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第2章 ロシア軍停戦、北朝鮮のミサイル攻撃
第15話 四極トップ会談
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ガメラレーダーサイト、分屯基地、東京首相官邸、ウラジオストック東部軍管区本営の四極のミーティングが開始された。
レーダーサイトからは、エレーナ少佐、鈴木三佐、南禅二佐、羽生二佐が、分屯基地からは、ロシア軍総司令のウラジミール中佐、百田佐渡ヶ島基地司令が、首相官邸からは、首相、防衛大臣が、そして、ウラジオストック東部軍管区本営からは、ロシア東部軍管区総司令官ジトコ大将が参加した。
首相は、最初、なぜ防衛装備庁の制服組の二佐が二名、佐渡にいるのか、開発中で試作品のレールガンが佐渡にあるのか、不審に思った。事前に百田佐渡ヶ島基地司令、幕僚長から説明を受けていた防衛大臣が、私の越権で派遣しました、申し訳ないと謝罪したから、この話は済んだ。
南禅、羽生の独断専行にせよ、今、佐渡ヶ島にレールガンがあるのは不幸中の幸いだ。それで、首都圏、大都市への北の攻撃が防げるかもしれない。そういう大所を見据えた判断ができないのが、この首相だなあ。首都圏防衛の会議が懲罰議論になりかねないのが、この統制ばかり考える男の欠点だよ。俺も早く内閣から離れようか、と防衛大臣は思った。
「これは突拍子もない作戦だ。いや、戦略かな。うまくいけば首都圏防衛は可能だ」と首相。手持ちの戦備を説明したので、レールガンが佐渡にある戦術的な意味を多少は理解したようだ。
「首相、うまくいけばの話です。ミサイルが迎撃できなければ何も生まれません。まだ北が弾道ミサイル、滑空ミサイルを何発撃ってくるのか、どれが通常弾頭でどれが核なのか、高高度爆発による電磁パルス攻撃なのか、わかりません。しかも、在日米軍は、中国の台湾領太平島攻撃に対応するために第7艦隊、イージス艦が出払っています。自衛隊もイージスを尖閣諸島方面に派遣せざるを得ません」と南禅二佐が釘を差した。まだ、タラレバの作戦計画なのだ。
南禅が「日本海に残ったイージス艦は二隻のみです。このイージスのSM-3と首都圏、関西圏のPAC-3、佐渡のSM-3で対処せざるを得ません。PAC-3も6ヶ所の高射群のみ。できるだけ弾道ミサイルはSM-3で迎撃しないと、PAC-3では手薄です」と日本の手駒を首相に思い出させた。
防衛大臣が「南禅くんの言うとおりだ。首相、さらに、普通のロフテッド軌道をとる弾道ミサイルの他に、北朝鮮が火星8号に搭載して実験したような極超音速滑空ミサイルが彼らにはあります。イージス艦のSPY-1レーダーでも探知は難しい。佐渡のガメラレーダーが重要です。統合BMD(ミサイル防衛)システムに佐渡のレーダーのデータは欠かせません。それを潰されたら、日本本土のミサイル防衛力が弱体化します。だから、まず奴らは必ず佐渡のレーダーを潰しに来るに違いありません。南禅くん、羽生くん、極超音速滑空ミサイルの説明ができるかね?」と南禅、羽生に聞いた。
「大臣、私が説明しましょう」と羽生が答えた。「まず、いろいろな呼称がありますが、北朝鮮のものは、HGV(Hypersonic Glide Vehicle)と呼ばれています。ビデオがあります。これを御覧ください。北朝鮮のHGVはこのビデオと異なり、保護カバーのフェアリングなしで、火星15号などに直接装着して発射するでしょう。中国のブースターのDF-17に滑空弾のDF-ZFをくっつけたようなものです」
「ロシアのものを中国がパクって、それを北朝鮮がパクったと思われます。ですので、誘導システムはロシア製を使っているかもしれない。テレビで放映されるこのような弾道ミサイルではありません。この写真の方です。このように火星15号のようなブースターの先端にHGVを装着します。HGV本体はこのような形状です。HGVは、このような軌道をとります」
「①の状態であれば、PAC-3が有効でしょう。しかし、首都圏と違って、そもそも佐渡にPAC-3はありません。佐渡にあるロシア軍のS-400で対処する他ありません。②の状態になると高度が落ちます。水平軌道に移りますので、ここでレールガンで叩きたい。レーダーサイトの有る妙見山は標高1,042メートル。S-400システムも2セット設置してあります。この図のように高度が18~20キロならS-400は非常に有効です。しかし、もしも、高度が10キロ以下だとS-400でもキツくなってきます。そうなると、レールガンで対処する他ありません。そして、最後にジャンプ軌道を取る③の状態になります。こうなると、まったく対処できません」
「私の私見ですが、北朝鮮は、原子力発電所攻撃にはスカッドか弾道ミサイルを使ってくるはずです。通常弾頭なのか、戦術核を使うのか。戦術核だったら、高高度爆発を起こさせての電磁パルス攻撃でしょう。日本の原発よりも韓国の原発への攻撃の可能性が高いと思います。特に、韓国西岸。原発がメルトダウンすれば、風の向きによって、韓国南部の在韓米軍は日本へ退避せざるを得ません。韓国のTHAADミサイルで対処できればいいですが」
「首都圏、関西圏への攻撃は、核弾頭ミサイル。通常弾頭搭載のダミーも含んでいるでしょう。こっちのミサイルのの手玉をできるだけ減らすために。極超音速滑空ミサイル(HGV)を使ってくる可能性もあります。佐渡に対しては、HGVの可能性が高い。できるだけレールガンで対処します。佐渡のイージスアショアのSM-3とS-400は、HGVと本土を標的とした弾道ミサイルに対処します。佐渡よりも本土が重要ですから」
「見通しは明るくないな。防衛大臣、日本のBMD(ミサイル防衛)システムの見直しが喫緊の課題だな。穴ばかりだ。専守防衛などと言っているが、専守防衛すらできていない。先制攻撃可能な抑止力があれば多少はこのBMDの不備も補えるが、先制攻撃能力もない。抑止力なし、専守防衛不備、どうしようもない」
