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第7章 ここから始まる雁字搦め
五十七日目⑦ ガンテツの思いと決意
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あれは今から何年前になるだろうか……
兄弟子が師匠と喧嘩別れして、故郷の村に帰ったのは。
師匠から工房の跡継ぎを指名されて、それでも頑なに断り続けていた兄貴。
俺はその理由をこっそり聞いてしまった。
『なぁ、ドルムンク。この工房を告げるのはお前だけだ。ガンテツもそのうち王都で随意一の鍛冶師になるだろう。だがあいつはこの工房には向かない。あいつは自由気ままにやっていく方がその腕を振るえるだろう。お前はどちらかと言えば調整型の人間だ。この工房をさらに発展させてくれるのはお前だと信じている。』
『ですが師匠、俺なんかよりガイダス兄貴の方が鍛冶師としての腕は上です。そんなガイダス兄貴を蹴落として俺がこの工房の工房長なんかできません。むしろみんなが付いてこないでしょう。』
ドルムンク兄貴はそう言って、師匠が止めることも聞かずこの王都を去っていった。
俺たちは何度もドルムンク兄貴を引き留めた。
だけど兄貴の決意を変えることは出来なかった。
それからだろうか、この工房がおかしくなっていったのは。
目の上のたん瘤のドルムンク兄貴がいなくなったことで、名実ともにこの工房のトップに立ったガイダス兄貴は天狗になっていった。
事ある毎に〝この工房の後継者は俺だ!!俺に逆らうなら出て行ってもいいんだぞ?ただ他のところで働けるといいけどな?〟と、弟弟子を脅すようになっていった。
気に入らなければ当たり散らし、弟弟子の作品で素晴らしい物は自分の名前で世に出してしまう。
そんなことをしていれば自分の腕が鈍っていくのは必然だった。
そしてついにその日が来てしまった。
ガイダス兄貴はしてはいけないことをしてしまった。
ドルムンク兄貴の奥さんの誘拐・殺人教唆。
俺がこれを知ったのはすべてが終わった後だった。
ドルムンク兄貴は田舎に越した後も、必死で槌を振るい続けていたらしい。
師匠は兄貴を気遣って使いの者をこっそりと送り込んでいた。
そしてドルムンク兄貴の打ったものを買ってきては、それを眺めてため息をついていた。
当然それをガイダス兄貴は見ており、その憤りの矛先を弟弟子たちにぶつけるようになっていた。
王国主催の鍛冶師コンテスト……とは名ばかりで、国王陛下の趣味の剣を打つ職人を探すための招集。
もちろん自尊心の強いガイダス兄貴は嬉々として参加していた。
だけどその腕はすでにさびついており、弟弟子数名に剣を打たせ、その中でも一番いい作品を自分の作品として出品していった。
その作品は俺の作品だったんだが、俺からしたらなまくらも良いところだ。
なぜこんな奴のために全力を出さなくてはならないのか。
他の弟弟子も同様で、こんな駄作を良い物だと思えるガイダス兄貴に辟易していた。
コンテストにはドルムンク兄貴の作品も出品されていた。
そのことをどうやって知ったのか、ガイダス兄貴は顔を真っ赤に染め上げどこかへ行ってしまった。
この時俺たちはガイダス兄貴を止めるべきだったんだ。
だけど面倒が嫌だとそれをしなかった。
その為にこの事件は起きてしまった。
周りの人たちはガイダス兄貴の問題で、俺たちに非はないといってくれるが、そんなことは関係ない。
結果として一番慕っていたドルムンク兄貴の奥さんを奪ってしまったんだから。
それから俺は師匠の下、精一杯槌を振るい続けた。
眠るたびに襲ってくる懺悔の念。
それを振り払うかのように、寝ることを惜しみ振るい続けた。
そして俺が師匠からのれん分けの許可を得るころ、一つの話題を耳にした。
それはドルムンク兄貴のいる村で、一人の天才鍛冶師が現れたという物だ。
しかもそれは槌を置いたドルムンク兄貴の娘だって話だ。
