最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

文字の大きさ
49 / 131
第3章 リスタート

049 間違え

しおりを挟む
強欲:すべてのモノを欲するがままに得られる。ただし、強制的に生物の進化が行われる。種族等すべてランダム。

 本当に嫌になるな。
 こんなのが発動したら、強制的に人間をやめるってことだろうに。
 普通に考えたら、こんな腐れスキルを発動させようと思う人間は、ほぼ皆無だろうな……それこそ、人生を変えたいって思ってるやつでもない限り。
 そして、シンは発動させた……自分自身が人間でなくなることを引き換えに。
 いや違うな……シンの性格を考えると、ご都合主義が先行した可能性も否定できないな。
 〝自分なら大丈夫〟〝主人公は逆転できる〟と、こんな感じかもしれない。
 ただ、それは本人にしかわかりえない感情。
 それほど、カイリ達を欲していたのだろうな。
 幼馴染としてなのか、友人としてなのか、好きな相手としてなのか……
 スキル【強欲】そんなものに手を出す前に、きちんと謝罪なりなんなりするべきだろうに。
 そうすれば、また違った未来に進めたかもしれないな。
 赤の他人の俺が、過ぎたことをとやかく言う話ではないか。
 そして、それに付き合わされたダイスケとリョウが不憫でならない。
 結果としてその命を奪われ、物言わぬ骸人形となってしまったのだから。
 あいつらもまた、この世界の被害者なのかもしれない。

「邪魔だ!!あいつらは俺のものだ!!俺のモノだ!!」

 すでに呼ばわりだ。
 カイリたちを、おもちゃか道具かアクセサリーみたいに思ってるんだろうか。
 勘違いも甚だしいな。

 どうやら俺は、パーティーメンバーに対する暴言で、怒りの感情が沸き上がってきてしまったみたいだ。
 
「そうはいかないさ。それにお前理解しているか?階層を上がれないということは……お前はモンスターになっちまったってことを!!」

 一瞬シンの動きが鈍ったように思えた。
 しかし、それも束の間。
 さらに会話がおかしくなっていく。

「嘘だ!!黙れ!!俺のだ!!俺の体だ!!俺のモノだ!!」

 何かに抗っているようにも見える。
 すでに正気ですらないのかもしれない。
 それにしても俺はどうしてこんなに冷静でいられるんだろうな……
 心の底に激しい怒りの感情があるにも関わらず、それは静かに燃え上がる炎のように思えた。
 
 剣を構えた俺とシンが向きあい距離を探り合う……
 じわりじわりとその距離を近づけていく。

「そうだ、思い出した……。お前は……」

 シンの様子がおかしい……
 ドロドロとした気配と言えばいいのか、よくわからないものがさらにドロドロとしてシンにまとわりつく。
 強いていうなれば念、思いというものか……それが可視化されているように見えた。

「お前が……お前さえいなけば……お前さえ!!」

 シンからいきなり殺気が溢れ出す。
 先ほどからあった殺気を上回るほどの、黒く歪んだ醜い殺気。
 誰かを守ろうとするものではなく、奪い取ろうとする殺気。
 まさに【強欲】。
 その殺気につられて、後ろに控えていたダイスケとリョウが動き出した。

 前に見た時よりも動きが早くなっている。
 おそらくレベルが上がったんだろうな。
 シンも動きが良い。
 きちんと訓練していればよかったものを……
 そうしたらもっと違う形でカイリたちと再会できたはずだ。
 その努力が出来たのであれば。

「それは俺のせいじゃない。お前が犯した過ちだ。彼女たちは自分たちで選んだんだ。お前から離れることを!!」
「知るか!!お前が俺から3人を奪ったんだ!!だから今度は俺が3人をこの手で奪い返す!!今度こそやり直すんだ!!俺が正義だ!!俺が主人公ヒーローなんだ!!」

 シンの叫びとともに3人が襲い掛かってきた。

 ダイスケが大盾を構えて突っ込んできた。
 おそらくシールドバッシュを仕掛けてくるはずだ。
 予想通り大盾が俺に迫ってくる。

ガキン!!

