元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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南国へ国外逃亡できたよ

オスカー様さようなら

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「ちょうど良かったわ!私、マーフィー様の赤ちゃんがお腹にいるの。」 

 マジか!今日でお別れは正解だったわね。
 満面の笑みで祝福してやろう。

「まあ!おめでとうございます。でしたら、日陰の身でもないのでしょうから、こんな所で盛ってないで、お身体を大切にして下さいませ。…マーフィー様、父親になるのですから、家族を大切にして下さい。ふふっ。おば様が喜ぶでしょうね。早く結婚してもらって、孫が欲しいと話してましたから。」

 おば様、こんな令嬢が嫁って大変そうだけど、頑張って下さい。私は、黙ってオスカー様から去りますから。

「はっ!私との子どもなんて、出来るわけないだろう!変なことを言うな!私はリアと結婚すると決めているし、リアとの子供以外はいらない。」

 そこまで言われると…ゾゾー、鳥肌が!

 オスカー様は令嬢を睨んでいる。恐らくただの遊びで、特に好きではないんだろうね。扱いが雑だし。でもこれで人攫いオスカー様から逃げられるから、ありがとうね!令嬢さん!
 ここで黙っていた、王太子殿下が喋り出す。

「子供が出来たのか?なら、すぐに婚姻の許可を与えてやろう。しかし、職務中にこんなことをしている文官は今すぐクビだ。お前、名前は?」

 殿下が怖い!

「…レーネ・ガザフィーです。」

「ガザフィー男爵令嬢か。お前はもう登城しないように。結婚は子どもが生まれる前に、早めにするがよい。マーフィー卿、優秀だと聞いていたから残念だ。こんなに素晴らしい恋人を裏切るなんて。マーフィー卿はしばらく謹慎だ。登城は許可するまでしないでくれ。私の大切な友人を傷つけたのだ!しっかり反省するのだな。」

「私が悪いことは認めますし、反省も謹慎も致します。しかし、子供は私の子供ではありません。避妊薬を私が飲んでいるので、できるはずはないのです。どこの誰の子かも分からない子供を身籠った者との結婚は出来ません。」

 男爵令嬢の顔色が更に悪くなる。あー、色んな人と遊んでいるのね。

「それは本当か?では神殿に行き、腹の子を調べれば良い。腹の子がマーフィー卿の子供だと分かれば、王太子命令ですぐに婚姻をしてもらおう。違う男の子供なら、その女が嘘をついているということになるから、王家に嘘をついたという罪になるな。虚偽罪で拘束することになる!」

 男爵令嬢は、顔を真っ白にして震えている。
 殿下はかなり怒っているようだ。怖すぎる。

「どちらにせよ、マーフィー卿は、もうマリア嬢とは元には戻れないだろう。マリア嬢は、こんな酷い現場を目にしたのだ。マーフィー侯爵夫人には、私から今回のことは報告しておこう。夫人は茶会などで、マリア嬢を自慢していたらしいからな。マーフィー卿がマリア嬢を裏切って選んだ相手が、こんなアバズレだと知ったら悲しむだろうが、しっかりやるように。…じゃあ、私達は行こう。マリア嬢も顔色が悪いから、早く帰って休むといい。エル、お前も一緒に帰っていいからな。」

 オスカー様は表情を無くしている。反対に私の心の中は…

 ありがとう!!
 王太子殿下、ありがとう!上手く収めてくれるなんて!さすが王太子殿下!私はこれで、やっと自由の身。

 うっ、うっ…。拐われてから、いやらしいことをされようが、奉仕を求められようが、やりたくもない恋人同士のフリをさせられようが、鳥肌立とうが…、生きる為に沢山我慢してきたけど、これでやっと解放されるのね!
 もちろん命の恩人ではあるから、寂しさも多少はあるけど、人攫いで遊び人の元近衛騎士とは、本気の恋愛は出来ないの!そして、やっぱり近衛騎士は私には無理!!

 私は無意識に涙を流していたようだ。

「マリア?…涙が流れてる。今はつらいだろうけど大丈夫だ!私が側でずっと守るからな。」

 お兄様が私を抱き寄せる。…いや、それは必要ないからね。さり気なく、お兄様の胸を押し返す私。

「お兄様、私は大丈夫ですから。それより、この場にいるのはつらいのですが。」

「…そうだな。早く帰ろう。…歩けるか?抱っこで馬車まていくか。」

 この年で抱っこはないだろう!恥をかかせる気が!

「…自分で歩けますわ。」

「王太子殿下、色々とご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。今日はこれで失礼させて頂きます。近衛騎士様も、今日はご配慮ありがとうございました。」

「マリア嬢。こんなことがあって、王宮に来るのはつらいかもしれないが、ベスがまた会いたいと言っている。茶会を改めて計画するから、ぜひ来てくれ。気をつけてな。」

 王太子殿下は、さっきの恐ろしい表情が嘘のように、優しく声をかけてくれる。多分、可哀想に見える私に気を遣ってくれているのだろう。

 殿下と若い近衛騎士が、実は私達兄妹のやり取りを見ていて、笑いを堪えている事に気付かない私達であった。

 そしてオスカー様が、私の後ろ姿を、光を無くした目で見つめていたことにも。
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