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第4章 変革
066 決意を胸に
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カイリ達と別れてから、どれくらいの月日が過ぎただろうか。
俺は、相変わらずダンジョンへ潜っていた。
今だBランクへ上がることができていない。
Bランクへ上がる為の目安はレベル50。
今だそこまでに至っていない。
ただ、ステータス上昇系のおかげかわからないが、戦うことは普通に行えるようになってきた。
現在レベルは47。
スキルレベルはそれに合わせて46レベルだ。
おそらくカイリ達は60前後になっているかもしれないな。
なんとか追いつきたいんだが、どうしたものか。
まぁ、どうにかこうにかがんばるしかない……
美鈴はと言うと、自衛隊駐屯地に避難した後でふさぎ込んでしまった。
一緒に活動していた友人たちの消息が、完全に途絶えたのだ。
最初三日くらいは、メールのやり取りが辛うじてできたそうだ。
しかし、その後突然メールの更新が止まり心配していると、友人たちが避難していたシェルターハウスが壊滅していたことが判明した。
美鈴は友人たちの無事を祈っているけど、ほぼ難しい状況になっているそうだ。
現地を確認しに行った自衛隊員も、あまりの悲惨さに言葉を失ったんだとか。
ただ、最近はやっといつもの美鈴らしさが見えてきた。
それを手助けしてくれたのが、美織さんだった。
美織さんもスキルが魔法使い系だったので、美鈴にコツなどを教わっていた。
最初は断っていたみたいだけど、最近は二人で訓練している姿をよく見る。
たまに自衛隊員や避難してきた探索者とダンジョンへ向かっている姿を見るので、気持ちの整理が付いたのだと思う。
何もできない兄で不甲斐ない限りだ……
母さんはスタンピート以降考えを改めたらしい。
本当は戦闘なんてしたくないはずだ。
だけど、自分のスキルで守れることがあると知り、だったらその力をさらに高めて、もっと多くの人を守りたいと考えたそうだ。
そんなに思いつめなくてもって思ったけど、避難の時に出会った若者の集団が居た施設も、やはりモンスターによって壊滅させられていたそうだ。
自分がもっと強かったら、彼らを守りながらここまで避難できたのに……そう嘆いている姿を、夜な夜な見かけていた。
父さんは駐屯地内で建設作業に従事していた。
運よく合流できた『スミスクラン』のメンバーと話し合い、今できる最善をしようと動き始めたのだ。
駐屯地内はだんだん人口が増えてきた。
おそらく万はいるのかな?
それでも元の市の人口の数十分の一でしかない。
女性子供も多く、戦える人数は限られる。
だからこそ、クラフト職のスキルホルダーである父さんたちは動き始めたようだ。
それを見た避難者たちも、戦えなくても支えることができるはずと、徐々に動きを見せ始めた。
戦えるものは、ダンジョンや街中のモンスター討伐に。
戦えないものは、バックアップに。
そうやって支え合って俺たちは、この危機を乗り越えていこうとしていた。
しかし、自称神は何がしたいんだ。
その目的が全く読めない。
一般人の俺が考えることではないのかもしれないが、ここまで巻き込まれた以上、気になってしまう。
一ノ瀬さん経由で首都圏の話や、【富士の樹海ダンジョン】の話をよく耳にする。
首都圏奪還作戦は順調で、その4割を奪還し終えたそうだ。
最初どうやって奪還するんだろうと思ったら、なんとダンジョンを踏破すると、そのダンジョンの規模に合わせて解放区が広がるそうだ。
それに気が付いた自衛隊が、一気にそのダンジョン攻略を進めているみたいだ。
今俺たちがいる街も、そんな感じでダンジョン攻略を進めている。
俺も小規模ダンジョンを数個踏破することに成功したが、どれも20層クラスの小さいものだ。
首都圏ダンジョンは小さい物でも30層クラスで、大きいものだと50層近くになるらしい。
