元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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ヒロインがやって来た

公爵家の夜会 3

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 このピンクは誰に連れられて、公爵家の夜会に来たのかしら?

「私が誰と来ようがアンタに関係ないでしょ。」

 ふーん。言えないのね。

「そうですわね。貴女の友人でもない私には関係ありませんわ。では、失礼いたします。ご機嫌よう。」

 私はテーブル席に戻ろうとする。すると、

「そ、そんな冷たいこと言わないで。話すから、あちらの方々を紹介してほしいの。」

 よっぽど、あの大物達と知り合いになりたいらしい。

「いえ、貴女と私は関係ないので失礼しますわ。」

「何なのよ!言えばいいんでしょ。ソウバー伯爵よ。」

 名前を聞いても、まだ王都に来て一年経ってない私は知らない人物だ。なので、

「ソウバー伯爵のパートナーで来たらしいですわよ、生徒会長。」

 一応、今日の主催者の子息に振ってみた。

「そうか。貴族学園で1番の問題児で、礼儀知らずで、誰も関わりたくない男爵令嬢の君を、うちの夜会に連れて来たのはソウバー伯爵だったのか。」

 生徒会長もピンクには言うよねー。

「殿下、ソウバー伯爵を呼んだ方がよいかと。」

「ああ、シリルもそう思った?今すぐ呼んでもらおうか。」

 王太子殿下が従者に指示を出すと、実はすぐ近くにいたらしく、慌てて出て来る伯爵。何だか幸が薄そうな、詐欺にあってそうなアラサーくらいの伯爵さまだった。

「ソウバー伯爵、この男爵令嬢とはどういった関係だ?」

 殿下の口調がいつもと違う。怒っているのかしら?

「親しい友人でございます。」

「親しいとは?恋人か?」

「…そのような、関係であると思います。」

「はあ?恋人じゃないわよ。」

「黙れ!発言を許してない!ソウバー伯爵、どうしてこんな騒ぎをしている令嬢を止めないのだ?」

 王太子殿下は、さすが次期国王だけあって、怒ると怖いのね!

「申し訳ありませんでした。」

「さっさと連れて帰れ。目障りだ!」

「ちょっと!何で帰らなくちゃいけないの?殿下!勘違いしないでください。この人はただの知り合いです。私の運命の人は別にいるのぉ。」

「黙れと言っているだろう!お前は、王家の夜会や茶会には来ないでくれ。それと、随分とマリーベルに対して酷い態度をとっているようだな。国王の姪であるマリーベルに、そのような態度を取るというのは、王家を敵に回すということを知らないらしい。ウッド男爵家には、王家から苦情を申し入れておく。」

 殿下がピンクをそこまで怒ってくれるなんて。ありがとう。私は家臣の一人として、一生殿下についていきますからね。
 しかーし、ピンクはヤバい人らしい。

「マリーベルさん、ごめんなさい。こんな、私だけど、ぜひ貴女の親友になりたいわぁ。これからは仲良くしましょう。」

「シリル、あの女、言葉が通じないの?流石に私も疲れたのだけど。」

「殿下、不敬罪で騎士に拘束させましょうか?」

 しょうがない。アレを聞いてみるか。

「ウッド男爵令嬢、ソウバー伯爵は、あなたのお得意様の1人なのかしら?」

 ピンクの顔色が変わる。やっぱり高級娼館で知り合ったってことか!

「…何で知ってるの?」

「あら、私のクラスでは、みんな知っている話でしてよ。余計な事を話されたくないなら、早くお帰りになることね。それと、私達Aクラスのメンバーには、今後近づくことも、話し掛けてくる事も止めてくださいませ。そんなことをされたら、貴女の家業の話を、うっかり聞きたくなってしまうので。」

 貴族令嬢が謹慎中に、娼館でバイトなんてバレたら大問題だもんね。

「くっ。分かったわ!帰るわよ。」

 ピンクは悔しそうに帰って行った。思わずユーリアを見つめる私。ふふっ、あなたのおかげよ!ユーリアもニヤッと笑い返して来たわね。

 ふぅ。疲れたわね。とりあえず、さっきの残りのケーキを食べてしまおう。美味しいから、残すのは勿体ないからね。
 テーブルに戻り、再びケーキを食べ始める私。ああ、美味しいわ。

