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3.帝政エリクシア偵察録
29.番外編(クリスマスイベント♪)
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クリスマスが近いので、本編とは時系列も全く別の番外編となります。
*****
透明なガラスを通してサロンに差し込む冬の陽射しは、室内に居る人や人ならぬ者すら夢の世界へと誘う。他のサロンの部屋よりもやや大きめの部屋の中、やはり大き目のテーブルに突っ伏した少女も、その一人の様であった。
少女の、白銀と見紛うような白い髪は、頭の後ろで結わえられ、赤いリボンで纏められながらもテーブルを這い、床へと垂れ下がる。
少女と同じように、テーブル上で丸くなっていた青銀の縞の猫は、彼が部屋にはいるとムクリと身を起こし、彼を見つめながら少女の顔へと尻尾をパタパタぶつけているが、少女は夢の国からの帰還を拒んでいるようだ。
「……う~ん、アレキあと10分……」
呟く唇は桜色。
彼は、差し出しかけた手を一旦止めるが、意を決したように更に手を伸ばした……
「いってぇ~!!」
サロン中に彼の悲鳴が轟くのは、その直後の事である。
*****
「で? 何の用なのさ? 僕は君を呼んだ記憶はないけれど?」
膝の上に、重猫アレキを抱え頭を撫でてやりながら、僕は対面の座席に座るリアンを見ていいました。リアンの右手の甲には、アレキに刻まれた3条の爪痕が、赤い線となっています。
リアンの悲鳴を聞いて、部屋に入ってきた赤毛をショートカットにしたお姉さんが、治癒魔法をかけていますが、なかなか傷が治りませんね。
お姉さんに手をとられ、治療されつつもリアンはそっぽを向いていますね。ホントに何しに着たんだコイツ?
「俺はお前が嫌いだ」
うん、知ってるし? なら何故ここにいるんだよ?
「で? 未だ質問に答えてないよ? 寝ている(仮にも)女の子に手を出そうとしたんだし? ちゃんと答えないと、お姉さんも気になるし場を外せないでしょ」
リアンはぐっと詰まりますが、客観的に見て、周囲の人には僕が言ったようにしか見え無い事は承知しているようですね。
「明日の放課後、空いてるか?」
(は? 何を言ってるんだ、コイツ?!)
僕は呆然として疑問符を頭上に浮かべますが、赤毛のお姉さんや他の女子(何人かドサクサ紛れに入ってきていますね)が、悲鳴を上げています。
「そんな、リアン様が!!」
「兎ごときに!!」
おい、兎ごときって何気に酷い。
確かに明日は12月24日。地球で言えばクリスマスイブですね。この世界では12月25日は特にイベントはなく、当然24日も普通の日でしたが、学院の年内最終受講日でもあり、新年祭のイベントの為地元に戻る学生も多く、打ち上げを兼ねた学生同士のパーティーが多く開かれます。
そこに、『四季』でこの日限定のクリスマスケーキを販売したので(これも僕の勘違いからですが)、一部の女子生徒の間では、小さなケーキをカップルで食べる日(板チョコにカップルの絵書いちゃったんだよね)と認識されていたのです。
「ん?明日って特に何でもねえだろ? 俺は休み前に試作中の魔道具に着いて意見が欲しかっただけだ」
あぁ、まあリアンはその手の事に疎いですからね。ふむふむ、新作の魔導具かぁ。コイツがどんな魔道具を作るかは興味あったんだよね。なにせ、エリックさんの息子さんですからね。
「まぁ、意見を言うくらいなら、い「すまないがリアン、彼女は先約が入ってるんでね」よ」
僕の返事の上に上書きしたのは、女子を引き連れてきたワイアットです。引き連れてる女子を良く見ると、あれ? イリスさんにユイ、ユーリアちゃんじゃないですか!
ワイアットと一緒なんて、珍しいですね。
「クロエ、ワイアットから明日の夕方、彼付きのメイドさんが作ったお菓子の試食会に誘われたんですが、当然貴女も「行く!!」……ということですわ。リアン」
イリスさんの言葉に今度は僕が上書きします。ワイアットのとこのメイドさんって、アレキサンドリアでは結構有名になりつつあるんだよね。僕も食材調達で、下層街や上層街のお店で何度かはちあわせしてますし、研究熱心で四季でも有名なんですよね。
「という訳だ。リアン諦めてくれたまえ」
ワイアットが珍しくリアンに勝ち誇ったように言ってますね。こいつら仲良かったんじゃなかったっけ?