「今回の事態で、立憲民主党、共産党、社民党も邪魔ばかりしないで目を開いてくれればいいのだが。どうも、彼らは『自分の見たい現実しか見ない』視力しか持ち合わせていない」
「愚痴を言っても始まらん。さて、作戦名を決めねばならないですね」と防衛大臣。
「今までの東部軍管区の作戦名が『サドガシマ作戦』で、これまでが『表』だとすると、『裏サドガシマ作戦』かね?」と首相。
すると、南禅が「首相、大臣、ジトコ大将、意見具申」と手をあげる。大臣が「二佐、言ってみたまえ」と許可した。
「今作戦で重要な部分を立案したのは、エレーナ少佐であります・・・鈴木三佐もそうですが。よって、作戦名は『エレーナ少佐のサドガシマ作戦、Majar Elena's Operation Sadogashima』でいかがでありましょうか?」
「ふむ、響きがいい。首相、どうでしょう?」と大臣。首相は「気に入りました。作戦名は『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』でいいでしょう。ジトコ大将、いかがでしょうか?」とジトコに聞いた。
「私は、私の娘の名前だからね、日本国が良ければ結構です。賛成いたします。親の贔屓じゃありませんよ。誤解なきように」
「しかし、突拍子もない作戦ですね?首相」と大臣。
「信じられん。しかし、本土防衛、佐渡ヶ島防衛で妥当性の有る唯一の作戦だ。さらに、防衛に成功すれば、世界に激震が走りそうだ。憲法改正、国民投票が絶対に必要だ。アメリカ合衆国、欧州諸国、アジア諸国との摺合せも必要だ。パワーバランスが変わる」と首相。
「それだけではありません。国連安全保障理事会常任理事国のメンバーも変わりますぞ、首相」とジトコ。
「うん?大将、どういう・・・あ!1971年のアルバニア決議ですね?それと似たことが・・・」
※1971年のアルバニア決議(1971年10月25日に採択された第26回国際連合総会2758号決議。「国際連合における中華人民共和国の合法的権利の回復」を指す。これにより、中華民国は国連安保理常任理事国の座を失い、中華人民共和国が国連安保理常任理事国と見なされた)
「首相、それだけではありません。もし、この作戦の政体になると、日本はどうなります?」
「え?あ!そうですな、そうなりますな」日本が国連安全保障理事会常任理事国のメンバーになるってことか?
「貴国と我々にとって、悪い話ではありますまい?」
「同感です」
レーダーサイト、分屯基地、東京首相官邸、ウラジオストック東部軍管区本営の四極のミーティングが終了した。エレーナと鈴木が佐渡ヶ島と本土防衛の作戦を、ジトコ大将が戦略案を説明した。些末な点での修正はあったが、ほぼ原案通り採用された。
レーダーサイト、分屯基地、東京首相官邸、ウラジオストック東部軍管区本営の四極のミーティングが終了した。些末な点での修正はあったが、ほぼ原案通り採用された。
ジトコがウラジミール中佐に「作戦案を一時間以内にまとめさせて、私に直接提出するように。私から参謀本部と日本の幕僚部などの了解を取り付ける」と指示、首相も防衛大臣に同様の指示を行い、大臣から百田基地司令に指示が下った。(首相は自衛隊最高司令官であるが、自衛隊の指揮監督権は防衛大臣にある)
実際の作戦案の作成はエレーナと鈴木三佐、南禅・羽生二佐なのだが。
腹が減っては戦はできぬ
タイフーンKの後部シートで卜井アナがお腹をさすっている。
「卜井ちゃん、どうしたの?」と藤田。
「食べ過ぎ!」
「そりゃあ、お代わりあれだけすれば」
「いい絵が撮れたかな?」
「キミがカッポカッポ、朝食を丸呑みする映像がたくさん撮れたよ」
「視聴者はそっちの方が喜ぶから。軍事評論家や芸人の意見なんて見たくないでしょ。私の無限の食欲の方が視聴率は上がるのよ。少し休めばまだいけるわ!」
「やれやれ、さすがに山の上の分屯基地とレーダーサイトにはミリメシぐらいしかないよ」
「ミリメシでもいいわよ!きっとロシア軍のミリメシ、おいしいわ」
その会話を聞いていたスヴェトラーナ准尉が「ミリタリーフードがよろしかったんですか?もう、三時のおやつの紅茶とスイーツ、夕方にはいなり寿司とおにぎり、お赤飯を手配してしまったんですが・・・あと、今日は中央アジア風で、プロフというトルコのピラフ、キルギスのマスタバ、カザフスタンのジャルコエを作らせたんですけど・・・山頂のロシア軍ミサイル部隊と自衛隊の方々にいつも仕出しをしているんです。じゃあ、卜井アナにはミリタリーフードを取り寄せますか?」と卜井に言う。
「え?中央アジア!そ、それでいいです!それにして下さい!ミリメシ、要りません!あ~、幸せだぁ~」と卜井。
「あのさ、卜井ちゃん、さっき中学校で朝飯を食べたばかりじゃないか?食レポの旅じゃなくて、戦争取材なんだけどね?」
「いいのよ、腹が減っては戦はできぬ、と言います!」
「やれやれ・・・」
「藤田アナ、今日は、フレンチ風鶏肉の肉じゃがも作らせましたよ。バルサミコを使って、牛肉豚肉じゃない鶏肉の肉じゃが。マスタードが隠し味。それに豚汁。ご飯に合いますよぉ~。でも、藤田アナはミリメシですかぁ?」
「いえ、それ、肉じゃが、頂きます!」
「そうなのよ!藤田ちゃん!これは、食レポではないのよ!」
「あのね、キミが目立ってカメラにうつっているのは、エッチな話か食べているところばっかりだよ?」
「何を仰るウサギさん!あのですね、『腹が減っては戦はできぬ』ですよ?兵站の重要性をこれだけ如実に感じられるのが、兵士の普段の食事です!ウクライナを御覧なさい。兵站が不備だから、燃料も弾薬もなく、食料もないんで、兵士が略奪します。それに引き換え、同じロシア軍とは思えないこの作戦の至れり尽くせりぶり!」
「卜井さん、ウクライナのロシア軍は短期決戦のつもりでいましたし、欧州ロシアのバカどもは深く考えもせず、兵站の準備をおろそかにしたんですわ。同じロシア軍として、恥ずかしく、世界に面目が立ちませんわ」とスヴェトラーナ准尉。
