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2.いつか醒める夢
21.お引越し
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5月になると気温が上がり、暑い日も徐々に増えてきました。そして、今日は日本で言えば、五月晴れの良いお天気です。お引越し日和という奴ですね。そう、今日は以前アレクシアさんが話した事がある、ユイとユーリアちゃんの家族のお引越しをするのです。実の処、暖かくなるにつれて引越しの必要性が高まってしまっていました。
ユイは春を迎えて13歳になったそうなので、新年度からは低年齢クラスではなく普通クラスになります。学院ではクラス単位の授業は多くありませんが、待機場所が変わる感じですね。ユイの身分も他国の皇女様からアレキサンドリア市民に変わった所為もあってか、男子のアプローチが増えてきているそうなのです。
僕達と一緒の時は、変わった様子はなかったのですが、一般クラスに移ると酷い事になりそうですし、最近ではストーカー紛いの男子もいて、イェンさんも注意を払っていたようです。
もう一方の当事者、ユーリアちゃんはエルフ族ということもあり、まだ7歳でもあるのでそちらの心配は要らなかったのですが、桜の精霊様の処から連れ帰った妖精(フェアリー)目当てで見学者や研究者、果ては譲ってくれなんて人まで現われる始末。
ユイもユーリアちゃんも、家族は皆さん忙しいので一人で自宅に居る時間もそこそこ永く、本人だけでなく家族も心配な状況になっていたのです。アレクシアさんの提案で、ファロス島2層の2軒の空き部屋に移る事になれば、セキュリティーの面でも安心ですし、日中はアレクシアさんが自宅で研究している事が多いので、ご家族の帰宅まではウチで過ごせばいいとの事ですのでので、二重に安心ですね。
お引越しは、ユーリアちゃんの家はミロシュさんの同僚の方々が手伝ってくれるので、其方は問題ないとのこと。ですが、ユイの家はイェンさんの知り合いは冒険者の人が多い為、ファロス島へ入れる人が少ないという問題がありました。荷物はさほど多くないから大丈夫と言っていましたが、それでも1年近く生活していれば物はふえますし、女性二人(ユイは普通の子ですから、さほど力もないですしね)で荷物を運搬するのは大変です。特に新年になってからは、2人ともアレキサンドリア市民になり、荷物を増やしても問題なくなったこともあって、小物が増えたようですし。イリスの『貴女は暇でしょ? ユイの引越し手伝ってきなさい』との一言で、僕は北一番通りをユイの家に向って歩いているのです。
ユイの家周辺で、どこかで見かけたような男子を数人見た気がしますが、気のせいですよね? ドアをノックして、家の中に入れてもらうと、ユイどころかイェンさんまでお疲れ気味です。
「朝から2人とも疲れた顔をしてどうしたんです? 荷物纏めに時間がかかって疲れたのですか?」
僕の質問に、ユイは苦笑いをし、イェンさんは多少不機嫌に答えてくれました。引越し手伝い希望の男子が度々現われて、少しも作業が進まないとのことですね。ファロス島の中までは運べないから手伝いはいらないといっても、入り口までとしつこく食い下がる男子も居たようです。荷物をそんな所に放り出すわけにも行かないのですから、何を考えているのか判りませんね。ここまで必死だと、滑稽を通り越して、かなり引いてしまいます。
「僕が収納魔法使えますから、準備の出来たものから言ってくださいね。」
そういうと、イェンさんは余り荷物がないと言います。今は冒険者さんですし、元々護衛役だったので私物は少ないんだそうです。ユイもそれほど荷物は多くないといいますが、衣類だけでもそれなりになりますし、遼寧からもってきた書物もあるようです。
その他にも、普段使いとはいえ茶器や陶磁器、漆器もあります。僕は梱包の終わっているものから、2人にきいて収納して行きます。梱包済みの荷物の収納が終わり、ある意味待ちになっていた僕に、ユイが不思議そうに尋ねてきました。