「なっ、じゃあ俺も「では、リアン様は私達とパーティーしましょう!!」って、おい」
何か言いかけたリアンは、赤毛のお姉さん達に連行されてサロンの室外へと運ばれていきました。うんうん、魔道具には興味はあるけど、他の人が作るお菓子の興味には勝てませんよね。
「He that would the daughter win, must with the mother first beginだよ、リアン」
ん? ワイアットが何か呟いたようですが、とりあえず新作お菓子楽しみですね。
「そういう事なので、クロエ? 貴女には明日6人分のケーキをお願いできるかしら? どうせ明日は朝から『四季』に篭ってケーキ作りなんでしょ?」
うっ、イリスさんには見透かされていますね。24日は僕は朝一の講義しかとって居ません。しかも、それは既に休講になることが決まっています(講師の先生が、四季に並ぶ事を知っていますが、皆には内緒です)。
限定100食の四季のクリスマスケーキは、毎年僕の意見も入れて総動員で作られるんですよね。イリスさんは朝からと言っていますが、実は今夜からわらわらと徹夜で作り始めます。
販売は朝のうちに終っちゃうので、午後はゆっくりするはずだったのですが、お楽しみの為なら頑張らねばいけませんね。
「僕達4人分と、ワイアットにメイドさんの分だよね? いいよ、別に作って持っていくよ!」
「助かりますわ。メイドさんが頑張って朝から作るのに、ご褒美が必要だったんですの」
うんうんとユイやユーリアちゃんも頷いていますね。ワイアットはにこやかに僕達に一礼すると、ドアをきちんと閉めて出て行きます。そういえばアイツ、今は貼り付けたような笑顔じゃありませんでしたね。リアンも少しは態度を見習わないとですよね。
僕達4人は、こうして楽しく明日のパーティーを楽しみにしつつ、お昼をしっかり頂きました。
*****
「うわ~、綺麗な彩りです~」
ユーリアちゃんの声が響きます。彼女の目の前には木の切り株に模した、ブッシュドノエルが鎮座しています。もちろん、イチゴは忘れずにデコレートされています。6つとも少しずつデコレーションを変えてますので、見た目で選ぶのも良いですよ。味は変わりませんからね。
この時期、イチゴは普通は取れませんが、僕は屋上庭園でトンネル栽培でイチゴを作っているんですよ。温度管理とかは魔道具がありますし、肥料として腐葉土をエルフの森から定期的に頂いてきています。イチゴの数が確保できないので、『四季』のクリスマスケーキは限定品なのですよね。アレクシアさんは、屋上庭園は冬場は絶対上がってこないので、イチゴの調達先も知られていないんですよ。灯台下暗しですね、実際ファロス島の大灯台の下で作られていますが。
そして、メイドのお姉さんのお菓子もまた凄かったんですよ。いろんな素材を使って試行錯誤したそうで、僕にはわからない地球にはない食材もふんだんに使われていて、それが絶品の味をかもし出しています。
そして、お菓子のデコレーションもほぼ完璧ですね。『好きこそ物の上手なれ』とはよく言ったものです。既に立派なパティシエール(パティシエはフランス語のお菓子職人の男性系、女性形がパティシエール)ですね。
ワイアットが話してくれましたが、ワイアットが成人して船に乗るようになれば、彼付きのメイドさんは解雇されてしまうのが普通なのですが、このお姉さんはワイアットの青家支援の下で、下層街で新しいお菓子屋さんを作る事になっているそうです。
下層街ですし、青家の支援があれば世界中の様々な食材も手に入るでしょうから、とても良い事ですね。
そして、メイドのお姉さんの探究心は今も続いています。いまは、ユイから東方のお菓子についてリサーチ中ですね。ユイも元は皇女さまですから、一般人よりはお菓子は食べていたでしょうから、そのうちお姉さんのレパートリーに、和菓子や中華風のお菓子が並ぶかもしれません。お姉さんが試作品を作るので、ユイとイェンさんに試食をお願いしています。
エルフ領のお菓子なら、ユーリアちゃんとカタリナさんに聞くといいですよと、僕がお姉さんに入れ知恵します。お姉さんはますます目を輝かせていますね。
「そういえば、ワイアットってお姉さんが作るお菓子を食べている割には太らないの? 体質?」
僕の質問に、ビキリっと空気が固まります。ん? なんで? みんなの視線が1人に集まりました……
視線の先にはイリスさんのひきつった笑顔があります。あ~、イリスさん、また太ったんですね?