「確かに、ここはちゃんと計画されている。略奪の跡もない。血も流れていない」と藤田。
「略奪、暴力なんて、エレーナ少佐に銃殺されます」
「指揮官が違うと同じ軍でもこうも違うものか」
「だから、藤田ちゃん、少佐はすごいんだって。ミリメシじゃなく、兵士の手作り!それもよ、中央アジア風の、トルコのピラフ、キルギスのマスタバ、カザフスタンのジャルコエで、フレンチ風鶏肉の肉じゃが、さらに、ロシア人女性の手になるいなり寿司とおにぎり、お赤飯ですよ!」
「よく料理名、覚えてるなあ・・・」
「アナウンサーですから!」
「それにしては、S-300とか、S-400は・・・」
「専門外です!」
横でビデオを回していたスタッフが「卜井アナ、これ撮影してますが、使いますか?」と聞いた。「使わないで!」と即答。
タイフーンは佐渡縦貫線をいったん南下して、佐渡空港を左手に見て、暫く行くと大佐渡スカイラインに右折して入った。左右には田んぼが広がりのどかな風景だが、人がまったくない。みな南岸に退避しているところだ。撮影クルーは一応移動中の景色を撮っていたが、略奪されたり壊されたりした気配はなかった。
三叉路を右に入り山道になった。二車線道路で、タイフーンには狭く感じられる。左手に『ゆずろ公園』という標識があった。そこを過ぎると、クネクネとしたつづら折りになっていた。右手が佐渡市営スキー場で急勾配の崖であり、左手の台地に空自佐渡分屯基地があった。左折すると、トキの舞うタイル、佐渡分屯基地と彫られた石積みの塀が見え、基地のゲートになっていた。
構内は、右に大きな運動場があり、運動場正面が基地のメインの平屋の建物になっていた。建屋玄関正面が駐車場だったが車輌は別の場所に移されているようで、そこには十輪のトラックの後ろで、巨大な四連装の超長距離地対空ミサイルS-400が既に発射筒を真上に向けて準備されていた。トラックの周囲には、多機能レーダー車輌、指揮通信車輌、整備車輌、補給車輌が配置されていた。
トラックは三台で、S-400は合計12基。同じセットがレーダーサイトに2セット、8基配置されているという。索敵範囲は最大400キロ、同時6ヶ所目標の処理能力、パトリオットミサイルPAC-3の二倍の有効射程だとスヴェトラーナ准尉が説明した。
「これはデコイじゃありません。本物です。でも、おかしいのは、システムの車輌配置のウラジオの指示が最初から北西、つまり北朝鮮の方角を向いていたこと。自衛隊、在日米軍からの攻撃なら南東方面ですから、軍司令部は最初から北の動きを知っていたんでしょうね」とスヴェトラーナ准尉が言った。
「准尉、それは重要なポイントですね。後で、地図を使って説明していただけますか?」と卜井。
「機密情報の入ってない車輌配置図がありますので、そのデジタルデータを差し上げます」
「ありがとうございます」早速撮影クルーがS-400と車輌群を撮影し始めた。
「普通なら、こんな撮影できないわよねえ」と卜井。撮影クルーが点検中のロシア兵士も撮していた。彼らがピースのポーズを取るので、准尉に普通に作業して下さいと通訳をお願いしている。
「藤田アナ、卜井アナ、あれもぜひ撮影して下さい」とS-400の向こうに駐車してある北朝鮮のロケット砲のような車輌を指さした。
「准尉、あれはなんです?」
「あれは、燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)搭載車輌です。モスクワからの命令で持ってきましたが、非人道的兵器ですので、弾筒を抜いて封印してあります。我々が使用しない意思を持っていることの証拠を撮影して下さい」
「あれが、ウクライナで使われたと言われるサーモバリック爆弾ですか!」と藤田。
「これはすごい映像になるわね!」と卜井。
「撤退の際は置いていきます」と准尉が言う。「軍事機密では?」と卜井が聞くと「非人道的兵器ですので、日本国政府に保管頂きます」と答えた。
基地建屋玄関からウラジミール中佐と百田基地司令が外に出てきた。藤田と卜井の方に歩いてきて、「藤田さん、卜井さん、こちらが百田基地司令です。百田さんはお二人はテレビで知ってますよね?」と話しかけた。
「あら、中佐は先回りなさったんですか?」
「ええ、ちょっと、東京とウラジオストック、レーダーサイトと打合せする必要がありまして」と答えた。
百田が「ここにはロシア軍の装備しかありません。我が方のメインは山頂のレーダーサイトにあります。一通り撮影されたら、レーダーサイトに行かれたほうがいいですよ。サイトには、エレーナ少佐、鈴木三佐、南禅二佐、羽生二佐が待っています」と藤田に言う。
「分かりました、基地司令。あと少々撮影したら、サイトに向かいます。ウラジミール中佐と百田基地司令は行かれませんのですか?」
「我々は、島民の退避の指揮を取ってます。迎撃はエレーナ少佐、鈴木三佐、南禅二佐、羽生二佐が指揮を取ります」
「了解です」
撮影が終了した一行は、基地を出て左折した。ここからは標高差七百メートルほど登りの道になり、大佐渡スカイラインはかなりのつづら折りの急勾配になる。かなり手前からでも六角形のガメラレーダーの白い塔屋が山頂に見える。
最後のつづら折りを右に曲がるとサイトのゲートが開いているのが見えた。ゲートすぐにサイトの建屋があり、右手に高さ35メートルのレーダーがそびえ立っていた。
山頂は台地のようになっており、その先は3メートルほどの崖で、広い空き地になっていた。そこにS-400システムが分屯基地にあるように設置されていた。
もう一台、日本製らしい見慣れぬ車輌が止まっている。高圧配線とおぼしい太い線が何本も延びて接続されている。
また、右手の方の空き地が最近土を掘り返したのか、盛り土になっていて、コンクリートの大きな板(蓋?)があった。よく見ると、イージス艦の垂直発射装置のような四角い金属製の蓋が32個、長方形に並んでいる。地下に何か埋めていたのか?