【富士の樹海ダンジョン】は今だ何階層あるのかすらわからない状態だ。
現状第58層まで到着したらしいが、そこまで進むと補給がままならなくなるそうだ。
補給部隊を編成しようにも、そこへ到達できるメンバーは限られているからだ。
なので、いくつかの中継地点を設けて、そこを往復する部隊を作り、補給活動を行っているようだ。
まだまだ先が長いのかもしれない。
そう考えると、みんな着実に成長しているのかもしれない。
これが自称神が考える生物の進化なのだろうか……
でもこれだとあまりにも安易すぎる気がしてならない。
いやしかし……
ダメだな。
また思考の渦に飲み込まれていく。
俺が今すべきことは、無駄に考えこむことじゃない。
一歩でも前に進むことだ。
コンコンコン
「はい。」
「中村です。」
「中村さんですか。お待ちください。」
ガチャ
ドアを開けてくれたのは一ノ瀬さんだ。
「どうされました?まぁ、座ってください。」
「ありがとうございます。」
一ノ瀬さんから促されて、ソファーに腰を下ろした。
一ノ瀬さんも対面に腰を下ろし、部下にお茶の準備を頼んでいた。
「それで、今日はどうされたんですか?」
「はい、確認があってきました。ダンジョン踏破についてです。」
俺の言葉に一ノ瀬さんは首をかしげていた。
しかし、俺の気配に何かを察したのか、真剣な顔で話を聞いてくれた。
「まずは今使わせていただいているダンジョンですが、あれは当分は踏破しない方向で良いんですよね?」
「そうですね。あのダンジョンは自衛隊管理であえて踏破していません。食料庫兼資源採取場所として活用しておりますので。」
「ではそのほかは解放してもいいということですか?」
「そうですね。数か所を除いて開放する予定でいます。」
おそらくその数か所も、食料や資源を採取するためにわざと残すのだろう。
今となっては、ほとんどの資源がダンジョン頼りになってしまっているのがつらい。
「それと、スタンピートの可能性についてですが、今の現状ではありえると思いますか?」
「それについてはお答えしかねます。あれが誰の意志で行われているのかわからないからです。神なのかダンジョンなのか。はたまた【魔王】なのか……」
そう言うと一ノ瀬さんは、手を強く握りしめていた。
前回のスタンピートでは、自衛隊のほとんどは重要施設の防衛に回された。
必然、市民の安全を守ったのは、警察や消防といった人たちだ。
彼らも善戦したが、やはり戦闘の本職には敵うはずもなく、かなりの数の人が殉職された。
一ノ瀬さんが前に漏らしていたが、自衛隊の一部をそちらに回せていたら、全く異なった結果になっていただろうと。
政府の対応について、不満をあらわにしていた。
ただ、国のトップが魔王である以上、仕方がないともいえるのかも知れない。
「それがどうかされたのですか?」
「はい。俺はこれから、この街のダンジョンを全て回るつもりです。おそらくほとんど地上に出ることはないと思います。ですので家族を気にかけてもらえませんか……。始めに避難してきたグループだけに、何かと周りから頼られているようで。常に気を張り続けています。いくら俺が言ってもダメでした。最悪、強制的に対応してもらいたいと思っての相談です。」
そう、このままいけば母さんも父さんも。
そして谷浦家の人々も疲れて壊れてしまう。
だからこその一ノ瀬さんだ。
強制的に【精神支配】で、その心を守ってもらいたいのだ。
「なるほど。確かに今の状態は健全とは言い難いですね。何より、中村さんの御父上、悠斗さんはどうやらリーダーシップの強い方みたいですからね。おそらくこの駐屯地でも、かなりの発言力を持ってしまっているかもしれません。それに伴った重圧はかなりの物でしょう……。わかりました。最悪の場合、私の方で対処します。」
「ありがとうございます。」
俺は机に額が付くくらいの勢いで頭を下げた。
これで懸念はなくなった。
「中村さん……無茶はしないでくださいね。」
「無茶はしませんよ。ではお願いします。」
俺は一ノ瀬さんに改めて頭を下げて執務室を後にした。