「……クロエ~? 何が言いたいんですの?」
「いや、今日も食べっぷりが素敵ですね~、まだスケートリンク作るには時期が早いから、控えめにしてくれればいいなぁと……」
イリスさんの顔が真っ赤に染まっていきますね……、これはやばいかも!
「……だいたい、貴女といいアレクシア様といい、黒家の女性はなんでそんなにスマートなんですの! 卑怯ですわ」
うわぁ、爆発してしまいました!!
「いや、イリスさんそんなことを言われても……」
もう、僕の弁明は聞こえていませんね。僕はともかく、アレクシアさんは一応努力していますよ? というか、イリスさんが知らないという事は、まだ屋内プールの件はリリーさんに隠してるんですね、アレクシアさん……
気づくと、ワイアットはそそくさと姿を消しています。流石にリアンよりは危機回避が早いですね。
ユーリアちゃんはエルフなので、種族的にスマートな体型を維持していますが、ユイもお菓子を食べる手が止まってしまいましたね。でも、ユイさんそんなに太ってないよ?
それに、イリスさんが育ってるのはお腹だけじゃないし……、近年中にイリスさんに抜かれますよ? 僕は何故か食べても育ちませんが……
そして僕が、手をつける人が少なくなったテーブルを見つめていると、テーブル下からひょいっと手が出て、お菓子の皿が一皿消えてしまいます。イリスさんをなだめるユイとメイドさん、わき目も振らず食べ続けるユーリアちゃんを尻目に、僕はテーブルクロスをめくってみました。
そこには、青銀の縞模様の重猫アレキの後姿と車座に座った少年と少女。ちょっと、精霊樹様なぜそこにいる!! 精霊樹様の隣で胡坐をかいてお菓子を頬張っているのは黒髪の少女?ってアリア~
いいのか、仮にも神が顕現してていいのか!! しかも、スカートで胡坐は止めなさい!!
見なかった。僕は今何も見ませんでしたよ~~~!!
*****
透明なガラスを通してサロンに差し込む冬の陽射しは、室内に居る人や人ならぬ者すら夢の世界へと誘う。他のサロンの部屋よりもやや大きめの部屋の中、やはり大き目のテーブルに突っ伏した少女も、その一人の様であった。
少女の、白銀と見紛うような白い髪は、頭の後ろで結わえられ、赤いリボンで纏められながらもテーブルを這い、床へと垂れ下がる。
少女と同じように、テーブル上で丸くなっていた青銀の縞の猫は、彼が部屋にはいるとムクリと身を起こし、彼を見つめながら少女の顔へと尻尾をパタパタぶつけているが、少女は夢の国からの帰還を拒んでいるようだ。
「……う~ん、アレキあと10分……」
呟く唇は桜色。
彼は、差し出しかけた手を一旦止めるが、意を決したように更に手を伸ばした……
「いってぇ~!!」
サロン中に彼の悲鳴が轟くのは、その直後の事である。
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「で? 何の用なのさ? 僕は君を呼んだ記憶はないけれど?」
膝の上に、重猫アレキを抱え頭を撫でてやりながら、僕は対面の座席に座るリアンを見ていいました。リアンの右手の甲には、アレキに刻まれた3条の爪痕が、赤い線となっています。
リアンの悲鳴を聞いて、部屋に入ってきた赤毛をショートカットにしたお姉さんが、治癒魔法をかけていますが、なかなか傷が治りませんね。
お姉さんに手をとられ、治療されつつもリアンはそっぽを向いていますね。ホントに何しに着たんだコイツ?
「俺はお前が嫌いだ」
うん、知ってるし? なら何故ここにいるんだよ?
「で? 未だ質問に答えてないよ? 寝ている(仮にも)女の子に手を出そうとしたんだし? ちゃんと答えないと、お姉さんも気になるし場を外せないでしょ」
リアンはぐっと詰まりますが、客観的に見て、周囲の人には僕が言ったようにしか見え無い事は承知しているようですね。
「明日の放課後、空いてるか?」
(は? 何を言ってるんだ、コイツ?!)