レーダー管制棟の玄関から、エレーナ少佐と日本人三名が外に出てきた。スヴェトラーナ准尉がエレーナの脇に並ぶ。少佐が「藤田アナ、卜井アナ、クルーのみなさん、よくお越しいただきました。私は現在、佐渡ヶ島臨時防衛基地のロシア軍と自衛隊合同の指揮をとっております。こちらは初めてかしら?自衛隊の南禅二佐、羽生二佐、鈴木三佐です」と自衛隊員を紹介した。
「少佐、前回お会してからずいぶん経ったような気がしますが、二日ぶりですね。お元気そうで」と藤田。卜井が「あの、ちょっと、お聞きしますが、百田基地司令は階級が二佐ですわね?南禅二佐、羽生二佐も同級。同級の自衛隊員が三人?それは、お二方は佐渡分屯基地の所属じゃないということですか?」
鈴木三佐が「ちょっと、まず、お話したいことがあります。ロシア軍は既に機密に関してオープンで、東部軍管区の許可を得ております。ただし、ロシア軍のミサイル等の詳細な配置は機密です」
「また、これから取材する内容に関しては、日本国の機密も含まれております。みなさんも知られると思いますが、日本政府からマスコミ各社のトップに既に通達が行っております。取材には期限の制限が課せられます。この戦争、そうですね、もう戦争です。それも相手は北朝鮮とその背後の人民解放軍北部戦区です。彼ら相手の戦争が終了して、政府の許可が有るまで、日露の取材した内容、映像は、問題のない内容以外、公開しないでいただきたい。リークされた場合罰則が課せられます。これらの情報が北朝鮮と人民解放軍北部戦区に漏れた場合、我が国とロシアにとって極めて不利となり、日本国民の多大な犠牲が発生することが想定されます。ご理解下さい。あ!今言ったのもオフレコですよ」
「・・・わかりました」と卜井。
「え~っと、南禅さん、どっちから説明する?」と鈴木が南禅に聞いた。「どっちの機密がでかいかだな。そっちのは、いわば政治機密だ。自民党が説明に苦労するわね。国会、国民に叩かれる。でも、鈴木の責任じゃない。こっちのは軍事技術の機密。責任は、私と羽生。さあ、どうしましょう?」「じゃあ、俺から行きますか」
「藤田アナ、あの右手の空き地が見えるでしょう?撮影してもいいですよ。公開は今はダメですが」
「ええ、最近、土木工事をして、コンクリートの遮蔽蓋を剥がした痕が見えます。そして、あれは・・・どうみてもVLS、イージス艦の垂直ミサイル発射システムの鉄蓋にしか見えないのですが」
「その通りです。まさに、あれは垂直ミサイル発射システムであり、SM-3が32基収容されていて、いつでも発射できるようになっています」
「え?ということは?」
「秋田県、山口県に設置予定で配備が断念されたシステムと同じものです。イージス・アショアです。アショアはSPY-1レーダーでミサイル防衛システムと接続されますが、同様、このガメラレーダー、J/FPS-5もSPY-1レーダーと同等、ここは事実上、イージス・アショア基地となっております」
「それは自治体の許可を取っていない、国会も、ですよね?アメリカ抜きに設置できないし、日米政府の密約?」
「後日、政治にかかわる質問は政府に直接どうぞ。私は答える立場にありませんから。じゃあ、次、南禅さん、どうぞ」
「卜井アナ、さすがにその職業をやられている専門家。仰っしゃられた通り、私と羽生は空自の佐渡基地所属ではありません。所属は、防衛省防衛装備庁航空装備研究所の装備官です。いろいろ有りましてね、実は陸自の水陸機動団が佐渡北岸に上陸してるんですが、陸自と水陸機動団を騙して、一緒に来てしまったんです。無理やりね。政府にも防衛省にも内緒で。今は首相も防衛大臣もご存じですが」
「それは思い切ったことをされましたね。懲罰会議なんかにかかるんじゃありませんか?」
「勝手に来ただけでも懲罰物ですが、実はあるものも持ち出してしまって・・・」
「あるもの?」
「あちらの空き地に、S-400があるでしょう?もう見られてますよね。その手前に電線が接続された大きなトラックがありますね?」
「軍用車両・・・自衛隊のものですね」
「ええ、あれを勝手にここに持ち込んじゃいまして」
「あれですか・・・」
「そう、あれは、改造した96式装輪装甲車で、航空装備研究所で私とここにいる羽生、尾崎という技師が開発したものなんですが、積載されているのは電磁砲なんです」
「電磁砲?」と卜井が首を傾げる。藤田が「電磁砲って、南禅二佐、それは・・・レールガン?」
「そうです。レールガンです」
「だって、開発中で、それもいろいろ障害があって、ストップしたとか・・・」
「いえ、できちゃいまして」
「動くんですか?」
「ハイ、動きます」
「発射できるんですか?」
「ハイ、北の極超音速飛翔ミサイルとか、迎撃できちゃうんですよ、たぶん」
エレーナがアナ二人に「ということで、ロシア軍のみならず、自衛隊の迎撃兵器も今ここに偶然ある、ということになります。SM-3もレールガンもイリーガルなもの、本来はここにあってはならないものですが、北朝鮮の核攻撃が予想される現在、日本国のため、佐渡ヶ島のため、この二つの兵器は非常に重要な存在と言えます。戦略上、北、中国に知られてはいけませんので、今は公開できませんが、この場を現地でタイムリーにご覧になったクルーの皆さんには、ぜひご理解を得たいと思います」
