駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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8.未来へ……

18.不穏?恐怖?嫌悪?……その全てですか?!

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 魔法の箒ハレーの座席をフラットモードに切り替えた僕の眼下には、黒い森の出口に広がる街道が見えています。
 さすがに森の入口となっているだけあって、街道を覆うトンネル状の木々の枝も少なく、路面もだいぶまともにみえますが、反対側のノヴィエロ伯爵領に比べれば、田舎道にみえてしまいます。

 飛ばしたスピナーと呼んでいる小型のドローンは6機。街道左右に3機ずつで、迫る小集団の陣形中央と左右の両翼を担う人影を追うように指定してあります。
 スピナーは、電気駆動モーターを主動力とした小型の偵察用ドローンで、小型のカメラ・マイク・スピーカーを搭載しています。魔力駆動ではないので、魔力探知にも感知されにくい反面、活動時間が三十分程度と制限がありますが、こういった場面では使い勝手が良いのです。

 左側の集団の先頭を行くかに思えた人影が街道に出ると、左右を見回して森の出口に向けて走り出しました。
 その直後、木々の間を縫うように飛んできたFire Needleファイア ニードルが、人影の背中に命中。人影はくぐもった悲鳴をあげて、街道上を二転三転して倒れました。

 単体攻撃魔法では、初球の火魔法であるFire Needleファイア ニードルですが、僕が知っているモノとはちがいますね。
 Fire Needleファイア ニードルは、貫通系の細く凝縮した針状の魔力に、火属性を帯びさせたものです。針とはいっても、弓矢程度の太さはありますし、人体を貫通する際に傷の周囲を燃やすため、殺傷力が高いのです。

(魔力の凝縮が甘いせいで、貫通できずに爆散した? その割には、爆発力は初級魔法の上位に匹敵してましたね……)

 制御は甘く高威力。そして、感じる魔力への違和感に一瞬気がそがれますが、追撃とばかりに放たれた二の矢三の矢のFire Needleファイア ニードルを感知した僕は、あわてて倒れた人影の周囲に氷壁Ice wallを設置し、攻撃を妨害しました。

 スピナーからの映像には、うろたえた人影が写っていますが、それらに向かって僕はスピーカーごしに宣言します。

『こちらはある貴族ご利用の馬車を護衛する、冒険者の者です。
 あなた方が、倒れた人物を捕縛ほばくする正当な理由があるのであれば、その場でお話ください。さすれば氷壁を解き、倒れた人物の身柄をあなた方に引き渡しましょう。
 ただし、説明もなく攻撃魔法を放ち追撃を与えようとした場合、当方はその身を守らせていただきます。また、街道上を接近している当方の馬車を含めた我々に攻撃を加えた場合、反撃させていただくことを警告します』

 彼らには、僕の声は6機のドローンから流れたために、正確な位置をつかむことはできないでしょう。逆にこちらは正確な位置と彼らの動きを確認することができます。

 僕の警告に、動きを止めていた彼らですが、街道奥側に位置した左右二人の人影が、街道上に飛び出してきました。
 街道の前後に向けて右腕を突き出して、氷壁と十分な距離を保って停車している馬車の双方に魔法攻撃を仕掛ける気配です。

『当方への攻撃と認識。警告は効果なしと判断します』

 久しぶりにヒップホルスターと左太もものレッグホルスターに手をやると、左右の手の中にズシリとした触感と、ひんやりした鉄と木の銃把グリップの感触。

 銃を引き抜くと同時に引き金トリガーを引く。

 狙いもつけずに適当に撃ったように見えますが、同時に放たれた2本の土弾Earth bulletは、突き出した二人の右掌を貫通。
 直後に制御を失った魔法が爆散しますが、十分な魔力を込める時間がなかったはずなのに、肘から先が吹き飛びます。

『うわっ、グロ……』

 思わず漏らした僕の声がスピナーのスピーカーから響き、残った人影は森の奥へと撤退していきます。しかも、驚いたことに、右ひじから先を失った人影もそれに続いています。

(……声すら上げずに引き上げる?! 人間ですか?!)

 僕は悲鳴を何とかこらえて、魔法の箒ハレーを氷壁側の街道上へと下ろします。馬車はゆっくりと進み、僕のそばで止まります。

「ちょっと、姫さん。今のは何なんですの?」

 アリシアが青白い顔をして僕に質問しますが、僕は首を黙って左右に振るしかできません。客室キャビンから出てきた女性陣は、この手の戦闘に慣れているはずのコリーヌさんすら顔色が悪いですね。

 そう、僕も彼女たちも見てしまったのです。肘から先が無かった二人の人影が、森の奥へと消えていく際に、明らかに右腕の長さが伸びていくのを映した、スピナーからの映像を……

 そして、呆然としていた僕たちに聞こえてきたのは、妙にずれた冷静な声。

「……血の跡が消えていく。それだけじゃない、吹き飛んだはずの腕や手の部位がどこにも見当たらないなんて、ありえないだろう……」

 振り向いた先には、路上に跪いて、血の跡を確認していたアルバートがいます。彼も、アレキサンドリアの魔法使いの一人ですから、医療の知識はさほどなくても、異常な事態には気づいているのでしょう。周囲の地面に触ろうとはしていませんね。

 そして氷壁で保護していた男のほうへと向かっていたデーゲンハルト氏が、歩みをとめました。

「クロエ殿……、貴方はそれなりに加減して氷壁の魔法を展開したのでありますよね?」

 その声は、心無しか震えているようにも聞こえます。

 僕たち全員の視線が、街道出口方向に向かったその先で、脆く崩れ去る氷壁と、未だに倒れた人影の背で燃えている炎を映しました。

「コリーヌさん……、どうやらとんでもない厄介ごとに巻き込まれてしまったようですね……」

 そうつぶやいた僕の耳に聞こえてきたのは、夕方6時の鐘の音……

「あ~、こんな状況で閉門の鐘かよ。最悪……」

 青白い顔で、それでも冗談めかしたサンドラさんの声に、僕たちはうなづくしかありませんでした……
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