元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
140 / 161
南国へ国外逃亡できたよ

閑話 オスカー 1

しおりを挟む
 貿易商をしていて莫大な資産を持つ、伯爵家の三男として私は生まれる。末っ子の私は、2人の兄よりも要領がよく優秀だと言われた。そんな兄達とは仲は良かったし、裕福な家門で何の不自由もなく育った。

 家業は兄2人が手伝っていて、何の問題もなかった。それで剣術が得意な私は、近衛騎士団に入ることにした。
 両親譲りで見目がいいのと、三男とはいえ、金持ちの伯爵家の子息ということでモテていた私は、近衛騎士団に入り、更にモテるようになる。特に好きになるような令嬢はいなかったが、遊びでもいいと言ってくれる令嬢と時々、一晩過ごすくらいのことはしていた。特に何の感情もないが、近衛騎士はみんなモテるので、みんなそんな事はやっているらしい。

 近衛騎士として数年が経つ頃、南国にいる義理の伯母の家に養子に行くことが決まる。その家は、亡くなった父の兄である伯父が、婿養子に入っていた侯爵家だ。貿易で南国に行っていた伯父が、侯爵令嬢と恋に落ちて結婚し、婿養子になったらしい。そして、次男であった私の父が、伯爵家を継いだということなのだが、その侯爵家で伯父も従兄弟になる子息も亡くなり、跡継ぎが必要となったようなのだ。伯父や従兄弟に似ていて、更に私の両親から、私が優秀だと聞いたらしい伯母が、ぜひ養子に来て欲しいと言ってくれたのだった。
 両親は喜んでいたし、特に何の目的もなく生きていた私は引き受ける事にした。その時に、伯母は私に言った。

「私は恋愛結婚だったの。だから、もしオスカーも好きな人がいるなら、一緒に連れてきてもいいのよ。結婚出来るように、私が後押しするから。そのかわり、侯爵家を守るために力を貸して欲しいの。お願いね。」

 伯母の言葉に頷いたが、その時の私には、まだ特別な感情を持てるような相手はいなかった。

 しばらくして、今年のデビュタントの夜会が王宮で開かれる。私は近衛騎士の仕事が入っており、夜会には出ていなかった。その翌日、近衛騎士の同僚達が噂話をしている。何かあったのかと、聞いてみると昨夜のデビュタントの話であった。

「昨夜、デビューしたスペンサー卿の従姉妹の姫君がとても綺麗でビックリしたよ。しかも、綺麗なだけじゃなくてダンスも上手いし、国の権力者が次々とダンスに誘っていて、普通の令息は近づくことも出来なかったんだ。」

「まるで妖精のようだったな。一曲くらいダンスしてみたいけど、難しいだろうな。」

 近衛騎士という職柄、美しい令嬢には見慣れているはずの同僚達が、そこまで言うなんて。よっぽど綺麗なんだろうと思った。その後は仕事もあって、彼女のことはすっかり忘れていた。しかし、しばらくしてから、噂の彼女に会うことになる。

 偶然勤務した日に、彼女が王太子殿下や妃殿下との茶会で王宮にやって来たのだ。そして偶然、私は来客の案内兼護衛係であった。
 初めて見た彼女は想像以上であった。他の近衛騎士達が、あんな風に噂をするのが分かる。美しいプラチナブロンドに、水色の大きくて綺麗な瞳、美しいが、愛らしくもある整った顔。
 一介の近衛騎士の私にカーテシーまでして、丁寧に挨拶する姿を見て、私は一瞬で恋に落ちてしまったようだ。
 胸の中がドキンとするが、平静を装って彼女をエスコートする。私の手に乗せられた、小さな手が可愛い。彼女の声がもっと聞きたくて、『もう少し歩きますが、大丈夫でしょうか?』と、いつもなら質問しないことを聞いてしまった。その質問にも嫌な顔をせず、笑顔で返してくれる彼女。
 その時に私は思った。彼女が欲しいと…。

 彼女に会いたくて、夜会や茶会に積極的に出席するが、なかなか会う機会がない。会うことが出来ても、高位の貴族令息が一緒にいて、話しかけることも出来ないのだ。そんな時、彼女とスペンサー卿が恋人同士になったと耳にする。
 最近のスペンサー卿は、令嬢と遊んだり、付き合ったりといったことは全くしていないようで、仕事を終えると、急いで帰って行く。スペンサー卿と仲の良い同僚達は、スペンサー卿はかなりフォーレス嬢に本気らしいと話していた。彼女をマリーと呼び、早く婚約を認めて欲しいだとか、結婚したいだとか話していると言う。その話を聞いて、何とも言えない気持ちになる。イライラするような、心が痛いような。
 …ああ、これは嫉妬だ。スペンサー卿に私は嫉妬をしているようだ。

 しかし、スペンサー卿と言えば、私の従姉弟のシナー公爵令嬢が執着しているはず。あの悪女が2人の関係を黙っていないだろう。そう思った私は、シナー公爵家の分家になる下位の貴族令息達に探りを入れた。彼らは、いつもシナー公爵令嬢にいいように使われているから、何か知っているはずだと思ったのだ。
 彼らに探りをいれたら、予想通りだった。夜会で媚薬を盛って、フォーレス侯爵令嬢を襲ってしまえと言われたと話していた。それを、スペンサー卿に見せれたら最高だとか、上手くいけば彼女の婚約者になれるかもとか言われたと。しかし、フォーレス侯爵令嬢は常にスペンサー卿か、彼女の義兄や高位の令息が近くにいるから難しいことや、王太子殿下が可愛がっている彼女に乱暴したら、処刑されるか、お家取り潰しに合うかもしれないと理由を話して、どの令息も断ったらしいと言うのだ。まあ、その通りだと思う。次期宰相やシールド公爵も、彼女をよく見ているし、夜会で手を出すなんて不可能だ。
 しかし、あの悪女がそれで諦めるとは思えない。下位の貴族令息達が使えないなら、恐らく、いつも犯罪の片棒を担いでいる専属メイドか、あの暗殺者みたいな従者が何か知っているだろうと考えた。あのメイドは、最近様子が変だから、接触するのは危険そうだ。そう思った私は、従者に大金を積んでみることにした。直接関わることは出来ないので、昔から自分を支えてくれていた、自分のやり手の従者を通じて。
 大金であっさりと従者は口を割ったらしい。専属メイドが破落戸を雇ってくるように言ってきたと言う。更にその従者も、公爵が彼女の兄の代になり、彼女の立場も危なくなりつつあるから、そろそろ従者を辞めて身を隠すつもりだと言うのだ。今までの悪事がバレたら、従者自身も危険な立場になるからと。だったら、更に金を積むから、こっちの仕事を最後に受けてくれないかと依頼すると、あっさりと受けてくれることになった。

 破落戸に襲わせる振りをして、彼女を連れて来るという依頼を。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...