 俺の盾とダイスケの大盾がぶつかり合う。
 俺は盾をうまく使い、ぶつかり合った支点をずらし、ダイスケの盾を打ち下ろす。
 その反動で態勢がいきなり崩れてよろけるダイスケ。
 俺はすかさずその場で一回転し、遠心力いっぱいに手にした盾をバックブローでダイスケの横っ腹を殴りつけた。
 俺の体力がダイスケの体力を大幅に上回っていた為に、ダイスケがきれいに吹き飛ばされた。
 それに巻き込まれるようにリョウも吹き飛ばされていく。

「よくも二人を!!やはり貴様はヴィランだ!!」
「俺がヴィランなら、お前は何だ⁉正義の味方ヒーローとでも言うのか!?違う!!お前はただの人間だ!!」
「うるさいうるさいうるさいうるさい!!これでもくらえ!!ラッシュ!!」

 なりふり構わずスキルを発動したシンが突っ込んできた。
 スキルのおかげで上昇した身体能力から繰り出される激しい連撃が俺を襲う。
 だけど、これもステータスのおかげなんだろうか、俺には全く届かない。

「なんで!!なんでなんでなんでなんで!!なんで届かない!!」

 シンの攻撃が、さらに激しさを増していく。
 怒りに任せた攻撃は、単純化して振りだったから、いなすことはさほど難しくはなかった。
 さらに体勢を整えたダイスケたちも改めて参加し、激しく俺を攻め立てる。
 槍にロングソード、片手剣。
 どれもこれも単調で、代り映えがしなかった。

ガキン!!
キン!!
ゴン!!

 ステータス上げをしていて助かった。
 普通に対応できている。
 基本盾でいなし、必要に応じて剣でもいなす。
 攻撃を加えることは基本的に行わなかった。
 シンを殺してしまっては意味がないからだ。
 できれば無効化して取り押さえられればと考えていたが、シンにはそれが伝わることはなかった。

「くそくそくそくそくそ~~~~~~~!!」

 さらにシンの攻撃速度が上がり、苛烈を極めた。
 俺への恨みなのか、怒りなのか……もしくは自分の思い通りにいかない苛立ちからなのか……
 その感情に呼応するように、ダイスケたちの攻撃速度・威力が増大していく。
 
 なるほどね。
 【死人人形(ネクロマンサードール)】は術者次第で強さが変動するのか。

 思ったよりも俺には余裕があった。
 確かに速度も威力も高い。
 でもそれだけだった。
 連携も何もあった物じゃない。
 ただ闇雲に攻め立ててくるだけだ。
 良くも悪くもごり押しだ。
 むしろゴブリンの方が連携が取れてるんじゃないだろうか。
 うん、これ以上はダイスケたちが哀れだ。
 俺はこの戦いに決着を付けることにした。

スキル【身体強化】【部位強化】!!

 俺はこの戦いで、初めてスキルを発動させた。
 身体強化のレベルは5。
 おおよそ5分が効果時間だ。
 上昇率は身体強化が5%の上昇。
 部位強化は部位を10%上昇させ、任意に部位を変更できる。
 そしてその効果は歴然だった。
 それはそうだ。
 スキル使用前でも対応できていたんだから、ステータス上昇した今、対応できないわけがない。

 その均衡が破れた瞬間に、決着がついた。

 ダイスケがシールドバッシュを仕掛けたのが見えた。
 それをサイドステップで躱し、腕に部位強化を掛け替え、その首を切り落とした。
 やはり死体……か。
 血液が出るわけではなく、ダイスケの頭部は糸が切れたように地面に放り出され、身体は前のめりにどさりと崩れ落ちた。
 頭部に見えた表情は、喜怒哀楽の感情すらなく、能面を被っているかのようだった。

「ダイスケ!!貴様~~~~!!よくもダイスケを殺したな!!ユルサナイ!!」
「黙れ!!ダイスケはすでに死んでいた!!シン、お前がそいつをスキルで【死人人形ネクロマンサードール】にしたんだ!!お前の巻き沿いで死んだその二人の生をお前が欲したから……、だからそいつらは【死人人形ネクロマンサードールとしてお前の側にいたんだ!!」
「嘘だ!!ウソだ!!ウソダ!!USODA!!●×△□!!」

 もうすでに俺に理解できる言葉ですらなくなっていった。
 シンはもう、モンスターになり果てていたんだな。
 ただただ、元の関係に戻りたい一心で強くなるためにここに来て……本当に馬鹿だ。
 ただ心から謝れば、友達として元に戻れたかもしれないのに……
 だから俺がお前の間違いを終わらせてやる。

「シン、お前は間違えた。だから俺がそれを正してやる。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...