46 / 151
隣人特権、強すぎるんですけど。(4)
しおりを挟む
今まで当然のように蓮の昔の写真や動画を探して愛でてきた。でももしも、それが自分の立場だったら。昔の写真を無断で見られるなんて、私は絶対に嫌だ。成瀬さんは蓮と同じように人に見られる仕事をしているのだから、その辺りは割り切っているかも知れないけれど、一応聞いてみよう。
そう結論付けた私は、とりあえず成瀬さんに関する過去の映像を探すことは諦めることにした。
推しを推すために、自分の欲望と戦わなきゃいけないときがあるとは……。
これまでは蓮という推しの全てを知るために、ひたすら彼の情報を追いかけていた。彼を知りたいという欲望に忠実だった。
けれど、今回は事情が違う。隣人の情報を密かに集めているのを知られたら、最悪ストーカー認定されるかもしれない。
……それだけは避けなければ!
過去の映像検索禁止。
SNSのチェックも禁止。
パブサなんてもってのほか。
私は、これまでのような推し事の全てを成瀬さんに対しては行わないと固く心に誓う。だがそうなると、推し活とは何ぞや。何をすれば良いのかということになる。
私の考えでは、自身が生きる活力を得るために、推しを全力で推すこと。これが私の推し活の定義。そして、推しを全力で推すためには、推しを取り巻く世界を知ることは必要不可欠だと思っている。例えば、推しが美味しいと言ったクレープは、私も味わってみたいと思うし、推しが観たいと言った映画は、観に行ってみようと思う。追体験をすることで、少しでも推しと同じ世界に触れる。それが推し活だと思っている。
では、成瀬さんの世界には触れないと自身で制約を課した私は、どうやって推し活をすればよいのだろう? 推しの情報が何もないなんて、寂しい……。それにやっぱり気になる!
そうしてしばし思案した後に出た答えは、かなりズルいものだった。
それは、成瀬さんから直接聞くというもの。世間話として、彼の口から彼の近況を聞く。そうして私は推しの世界に触れるのだ。
彼のファンからしたらとんでもない暴挙だろう。でも、私は推し事の一切を封印するのだ。そんな私が成瀬さんの世界に触れるには、もはや直接彼から聞くしかないのである。ここは隣人特権を使うしかない。
それでも、生活リズムが違うからいつでも会えるわけじゃない。むしろ、SNSで新鮮な情報を手にできる人たちの方が、推し活としては有意義なんだと思う。
絶対に隣人として距離感を保ちます。だから、こればっかりは許して!
そう結論付けた私は、とりあえず成瀬さんに関する過去の映像を探すことは諦めることにした。
推しを推すために、自分の欲望と戦わなきゃいけないときがあるとは……。
これまでは蓮という推しの全てを知るために、ひたすら彼の情報を追いかけていた。彼を知りたいという欲望に忠実だった。
けれど、今回は事情が違う。隣人の情報を密かに集めているのを知られたら、最悪ストーカー認定されるかもしれない。
……それだけは避けなければ!
過去の映像検索禁止。
SNSのチェックも禁止。
パブサなんてもってのほか。
私は、これまでのような推し事の全てを成瀬さんに対しては行わないと固く心に誓う。だがそうなると、推し活とは何ぞや。何をすれば良いのかということになる。
私の考えでは、自身が生きる活力を得るために、推しを全力で推すこと。これが私の推し活の定義。そして、推しを全力で推すためには、推しを取り巻く世界を知ることは必要不可欠だと思っている。例えば、推しが美味しいと言ったクレープは、私も味わってみたいと思うし、推しが観たいと言った映画は、観に行ってみようと思う。追体験をすることで、少しでも推しと同じ世界に触れる。それが推し活だと思っている。
では、成瀬さんの世界には触れないと自身で制約を課した私は、どうやって推し活をすればよいのだろう? 推しの情報が何もないなんて、寂しい……。それにやっぱり気になる!
そうしてしばし思案した後に出た答えは、かなりズルいものだった。
それは、成瀬さんから直接聞くというもの。世間話として、彼の口から彼の近況を聞く。そうして私は推しの世界に触れるのだ。
彼のファンからしたらとんでもない暴挙だろう。でも、私は推し事の一切を封印するのだ。そんな私が成瀬さんの世界に触れるには、もはや直接彼から聞くしかないのである。ここは隣人特権を使うしかない。
それでも、生活リズムが違うからいつでも会えるわけじゃない。むしろ、SNSで新鮮な情報を手にできる人たちの方が、推し活としては有意義なんだと思う。
絶対に隣人として距離感を保ちます。だから、こればっかりは許して!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】夕凪のピボット
那月 結音
恋愛
季節は三度目の梅雨。
大学入学を機に日本で暮らし始めた佐伯瑛茉(さえきえま)は、住んでいたマンションの改築工事のため、三ヶ月間の仮住まいを余儀なくされる。
退去先が決まらず、苦慮していた折。
バイト先の店長から、彼の親友である九条光学副社長、九条崇弥(くじょうたかや)の自宅を退去先として提案される。
戸惑いつつも、瑛茉は提案を受け入れることに。
期間限定同居から始まる、女子大生と御曹司の、とある夏のおはなし。
✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎
【登場人物】
・佐伯 瑛茉(さえき えま)
文学部3年生。日本史専攻。日米ハーフ。
22歳。160cm。
・九条 崇弥(くじょう たかや)
株式会社九条光学副社長。
32歳。182cm。
・月尾 悠(つきお はるか)
和モダンカフェ『月見茶房』店主。崇弥の親友。
32歳。180cm。
✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎ ゚・*:.。..。.:*・゜✴︎
※2024年初出
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
【完結】指先が触れる距離
山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。
必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。
「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。
手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。
近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
Blue Moon 〜小さな夜の奇跡〜
葉月 まい
恋愛
ーー私はあの夜、一生分の恋をしたーー
あなたとの思い出さえあれば、この先も生きていける。
見ると幸せになれるという
珍しい月 ブルームーン。
月の光に照らされた、たったひと晩の
それは奇跡みたいな恋だった。
‧₊˚✧ 登場人物 ✩˚。⋆
藤原 小夜(23歳) …楽器店勤務、夜はバーのピアニスト
来栖 想(26歳) …新進気鋭のシンガーソングライター
想のファンにケガをさせられた小夜は、
責任を感じた想にバーでのピアノ演奏の代役を頼む。
それは数年に一度の、ブルームーンの夜だった。
ひと晩だけの思い出のはずだったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる