最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓

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第3章 リスタート

050 掛け違え

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「シン、お前は間違えた。だから俺がそれを正してやる。」

 今度は、俺から攻撃を仕掛ける。
 狙いはリョウ。

「なっ?!」
 
 シンは動揺しているせいか、動き出しがかなり鈍い。
 こちらとしても好都合。
 何せスキルの残り時間は3分程度しかないんだから。
 俺は、シンが反応し始める前にリョウとの距離を縮めていく。

「リョウ。君ともきちんと話したかったよ。ごめんな。」

 リョウは構えた槍を振るう事無く、静かに俺の剣を受け入れた。
 抵抗なく振るわれた剣が、リョウの身体を両断していった。
 リョウの口がかすかに動いた気がした。

 (シン、ごめん……)
  
 もしかして、意識があったのか?
 いや、それはわからない。
 ただ、抵抗すること無くその体から首が落ち、ダイスケ同様にその身体は地面へと崩れ落ちた。

「リョウ!!貴様リョウまでもその手にかけたのか!!この人殺しが!!俺が成敗してくれる!!」

 シンが動揺から戻ってきたときには、すでにリョウは動かなくなっていた。
 それを見たシンはさらに激高する。

「違うだろ?お前が二人から奪ったんだ。これまでの経験も、今この瞬間の楽しさも、これからの人生も、すべて奪い去ったんだ。強欲……お前はそれでダイスケやリョウだけじゃない、他の探索者からもたくさんの物を奪い取ったんだ。わからないとは言わせないぞ!!」

 一瞬だけだけど、シンの動きが止まったように見えた。
 その眼には激しい動揺が見て取れた。
 だけど、それを否定するかの方に何度も頭を横に振って見せた。
 何かを振り払うかのように。
 
「ちがうちがうちがうちがう!!」
「違わない!!シン!!もう終わりにしろ!!お前の欲する気持ちが……心が、お前のすべてを壊したんだ!!」

 駄々をこねる子供の様に、「違う!!」と叫びながらシンは一心不乱に剣を振り続ける。
 そこには剣術なんてものは存在しておらず、ただ闇雲に振り回しているだけでしかなかった。
 俺はそんな攻撃を躱し、いなし、受け止めてシンと会話する。

「欲して何が悪い!!求めて何が悪い!!欲しがるのが普通だろ!?レベルだってそうだ!!スキルだってそうだ!!素材にアイテムすべてそうだ!!お前だったそうだろ!?違うとは言わせない!!」

 俺はシンに言い返す言葉が無かった。
 確かに俺もそれを欲している。
 むしろそれのためにダンジョンに潜っていた。
 ただ、シンと違うのは己の弱さを知っていること。
 己も脆さを自覚していること。
 そして何よりも、こんな俺を信じてくれる家族や仲間がいたこと。
 
 シンにもカイリ達がいたはずだったのにな……
 なんでこんな結果になってしまったのか。
 
「シン!!」

 俺たちの戦いの後ろから女性の声が聞こえてきた。
 一瞬振り返ると、そこには逃がしていたはずの人物の姿があった。
 カイリだ。

「シン!!もうやめて!!これ以上何を欲しがるの⁉私たちはあなたの道具じゃない……ペットじゃない!!私たちだって人間なの!!シンと同じ人間なの!!」
「カイリ……、アスカ、カレン……。ダイスケ……、リョウ……。あぁ、俺はなんてことを!!」

カラン……

 シンは攻撃をやめると、力なくその場にへたり込む。
 手にした剣は地面へ転がり、すでに戦闘の意志は感じられなくなっていた。

「シン……」

 カイリがシンへと近づいていく。
 本当は止めるべきだろう。
 ただ、俺は止めることができなかった。

「シン……」
「なぁ、カイリ……。俺……どこで間違えたんだ。」

 そこには、先ほどまでの鬼気迫るシンの姿はなかった。
 今にも泣き出しそうな声で、震える声で力なく呟いていた。

「そうね、最初からよ。」
「ですねぇ~。ずっとだめだめですよぉ~。」

 カレンとアスカも、シンに近づいていく。
 カレンの表情は、出来の悪い弟を思いやる姉の様だった。
 アスカはいつも通りのアスカだった。
 裏も表もなく、ただただシンにダメ出しをする。

