推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう

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隣人特権、強すぎるんですけど。(4)

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 今まで当然のように蓮の昔の写真や動画を探して愛でてきた。でももしも、それが自分の立場だったら。昔の写真を無断で見られるなんて、私は絶対に嫌だ。成瀬さんは蓮と同じように人に見られる仕事をしているのだから、その辺りは割り切っているかも知れないけれど、一応聞いてみよう。

 そう結論付けた私は、とりあえず成瀬さんに関する過去の映像を探すことは諦めることにした。

 推しを推すために、自分の欲望と戦わなきゃいけないときがあるとは……。

 これまでは蓮という推しの全てを知るために、ひたすら彼の情報を追いかけていた。彼を知りたいという欲望に忠実だった。

 けれど、今回は事情が違う。隣人の情報を密かに集めているのを知られたら、最悪ストーカー認定されるかもしれない。

 ……それだけは避けなければ!

 過去の映像検索禁止。

 SNSのチェックも禁止。

 パブサパブリックサーチなんてもってのほか。

 私は、これまでのような推し事の全てを成瀬さんに対しては行わないと固く心に誓う。だがそうなると、推し活とは何ぞや。何をすれば良いのかということになる。

 私の考えでは、自身が生きる活力を得るために、推しを全力で推すこと。これが私の推し活の定義。そして、推しを全力で推すためには、推しを取り巻く世界を知ることは必要不可欠だと思っている。例えば、推しが美味しいと言ったクレープは、私も味わってみたいと思うし、推しが観たいと言った映画は、観に行ってみようと思う。追体験をすることで、少しでも推しと同じ世界に触れる。それが推し活だと思っている。

 では、成瀬さんの世界には触れないと自身で制約を課した私は、どうやって推し活をすればよいのだろう? 推しの情報が何もないなんて、寂しい……。それにやっぱり気になる!

 そうしてしばし思案した後に出た答えは、かなりズルいものだった。

 それは、成瀬さんから直接聞くというもの。世間話として、彼の口から彼の近況を聞く。そうして私は推しの世界に触れるのだ。

 彼のファンからしたらとんでもない暴挙だろう。でも、私は推し事の一切を封印するのだ。そんな私が成瀬さんの世界に触れるには、もはや直接彼から聞くしかないのである。ここは隣人特権を使うしかない。

 それでも、生活リズムが違うからいつでも会えるわけじゃない。むしろ、SNSで新鮮な情報を手にできる人たちの方が、推し活としては有意義なんだと思う。

 絶対に隣人として距離感を保ちます。だから、こればっかりは許して!
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