「確かに、これはあってはならないもの。でも、もし、ここに存在していなかったら、日本国民の犠牲者が増えるということですね」と藤田。
「佐渡ヶ島の防備がここまで不備で、専守防衛すらできていなかったわけですから、国民に対する問題提起になります。SM-3とレールガンに加えて、S-400まであるのですから、非常に力強い。理解いたしました」
「ありがとうございます。それに、ロシア軍の私が言うのもおかしいですが、日本だけではありません。ヨーロッパの、台湾、韓国の、地政学的現状を戦闘行為によって変更しようとする勢力、欧州ロシア、中国、北朝鮮に対して勝利しなければなりません。奴らに吠え面をかかせてやらないと。我々佐渡のロシア軍と自衛隊で、奴らのミサイルを全部撃墜してやりましょう。それが新たなこの作戦の任務です」
「作戦名は『サドガシマ作戦』でしたね?」と卜井が言うと「作戦名はさきほど日本の首相とジトコ司令官の合意で変更となりました」と鈴木が言う。
「確かに、佐渡の占領作戦じゃなくなりましたからね。新作戦名はなんというのでしょうか?」と卜井。
「新しい作戦名は『Majar Elena's Operation Sadogashima』、『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』になったんです・・・これ、困るなあ・・・彼女の名前がついちゃった・・・」
「・・・鈴木三佐、なんか、アニメのような展開になっちゃっていません?」と卜井。
「歴史に残っちゃうなあ・・・」
「この新作戦名、公開してもいいんですか?」
「・・・日本政府にお聞き下さい」
レーダー管制棟の打合せ室で、取材クルーとロシア軍、自衛隊一同が休憩をしていた。卜井と藤田は浮かない表情を浮かべていた。スヴェトラーナ准尉が「お二人とも浮かない顔をしてどうされたんです?」と二人に聞いた。
「准尉、こうもオフレコばかりだと、何も起きない両津港、学校の風景、市内の平和な様子、差し支えない部分の兵器の映像、ガメラレーダー、ここの管制室の映像ばかり。あとは私の食レポ・・・じゃないや、兵站の話題になっちゃいます。緊迫した場面がないんですよ、戦争なのに」と卜井。
「それはお気の毒ですわ。学校の様子なんかダメですか?」
「あれはちょっとねえ・・・」
「私の結婚話をネタにしてもいいのに」
「それも今ちょっとねえ・・・」
それを聞いていたエレーナが「あら、だったら、私がロシア軍東部軍管区の娘だという話を公開してもいいんですよ」
「それ、公開してもいいんですか?」と卜井。
「構いませんよ」
「確かに少佐は絵になりますが・・・」
「あ!じゃあ、これは?ヒロシ、ミーシャ、小野一尉、こっちに来て。え~、私と鈴木三佐、アデルマン大尉と小野一尉が結婚予定だ、という話題はいかがでしょう?」
「少佐、小野さんと大尉も結婚されるの?」
「そうですよ、ミーシャと小野さんも結婚を約束してます」
アニーがそれを聞いていて、あ!ちょっと!抜け駆けだよね?う~ん、どうしよ?小野寺、どこだろ?
お、いたいた。と小野寺が食事しているところに行って、小野寺を引っ張った。「アニー、何するんだ?」と小野寺。その手を引っ張って、少佐たちのところに歩いていった。
「少佐、それは抜け駆け行為であります」とアニーが言う。
「アナスタシア少尉、何が抜け駆けなの?」
「ずるいです。自分たちばっかり公にしちゃって。私も決めました!小野寺さん、結婚しましょう!」
「え?アニー、それまた、急に・・・」
「あら、私じゃダメ?」
「・・・いや、そんなことは・・・」
「じゃあ、結婚して下さい!」
「わ、わかりました」
「というわけで、卜井アナ、私、アナスタシアと小野寺一尉も結婚します。いいわね?ダーリン?」「ハ、ハイ・・」「これも公開して構いませんわ。これで、三組!」
「少尉、私もですよ。本間さんと」とスヴェトラーナ准尉。「アニータ准尉も土屋さんと結婚するそうです」
「え?これで、五組?」
「いいえ、もっと。両津中学配属の二百名の女性の内、私の聞いている限りでは八十組くらいは結婚を決めたそうです。他の四校の学校でもかなりの人数が結婚すると言ってます。アドミの担当官が『婚姻届の書類が足りない!市役所に出す日本語必要書類の準備が間に合わない!なんでこんなにたくさん結婚するの!』と半狂乱になっていました」
「何なのよ?これ?韓国の統一教会じゃないんだから・・・まったく、なんでこうなったのかなあ」とエレーナ。
准尉が「少佐がまず最初に行動されたからですわ。それで、ああ、最高司令官の娘さんでもそうしてるのなら、私たちもって。お手本を見せたのは少佐ですわ」と言った。
「・・・いいのかなあ、おめでた話で・・・戦争取材の緊張感はどこにあるのよ!」と卜井が言うと「卜井アナ、大丈夫ですわ。諜報情報によれば、非常に高い可能性で、明日、北朝鮮が韓国に南進、原発の核攻撃も予想され、日本への核弾道ミサイル、滑空ミサイルの攻撃があると思います。もうそうなったら、生放送でいくらでもどうぞ」とエレーナが答えた。
「・・・明日ですか・・・迎撃に失敗したら・・・」
「死ぬかもしれませんね」
「・・・死んじゃうのかあ・・・」
藤田が「卜井ちゃん、覚悟を決めておかないといけないようだね。取材クルーにももう一回確認しておこう。ここが北の目標地点になるのは確実だろうから」と言った。
