリーがそこまで言うなら。」

 やったー!!

「兄様、ありがとう。」
「生徒会長、よろしいでしょうか?」

「ああ、勿論だ。こちらにどうぞ!」

 生徒会長、目が笑っているよね。
 会場の隅にあるテーブル席には、沢山のスイーツや、サンドイッチが並んでいる。わー!すごい、おしゃれね。

「生徒会長、とても美味しそうですわ。頂いてもよろしいでしょうか?」

「くっ、くっ。どうぞ。何が食べたい?とってあげよう。」

「ありがとうございます。では、コレとコレと、アレをお願いします。」

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。兄様は、私が取りましょう。どれがよろしいでしょうか?」

「マリー、私は飲み物だけで平気だよ。」

「そうですか。美味しそうなのに…。生徒会長もお取りしましょうか?」

「私も飲み物だけで大丈夫だ。ありがとう。」

 公爵家のスイーツは、王宮のスイーツと同じくらい美味しかった。これは、気を付けないと食べ過ぎちゃうわね。

「生徒会長、とても美味しいですわ!」

「くっ、くっ。そうか、料理人に伝えておくよ。」

 美味しいスイーツを堪能していると

「ご機嫌よう!」

 ん?妃殿下や王太子殿下、シリル様がやって来た。慌てて立ち上がり、カーテシーをする。

「マリー、気にしないで食べなさいな。」

 妃殿下は、今日も優しいわね。

「恐れ入ります。」

「叔母上達も、お茶はいかがです?」

「ええ、頂くわ。」

 妃殿下達も椅子に座る。

「随分と珍しいメンバーでお茶をしているね。」

 殿下もそう思ったのね。

「今日はマリーベル嬢にダンスに付き合ってもらう代わりに、美味しいスイーツをご馳走する約束をしたのですよ。」

「マリーはスイーツに釣られたの?」

 殿下、笑ってるわね。

「公爵家のスイーツは美味しいと聞いてましたので。でも、生徒会長は、ファーストダンスだとは教えてくれてなかったのです。少し、緊張してしまいましたわ。」

「アラン。貴方、ファーストダンスだって言わなかったの?なかなかやってくれるわね!」

「パートナーがいなくて困っていたら、近くにマリーベル嬢がいたので。」

「マリーは今日は、スペンサー卿にエスコートしてもらったのかしら?」

「はい。今日は、兄様と来ましたわ。」

「へぇ、フィリップもマリーはエスコートするんだね。」

「ええ。マリーは、特別なので。」

 ふっ!またシスコン発言が出たわね。気にしてられない私は、黙ってケーキを食べている。

「くっ、くっ。マリーベル嬢は全く気にしないのだな。」

「生徒会長、さっきから笑いすぎですわよ。公爵家に来ないと食べれないスイーツを、夢中になって堪能していて、つい無言になってしまっただけですわ。」

「ああ、失礼。怒られたくないから気を付けよう。」

「まあ!尊敬する生徒会長を、私は怒りませんわよ。」

 この人は常識人だと知ってからは、割と仲良く話が出来るようになったのよね。

「へぇ、アランとマリーは、仲がいいんだね。」

「マリーベル嬢は、面白いので。殿下と叔母上が可愛がるのは分かりますね。」

「…だそうだよ、シリル?」

「そのようですね。」

 みんなで楽しく会話している時だった。

「ご機嫌よう!アンネマリーさん、私にそちらの方々を紹介してくれない?」

 そこには、ウッド男爵令嬢こと、一応はヒロイン?というか、私達はピンクと呼んでいる令嬢がいたのだった。
 えっ?何で上位の貴族しか招待されないはずの公爵家のパーティーに、男爵令嬢のピンクがいるの?しかも、相変わらず、私の名前を間違えているという。
 ピンクは、空色のゴテゴテしたドレスを着ている。おおー!胸がセクスィーに開いてるわ。上から覗きたいかも。
 じゃなくて、このピンクをどうしようか?でも、名前を間違えられているし。とりあえず、スルーしてピンクの反応を伺うか。
 私は、無視してケーキを食べていた。殿下と妃殿下は、私を面白そうに見ながらも、虫けらを見るような目でピンクを見ているわね。生徒会長は、青筋が立っているわ。フィル兄様は、無言で冷気を漂わせている。シリル様は無表情でお茶を飲んでいる。
 周りが、私達を見て騒ついているようね。だって、このテーブルには大物ばかりで、一介の令嬢が馴れ馴れしく話し掛けてはいけないって、普通は分かるもの。