「クロエは収納空間に入れっぱなしで大丈夫なの? 一度運んできたほうが良くないですか?」
? 僕としては別に収納と言っても亜空間に荷物入れるだけですし、特に問題はないのですけど。収納限界もまだ感じた事がありませんし、特に負担もないので、それをユイに伝えると、少し呆れた顔をされます。
「……イリスさんの気持ちが少し判ってきましたよ。」
なんか、酷い事いわれてる気もしますが、僕はスルーしておきます。イリスと違って、ユイは手を出してくる事はない点は安心できますしね。ただ、先程から手持ち無沙汰なので、梱包の手伝いをしようとして、ふとユイに尋ねて見ます。
「ねぇ、ユイ。収納魔法使うのに、どうして梱包しなければいけないの?」
そうなんですよね。僕は普通なんの気無しに、銃もエネルギーである魔石や護符なんかを普通に収納しています。イリスもアスクレビオスは別に梱包なんかしていませんし。
ユイの答えだと、収納では容量もそうですが、どちらかというと数と個体の識別の影響が多いようですね。何を入れたか忘れるようだと、取出しが面倒になるといいます。なので、梱包しておけば箱単位で認識しますし、箱の総数で何番目の箱として出し入れすれば、忘れる事もないとか。名前付きの魔道具は、忘れることはないので問題がないのでしょうね。
……なにか、これも口にだすとユイが呆れそうですので、僕は無言で洗ったばかりの水切りしている食器をユイの前で収納します。そして、一枚ずつ収納空間からテーブル上に配置してみせ、再度収納。再び水切りのかごの中に、皿を立てた状態で一枚ずつ配置します。元に並んでいた向きを逆向きにして。
そう、僕の収納は一つずつを別な空間に収納しているので、個体を個別に認識する必要はないのです。どうやら一般的な収納魔法は、一つの空間に荷物を配置するようですね。だから、どれを取り出すかを認識しなければいけないようです。
ユイは僕が見せた事によって、僕には収納する物の状況がどうであろうが関係無い事を理解してくれたようです。呆れながらも、差障りがない物を梱包せずに収納する事に納得してくれました。さすがに、下着類とかは女子同士とはいえ問題ありますしね。ユイの部屋のものを確認し、忘れ物がないかを確認したら、イェンさんのところでも同様に収納をしてしまいます。こちらでも呆れられてしまいましたが、待っているのも退屈ですしね。
収納が終わると、戸締りをして忘れ物がないかを確認したあと、セキュリティーの魔道具から、2人の魔力パターンを記したカードを抜いて、部屋をでます。扉がしまると、あとはオーナーの魔力パターンでないとドアは開きません。これで、部屋を空けたことさえ伝えれば引渡しは完了ですね。
ファロス島の2層の新しいユイの家は、真南にある公園を兼ねた庭の西側です。東側がユーリアちゃんのご家族の家で、公園の真上は僕とアレクシアさんの暮らす家となります。互い違いに家が配置されているのは、階上階下の騒音対策なのかもしれませんね。新しい家というか部屋では、収納から順に指定された場所に荷物を出したり配置するだけです。
あっさりと配置を終えると、イェンさんが緑茶を入れてくれました。アレキサンドリアでは紅茶よりお値段が高い嗜好品となってしまいますが、イェンさんもユイも緑茶のほうが落ち着くのでしょうね。
「これで今日から安心して窓を開けていられますよ。窓の外は断崖で海しかありませんから。」
ユイは僕の声に苦笑いしています。まあ、北一番街のアパルトマンでも覗きの心配はなかったでしょうけど、魔法がある分心配はありますよね。幸い、撮影できるカメラはアレキサンドリアには『記憶』やギルドなど特定の機関にしかありませんので、盗撮の心配はありませんが。お店には、広告用の僕らの写真を、複製して譲ってくれという奇特な方々も何人かいらっしゃったようですし。もちろん、販売なんかしてないですよね? アレクシアさん?