「そうね。そうとわかったら・・・」
「そうとわかったら、何?」
「もっと食べておかないと!ダイエットなんて、もう関係ない!」
「・・・」
「あ!最後の私の発言、カットね!カットよ!」
レーダーサイトからは、エレーナ少佐、鈴木三佐、南禅二佐、羽生二佐が、分屯基地からは、ロシア軍総司令のウラジミール中佐、百田佐渡ヶ島基地司令が、首相官邸からは、首相、防衛大臣が、そして、ウラジオストック東部軍管区本営からは、ロシア東部軍管区総司令官ジトコ大将が参加した。
首相は、最初、なぜ防衛装備庁の制服組の二佐が二名、佐渡にいるのか、開発中で試作品のレールガンが佐渡にあるのか、不審に思った。事前に百田佐渡ヶ島基地司令、幕僚長から説明を受けていた防衛大臣が、私の越権で派遣しました、申し訳ないと謝罪したから、この話は済んだ。
南禅、羽生の独断専行にせよ、今、佐渡ヶ島にレールガンがあるのは不幸中の幸いだ。それで、首都圏、大都市への北の攻撃が防げるかもしれない。そういう大所を見据えた判断ができないのが、この首相だなあ。首都圏防衛の会議が懲罰議論になりかねないのが、この統制ばかり考える男の欠点だよ。俺も早く内閣から離れようか、と防衛大臣は思った。
「これは突拍子もない作戦だ。いや、戦略かな。うまくいけば首都圏防衛は可能だ」と首相。手持ちの戦備を説明したので、レールガンが佐渡にある戦術的な意味を多少は理解したようだ。
「首相、うまくいけばの話です。ミサイルが迎撃できなければ何も生まれません。まだ北が弾道ミサイル、滑空ミサイルを何発撃ってくるのか、どれが通常弾頭でどれが核なのか、高高度爆発による電磁パルス攻撃なのか、わかりません。しかも、在日米軍は、中国の台湾領太平島攻撃に対応するために第7艦隊、イージス艦が出払っています。自衛隊もイージスを尖閣諸島方面に派遣せざるを得ません」と南禅二佐が釘を差した。まだ、タラレバの作戦計画なのだ。
南禅が「日本海に残ったイージス艦は二隻のみです。このイージスのSM-3と首都圏、関西圏のPAC-3、佐渡のSM-3で対処せざるを得ません。PAC-3も6ヶ所の高射群のみ。できるだけ弾道ミサイルはSM-3で迎撃しないと、PAC-3では手薄です」と日本の手駒を首相に思い出させた。
防衛大臣が「南禅くんの言うとおりだ。首相、さらに、普通のロフテッド軌道をとる弾道ミサイルの他に、北朝鮮が火星8号に搭載して実験したような極超音速滑空ミサイルが彼らにはあります。イージス艦のSPY-1レーダーでも探知は難しい。佐渡のガメラレーダーが重要です。統合BMD(ミサイル防衛)システムに佐渡のレーダーのデータは欠かせません。それを潰されたら、日本本土のミサイル防衛力が弱体化します。だから、まず奴らは必ず佐渡のレーダーを潰しに来るに違いありません。南禅くん、羽生くん、極超音速滑空ミサイルの説明ができるかね?」と南禅、羽生に聞いた。
「大臣、私が説明しましょう」と羽生が答えた。「まず、いろいろな呼称がありますが、北朝鮮のものは、HGV(Hypersonic Glide Vehicle)と呼ばれています。ビデオがあります。これを御覧ください。北朝鮮のHGVはこのビデオと異なり、保護カバーのフェアリングなしで、火星15号などに直接装着して発射するでしょう。中国のブースターのDF-17に滑空弾のDF-ZFをくっつけたようなものです」
「ロシアのものを中国がパクって、それを北朝鮮がパクったと思われます。ですので、誘導システムはロシア製を使っているかもしれない。テレビで放映されるこのような弾道ミサイルではありません。この写真の方です。このように火星15号のようなブースターの先端にHGVを装着します。HGV本体はこのような形状です。HGVは、このような軌道をとります」
「①の状態であれば、PAC-3が有効でしょう。しかし、首都圏と違って、そもそも佐渡にPAC-3はありません。佐渡にあるロシア軍のS-400で対処する他ありません。②の状態になると高度が落ちます。水平軌道に移りますので、ここでレールガンで叩きたい。レーダーサイトの有る妙見山は標高1,042メートル。S-400システムも2セット設置してあります。この図のように高度が18~20キロならS-400は非常に有効です。しかし、もしも、高度が10キロ以下だとS-400でもキツくなってきます。そうなると、レールガンで対処する他ありません。そして、最後にジャンプ軌道を取る③の状態になります。こうなると、まったく対処できません」
「私の私見ですが、北朝鮮は、原子力発電所攻撃にはスカッドか弾道ミサイルを使ってくるはずです。通常弾頭なのか、戦術核を使うのか。戦術核だったら、高高度爆発を起こさせての電磁パルス攻撃でしょう。日本の原発よりも韓国の原発への攻撃の可能性が高いと思います。特に、韓国西岸。原発がメルトダウンすれば、風の向きによって、韓国南部の在韓米軍は日本へ退避せざるを得ません。韓国のTHAADミサイルで対処できればいいですが」
「首都圏、関西圏への攻撃は、核弾頭ミサイル。通常弾頭搭載のダミーも含んでいるでしょう。こっちのミサイルのの手玉をできるだけ減らすために。極超音速滑空ミサイル(HGV)を使ってくる可能性もあります。佐渡に対しては、HGVの可能性が高い。できるだけレールガンで対処します。佐渡のイージスアショアのSM-3とS-400は、HGVと本土を標的とした弾道ミサイルに対処します。佐渡よりも本土が重要ですから」