俺は居ても経っても居れず、すぐにその村に足を運んだ。
そこは確かに片田舎だった。
だが、その村は辺境地でありながらも質の良い冒険者がそれなりにそろっている、ちぐはぐさが否めなかった。
その冒険者たちが身に付ける武具を見てその意味はすぐに分かった。
どれも質が良いのだ。
双方の質の良さが相まって、ここの冒険者たちは安心して戦いに望めている。
そう感じていたんだが……そうではなかった。
数組の冒険者に話を聞いていてわかったことがあった。
どれもこれも上質は上質だ。
だが冒険者の〝格〟に見合っていなかった。
つまり、装備品に実力が追い付いてない状況だった。
俺は急いでドルムンク兄貴の工房へ向かった。
兄貴がそんな教えをしているとは思えなかったからだ。
兄貴なら絶対にそんなことはしない。
必ず冒険者のためになる装備を造る。
そして冒険者の成長を手助けする。
だがあの装備はだめだ。
あれでは冒険者たちが自分たちの実力を過大評価してしまう。
「これは……なんだこのなまくらは……これでこの村の最上位鍛冶師か……鍛えなおしが必要だな。」
「なんだって!!それは私の最高傑作なんだ!!見も知らないあんたなんかに言われたくない!!」
俺は店の作品を見るなり、愕然としてしまった。
この村には似つかわしくないレベルの装備品。
それが格安で売られていたのだ。
王都ならこれの数十倍はするはずだ。
この値段設定なら、低級の冒険者だって頑張れば手が出てしまう。
それではだめなのだ。
「これが兄貴の子の作品とはな……兄貴はいったい何を教えたんだ。」
「え?」
俺の声が聞こえたのか、少女……この作品たちの作者は驚きを隠せずにいた。
俺はこの怒りを抑えることは出来なかった。
「いるんだろう兄貴!!さっさと出てこい!!」
「うるせぇなぁ~!!てめぇ~はいつもいつも!!」
工房の奥からのそりと現れたのは、間違いなくドルムンク兄貴だった。
だがそこには見る影もなく……俺の憧れだった匠の姿は無かった。
そして俺は決意した。
これは俺がやらなくちゃいけないことだから……
「ドルムンク兄貴!!俺が娘を預かる!!」
こうしてココットは俺のもとで修業しなおすこととなったのだ。
兄弟子が師匠と喧嘩別れして、故郷の村に帰ったのは。
師匠から工房の跡継ぎを指名されて、それでも頑なに断り続けていた兄貴。
俺はその理由をこっそり聞いてしまった。
『なぁ、ドルムンク。この工房を告げるのはお前だけだ。ガンテツもそのうち王都で随意一の鍛冶師になるだろう。だがあいつはこの工房には向かない。あいつは自由気ままにやっていく方がその腕を振るえるだろう。お前はどちらかと言えば調整型の人間だ。この工房をさらに発展させてくれるのはお前だと信じている。』
『ですが師匠、俺なんかよりガイダス兄貴の方が鍛冶師としての腕は上です。そんなガイダス兄貴を蹴落として俺がこの工房の工房長なんかできません。むしろみんなが付いてこないでしょう。』
ドルムンク兄貴はそう言って、師匠が止めることも聞かずこの王都を去っていった。
俺たちは何度もドルムンク兄貴を引き留めた。
だけど兄貴の決意を変えることは出来なかった。
それからだろうか、この工房がおかしくなっていったのは。
目の上のたん瘤のドルムンク兄貴がいなくなったことで、名実ともにこの工房のトップに立ったガイダス兄貴は天狗になっていった。
事ある毎に〝この工房の後継者は俺だ!!俺に逆らうなら出て行ってもいいんだぞ?ただ他のところで働けるといいけどな?〟と、弟弟子を脅すようになっていった。
気に入らなければ当たり散らし、弟弟子の作品で素晴らしい物は自分の名前で世に出してしまう。
そんなことをしていれば自分の腕が鈍っていくのは必然だった。
そしてついにその日が来てしまった。
ガイダス兄貴はしてはいけないことをしてしまった。
ドルムンク兄貴の奥さんの誘拐・殺人教唆。
俺がこれを知ったのはすべてが終わった後だった。
ドルムンク兄貴は田舎に越した後も、必死で槌を振るい続けていたらしい。