「ちょっと、アンネマリーさん!私達は学園の同級生でしょ。無視しないでよ。」

 しつこいが、私はアンネマリーさんではない。さて、どうしてくれようか。ん?あれは、レジーナやミッシェル、向こうにはエリーゼやユーリアがいる。えっ?やっちまえって?腹黒い笑みでこっち見ているわね。

「王太子殿下、妃殿下、少し失礼してもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わないよ。」

 食べている手を止めて、立ち上がる私。よし、初対面の殿下達の前で自己紹介させてやろうか。

「貴女はどちらの御令嬢でしょう?」

「私の名前?教えてなかったっけ?アンジェ・ウッドです。」

「ウッド男爵家の御令嬢でしょうか?」

「なんだ!ウッド男爵家って知っているじゃない。アンネマリーさんは、意地悪ね!」

「ウッド男爵令嬢、アンネマリーさんって、どなたを言ってらっしゃるの?」

「はぁ?本当に意地悪ね!あんたは、アンネマリーでしょ?」

「人違いですわね。私はアンネマリーさんでは、ありませんわ。人の名前を間違えて呼ぶなんて、何て失礼な方なのかしら。しかも、男爵令嬢が侯爵令嬢の私に向かって、あんた呼ばわりするなんて、ウッド男爵家ではそのように、教育なさっているの?」

 煽って煽って、みんなに変な令嬢だとアピールさせてやろう。

「えっ?どう見たって、アンネマリーでしょ。嘘つかないでよ?分かっているんだから。」

「話になりませんわね。では、貴女の知っているアンネマリーさんには、どちらでお会いになったのです?」

「はぁ?学園で会ったでしょ。あなた、恋人のアルさまを放っておいて、他の男を侍らせていてずるいわよ。私に誰か紹介しなさいよ。」

 なるほど…、義兄は私の恋人だと思っているのね。義兄は私を義妹と何度か言ってたはずなのに、聞いてなかったのー?というか、ピンクのメチャクチャな物言いに、みんな引いているわね。ふふっ。ピンクはヤバい奴だってアピールになっているわ。後ろで、腹黒達は肩を震わせているわ。あれっ?義兄や友人の令息達も来たわね。あれは、怒ってるわね。

「貴女の言う、私の恋人とは誰のことなのです?」

「はあ?アンタ、アルベルト様と付き合ってるんでしょ?」

 もう訳のわからない、おかしな令嬢だとみんなが気付いたところで、私からも正直に話すか。

「付き合っていませんが。兄妹ですし。」

「はぁ?兄妹って?あんた、フィル様の妹のアンネマリーでしょ?」

 ピンクは混乱している。フィル兄様は、殺気が漂ってきたから、もう、そろそろ限界ね。

「はぁー。本当に何を言ってるのかしら?私はアルベルトの義妹のマリーベルと言うものですわ。」

「えー?シナリオが滅茶苦茶。アルさまの義妹は、体が弱くて死んだんじゃなかったの?」

「元気にしてますけど。」

 後ろで殿下と、妃殿下が吹き出しているわね。腹黒達は涙目になってるし。義兄や友人達、フィル兄様は恐ろしい殺気を放っている。

「ところで、ウッド男爵令嬢は、今日はどなたと一緒にいらしたのでしょう?」

 誰かが一緒だってことよね。ピンクを招き入れた、犯人の名前を聞いておかないとね。









 

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