早めに引越しが終わったので、お昼の準備をします。イェンさんとユイは片付けをそのまま続けてもらって、僕は自宅に戻ってエマ、ジェシーにお願いしておいた延しの終わった生地を切っていきます。といっても、魔法を使って切っちゃうので苦労は入りませんが、まな板まで切らないようにしないといけないので加減がめんどくさいです。
さっと大鍋で茹でた麺を、冷水で〆てぬめりをとります。ざるにもった麺に、エルフ領から仕入れた『わさび』をすりおろしたものと、ねぎを刻んだものを用意して、盛りそばの完成です。エマ、ジェシーに頑張ってもらった分、こしもある良い麺になっているようですね。2人分をその場で用意して、お礼をいって食べてもらって、僕は3人分を階下のユイの家へと運びます。東方にも同じようなものがあれば懐かしんでもらえるかもしれませんね。
「おまたせ~、お昼できたよ。」
引越ししたらやはりお蕎麦ですよね。最初に少量を食べてもらって、異常がないかを確認してもらいます。蕎麦はアレルギーがありますから、いきなりどうぞと言う訳にはいかないですね。
「わさびとねぎもあるから、お好みでくわえてくださいね。」
2人の顔を見ると、微妙な表情。見た事がないのでしょうか。まあ、最初に僕が食べないと、食べにくいですよね。久しぶりのお蕎麦をゆっくり堪能しますが、さすがに麺をすする事はできません。アレキサンドリアでも、麺をすする文化はないので、どうしてもマナー違反になってしまうのです。家ですすって食べた時は、アレクシアさんに叱られましたしね。
蕎麦湯も合わせていただきましたが、二人とも普通に完食していただけました。素材がソバから作ったというと驚かれましたけど。どうやら、遼寧では蕎麦粉で団子状のものを作って食べる、蕎麦焼きという食べ方が一般的だったようで、すこし狙いとはずれましたが喜んでいただけましたよ。
食べた後は、お邪魔していてはなんですので、ユイの家を辞去してユーリアちゃんの家の様子を窺います。こちらは余り僕がでしゃばるのも問題ですので、イリスやリリーさん、アレクシアさんの3人だけ、こちらで食事を用意します。3人ともアレルギーの無い事は判っていますしね。
夕方には、ユーリアちゃんも含めてお引越し後の挨拶に来てくれましたので、カタリナさんに打った蕎麦を提供します。ちゃんと収納に入れてありましたので、劣化はありませんよ。アレルギーの件も伝えて、様子を見ながら食べてもらえるようです。今日は多少なりと、カタリナさんも疲れているでしょうから、少しは楽をしてもらわないとね。こうして、お引越しにからむ平穏な一日が、無事終了いたしました。そう言えば、忘れていた事をしないといけませんね。
その日、ユイを付回していた一部の男子は、なぜか下ろしたてのワサビが口の中に放り込まれて悶絶したとの事ですが、不思議な事があるもんですね♪
ユイは春を迎えて13歳になったそうなので、新年度からは低年齢クラスではなく普通クラスになります。学院ではクラス単位の授業は多くありませんが、待機場所が変わる感じですね。ユイの身分も他国の皇女様からアレキサンドリア市民に変わった所為もあってか、男子のアプローチが増えてきているそうなのです。
僕達と一緒の時は、変わった様子はなかったのですが、一般クラスに移ると酷い事になりそうですし、最近ではストーカー紛いの男子もいて、イェンさんも注意を払っていたようです。
もう一方の当事者、ユーリアちゃんはエルフ族ということもあり、まだ7歳でもあるのでそちらの心配は要らなかったのですが、桜の精霊様の処から連れ帰った妖精(フェアリー)目当てで見学者や研究者、果ては譲ってくれなんて人まで現われる始末。
ユイもユーリアちゃんも、家族は皆さん忙しいので一人で自宅に居る時間もそこそこ永く、本人だけでなく家族も心配な状況になっていたのです。アレクシアさんの提案で、ファロス島2層の2軒の空き部屋に移る事になれば、セキュリティーの面でも安心ですし、日中はアレクシアさんが自宅で研究している事が多いので、ご家族の帰宅まではウチで過ごせばいいとの事ですのでので、二重に安心ですね。