師匠は兄貴を気遣って使いの者をこっそりと送り込んでいた。
そしてドルムンク兄貴の打ったものを買ってきては、それを眺めてため息をついていた。
当然それをガイダス兄貴は見ており、その憤りの矛先を弟弟子たちにぶつけるようになっていた。
王国主催の鍛冶師コンテスト……とは名ばかりで、国王陛下の趣味の剣を打つ職人を探すための招集。
もちろん自尊心の強いガイダス兄貴は嬉々として参加していた。
だけどその腕はすでにさびついており、弟弟子数名に剣を打たせ、その中でも一番いい作品を自分の作品として出品していった。
その作品は俺の作品だったんだが、俺からしたらなまくらも良いところだ。
なぜこんな奴のために全力を出さなくてはならないのか。
他の弟弟子も同様で、こんな駄作を良い物だと思えるガイダス兄貴に辟易していた。
コンテストにはドルムンク兄貴の作品も出品されていた。
そのことをどうやって知ったのか、ガイダス兄貴は顔を真っ赤に染め上げどこかへ行ってしまった。
この時俺たちはガイダス兄貴を止めるべきだったんだ。
だけど面倒が嫌だとそれをしなかった。
その為にこの事件は起きてしまった。
周りの人たちはガイダス兄貴の問題で、俺たちに非はないといってくれるが、そんなことは関係ない。
結果として一番慕っていたドルムンク兄貴の奥さんを奪ってしまったんだから。
それから俺は師匠の下、精一杯槌を振るい続けた。
眠るたびに襲ってくる懺悔の念。
それを振り払うかのように、寝ることを惜しみ振るい続けた。
そして俺が師匠からのれん分けの許可を得るころ、一つの話題を耳にした。
それはドルムンク兄貴のいる村で、一人の天才鍛冶師が現れたという物だ。
しかもそれは槌を置いたドルムンク兄貴の娘だって話だ。
俺は居ても経っても居れず、すぐにその村に足を運んだ。
そこは確かに片田舎だった。
だが、その村は辺境地でありながらも質の良い冒険者がそれなりにそろっている、ちぐはぐさが否めなかった。
その冒険者たちが身に付ける武具を見てその意味はすぐに分かった。
どれも質が良いのだ。
双方の質の良さが相まって、ここの冒険者たちは安心して戦いに望めている。
そう感じていたんだが……そうではなかった。
数組の冒険者に話を聞いていてわかったことがあった。
どれもこれも上質は上質だ。
だが冒険者の〝格〟に見合っていなかった。
つまり、装備品に実力が追い付いてない状況だった。
俺は急いでドルムンク兄貴の工房へ向かった。
兄貴がそんな教えをしているとは思えなかったからだ。
兄貴なら絶対にそんなことはしない。
必ず冒険者のためになる装備を造る。
そして冒険者の成長を手助けする。
だがあの装備はだめだ。
あれでは冒険者たちが自分たちの実力を過大評価してしまう。
「これは……なんだこのなまくらは……これでこの村の最上位鍛冶師か……鍛えなおしが必要だな。」
「なんだって!!それは私の最高傑作なんだ!!見も知らないあんたなんかに言われたくない!!」
俺は店の作品を見るなり、愕然としてしまった。
この村には似つかわしくないレベルの装備品。
それが格安で売られていたのだ。
王都ならこれの数十倍はするはずだ。
この値段設定なら、低級の冒険者だって頑張れば手が出てしまう。
それではだめなのだ。
「これが兄貴の子の作品とはな……兄貴はいったい何を教えたんだ。」
「え?」
俺の声が聞こえたのか、少女……この作品たちの作者は驚きを隠せずにいた。
俺はこの怒りを抑えることは出来なかった。
「いるんだろう兄貴!!さっさと出てこい!!」
「うるせぇなぁ~!!てめぇ~はいつもいつも!!」
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だがそこには見る影もなく……俺の憧れだった匠の姿は無かった。
そして俺は決意した。
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