推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう

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隣人特権、強すぎるんですけど。(3)

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 いた!

 今よりも幾分か幼い蓮。まだ研究生時代の蓮のそばに成瀬さんの姿を見つけた。こちらも今よりも若い。十年以上も前の映画なのだから、それも当たり前なのだが。それでもしっかりと成瀬さんの面影があって、なんだか嬉しくなる。

 十代の成瀬さんも蓮同様に端役。拙い演技で短いセリフを懸命に言っている姿が可愛らしい。なんだか年下の男の子を見守るような気分で若かりし頃の蓮と成瀬さんを観ていたら、ふと既視感を感じた。

 ……あれ? この並び、なんだか懐かしい?

 私は慌てて、成瀬さんと蓮の出演シーンを再生する。 何度か見返した後、ようやく私はその既視感の正体に気が付いた。

 蓮と陽!

 気がついた瞬間、昔飽きることなく見ていたテレビの映像が鮮明に思い出された。

 それは蓮が先輩タレントの番組で小物出しとして出演していた時の映像。蓮と樹を含む研究生たちがお手伝いとして番組に出ると、よく先輩にいじられていた。

 その中でも蓮ともう一人、陽と呼ばれていた男の子がセットでよくいじられた。画面の中で、先輩タレントにちょっかいをかけられる二人。その姿を樹が微笑ましそうに見ていると、それに気が付いた先輩タレントが、樹にもちょっかいをかける。樹はそんな先輩に、少し面倒くさそうな表情をする。そんな樹を面白がり、出演者が寄ってたかって絡んでいく。結果、樹が機嫌を悪くする。そんな一連の流れがお決まりのようになっていた。

 私はこの展開が大好きだった。なぜなら、このくだりになると、蓮が体を張って樹と他の演者の間に割って入り、文字通り身をもって樹をかばうのだ。そのとき、カメラが必ず蓮に寄る。蓮のアップを期待して、その場面を逃すまいと、私はいつも画面の中の蓮を食い入るように観ていた。

 そうか。あの時の「陽」って成瀬さんだったんだ。初めて会った時に見覚えがあるはずだよ。蓮の昔の映像に何度も出てくるんだから。

 つくづく私は蓮しか見ていなかったのだなと実感する。

 出来ることならあの頃の映像を見返したい。そしたら、今度はしっかりと成瀬さんのことを見るのに。

 そこで私はハタと思い留まる。

 昔の映像を掘り返されることを、成瀬さんはどう思うだろうか。

 成瀬さんに関することは、極力調べないという制約を自分に課した。

 隣人に不快な思いをさせない。

 それは私が成瀬さんを推すうえで絶対に守らなければならないこと。しかし、推しの全てを知りたいヲタクには、なかなかに厳しい決め事でもある。
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