最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第3章 リスタート

048 欲する先に有った物

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 俺たちは由貴乃さんに事情を説明し、余っている手持ちの物資を譲り受けた。
 梁井明日香は最後まで渋々というスタンスだったが、由貴乃さんの説明で、これまた渋々対応してくれた。
 物資を受け取った俺たちは、由貴乃さんたちに礼を述べ、踵を返すようにまたダンジョンへ戻っていた。

 向かう先は……まだ俺が踏み込んだことのない第6層。

「悪いなみんな。俺のわがままに付き合わせて。」

 第6層を目指して歩きながら、俺はみんなに謝った。
 しかし、カイリ達から帰ってきた言葉は感謝だった。

「ケントさん、ありがとう。」

 今だ、泣き止んでいないカイリが、鼻声で答えてくれた。
 カレンやアスカも同様だった。
 なんだかんだ憎まれ口をたたきながらも、幼馴染たちの事が心配で堪らなかったのだろうな。
 おそらくそれが普通の反応なのだと思う。
 理不尽なのが、このダンジョンのある世界の方だ。

 それから行く手を阻むモンスターは、虹花さんが弓で倒していく。
 出来る限りSPや体力の消耗を抑えながら進んでいった。
 カレンと虹花さんでルートを調べてモンスターがいないルートを通ってはいるが、どうしても遭遇戦は発生してしまう。
 それをうまいこと虹花さんが処理していったのだ。
 おかげさまと言えばいいのか、だいぶ物資の消耗を抑えることが出来たのは僥倖だった。

 第5層も難なく通り過ぎて、俺たちは第6層への階段の前に居た。
 まだ第5層だというのにもかかわらず、第6層への階段からは何か良からぬ気配が感じ取れた。
 一歩踏み出すたびにそれが色濃くなっているのが分かった。

「みんな、この先におそらく『探索者型イレギュラー』が待ち構えている。最初から全力全開でいこう。出し惜しみをしてこちらが削られるのはまずいからね。いざとなったら全力で撤退する。良いね?」
「「「はい!!」」」

 3人は気合が空回りしているな……
 谷浦と虹花さんは、そんな3人を見て大分冷静でいられているみたいだ。
 俺はそんな二人に静かに声をかけた。

「先輩……ダイジョブですか?」
「あぁ、それよりも虹花さん。3人をお願いします。もし何かあったら谷浦と二人で3人を脱出させてください。」
「わかりました。ケントさん……。無理はしないでください。」

 虹花さんには敵わないな……
 おそらく俺の行動を理解している。

「無理はしませんよ。」
 
 否定した俺の顔を見た虹花さんは、少し困ったような表情を浮かべていた。
 心配かけて申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 ただ、彼女たちを守りたいと思っているのは同じだという確証は得られた。
 
 そして俺たち期待に胸膨らませてではなく、不本意な形で第6層に足を踏み入れた。

 階段を降り切った場所には広いフロアが広がっており、その奥に幾本ものルートが確認できた。
 この形状から予測するに、第6層はルートを選んで進むタイプのダンジョンなんだろうな。
 そのルートによって攻略難易度が変わるとかそういった感じだろうと予測は出来た。
 
 そしてそんなフロアの真ん中に3人の探索者の姿が見えた。
 ただ、その雰囲気は何やら嫌な感じがしてきた。
 体中にまとわりつくような、それでいて何かを探るような。

「行こう、真偽を確かめに。」

 俺たちは前に歩みを進めた。
 そして確信した。
 シン達だ……

「あぁ、カイリ達じゃないか?やっと俺の元に戻る気になったのか?」

 どこか暗い笑みを浮かべたシンの声が、とても不快に感じた。
 何かシンであってシンではない、そんな印象を抱かせる声質だった。
 みんなも同様に顔を顰めていた。

「カイリ、カレン、アスカ……。ずっと待っていたんだ。どういうわけかこの階から出られなくなってさ。君たちなら俺の事絶対に探しに来てくれるって信じてたよ。」

 シンの視界には3人しか映ってない。
 俺はその眼中にはない、そんな感じがした。

「ほら、こっちにおいで。ダイスケもリョウも一緒だから。また6人で探索しよう。そうだ、それがいい。そうじゃなきゃいけないんだ。俺たちは6人で一つなんだ。それをあいつが!!あいつが!!!!あいつが!!!!!!!」