「くっ、くっ、くっ。マリー、まだ食べれるの?」

 あっ。殿下は怒りが収まったようで、良かったわね。

「美味しいので、勿体ないと思いまして。」

「いいのよ、沢山食べなさい。」

 妃殿下も、目が笑っているけど、口調は優しいのだ。

「マリーベル嬢は、スイーツが好きなのだな。今度は、美味しいスイーツの店に行こうか?」

「シリル様の知っているお店ですか?都合が合えば、ぜひ。」

「ああ。じゃあ、殿下から休みを頂けたら、連絡するよ。」

「はい。楽しみにしていますわ。」

 ん?フィル兄様から、また冷気が。怒ってる?ヤバいわね。ちょうど、ケーキを食べ終えたし。

「生徒会長、本当に美味しいスイーツでしたわ。ありがとうございました。」

「いや。こっちこそ、ありがとう。さっきもウッド男爵令嬢を黙らせてくれて、助かったよ。」

「王太子殿下、妃殿下、シリル様。ちょっとダンスに行ってまいりますわ。失礼します。」

「ああ。行っておいで。」

「フィリップ様。私と踊って頂けますか?」

 フィル兄様に、手を差し出す私、

「マリー、調子が良過ぎるよ。」

「ふふっ。ごめんなさい。」

 フィル兄様は、恥ずかしそうに私の手を取る。ご機嫌取りをしないとね。後で怒られちゃうからね。

「マリー、ダンスが終わったら、少しバルコニーで涼みたい。」

 ダンスを踊りながら、フィル兄様が言う。

「そうですわね。さっきのウッド男爵令嬢で私も疲れてしまいましたわ。」

「マリーはお転婆だから、見ていてハラハラするよ。無理に一人でやり合わないで、助けを呼んで欲しかった。」

「そうですわね。何かあれば、フィル兄様が助けて下さい。しかし、さっきから、沢山の令嬢がフィル兄様を見ていますが、他の御令嬢とダンスはしないのですか?」

「ああ。他の令嬢とはダンスは必要ない。」

 せっかく、モテるのねー。そして、曲が終わりバルコニーの方に向かおうとした時であった。

「スペンサー卿、ご機嫌よう。」

 おっ!積極的にフィル兄様に声を掛けて来た令嬢が来たぞ!キツめな美人だわ。悪役令嬢役もこなせそうね。フィル兄様よりは年下かな。結婚適齢期?この世界では、行き遅れスレスレくらいの年齢かな?取り巻き2人連れていて、いい感じだわ。もう少し若ければ、悪役令嬢にスカウトしたかったのに。

「シナー公爵令嬢、ご機嫌麗しゅうございます。」

 なんと、公爵令嬢らしい。ますます悪役令嬢ピッタリじゃないの。しかし、公爵令嬢が行き遅れなんてあるのかしら。縁談なんていくらでも来そうなのに。

「スペンサー卿が珍しく、ダンスをなさっていましたので、興味深くて声を掛けてしまいましたわ。そちらの御令嬢は?」

「従兄妹のマリーベルです。マリーベル、こちらはシナー公爵令嬢だ。」

「マリーベル・フォーレスと申します。よろしくお願い致します。」

「まあ、可愛らしいですこと。スペンサー卿も、妹のように可愛がってらっしゃるのね。」

 あら、この方はフィル兄様を狙っているのかしら。アンタなんて、妹としか思ってないんだから、勘違いしてんなよって牽制してきた?こんな小娘相手に、余裕がないのね。うんうん、私も婚活アラサーやってたから、行き遅れになりそうで焦る気持ちは分かっているわよ。しょうがないなぁ。優しい私が、悪役令嬢に夢を見させてあげちゃうわ。

「まあ、なんて美しい方なのかしら。フィル兄様、私のような小娘だけでなく、このような素敵な大人の方とも、踊ってらして。私は飲み物でものんで待ってますわ。」

「マリー、何を言ってるのかな?」

 フィル兄様の笑顔が怖いわね。でも、悪役令嬢だって、かっこいいフィル兄様とダンスしたいわよね。

「だって兄様、高貴な公爵令嬢の方が、わざわざダンスの話題をしに来るなんて。きっと兄様とダンスがしたいのではなくて?」

「貴女、何を言ってるの?」

 悪役令嬢が怒っている?

「まあ、勘違いでしたら、申し訳ありません。」

「兄様、私の勘違いだったようです。」

「ああ、マリーの勘違いだ。」

 でも、怒っているようで、残念そうにしている悪役令嬢。

「でも、せっかくなので、私以外とも踊ってくださいませ。」

「マリー、後でゆっくり話そうね。シナー公爵令嬢、踊りたいですか?」

 兄様、踊りたいですかって。冷たいわね。公爵令嬢に対して、その言い方はどうなの?フィル兄様も王族だから言えるのよね?

「…ええ。」

 何だ、やっぱりフィル兄様と踊りたかったのね。無表情のフィル兄様と、顔が少し赤い、悪役令嬢は踊りに行った。

 どれ、私はジュースでも飲もう。飲み物コーナーはどこかな。

「良かったら、どうぞ。」

 悪役令嬢の取り巻きの、1人が飲み物を持ってくる。あの顔は何か企んでる顔ね。
 私に近づいて来た、取り巻き令嬢。ああ、ぶどうジュースね。なるほど…。来るわね。

「きゃあ、ごめんなさ…、、えっ?何が?」

 ぶどうジュースは私から、跳ね返され、取り巻き令嬢のドレスに、かかってしまった。
 気付くと、後ろにレジーナやミッシェル達がいて、クスクス笑っている。あら、腹黒達はそこにいたの。

「まあ、大変。早く着替えた方がいいのでは?」

「あなた、私に何をしたのよ?」

「私は何もしてませんが。」

「嘘よ!何で私にジュースが飛んでくるのよ。」

 ジュースのグラスを持ったまま、怒る取り巻き令嬢。

「あら、ご自分で溢されたのでは。」

 2人でやり合っていると、腹黒達が加勢する為にこっちに来るようだ。しかし、

「おい!何をしているんだ。」

 あれ?この声と、殺気は…。








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