お引越しは、ユーリアちゃんの家はミロシュさんの同僚の方々が手伝ってくれるので、其方は問題ないとのこと。ですが、ユイの家はイェンさんの知り合いは冒険者の人が多い為、ファロス島へ入れる人が少ないという問題がありました。荷物はさほど多くないから大丈夫と言っていましたが、それでも1年近く生活していれば物はふえますし、女性二人(ユイは普通の子ですから、さほど力もないですしね)で荷物を運搬するのは大変です。特に新年になってからは、2人ともアレキサンドリア市民になり、荷物を増やしても問題なくなったこともあって、小物が増えたようですし。イリスの『貴女は暇でしょ? ユイの引越し手伝ってきなさい』との一言で、僕は北一番通りをユイの家に向って歩いているのです。
ユイの家周辺で、どこかで見かけたような男子を数人見た気がしますが、気のせいですよね? ドアをノックして、家の中に入れてもらうと、ユイどころかイェンさんまでお疲れ気味です。
「朝から2人とも疲れた顔をしてどうしたんです? 荷物纏めに時間がかかって疲れたのですか?」
僕の質問に、ユイは苦笑いをし、イェンさんは多少不機嫌に答えてくれました。引越し手伝い希望の男子が度々現われて、少しも作業が進まないとのことですね。ファロス島の中までは運べないから手伝いはいらないといっても、入り口までとしつこく食い下がる男子も居たようです。荷物をそんな所に放り出すわけにも行かないのですから、何を考えているのか判りませんね。ここまで必死だと、滑稽を通り越して、かなり引いてしまいます。
「僕が収納魔法使えますから、準備の出来たものから言ってくださいね。」
そういうと、イェンさんは余り荷物がないと言います。今は冒険者さんですし、元々護衛役だったので私物は少ないんだそうです。ユイもそれほど荷物は多くないといいますが、衣類だけでもそれなりになりますし、遼寧からもってきた書物もあるようです。
その他にも、普段使いとはいえ茶器や陶磁器、漆器もあります。僕は梱包の終わっているものから、2人にきいて収納して行きます。梱包済みの荷物の収納が終わり、ある意味待ちになっていた僕に、ユイが不思議そうに尋ねてきました。
「クロエは収納空間に入れっぱなしで大丈夫なの? 一度運んできたほうが良くないですか?」
? 僕としては別に収納と言っても亜空間に荷物入れるだけですし、特に問題はないのですけど。収納限界もまだ感じた事がありませんし、特に負担もないので、それをユイに伝えると、少し呆れた顔をされます。
「……イリスさんの気持ちが少し判ってきましたよ。」
なんか、酷い事いわれてる気もしますが、僕はスルーしておきます。イリスと違って、ユイは手を出してくる事はない点は安心できますしね。ただ、先程から手持ち無沙汰なので、梱包の手伝いをしようとして、ふとユイに尋ねて見ます。
「ねぇ、ユイ。収納魔法使うのに、どうして梱包しなければいけないの?」
そうなんですよね。僕は普通なんの気無しに、銃もエネルギーである魔石や護符なんかを普通に収納しています。イリスもアスクレビオスは別に梱包なんかしていませんし。
ユイの答えだと、収納では容量もそうですが、どちらかというと数と個体の識別の影響が多いようですね。何を入れたか忘れるようだと、取出しが面倒になるといいます。なので、梱包しておけば箱単位で認識しますし、箱の総数で何番目の箱として出し入れすれば、忘れる事もないとか。名前付きの魔道具は、忘れることはないので問題がないのでしょうね。
……なにか、これも口にだすとユイが呆れそうですので、僕は無言で洗ったばかりの水切りしている食器をユイの前で収納します。そして、一枚ずつ収納空間からテーブル上に配置してみせ、再度収納。再び水切りのかごの中に、皿を立てた状態で一枚ずつ配置します。元に並んでいた向きを逆向きにして。
そう、僕の収納は一つずつを別な空間に収納しているので、個体を個別に認識する必要はないのです。どうやら一般的な収納魔法は、一つの空間に荷物を配置するようですね。だから、どれを取り出すかを認識しなければいけないようです。
ユイは僕が見せた事によって、僕には収納する物の状況がどうであろうが関係無い事を理解してくれたようです。呆れながらも、差障りがない物を梱包せずに収納する事に納得してくれました。さすがに、下着類とかは女子同士とはいえ問題ありますしね。ユイの部屋のものを確認し、忘れ物がないかを確認したら、イェンさんのところでも同様に収納をしてしまいます。こちらでも呆れられてしまいましたが、待っているのも退屈ですしね。
