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4.アレキサンドライトの輝き
12.妬み渦巻く森で(後編)
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翌日は1日休息日として、ユーリアちゃんは自由行動をしてもらいます。折角故郷に帰ってきているんだしね。
ユーリアちゃんを含めた僕たちへの妬みから来る差別は、今はまだギルド内だけっぽいですが、これを放置しておくと直ぐに子供達にまで広がりますからね。ユーリアちゃんの為にも、この状態は早く打破しなきゃです。なにせ、エルフ族は長命ですから、僕達がいなくなっても続く差別になっては、困ります……
僕はケイティーさんの家で、魔道具を作る工房を借りて、ユーリアちゃん用の魔道具を作成します。勿論エマとジェシーが一緒といいたい所ですが、エマとジェシーには念の為にユーリアちゃんの護衛(遠くからですけどね)と、イリスさんとユイの護衛についてもらっています。心配は無いと思うんですけど、用心は必要ですよね。
イリスさんとユイは、明日の狩りの為に魔法の触媒や食料などに必需品の買出しが終った後に、ケイティーさんの家で合流します。状況を簡単に説明して、ギルドへの納品時に立会いをお願いしました。「監督官がいるだろう」と言われましたが、先日の様子では監督官も含めての様子だった事も伝えます。
「全く、仕方ない娘達だね。年寄りに面倒をかけるんじゃないよ」
ケイティーさんはそう言いますが、自分ではそう思ってないのは知っていますよ? ルキウス教徒との戦闘時、止めをさした水流攻撃ですが、きっちり触媒や魔法陣を使って強化していたことを僕は知っていますからね。
翌日は1日狩りまくり、宿屋に戻った僕たちは、術師系の3人は疲労困憊していますが、戦闘系のエマ&ジェシー・ユーリアちゃんは元気です。逆に、活躍できなかったのに不満のようですが、明日まで我慢して下さいね。
狩りの翌日、朝からケイティーさんの家を訪問し、同伴してクレナータの冒険者ギルドを訪れます。まずは、先日のゴブリンの討伐報酬を頂きましたが、極端に少ないですね。イリスさんが詰め寄りますが、ゴブリン10体ならこんな物だろうと言い返されます。
僕達が納品した討伐の証拠品は、ホブゴブリンを含めても80体以上の『右の耳』です。その数が変わっていることにも、『監督官』を含めて知らん顔ですか、そうですか。
イリスさんがこちらをみて頷きますので、僕達は全員で顔を見合わせて再度頷きます。舐められては冒険者は出来ませんからね。ここは、徹底抗戦といきましょう。
「今日は昨日狩って来た魔物の納品にきたの。数が多いから、ここには出せないので納品担当の方と、職員さん一人外に出てきて下さるかしら?」
イリスさんと会話しているのは、この間の横柄職員さんですね。監督さんと買い取り担当の職員さんを伴って、ギルドの建物から出てきましたが、ギルド前の広場には何もありません。当然ですよね、まだ出していないのですから。
「おいおい、俺達も暇じゃないんでな。お嬢さん方の遊びには付き合ってられないんだぜ」
ギルドの職員さんが騒ぎますが、イリスさんはそれを無視していいます。
「討伐対象の魔物名と数をお聞かせいただけます?」
職員は傍らに居るケイティーさんをちらりと見て、舌打ちした後にいいました。
「まずは、ゴブリンを100体に…」
「それは、先日納品した分を差し引いての数で宜しいのね?」
職員の男に最後まで言わせずに、イリスさんが言葉をかぶせます。「あぁ」と男が肯いたのを確認すると、僕とユイは目を合わせて頷きました。
「《開け異界への扉、先に封じられし物を、この場に顕現せよ》ゴブリン」
「展開64卦、『49卦兵戒者』、彼の者の動きを止めよ!」
僕が収納から取り出した、生きたままのゴブリン100体の動きを、即座にユイが固定しました。
「なっ、なっ、なんだこれは」
職員の男は、目の前に出現した100体のゴブリンに驚いて尻餅をついていますね。
「なんだじゃありませんわ。必要数以外は殺さないように、生け捕りにしてきただけですの。ギルドでは詳細を教えていただけませんでしたので」
イリスさんが職員に言っている間に、エマとジェシーがそれぞれゴブリンの左右の耳を切り落とし、手早く纏めます。勿論生きているゴブリンですから、きられれば出血しますが、気にしませんよ?