 何かに怯えているのか、それとも迫られているのかわからない。
 だが、焦りとも怒りとも違う感情が、シンの中に渦巻いているように見えた。
 おそらくシンの中では、6人でいることが世界の全てだったのかもしれない。
 どこまで行って、いつになっても6人一緒。
 本来、そんなことはあり得ないのに。
 成長するに伴って、互いの道は離れていく。
 だけど、たまには近づいて馬鹿話や懐かしい話で盛り上がる。
 それが幼馴染であり、親友のはずだ。
 だが、シンはそれを否定しているのだと感じ取らせるにはあまりある感情をぶつけてきた。
 
 俺は念の為にシンの後ろの2人に視線を向けてい見たが、微動だにしなかった。
 むしろ、生気すら感じない……どういうことだ?

『アスカ……アスカ?アスカ!!返事をしてくれ!!』
 
 俺はあまりの違和感に、アスカに確認を求めた。
 しかし、何度も念話で呼び掛けてもアスカの返事がなかった。
 どうやら場の空気に当てられてしまったのかもしれない。

『アスカ!!』
『はい!!』
『やっと気が付いたか。大丈夫か?』
『はい、ごめんなさいです。』
『そうか。ならすぐにシンと後ろ二人を鑑定してくれ。なんだか嫌な予感がする。』

 アスカは俺からの指示を受けて、すぐに生物鑑定を行った。
 確認したアスカは言葉を失ってしまった。
 横目でアスカの様子をうかがったが、口に手を当てて動揺を隠せないでいた。
 そして俺は嫌な予感が確信へと変わっていった。
 
 そう、モンスターですらない……
 【死人人形(ネクロマンサードール)】だった。

『アスカ、シンはどうだ?』
『シンは死人ではありませんでした。でも、人でもありません。間違いなくモンスターです。』

 いまだ動揺から抜け出せないアスカに、シンについても教えてもらった。
 アスカの答えに、カイリとカレンが固まってしまった。
 これは戦闘が不可能だ……

 俺は一度天を仰ぎ見てから、虹花さんと谷浦に目配せをして合図を出した。

 ”2人を担いで脱出する”

 谷浦たちとは、事前に打ち合わせを済ませておいた。
 もしも彼女たちが行動不能に陥った場合は、すぐさま撤退行動に移るというものだ。
 それが彼女たちの意思に反していても。
 谷浦は俺の合図を理解して、すぐに行動を開始した。
 アスカは正気に戻っており自分で走り出した。
 カイリ達を担いだ二人も併せて退避していく。

「おい!!3人をどこへ連れていく!!この俺のパーティーメンバーだぞ!!」
「悪いな、今は俺のパーティーメンバーだ。こっから先は、行き止まりだ!!」

 俺は剣と盾を構え殿を務める。
 奴は……シンはもう人ではなかった。
 まさか生物の進化にそんな条件も存在しているとは俺も予想だにしていなかった。

ーーーーーーーーーー

基本情報

 氏名  :東野宮 進(とうのみや しん)
 年齢  :ーー歳
 職業  :ネクロマンサー
 称号  :死者を統べる者

スキル

 共通  :世界共通言語 レベル無し
      インベントリ レベル2
 
 ユニーク:強欲

ーーーーーーーーーー

職業【ネクロマンサー】:死者を人形のように操ることができる。
称号【死者を統べる者】:ネクロマンサーを補強する。

 この時点でろくでもないステータス表示だった。
 そして最後にユニークスキル。
 まあ、たぶんあるだろうなと、なんとなく思っていたものだ。
 こういった物語の中に出てくる、定番中の定番。
 むしろ出てこない方が少ないのでは?と思わせる存在。

 通称【七つの大罪】と呼ばれるユニークスキル【強欲】。

 おそらく、シンの欲する心に共鳴して与えられたスキルだと思う。
 アスカ鑑定結果に俺は心から納得してしまった。
 そして俺が決着をつけなくてはいけないと強く感じていた。
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