僕は呆然として疑問符を頭上に浮かべますが、赤毛のお姉さんや他の女子(何人かドサクサ紛れに入ってきていますね)が、悲鳴を上げています。
「そんな、リアン様が!!」
「兎ごときに!!」
おい、兎ごときって何気に酷い。
確かに明日は12月24日。地球で言えばクリスマスイブですね。この世界では12月25日は特にイベントはなく、当然24日も普通の日でしたが、学院の年内最終受講日でもあり、新年祭のイベントの為地元に戻る学生も多く、打ち上げを兼ねた学生同士のパーティーが多く開かれます。
そこに、『四季』でこの日限定のクリスマスケーキを販売したので(これも僕の勘違いからですが)、一部の女子生徒の間では、小さなケーキをカップルで食べる日(板チョコにカップルの絵書いちゃったんだよね)と認識されていたのです。
「ん?明日って特に何でもねえだろ? 俺は休み前に試作中の魔道具に着いて意見が欲しかっただけだ」
あぁ、まあリアンはその手の事に疎いですからね。ふむふむ、新作の魔導具かぁ。コイツがどんな魔道具を作るかは興味あったんだよね。なにせ、エリックさんの息子さんですからね。
「まぁ、意見を言うくらいなら、い「すまないがリアン、彼女は先約が入ってるんでね」よ」
僕の返事の上に上書きしたのは、女子を引き連れてきたワイアットです。引き連れてる女子を良く見ると、あれ? イリスさんにユイ、ユーリアちゃんじゃないですか!
ワイアットと一緒なんて、珍しいですね。
「クロエ、ワイアットから明日の夕方、彼付きのメイドさんが作ったお菓子の試食会に誘われたんですが、当然貴女も「行く!!」……ということですわ。リアン」
イリスさんの言葉に今度は僕が上書きします。ワイアットのとこのメイドさんって、アレキサンドリアでは結構有名になりつつあるんだよね。僕も食材調達で、下層街や上層街のお店で何度かはちあわせしてますし、研究熱心で四季でも有名なんですよね。
「という訳だ。リアン諦めてくれたまえ」
ワイアットが珍しくリアンに勝ち誇ったように言ってますね。こいつら仲良かったんじゃなかったっけ?
「なっ、じゃあ俺も「では、リアン様は私達とパーティーしましょう!!」って、おい」
何か言いかけたリアンは、赤毛のお姉さん達に連行されてサロンの室外へと運ばれていきました。うんうん、魔道具には興味はあるけど、他の人が作るお菓子の興味には勝てませんよね。
「He that would the daughter win, must with the mother first beginだよ、リアン」
ん? ワイアットが何か呟いたようですが、とりあえず新作お菓子楽しみですね。
「そういう事なので、クロエ? 貴女には明日6人分のケーキをお願いできるかしら? どうせ明日は朝から『四季』に篭ってケーキ作りなんでしょ?」
うっ、イリスさんには見透かされていますね。24日は僕は朝一の講義しかとって居ません。しかも、それは既に休講になることが決まっています(講師の先生が、四季に並ぶ事を知っていますが、皆には内緒です)。
限定100食の四季のクリスマスケーキは、毎年僕の意見も入れて総動員で作られるんですよね。イリスさんは朝からと言っていますが、実は今夜からわらわらと徹夜で作り始めます。
販売は朝のうちに終っちゃうので、午後はゆっくりするはずだったのですが、お楽しみの為なら頑張らねばいけませんね。
「僕達4人分と、ワイアットにメイドさんの分だよね? いいよ、別に作って持っていくよ!」
「助かりますわ。メイドさんが頑張って朝から作るのに、ご褒美が必要だったんですの」
うんうんとユイやユーリアちゃんも頷いていますね。ワイアットはにこやかに僕達に一礼すると、ドアをきちんと閉めて出て行きます。そういえばアイツ、今は貼り付けたような笑顔じゃありませんでしたね。リアンも少しは態度を見習わないとですよね。
僕達4人は、こうして楽しく明日のパーティーを楽しみにしつつ、お昼をしっかり頂きました。
*****
「うわ~、綺麗な彩りです~」
ユーリアちゃんの声が響きます。彼女の目の前には木の切り株に模した、ブッシュドノエルが鎮座しています。もちろん、イチゴは忘れずにデコレートされています。6つとも少しずつデコレーションを変えてますので、見た目で選ぶのも良いですよ。味は変わりませんからね。