切り落とした右耳100体分を、買取担当の職員さんにエマが手渡します。ジェシーが切り取った100体分の左耳はケイティーさんに渡されました。
「やれやれ、ゴブリンの耳なぞ、魔法薬の元にもなりはしないんだけどね」
ケイティーさんは足元に袋を下ろします。
「ユーリアちゃん、止めさしてあげて」
僕が言うと、ユーリアちゃんが僕が今朝彼女に渡した、『鏃無しの矢筒』から矢を引き抜き、空にむかって構えました。
「《炎の精霊サラマンダーよ、この矢にやどりて彼の者を燃やし尽くす雨となれ》」
ユーリアちゃんの弓から放たれた矢は、上空で一瞬光ると、100本の炎の矢に分れて動けない100体のゴブリンを貫き燃やし尽くします。
「さぁ、次はなんですの?」
「くっ、次はオークだ。オークを50体」
再び引き出され、動きを止められるオーク50体。
「オークは肉も買い取り対象だったかしら?」
イリスさんの問いに、こくこく頷くのは買取担当の職員さんです。
「エマ、ジェシーお願い」
僕の言葉に、嬉々としてオークの心臓を一突きして即死させるエマ&ジェシー。目の前で繰り広げられる、魔獣が瞬殺されるシーンはなかなか凄惨なはずなのに、現実感がなく周囲の人はただ呆然と見守るだけです。
倒されたオークは、エマとジェシーの手によって、ギルド入り口の傍らに積み上げられていきます。
続けてオーガも同様に20体、オーガは長い髪の毛とあごひげをはやし、強靭な肉体を持つ強敵ですが、素材として使える部分は少ないので、ユーリアちゃんによって燃やし尽くされます。
「くそっ、最後はトロルだ。トロルは1体だが、身長は15m以上のものだ。それ以外は認めんぞ」
見苦しい最後の抵抗ですね。あれ、ユイの顔が心なし青いですね。どうしたんでしょう。
「さすがにあれは、私一人では抑えきれませんので、フォローお願いしたいのですが……」
ユイがひきつった顔でイリスさんを見つめます。
「仕方ないわね、私がフォローするわ。クロエ出して」
「いいですよ」
「《開け異界への扉、先に封じられし物を、この場に顕現せよ》トロル・ザ・ジャイアント」
「展開64卦、『49卦兵戒者』、彼の者の動きを止めよ!」
「《聖なるアテナの盾イージスよ、彼の者を封じる檻となれ。聖なる監獄》」
3人の詠唱が終ったとき、そこに立っていたのは巨大な生物トロル。その中でも身長25mを超える、ジャイアント・トロルです。そして、勿論生きています。
「要求サイズより少し大きいですが、問題はありませんわよね?」
「あ、あ、あぁ…」
「問題無いようですわ。クロエ、お願い。」
イリスさん、多分職員さんのそれは、返事じゃないと思いますよ。腰を抜かして必死に後ずさってますが、その足元は濡れていますし……
「はぁ、まあ嬲るのは趣味じゃないですから仕方ないですね。」
僕はそう言うと、トロルの頭上に現われます。むぅ、なにか息が臭そうですね。偏見かもしれませんが、かといって確認するつもりはありません。
「《神穿つ槍》、きたりて彼の者を貫け!」
僕がトロルの頭に突立てたグングニルは、なんの抵抗もなくトロルの頭頂から股間までを一気に突き抜けます。直後、グングニルは僕の手元に戻りますので、流血により血塗られる事はありません。
ユラリと揺れたトロルの身体は、地響きを立てて冒険者ギルドの前に倒れました。解体は僕たちの役割じゃ有りませんからね。時折痙攣するトロルの身体の脇に立つ僕達は、我ながら小さく感じます。
「さぁ、他にはありますのかしら? 最もトロルやオーガを要求なされた段階で、私たちのPTランクを遥かに超えた目標物を指定なされたギルド側の問題も指摘されると思いますが、いかがでしょう? 監督官様?」
イリスさんの指摘に、苦虫を噛み潰したような顔をしていた監督官さんも、これでは言い分を認めるしかありませんね。ケイティーさんが側にいるというだけではなく……
「きさまら、何をしている。精霊樹様のお膝元に、魔物を連れてくるとはどういうことだ!」
