勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第7章 ここから始まる雁字搦め

五十七日目⑪ ガンテツの覚悟

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 ドルムンク兄貴が死んだ。

 それを知ったのはドルムンク兄貴の娘、ココットがこの工房に姿を見せた時だ。

 龍種の出現は王都でも話題になっていた。
 騎士団も編成され、第二騎士団は出撃準備を進めてるようだった。
 俺たちに出来ることは、その騎士団の武具のメンテナンスを請け負うことくらいだ。
 まあ、王派の第一騎士団は守りを固めるって名目で、王城に引っ込んじまったが……
 お前たちが守るのはこの国だろうに。

 公爵閣下が全面的指揮を担い、第二騎士団は出現ポイントへと急行していった。

「そうか……死に目すら見れなかったのか……なんだかな……バカ兄貴が……」

 俺は涙を堪えられなかった。
 埋もれていったとは言え、俺の目標そのものと言って良い人物。
 俺はその背中を見てこの世界で戦ってきたのだ。
 最後は鍛冶師として命を落とすものだとばかり思っていた。
 悔しい気持ちと口惜しい気持ちが綯交ぜになって俺を襲ってくる。
 あの時ああしていればなんて、今となってはどうにもならないことが俺を責め立てる。

「だがココット。君が生き残れたのは幸運だった。こうしてドルムンク兄貴の血縁を絶やさずに済んだんだから。」
「ガンテツ師匠……私に鍛冶を教えてください。もう誰も傷つかないように、皆を護れるように……お願いします!!」

 ココットの必死の形相に俺は驚いてしまった。
 その目には光が宿っていた。
 だがその奥にはほの暗い闇もまた存在していた。
 このまま鍛冶を教えていい物だろうか……判断が付かなかった。

「甘えるな!!」

 だからこそ俺の第一声は一喝だった。
 それに驚いたのか、ココットは予想とは違った答えに後退りしていた。
 いい、これでいいんだ。
 このままココットを鍛えても、おそらく堕ちていく。
 復讐に囚われたままでは、この先ココットは闇を抱えたままになってしまう。
 〝鍛冶師とは武器を造る職人ではあらず〟、それが師匠の教えだ。
 いまだに俺自身その本当の意味は分かっていない。
 恐らく生涯通しての鍛冶師人生でやっと見つかるかという物だろう。
 ひとつわかることは、俺たちは武器を造って終わりではない。
 その先にいる使用者を無視することは出来ない。
 だが今のココットではそれは難しいだろう……
 なら俺が正してやる必要がある。
 ドルムンク兄貴の代わりに。

「良いかココット。お前は何のために鍛冶師になったんだ?地位か?名誉か?名声か?金か?」
「違う!!私は!!」
「何が違うってんだ!!」

 俺は心を鬼にしてココットを問いただす。
 反射的だろうな、反論してみたものの、その先に続く言葉はなかった。
 むしろ、キッと睨むだけで言葉を濁していた。
 おそらく自分でも気が付いてはいるんだろう……だが、復讐心が大きすぎて自分でもコントロールできていない、そんな状況なのだろうな。

「ココット、お前の槌は何のためにあるんだ?お前の作った武具は何のためにあるんだ?誰かを攻撃するためにあるのか?誰かを護るためにあるのか?」
「私は……」

 ココットは声を詰まらせていた。
 答えがまとまらない……とは違いそうだな。
 目に迷いが見える。
 良い意味でも悪い意味でも、迷うことは大切なことだ。
 迷うことで見えてくるものもあるからな。

「お前は何がしたいんだ?」
「私は……ゲイニッツを守りたかった……あの村を守りたかった……」

 ポツリとつぶやくココット。
 その声に邪な色は視えなかった。
 純粋な懺悔。

「そのゲイニッツってやつは何を考えていたんだろうな?お前に守られたいと思っていたのか?」
「?!?!」

 驚くようにびくりとしたココットは、堰を切ったように涙を流した。
 〝復讐の炎〟によって封をされていた感情が、一気にあらわになったようだった。

「そいつはお前を護ろうとしたんじゃないのか?」
「そうです……でも、私の剣が……私の剣が……」

 一つ一つ当時の状況を話し始めたココット。
 それを聞くに、ココットの後ろめたさは己の鍛えた武器にあるように思えた。
 だがそれは違う。
 武器はあくまで武器。
 命をとして守ろうとしたゲイニッツという青年の意思までも、武器のせいだとしてはいけない。

「ココット……相手は龍種だったのだろう?だったら騎士見習い一人でどうにかできるモノじゃない。騎士団1個大隊が出張ってやっとの天災だ。お前がそれを背負うのはお門違いもいいところだ。」

 俺の言葉が届いてくれると良いのだが……こればかりはココット次第。
 これからの鍛冶師人生において、答えを見出すのはココットだ。
 俺が出来るのは引き上げてやることと、土台を作ってやることくらいだ。

「師匠……私に鍛冶を教えてください。折れず・曲がらず・何人にも傷つけられない、手にした人と最後まで戦い抜く武器を造れるように!!」

 今度こそ本当の意味でココットの瞳に火が灯っていた。
 それは〝復讐の炎〟ではなく、純粋に鍛冶を修めようとする〝意思の炎〟。
 これなら大丈夫だろう……

「俺の教えはきついぞ?」
「はい!!」

 ココットは満面の笑みで俺に答えた。
 ドルムンクの兄貴、あんたの娘は俺が一人前の鍛冶師にして見せる。
 だからこの娘を見守ってやってほしい。

「よし!!良い返事だ!!」

 それから俺は俺の持つ技術のすべてを伝えるため、ココットを鍛え始めたのだった。
 だがそれがこうなるとはだれが予想しただろうか……
 どこで間違ったんだ……
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