「見通しは明るくないな。防衛大臣、日本のBMD(ミサイル防衛)システムの見直しが喫緊の課題だな。穴ばかりだ。専守防衛などと言っているが、専守防衛すらできていない。先制攻撃可能な抑止力があれば多少はこのBMDの不備も補えるが、先制攻撃能力もない。抑止力なし、専守防衛不備、どうしようもない」
「今回の事態で、立憲民主党、共産党、社民党も邪魔ばかりしないで目を開いてくれればいいのだが。どうも、彼らは『自分の見たい現実しか見ない』視力しか持ち合わせていない」
「愚痴を言っても始まらん。さて、作戦名を決めねばならないですね」と防衛大臣。
「今までの東部軍管区の作戦名が『サドガシマ作戦』で、これまでが『表』だとすると、『裏サドガシマ作戦』かね?」と首相。
すると、南禅が「首相、大臣、ジトコ大将、意見具申」と手をあげる。大臣が「二佐、言ってみたまえ」と許可した。
「今作戦で重要な部分を立案したのは、エレーナ少佐であります・・・鈴木三佐もそうですが。よって、作戦名は『エレーナ少佐のサドガシマ作戦、Majar Elena's Operation Sadogashima』でいかがでありましょうか?」
「ふむ、響きがいい。首相、どうでしょう?」と大臣。首相は「気に入りました。作戦名は『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』でいいでしょう。ジトコ大将、いかがでしょうか?」とジトコに聞いた。
「私は、私の娘の名前だからね、日本国が良ければ結構です。賛成いたします。親の贔屓じゃありませんよ。誤解なきように」
「しかし、突拍子もない作戦ですね?首相」と大臣。
「信じられん。しかし、本土防衛、佐渡ヶ島防衛で妥当性の有る唯一の作戦だ。さらに、防衛に成功すれば、世界に激震が走りそうだ。憲法改正、国民投票が絶対に必要だ。アメリカ合衆国、欧州諸国、アジア諸国との摺合せも必要だ。パワーバランスが変わる」と首相。
「それだけではありません。国連安全保障理事会常任理事国のメンバーも変わりますぞ、首相」とジトコ。
「うん?大将、どういう・・・あ!1971年のアルバニア決議ですね?それと似たことが・・・」
※1971年のアルバニア決議(1971年10月25日に採択された第26回国際連合総会2758号決議。「国際連合における中華人民共和国の合法的権利の回復」を指す。これにより、中華民国は国連安保理常任理事国の座を失い、中華人民共和国が国連安保理常任理事国と見なされた)
「首相、それだけではありません。もし、この作戦の政体になると、日本はどうなります?」
「え?あ!そうですな、そうなりますな」日本が国連安全保障理事会常任理事国のメンバーになるってことか?
「貴国と我々にとって、悪い話ではありますまい?」
「同感です」
レーダーサイト、分屯基地、東京首相官邸、ウラジオストック東部軍管区本営の四極のミーティングが終了した。エレーナと鈴木が佐渡ヶ島と本土防衛の作戦を、ジトコ大将が戦略案を説明した。些末な点での修正はあったが、ほぼ原案通り採用された。
レーダーサイト、分屯基地、東京首相官邸、ウラジオストック東部軍管区本営の四極のミーティングが終了した。些末な点での修正はあったが、ほぼ原案通り採用された。
ジトコがウラジミール中佐に「作戦案を一時間以内にまとめさせて、私に直接提出するように。私から参謀本部と日本の幕僚部などの了解を取り付ける」と指示、首相も防衛大臣に同様の指示を行い、大臣から百田基地司令に指示が下った。(首相は自衛隊最高司令官であるが、自衛隊の指揮監督権は防衛大臣にある)
実際の作戦案の作成はエレーナと鈴木三佐、南禅・羽生二佐なのだが。
腹が減っては戦はできぬ
タイフーンKの後部シートで卜井アナがお腹をさすっている。
「卜井ちゃん、どうしたの?」と藤田。
「食べ過ぎ!」
「そりゃあ、お代わりあれだけすれば」
「いい絵が撮れたかな?」
「キミがカッポカッポ、朝食を丸呑みする映像がたくさん撮れたよ」
「視聴者はそっちの方が喜ぶから。軍事評論家や芸人の意見なんて見たくないでしょ。私の無限の食欲の方が視聴率は上がるのよ。少し休めばまだいけるわ!」
「やれやれ、さすがに山の上の分屯基地とレーダーサイトにはミリメシぐらいしかないよ」
「ミリメシでもいいわよ!きっとロシア軍のミリメシ、おいしいわ」
その会話を聞いていたスヴェトラーナ准尉が「ミリタリーフードがよろしかったんですか?もう、三時のおやつの紅茶とスイーツ、夕方にはいなり寿司とおにぎり、お赤飯を手配してしまったんですが・・・あと、今日は中央アジア風で、プロフというトルコのピラフ、キルギスのマスタバ、カザフスタンのジャルコエを作らせたんですけど・・・山頂のロシア軍ミサイル部隊と自衛隊の方々にいつも仕出しをしているんです。じゃあ、卜井アナにはミリタリーフードを取り寄せますか?」と卜井に言う。
「え?中央アジア!そ、それでいいです!それにして下さい!ミリメシ、要りません!あ~、幸せだぁ~」と卜井。
「あのさ、卜井ちゃん、さっき中学校で朝飯を食べたばかりじゃないか?食レポの旅じゃなくて、戦争取材なんだけどね?」
「いいのよ、腹が減っては戦はできぬ、と言います!」