でましたね、ヴィクトル村長殿。相変わらずの偉そうな言葉遣いですが、以前見かけたときより少し痩せたようですね。しかも、胸元とか濡れてますよ? 紅茶とか噴出したのかもしれませんね。
「ここの職員が、揃いも揃ってEランクパーティーである私達に、依頼の詳細を明らかにせずに『魔の森』の討伐依頼を出してきたから、目の前で必要数を倒してあげただけですわ。エルフの冒険者の方は皆さんお強いのね。Eランクで15m超のトロルを倒す事を要求されてるんでしょう?」
ジロリと村長殿が職員さん達を睨みます。さすがに職員さん達も決まりが悪そうですね。
「監督官さん、先日納品した討伐証明部位の数は、きちんと数えたのかしら? 私共は80体分納品したはずですが、先程のお話だと10体分だとか? ここに、80体分の左耳がありますので、きちんと在庫を確認していただけません? だれが納品したのかと、その方々の討伐記録との差異がないかを確認していただきたいですわね。村長さん、監査請求させていただきますので、ご署名いただけます?」
ヴィクトル村長が頷いて事で、監察官も腰を落とします。濡れ手に粟で、討伐報酬を掠め取ろうとしたのでしょうけれど、これだけ公然とやられては誤魔化すことは出来ないでしょう。
「舐められて冒険者なんてできないわ。私達をどう見るかはあなた方の勝手だけど、それなりの対応はさせて頂きますわよ」
そして僕達はクレナータを立ち去りました。収納に収まっている残りの魔物も、『魔の森』に返して来なければいけませんしね。
*****
ちなみに、集めた魔物は全て1頭づつ(雌雄ある場合は各1)は、リリーさんへと生きたまま引き渡されました。アレクシアさん共々有効活用していただいたそうで、貴重な解剖資料になったそうです……
この後、僕たちの冒険者ランクはそれぞれ上がり、僕とイリスさん、ユイにエマ&ジェシーはCランク、ユーリアちゃんがDランクに昇級し、パーティー『アレキサンドライト』も無事ランクがCランクへと2階級特進したのでした(冒険者ギルドの不正のお詫びと口封じもあるようですが)。
ユーリアちゃんを含めた僕たちへの妬みから来る差別は、今はまだギルド内だけっぽいですが、これを放置しておくと直ぐに子供達にまで広がりますからね。ユーリアちゃんの為にも、この状態は早く打破しなきゃです。なにせ、エルフ族は長命ですから、僕達がいなくなっても続く差別になっては、困ります……
僕はケイティーさんの家で、魔道具を作る工房を借りて、ユーリアちゃん用の魔道具を作成します。勿論エマとジェシーが一緒といいたい所ですが、エマとジェシーには念の為にユーリアちゃんの護衛(遠くからですけどね)と、イリスさんとユイの護衛についてもらっています。心配は無いと思うんですけど、用心は必要ですよね。
イリスさんとユイは、明日の狩りの為に魔法の触媒や食料などに必需品の買出しが終った後に、ケイティーさんの家で合流します。状況を簡単に説明して、ギルドへの納品時に立会いをお願いしました。「監督官がいるだろう」と言われましたが、先日の様子では監督官も含めての様子だった事も伝えます。
「全く、仕方ない娘達だね。年寄りに面倒をかけるんじゃないよ」
ケイティーさんはそう言いますが、自分ではそう思ってないのは知っていますよ? ルキウス教徒との戦闘時、止めをさした水流攻撃ですが、きっちり触媒や魔法陣を使って強化していたことを僕は知っていますからね。
翌日は1日狩りまくり、宿屋に戻った僕たちは、術師系の3人は疲労困憊していますが、戦闘系のエマ&ジェシー・ユーリアちゃんは元気です。逆に、活躍できなかったのに不満のようですが、明日まで我慢して下さいね。
狩りの翌日、朝からケイティーさんの家を訪問し、同伴してクレナータの冒険者ギルドを訪れます。まずは、先日のゴブリンの討伐報酬を頂きましたが、極端に少ないですね。イリスさんが詰め寄りますが、ゴブリン10体ならこんな物だろうと言い返されます。
僕達が納品した討伐の証拠品は、ホブゴブリンを含めても80体以上の『右の耳』です。その数が変わっていることにも、『監督官』を含めて知らん顔ですか、そうですか。