この時期、イチゴは普通は取れませんが、僕は屋上庭園でトンネル栽培でイチゴを作っているんですよ。温度管理とかは魔道具がありますし、肥料として腐葉土をエルフの森から定期的に頂いてきています。イチゴの数が確保できないので、『四季』のクリスマスケーキは限定品なのですよね。アレクシアさんは、屋上庭園は冬場は絶対上がってこないので、イチゴの調達先も知られていないんですよ。灯台下暗しですね、実際ファロス島の大灯台の下で作られていますが。
そして、メイドのお姉さんのお菓子もまた凄かったんですよ。いろんな素材を使って試行錯誤したそうで、僕にはわからない地球にはない食材もふんだんに使われていて、それが絶品の味をかもし出しています。
そして、お菓子のデコレーションもほぼ完璧ですね。『好きこそ物の上手なれ』とはよく言ったものです。既に立派なパティシエール(パティシエはフランス語のお菓子職人の男性系、女性形がパティシエール)ですね。
ワイアットが話してくれましたが、ワイアットが成人して船に乗るようになれば、彼付きのメイドさんは解雇されてしまうのが普通なのですが、このお姉さんはワイアットの青家支援の下で、下層街で新しいお菓子屋さんを作る事になっているそうです。
下層街ですし、青家の支援があれば世界中の様々な食材も手に入るでしょうから、とても良い事ですね。
そして、メイドのお姉さんの探究心は今も続いています。いまは、ユイから東方のお菓子についてリサーチ中ですね。ユイも元は皇女さまですから、一般人よりはお菓子は食べていたでしょうから、そのうちお姉さんのレパートリーに、和菓子や中華風のお菓子が並ぶかもしれません。お姉さんが試作品を作るので、ユイとイェンさんに試食をお願いしています。
エルフ領のお菓子なら、ユーリアちゃんとカタリナさんに聞くといいですよと、僕がお姉さんに入れ知恵します。お姉さんはますます目を輝かせていますね。
「そういえば、ワイアットってお姉さんが作るお菓子を食べている割には太らないの? 体質?」
僕の質問に、ビキリっと空気が固まります。ん? なんで? みんなの視線が1人に集まりました……
視線の先にはイリスさんのひきつった笑顔があります。あ~、イリスさん、また太ったんですね?
「……クロエ~? 何が言いたいんですの?」
「いや、今日も食べっぷりが素敵ですね~、まだスケートリンク作るには時期が早いから、控えめにしてくれればいいなぁと……」
イリスさんの顔が真っ赤に染まっていきますね……、これはやばいかも!
「……だいたい、貴女といいアレクシア様といい、黒家の女性はなんでそんなにスマートなんですの! 卑怯ですわ」
うわぁ、爆発してしまいました!!
「いや、イリスさんそんなことを言われても……」
もう、僕の弁明は聞こえていませんね。僕はともかく、アレクシアさんは一応努力していますよ? というか、イリスさんが知らないという事は、まだ屋内プールの件はリリーさんに隠してるんですね、アレクシアさん……
気づくと、ワイアットはそそくさと姿を消しています。流石にリアンよりは危機回避が早いですね。
ユーリアちゃんはエルフなので、種族的にスマートな体型を維持していますが、ユイもお菓子を食べる手が止まってしまいましたね。でも、ユイさんそんなに太ってないよ?
それに、イリスさんが育ってるのはお腹だけじゃないし……、近年中にイリスさんに抜かれますよ? 僕は何故か食べても育ちませんが……
そして僕が、手をつける人が少なくなったテーブルを見つめていると、テーブル下からひょいっと手が出て、お菓子の皿が一皿消えてしまいます。イリスさんをなだめるユイとメイドさん、わき目も振らず食べ続けるユーリアちゃんを尻目に、僕はテーブルクロスをめくってみました。
そこには、青銀の縞模様の重猫アレキの後姿と車座に座った少年と少女。ちょっと、精霊樹様なぜそこにいる!! 精霊樹様の隣で胡坐をかいてお菓子を頬張っているのは黒髪の少女?ってアリア~
いいのか、仮にも神が顕現してていいのか!! しかも、スカートで胡坐は止めなさい!!
見なかった。僕は今何も見ませんでしたよ~~~!!
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