収納が終わると、戸締りをして忘れ物がないかを確認したあと、セキュリティーの魔道具から、2人の魔力パターンを記したカードを抜いて、部屋をでます。扉がしまると、あとはオーナーの魔力パターンでないとドアは開きません。これで、部屋を空けたことさえ伝えれば引渡しは完了ですね。
ファロス島の2層の新しいユイの家は、真南にある公園を兼ねた庭の西側です。東側がユーリアちゃんのご家族の家で、公園の真上は僕とアレクシアさんの暮らす家となります。互い違いに家が配置されているのは、階上階下の騒音対策なのかもしれませんね。新しい家というか部屋では、収納から順に指定された場所に荷物を出したり配置するだけです。
あっさりと配置を終えると、イェンさんが緑茶を入れてくれました。アレキサンドリアでは紅茶よりお値段が高い嗜好品となってしまいますが、イェンさんもユイも緑茶のほうが落ち着くのでしょうね。
「これで今日から安心して窓を開けていられますよ。窓の外は断崖で海しかありませんから。」
ユイは僕の声に苦笑いしています。まあ、北一番街のアパルトマンでも覗きの心配はなかったでしょうけど、魔法がある分心配はありますよね。幸い、撮影できるカメラはアレキサンドリアには『記憶』やギルドなど特定の機関にしかありませんので、盗撮の心配はありませんが。お店には、広告用の僕らの写真を、複製して譲ってくれという奇特な方々も何人かいらっしゃったようですし。もちろん、販売なんかしてないですよね? アレクシアさん?
早めに引越しが終わったので、お昼の準備をします。イェンさんとユイは片付けをそのまま続けてもらって、僕は自宅に戻ってエマ、ジェシーにお願いしておいた延しの終わった生地を切っていきます。といっても、魔法を使って切っちゃうので苦労は入りませんが、まな板まで切らないようにしないといけないので加減がめんどくさいです。
さっと大鍋で茹でた麺を、冷水で〆てぬめりをとります。ざるにもった麺に、エルフ領から仕入れた『わさび』をすりおろしたものと、ねぎを刻んだものを用意して、盛りそばの完成です。エマ、ジェシーに頑張ってもらった分、こしもある良い麺になっているようですね。2人分をその場で用意して、お礼をいって食べてもらって、僕は3人分を階下のユイの家へと運びます。東方にも同じようなものがあれば懐かしんでもらえるかもしれませんね。
「おまたせ~、お昼できたよ。」
引越ししたらやはりお蕎麦ですよね。最初に少量を食べてもらって、異常がないかを確認してもらいます。蕎麦はアレルギーがありますから、いきなりどうぞと言う訳にはいかないですね。
「わさびとねぎもあるから、お好みでくわえてくださいね。」
2人の顔を見ると、微妙な表情。見た事がないのでしょうか。まあ、最初に僕が食べないと、食べにくいですよね。久しぶりのお蕎麦をゆっくり堪能しますが、さすがに麺をすする事はできません。アレキサンドリアでも、麺をすする文化はないので、どうしてもマナー違反になってしまうのです。家ですすって食べた時は、アレクシアさんに叱られましたしね。
蕎麦湯も合わせていただきましたが、二人とも普通に完食していただけました。素材がソバから作ったというと驚かれましたけど。どうやら、遼寧では蕎麦粉で団子状のものを作って食べる、蕎麦焼きという食べ方が一般的だったようで、すこし狙いとはずれましたが喜んでいただけましたよ。
食べた後は、お邪魔していてはなんですので、ユイの家を辞去してユーリアちゃんの家の様子を窺います。こちらは余り僕がでしゃばるのも問題ですので、イリスやリリーさん、アレクシアさんの3人だけ、こちらで食事を用意します。3人ともアレルギーの無い事は判っていますしね。
夕方には、ユーリアちゃんも含めてお引越し後の挨拶に来てくれましたので、カタリナさんに打った蕎麦を提供します。ちゃんと収納に入れてありましたので、劣化はありませんよ。アレルギーの件も伝えて、様子を見ながら食べてもらえるようです。今日は多少なりと、カタリナさんも疲れているでしょうから、少しは楽をしてもらわないとね。こうして、お引越しにからむ平穏な一日が、無事終了いたしました。そう言えば、忘れていた事をしないといけませんね。
その日、ユイを付回していた一部の男子は、なぜか下ろしたてのワサビが口の中に放り込まれて悶絶したとの事ですが、不思議な事があるもんですね♪
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