さぁ、始めよう。
俺の戦いは、まだ始まったばかりだから……
俺は、相変わらずダンジョンへ潜っていた。
今だBランクへ上がることができていない。
Bランクへ上がる為の目安はレベル50。
今だそこまでに至っていない。
ただ、ステータス上昇系のおかげかわからないが、戦うことは普通に行えるようになってきた。
現在レベルは47。
スキルレベルはそれに合わせて46レベルだ。
おそらくカイリ達は60前後になっているかもしれないな。
なんとか追いつきたいんだが、どうしたものか。
まぁ、どうにかこうにかがんばるしかない……
美鈴はと言うと、自衛隊駐屯地に避難した後でふさぎ込んでしまった。
一緒に活動していた友人たちの消息が、完全に途絶えたのだ。
最初三日くらいは、メールのやり取りが辛うじてできたそうだ。
しかし、その後突然メールの更新が止まり心配していると、友人たちが避難していたシェルターハウスが壊滅していたことが判明した。
美鈴は友人たちの無事を祈っているけど、ほぼ難しい状況になっているそうだ。
現地を確認しに行った自衛隊員も、あまりの悲惨さに言葉を失ったんだとか。
ただ、最近はやっといつもの美鈴らしさが見えてきた。
それを手助けしてくれたのが、美織さんだった。
美織さんもスキルが魔法使い系だったので、美鈴にコツなどを教わっていた。
最初は断っていたみたいだけど、最近は二人で訓練している姿をよく見る。
たまに自衛隊員や避難してきた探索者とダンジョンへ向かっている姿を見るので、気持ちの整理が付いたのだと思う。
何もできない兄で不甲斐ない限りだ……
母さんはスタンピート以降考えを改めたらしい。
本当は戦闘なんてしたくないはずだ。
だけど、自分のスキルで守れることがあると知り、だったらその力をさらに高めて、もっと多くの人を守りたいと考えたそうだ。
そんなに思いつめなくてもって思ったけど、避難の時に出会った若者の集団が居た施設も、やはりモンスターによって壊滅させられていたそうだ。
自分がもっと強かったら、彼らを守りながらここまで避難できたのに……そう嘆いている姿を、夜な夜な見かけていた。
父さんは駐屯地内で建設作業に従事していた。
運よく合流できた『スミスクラン』のメンバーと話し合い、今できる最善をしようと動き始めたのだ。
駐屯地内はだんだん人口が増えてきた。
おそらく万はいるのかな?
それでも元の市の人口の数十分の一でしかない。
女性子供も多く、戦える人数は限られる。
だからこそ、クラフト職のスキルホルダーである父さんたちは動き始めたようだ。
それを見た避難者たちも、戦えなくても支えることができるはずと、徐々に動きを見せ始めた。
戦えるものは、ダンジョンや街中のモンスター討伐に。
戦えないものは、バックアップに。
そうやって支え合って俺たちは、この危機を乗り越えていこうとしていた。
しかし、自称神は何がしたいんだ。
その目的が全く読めない。
一般人の俺が考えることではないのかもしれないが、ここまで巻き込まれた以上、気になってしまう。
一ノ瀬さん経由で首都圏の話や、【富士の樹海ダンジョン】の話をよく耳にする。
首都圏奪還作戦は順調で、その4割を奪還し終えたそうだ。
最初どうやって奪還するんだろうと思ったら、なんとダンジョンを踏破すると、そのダンジョンの規模に合わせて解放区が広がるそうだ。
それに気が付いた自衛隊が、一気にそのダンジョン攻略を進めているみたいだ。
今俺たちがいる街も、そんな感じでダンジョン攻略を進めている。
俺も小規模ダンジョンを数個踏破することに成功したが、どれも20層クラスの小さいものだ。
首都圏ダンジョンは小さい物でも30層クラスで、大きいものだと50層近くになるらしい。
【富士の樹海ダンジョン】は今だ何階層あるのかすらわからない状態だ。
現状第58層まで到着したらしいが、そこまで進むと補給がままならなくなるそうだ。
補給部隊を編成しようにも、そこへ到達できるメンバーは限られているからだ。
なので、いくつかの中継地点を設けて、そこを往復する部隊を作り、補給活動を行っているようだ。
