駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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8.未来へ……

17.襲来?!

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 馬車からHalleyハレーに乗り換えた僕は、馬車の客室キャビンの上ギリギリを飛び、進行方向左上へと移動します。

 黒い森の木立のトンネルはあまり大きくなく、街道上にも大きな枝が張り出していて、飛行するには不向きですね。

「デーゲンさんと変な人アルバート、馬車は魔物除けの魔道具を起動しましたから、街道前方の伏兵を中心に警戒してください。
 それと、今からあなた方の声は客室キャビンにいる令嬢たちにも筒抜けですから、言動には注意してくださいよ。
 僕は、木立の上から警戒任務につきますので、よろしく!」

 僕は、御者席に座る二人に声をかけ、枝の隙間を縫って森の上空へ抜けます。

 変な人アルバートが何か言いたげにこちらに顔を向けた気がしますが、狭い木々の回廊で会話をしていては、コントやギャグマンガにありがちな木々への激突が待っていますからね。

 黒い森フォレスタ・ネラの上空にでた僕は、周辺感知魔法を使って、魔力を持つ存在の位置を確認しました。ちなみに、感知魔法と探知魔法では、少し内容がことなります。

 探知魔法は、術者自らが魔力を周辺に放って、その反射によって敵の状態を探る魔法です。術者によっては、敵の位置だけではなく、魔物の種別や大まかな強さ、敵の数などの様々な情報を得ることができる利点もあります。
 しかし、自ら魔力を放つわけですから、相手の魔力感知能力によっては、こちらの情報を相手に与えてしまうこともあります。多くの情報を得る代わりに、こちらの位置情報などを与えてしまう点では、レーダーに似たようなものでしょう。

 感知魔法は探知魔法とは逆に、周囲の魔物や魔力保持者が放つ魔力を感知する魔法で、軍用機などが装備しているレーダー探知機や、潜水艦の聴音手と同じで、相手の発する魔力を感知します。速度取り締まり装置のレーダー波を感知して警報音を鳴らすものと同じといえば、わかりやすいかも知れませんね。

 探知魔法と異なり、術者が魔力を発しないので敵に感知されることが無い点ですが、魔力感知レベルは強い方から徐々に下げていく必要があるので、魔力の弱い敵の感知まで時間がかかってしまう事です。
 最初から弱い魔力の感知を行うことはやれないことはありませんが、感度を上げた状態で、大きな魔力を感知した場合、術者の精神に大きな負担がかかる可能性があるんですよね。
 ヘッドフォンを付けているときに、いきなり大容量の音が流れてくるのと同じで、場合によっては術者が気を失ってしまう可能性もあるため、推奨できないのです。

 広域探知で強大な魔力を持つものが至近にいないことを確認しながら、探知範囲と探知レベルを下げていきます。

 さすがに魔の森との別名があるだけあって、街道から離れた場所にはそれなりに強い魔力を持つ存在が感知できましたが、馬車から二百メートルほどの範囲にはほとんど魔物は存在しません。
 わずかに感知した魔物も、馬車から離れるように動いていますが、これは魔物避けの効果ですね。疾走する馬車の車輪が立てる音を変調して、野獣や魔物が嫌がる、人には聞こえない高音域の雑音ノイズにしていることで実現させているので、個人が携帯できるような装置ではありませんが、効果はそこそこあるようです。

 馬車の速度に同期させて森の上を飛ぶ僕の目には、山々や空を茜色に染めながら、山脈の陰に沈んでいく太陽の姿と、明るく輝く明星、そして東の山から顔を出してきた蒼い月が目に入ります。

「……どこで見ても、日没の美しさは変わりませんね。とはいえ、景色を楽しんでいるわけにもいきまえんか……」

 街道の先、1キロメートルほどに見えるのは、木々がまばらになった草原でしょうか? その先に、所々に赤い三角屋根をもった建物がみえています。

 どうやらあそこがヴォルフ領辺境の町ブルグでしょうか? 木々の間からは、わずかに白くたなびく煙が見える家もあります。山裾の村や町は日没が早いため、既に炊事が始まっている家もあるようですね。
 黒い森フォレスタ・ネラにほど近い町だけあって、一応石積みの壁をようしていますので、日没にあわせて閉門されてしまうでしょうが、この距離なら十分時間は間に合うでしょう。

 ……そう思っていた時が僕にもありました。

「進行方向左、割と強い魔力反応六。進行方向右にも反応、数は5。街道出口に向かって森の中を進行中」

 街道の先に左右総数で11個の魔力反応を感知した僕は、馬車への連絡を入れます。街道出口を抑えられないようにhalleyの速度をあげて、場合によっては制圧しようか思ったとき、アリシアの腕輪を通してコリーヌさんの声が聞こえてきました。

「クロエ嬢! 伏兵なら本来既に街道両側に伏しているはずだ。森の出口に近いのであれば、犯罪者を追っている領兵の可能性もある。
 異国人である我々が、捕縛の邪魔になることは避けなければならないので、事前に警告をするなど留意してくれ」

 思わず舌打ちしてしまいましたが、コリーヌさんの指摘は事実ですね。下手に彼らに僕たちへの捕縛の理由を与えてしまうと、解放されるまでに何日も留め置かれる可能性もありますし、法外な保釈料を要求されかねません。

「了解しました。確認を先に行います」

 街道の出口上空で空中待機した僕は、亜空間収納から複数の小型ドローンである『スピナー』を左右の森へと飛ばして、状況の把握を開始するのでした。
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