イリスさんがこちらをみて頷きますので、僕達は全員で顔を見合わせて再度頷きます。舐められては冒険者は出来ませんからね。ここは、徹底抗戦といきましょう。
「今日は昨日狩って来た魔物の納品にきたの。数が多いから、ここには出せないので納品担当の方と、職員さん一人外に出てきて下さるかしら?」
イリスさんと会話しているのは、この間の横柄職員さんですね。監督さんと買い取り担当の職員さんを伴って、ギルドの建物から出てきましたが、ギルド前の広場には何もありません。当然ですよね、まだ出していないのですから。
「おいおい、俺達も暇じゃないんでな。お嬢さん方の遊びには付き合ってられないんだぜ」
ギルドの職員さんが騒ぎますが、イリスさんはそれを無視していいます。
「討伐対象の魔物名と数をお聞かせいただけます?」
職員は傍らに居るケイティーさんをちらりと見て、舌打ちした後にいいました。
「まずは、ゴブリンを100体に…」
「それは、先日納品した分を差し引いての数で宜しいのね?」
職員の男に最後まで言わせずに、イリスさんが言葉をかぶせます。「あぁ」と男が肯いたのを確認すると、僕とユイは目を合わせて頷きました。
「《開け異界への扉、先に封じられし物を、この場に顕現せよ》ゴブリン」
「展開64卦、『49卦兵戒者』、彼の者の動きを止めよ!」
僕が収納から取り出した、生きたままのゴブリン100体の動きを、即座にユイが固定しました。
「なっ、なっ、なんだこれは」
職員の男は、目の前に出現した100体のゴブリンに驚いて尻餅をついていますね。
「なんだじゃありませんわ。必要数以外は殺さないように、生け捕りにしてきただけですの。ギルドでは詳細を教えていただけませんでしたので」
イリスさんが職員に言っている間に、エマとジェシーがそれぞれゴブリンの左右の耳を切り落とし、手早く纏めます。勿論生きているゴブリンですから、きられれば出血しますが、気にしませんよ?
切り落とした右耳100体分を、買取担当の職員さんにエマが手渡します。ジェシーが切り取った100体分の左耳はケイティーさんに渡されました。
「やれやれ、ゴブリンの耳なぞ、魔法薬の元にもなりはしないんだけどね」
ケイティーさんは足元に袋を下ろします。
「ユーリアちゃん、止めさしてあげて」
僕が言うと、ユーリアちゃんが僕が今朝彼女に渡した、『鏃無しの矢筒』から矢を引き抜き、空にむかって構えました。
「《炎の精霊サラマンダーよ、この矢にやどりて彼の者を燃やし尽くす雨となれ》」
ユーリアちゃんの弓から放たれた矢は、上空で一瞬光ると、100本の炎の矢に分れて動けない100体のゴブリンを貫き燃やし尽くします。
「さぁ、次はなんですの?」
「くっ、次はオークだ。オークを50体」
再び引き出され、動きを止められるオーク50体。
「オークは肉も買い取り対象だったかしら?」
イリスさんの問いに、こくこく頷くのは買取担当の職員さんです。
「エマ、ジェシーお願い」
僕の言葉に、嬉々としてオークの心臓を一突きして即死させるエマ&ジェシー。目の前で繰り広げられる、魔獣が瞬殺されるシーンはなかなか凄惨なはずなのに、現実感がなく周囲の人はただ呆然と見守るだけです。
倒されたオークは、エマとジェシーの手によって、ギルド入り口の傍らに積み上げられていきます。
続けてオーガも同様に20体、オーガは長い髪の毛とあごひげをはやし、強靭な肉体を持つ強敵ですが、素材として使える部分は少ないので、ユーリアちゃんによって燃やし尽くされます。
「くそっ、最後はトロルだ。トロルは1体だが、身長は15m以上のものだ。それ以外は認めんぞ」
見苦しい最後の抵抗ですね。あれ、ユイの顔が心なし青いですね。どうしたんでしょう。
「さすがにあれは、私一人では抑えきれませんので、フォローお願いしたいのですが……」
ユイがひきつった顔でイリスさんを見つめます。
「仕方ないわね、私がフォローするわ。クロエ出して」
「いいですよ」
「《開け異界への扉、先に封じられし物を、この場に顕現せよ》トロル・ザ・ジャイアント」