まだまだ先が長いのかもしれない。
そう考えると、みんな着実に成長しているのかもしれない。
これが自称神が考える生物の進化なのだろうか……
でもこれだとあまりにも安易すぎる気がしてならない。
いやしかし……
ダメだな。
また思考の渦に飲み込まれていく。
俺が今すべきことは、無駄に考えこむことじゃない。
一歩でも前に進むことだ。
コンコンコン
「はい。」
「中村です。」
「中村さんですか。お待ちください。」
ガチャ
ドアを開けてくれたのは一ノ瀬さんだ。
「どうされました?まぁ、座ってください。」
「ありがとうございます。」
一ノ瀬さんから促されて、ソファーに腰を下ろした。
一ノ瀬さんも対面に腰を下ろし、部下にお茶の準備を頼んでいた。
「それで、今日はどうされたんですか?」
「はい、確認があってきました。ダンジョン踏破についてです。」
俺の言葉に一ノ瀬さんは首をかしげていた。
しかし、俺の気配に何かを察したのか、真剣な顔で話を聞いてくれた。
「まずは今使わせていただいているダンジョンですが、あれは当分は踏破しない方向で良いんですよね?」
「そうですね。あのダンジョンは自衛隊管理であえて踏破していません。食料庫兼資源採取場所として活用しておりますので。」
「ではそのほかは解放してもいいということですか?」
「そうですね。数か所を除いて開放する予定でいます。」
おそらくその数か所も、食料や資源を採取するためにわざと残すのだろう。
今となっては、ほとんどの資源がダンジョン頼りになってしまっているのがつらい。
「それと、スタンピートの可能性についてですが、今の現状ではありえると思いますか?」
「それについてはお答えしかねます。あれが誰の意志で行われているのかわからないからです。神なのかダンジョンなのか。はたまた【魔王】なのか……」
そう言うと一ノ瀬さんは、手を強く握りしめていた。
前回のスタンピートでは、自衛隊のほとんどは重要施設の防衛に回された。
必然、市民の安全を守ったのは、警察や消防といった人たちだ。
彼らも善戦したが、やはり戦闘の本職には敵うはずもなく、かなりの数の人が殉職された。
一ノ瀬さんが前に漏らしていたが、自衛隊の一部をそちらに回せていたら、全く異なった結果になっていただろうと。
政府の対応について、不満をあらわにしていた。
ただ、国のトップが魔王である以上、仕方がないともいえるのかも知れない。
「それがどうかされたのですか?」
「はい。俺はこれから、この街のダンジョンを全て回るつもりです。おそらくほとんど地上に出ることはないと思います。ですので家族を気にかけてもらえませんか……。始めに避難してきたグループだけに、何かと周りから頼られているようで。常に気を張り続けています。いくら俺が言ってもダメでした。最悪、強制的に対応してもらいたいと思っての相談です。」
そう、このままいけば母さんも父さんも。
そして谷浦家の人々も疲れて壊れてしまう。
だからこその一ノ瀬さんだ。
強制的に【精神支配】で、その心を守ってもらいたいのだ。
「なるほど。確かに今の状態は健全とは言い難いですね。何より、中村さんの御父上、悠斗さんはどうやらリーダーシップの強い方みたいですからね。おそらくこの駐屯地でも、かなりの発言力を持ってしまっているかもしれません。それに伴った重圧はかなりの物でしょう……。わかりました。最悪の場合、私の方で対処します。」
「ありがとうございます。」
俺は机に額が付くくらいの勢いで頭を下げた。
これで懸念はなくなった。
「中村さん……無茶はしないでくださいね。」
「無茶はしませんよ。ではお願いします。」
俺は一ノ瀬さんに改めて頭を下げて執務室を後にした。
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俺の戦いは、まだ始まったばかりだから……
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