婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓

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第6話 それから

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 あの惨劇から5年の月日が流れました。

 御爺様と御婆様、それとお父様は今回の責を取り完全に隠居なされました。
 今は王都近郊の街ので、その余生を静かに過ごしておいでです。

 ユースお兄様は下位騎士に強制的に組み込まれ、今ではすっかり昔の面影は無くなっております。
 そのおかげか、昨年結婚され、今年には第一子が誕生する予定だそうです。
 結婚の際に「すまなかった」そう話をされ、なんだかこそばゆかったのはいい思い出です。

 そしてコニーお兄様は運命のあの日……



「そちが家督を継いだ現ヴァーチュレスト伯爵家当主か?」
「はっ!!」

 いま私たちは謁見の間に通されております。
 目の前にはこの国の国王……ジョゼフ・エル・フォン・イシュバルド陛下がいらっしゃるのです。

 女性である私まで謁見の間に通されるとは思ってもみませんでした。
 家族7人全員がこの謁見の間に通されたのです。

「そうか……それはすまなんだ。」

 会場中からどよめきが起こりました。
 私も何事かと焦りを覚えました。
 なんと陛下自らが頭を下げておられたのですから。
 それがどれだけ異常事態なのか、私にですら分かる事です。
 周囲からは陛下に対して頭を下げる事を止める声が上がりました。
 しかし陛下の一喝でそのどよめきは終わりを迎えました。

「黙れ!!此度の事の端を発したのは、我が愚息のせいぞ。ただ、国家転覆を目論んだライアード家には滅んでもらったが、それに加担しようとしたそちらヴァーチュレスト家もまたそれなりの咎は有ると思え。では申し伝える。コーネリアス・フォン・ヴァーチュレストをヴァーチュレスト家当主と認める!!爵位は今回の咎の責を与え降格処分とし、子爵家としてもう一度やり直すがよい!!」
「ははっ!!謹んでお受けいたします。寛大なご処置感謝いたします。」

 そしてコニーお兄様は正式にヴァーチュレスト家の当主となり、家を守ることに成功したのでした。

「それともう一つ、軍務卿続きを。」
「コーネリアス・フォン・ヴァーチュレストは本日付で軍務局情報部の所属とする。合わせてターラント・エンヴィーの復職を命ずる!!」
「コーネリアスよ。そちの今回の手腕見事であった。多少の犠牲者は出たものの、ほぼ無傷で領民を逃がした事、ほめて遣わす。領民はこの国の宝だからの。損な役回りを与えた事ここに謝罪する。」

 改めての陛下からの謝意。
 お兄様は恭しくその謝意を受け取り、ここに法衣子爵・ヴァーチュレスト家が誕生したのでした。



「お兄様行ってらっしゃい!!」
「行ってきます。」
「ターラント、お兄様をお願いしますね。」
「かしこまりましたお嬢様。」

 こうして二人は軍務局へ出勤していったのでした。

 私ですか?
 私は……もうすぐ結婚する事となりました。
 お相手はジャック軍務卿の寄子である、ライオネル子爵家次期当主のキール様です。
 実はキール様は私の同級生でもあり、学園当時も仲良くさせていただいておりました。
 ただ、当時は表立って仲良く出来ませんでしたので、手紙のやり取りのみでしたが。
 いわゆる文友達と言えば良いのでしょうか。

 今回の騒動を聞きつけ、わざわざ王都まで足を運んでくださったのです。
 それからはたまにお食事などをご一緒することも増え、仲良くさせていただいておりました。
 そして昨年の私の誕生日の際……
 キール様が家督を継ぐときに合わせて結婚してほしいと申し込まれたのです。
 ですが私は一度婚約を破棄された身……
 本当に良いのか迷いました。
 ですがキール様はそれでもとおっしゃっていただき、最後はコニーお兄様の後押しもありお受けいたしました。

 後で聞いたところ、キール様はお兄様に直談判されたご様子。
 あまりにも熱心に語るもので、お兄様も根負けされたようでした。



 そして婚約披露パーティー当日。

 晴れて私はキール・フォン・ライオネル様の妻となることが、ここに発表されたのでした。





「御婆様。私はライオネル家の長女として相応しい女性に成れているでしょうか?」
「そうね、あなたなら大丈夫。さあ行っておいでリーサ。必ず幸せにおなり。」

 リーサの死は、私の結婚の翌年に知らせが届きました。
 ターラントがわざと時期をずらしたのだと思います。
 だから願わずにはいられません。
 彼女が生まれ変わり……そして幸せになることを。

 ねぇ、リーサ。
 今度生まれ変わったら、私たち本当の親友になりましょうね。



シャルロット・フォン・ライオネル(旧姓ヴァーチュレスト)。
ここに眠る
享年77歳





 ここに一冊の日記がある。
 それは彼女が残した親友との思い出の日記が。
 それが嘘にまみれた日記だったとしても、彼女にとってはそれが真実であった。
 そう死の間際に漏らしていたそうだ……

~ FIN ~
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