「すいません先輩。止められませんでした。」
「ケントさんごめんなさい。」

 遅れて谷浦と虹花さんがやってきた。
 二人から謝られたが、今回は俺の判断が間違っていたみたいだ。
 この子たちはもっと話し合うべきだったのだと、今更ながら感じてしまった。

「俺は……俺は……」
「シン。これからはきちんと自分の足で立ちなさい。誰かの責任じゃなく、あなた自身の責任で。」
「カレン……。相変わらず手厳しいな……」
「そう?これでもまだ優しく言ってあげてるわよ?」

 シンの表情は、憑き物が落ちたかのように穏やかに変わっていった。
 ただ、いまだ何かが小さく蠢て居ているようにも感じられた。

 そうこうしているうちに、俺のスキルも切れてしまったようだ。
 スキルの反動なのか、若干体に違和感が残る。
 おそらく、先ほどまでとの身体能力の違いに違和感を覚えてしまっているんだろう。
 
 さて、この話にどう決着をつけるべきかな。
 おそらくシンはもう人間へと戻ることはできないと思う。
 生物の進化を果たし、別の生物へと生まれ変わってしまったから。
 一度一ノ瀬さんに相談する必要はありそうだ。
 戻ったら今後について確認しよう。
 
『ケントさん、どうにかなりませんか?』

 アスカからの念話だった。
 アスカの表情を見るに、どうにかできるならしてあげたいという思いが伝わってきた。
 俺もできることがあるならそうしてあげたいのだが、今の俺ではどうにもしてあげられなかった。
 いくら必死になって考えてみても、解決策は浮かばなかった。
 
『すまない。俺にもどうしていいか……』
『そう……ですよね。』
 
 シンは鑑定上モンスター化をしてしまった。
 これは否定の出来ない事実だ。
 それに階層を移動できないことからもその裏付けとなってしまっている。
 〝ダンジョンのモンスターは、一度死んでも一定期間でリポップを果たす〟
 これがダンジョンのルールだ。
 おそらくダンジョン内のモンスターが枯渇しないようにという、ダンジョンの意図が透けて見える。
 もしシンがダンジョンのモンスターと同じ性質を持っていれば、俺やほかの誰かがここでシンを倒したとしてもおそらく リスポーン地点で復活する。
 ただし、復活したシンが、今目の前にいるシンと同じシンとは限らないけど……
 魂のループなのか、肉体のループなのか。
 そればっかりは俺にもわかるはずはなかった。
 
 きっとこれが、シン強欲を使用する前で、今の俺に出会っていれば、おそらくスキルコンバートでどうにかできた可能性が高かった。
 しかし、すでに時遅しというやつだ……

ピロン

『スキル【スキルクリエイター】からスキル派生。スキル【レベルドレイン】を獲得しました。』

 ここに来てスキル取得って、ご都合主義にもほどがあるだろう!!

 俺は心の中で悪態をつきながらも、何か助けられる手段であることを願い、スキルを確認するためにスマホを操作する。
 目の前に現れた見慣れた透明なディスプレイ上に、使用可能スキルの一覧と説明が並ぶ。
 あった……

ーーーーーーーーーー

レベルドレイン:対象の任意のレベルを抜き取ることができる。※対象のレベルが0になった場合、

ーーーーーーーーーー

 はぁ~~~~~~~?!
 何だこのぶっ壊れスキルは!!
 有り得ないだろ!!
 よりにもよって最悪な解決方法じゃないか!!
 これって相手を殺すんじゃない……、消滅させてしまうスキルじゃないか!!
 あれだろ、存在そのものが無かったことにさせられるんだろ?
 しかも、努力の結晶であるレベルを抜き取るって……

 でもどうしてこのタイミングで習得になったんだ……
 何か意図があるんじゃないか。
 おそらく自称神の意図が……

 まさか……
 
 ※対象のレベルが0になった場合、対象は消滅。

 俺にそれをしろということなのか……

 くそったれの自称神め!!
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