「展開64卦、『49卦兵戒者』、彼の者の動きを止めよ!」
「《聖なるアテナの盾イージスよ、彼の者を封じる檻となれ。聖なる監獄》」
3人の詠唱が終ったとき、そこに立っていたのは巨大な生物トロル。その中でも身長25mを超える、ジャイアント・トロルです。そして、勿論生きています。
「要求サイズより少し大きいですが、問題はありませんわよね?」
「あ、あ、あぁ…」
「問題無いようですわ。クロエ、お願い。」
イリスさん、多分職員さんのそれは、返事じゃないと思いますよ。腰を抜かして必死に後ずさってますが、その足元は濡れていますし……
「はぁ、まあ嬲るのは趣味じゃないですから仕方ないですね。」
僕はそう言うと、トロルの頭上に現われます。むぅ、なにか息が臭そうですね。偏見かもしれませんが、かといって確認するつもりはありません。
「《神穿つ槍》、きたりて彼の者を貫け!」
僕がトロルの頭に突立てたグングニルは、なんの抵抗もなくトロルの頭頂から股間までを一気に突き抜けます。直後、グングニルは僕の手元に戻りますので、流血により血塗られる事はありません。
ユラリと揺れたトロルの身体は、地響きを立てて冒険者ギルドの前に倒れました。解体は僕たちの役割じゃ有りませんからね。時折痙攣するトロルの身体の脇に立つ僕達は、我ながら小さく感じます。
「さぁ、他にはありますのかしら? 最もトロルやオーガを要求なされた段階で、私たちのPTランクを遥かに超えた目標物を指定なされたギルド側の問題も指摘されると思いますが、いかがでしょう? 監督官様?」
イリスさんの指摘に、苦虫を噛み潰したような顔をしていた監督官さんも、これでは言い分を認めるしかありませんね。ケイティーさんが側にいるというだけではなく……
「きさまら、何をしている。精霊樹様のお膝元に、魔物を連れてくるとはどういうことだ!」
でましたね、ヴィクトル村長殿。相変わらずの偉そうな言葉遣いですが、以前見かけたときより少し痩せたようですね。しかも、胸元とか濡れてますよ? 紅茶とか噴出したのかもしれませんね。
「ここの職員が、揃いも揃ってEランクパーティーである私達に、依頼の詳細を明らかにせずに『魔の森』の討伐依頼を出してきたから、目の前で必要数を倒してあげただけですわ。エルフの冒険者の方は皆さんお強いのね。Eランクで15m超のトロルを倒す事を要求されてるんでしょう?」
ジロリと村長殿が職員さん達を睨みます。さすがに職員さん達も決まりが悪そうですね。
「監督官さん、先日納品した討伐証明部位の数は、きちんと数えたのかしら? 私共は80体分納品したはずですが、先程のお話だと10体分だとか? ここに、80体分の左耳がありますので、きちんと在庫を確認していただけません? だれが納品したのかと、その方々の討伐記録との差異がないかを確認していただきたいですわね。村長さん、監査請求させていただきますので、ご署名いただけます?」
ヴィクトル村長が頷いて事で、監察官も腰を落とします。濡れ手に粟で、討伐報酬を掠め取ろうとしたのでしょうけれど、これだけ公然とやられては誤魔化すことは出来ないでしょう。
「舐められて冒険者なんてできないわ。私達をどう見るかはあなた方の勝手だけど、それなりの対応はさせて頂きますわよ」
そして僕達はクレナータを立ち去りました。収納に収まっている残りの魔物も、『魔の森』に返して来なければいけませんしね。
*****
ちなみに、集めた魔物は全て1頭づつ(雌雄ある場合は各1)は、リリーさんへと生きたまま引き渡されました。アレクシアさん共々有効活用していただいたそうで、貴重な解剖資料になったそうです……
この後、僕たちの冒険者ランクはそれぞれ上がり、僕とイリスさん、ユイにエマ&ジェシーはCランク、ユーリアちゃんがDランクに昇級し、パーティー『アレキサンドライト』も無事ランクがCランクへと2階級特進したのでした(冒険者ギルドの不正のお詫びと口封じもあるようですが)。
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