「やれやれ・・・」
「藤田アナ、今日は、フレンチ風鶏肉の肉じゃがも作らせましたよ。バルサミコを使って、牛肉豚肉じゃない鶏肉の肉じゃが。マスタードが隠し味。それに豚汁。ご飯に合いますよぉ~。でも、藤田アナはミリメシですかぁ?」
「いえ、それ、肉じゃが、頂きます!」
「そうなのよ!藤田ちゃん!これは、食レポではないのよ!」
「あのね、キミが目立ってカメラにうつっているのは、エッチな話か食べているところばっかりだよ?」
「何を仰るウサギさん!あのですね、『腹が減っては戦はできぬ』ですよ?兵站の重要性をこれだけ如実に感じられるのが、兵士の普段の食事です!ウクライナを御覧なさい。兵站が不備だから、燃料も弾薬もなく、食料もないんで、兵士が略奪します。それに引き換え、同じロシア軍とは思えないこの作戦の至れり尽くせりぶり!」
「卜井さん、ウクライナのロシア軍は短期決戦のつもりでいましたし、欧州ロシアのバカどもは深く考えもせず、兵站の準備をおろそかにしたんですわ。同じロシア軍として、恥ずかしく、世界に面目が立ちませんわ」とスヴェトラーナ准尉。
「確かに、ここはちゃんと計画されている。略奪の跡もない。血も流れていない」と藤田。
「略奪、暴力なんて、エレーナ少佐に銃殺されます」
「指揮官が違うと同じ軍でもこうも違うものか」
「だから、藤田ちゃん、少佐はすごいんだって。ミリメシじゃなく、兵士の手作り!それもよ、中央アジア風の、トルコのピラフ、キルギスのマスタバ、カザフスタンのジャルコエで、フレンチ風鶏肉の肉じゃが、さらに、ロシア人女性の手になるいなり寿司とおにぎり、お赤飯ですよ!」
「よく料理名、覚えてるなあ・・・」
「アナウンサーですから!」
「それにしては、S-300とか、S-400は・・・」
「専門外です!」
横でビデオを回していたスタッフが「卜井アナ、これ撮影してますが、使いますか?」と聞いた。「使わないで!」と即答。
タイフーンは佐渡縦貫線をいったん南下して、佐渡空港を左手に見て、暫く行くと大佐渡スカイラインに右折して入った。左右には田んぼが広がりのどかな風景だが、人がまったくない。みな南岸に退避しているところだ。撮影クルーは一応移動中の景色を撮っていたが、略奪されたり壊されたりした気配はなかった。
三叉路を右に入り山道になった。二車線道路で、タイフーンには狭く感じられる。左手に『ゆずろ公園』という標識があった。そこを過ぎると、クネクネとしたつづら折りになっていた。右手が佐渡市営スキー場で急勾配の崖であり、左手の台地に空自佐渡分屯基地があった。左折すると、トキの舞うタイル、佐渡分屯基地と彫られた石積みの塀が見え、基地のゲートになっていた。
構内は、右に大きな運動場があり、運動場正面が基地のメインの平屋の建物になっていた。建屋玄関正面が駐車場だったが車輌は別の場所に移されているようで、そこには十輪のトラックの後ろで、巨大な四連装の超長距離地対空ミサイルS-400が既に発射筒を真上に向けて準備されていた。トラックの周囲には、多機能レーダー車輌、指揮通信車輌、整備車輌、補給車輌が配置されていた。
トラックは三台で、S-400は合計12基。同じセットがレーダーサイトに2セット、8基配置されているという。索敵範囲は最大400キロ、同時6ヶ所目標の処理能力、パトリオットミサイルPAC-3の二倍の有効射程だとスヴェトラーナ准尉が説明した。
「これはデコイじゃありません。本物です。でも、おかしいのは、システムの車輌配置のウラジオの指示が最初から北西、つまり北朝鮮の方角を向いていたこと。自衛隊、在日米軍からの攻撃なら南東方面ですから、軍司令部は最初から北の動きを知っていたんでしょうね」とスヴェトラーナ准尉が言った。
「准尉、それは重要なポイントですね。後で、地図を使って説明していただけますか?」と卜井。
「機密情報の入ってない車輌配置図がありますので、そのデジタルデータを差し上げます」
「ありがとうございます」早速撮影クルーがS-400と車輌群を撮影し始めた。
「普通なら、こんな撮影できないわよねえ」と卜井。撮影クルーが点検中のロシア兵士も撮していた。彼らがピースのポーズを取るので、准尉に普通に作業して下さいと通訳をお願いしている。
「藤田アナ、卜井アナ、あれもぜひ撮影して下さい」とS-400の向こうに駐車してある北朝鮮のロケット砲のような車輌を指さした。
「准尉、あれはなんです?」
「あれは、燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)搭載車輌です。モスクワからの命令で持ってきましたが、非人道的兵器ですので、弾筒を抜いて封印してあります。我々が使用しない意思を持っていることの証拠を撮影して下さい」
「あれが、ウクライナで使われたと言われるサーモバリック爆弾ですか!」と藤田。
「これはすごい映像になるわね!」と卜井。
「撤退の際は置いていきます」と准尉が言う。「軍事機密では?」と卜井が聞くと「非人道的兵器ですので、日本国政府に保管頂きます」と答えた。
基地建屋玄関からウラジミール中佐と百田基地司令が外に出てきた。藤田と卜井の方に歩いてきて、「藤田さん、卜井さん、こちらが百田基地司令です。百田さんはお二人はテレビで知ってますよね?」と話しかけた。
「あら、中佐は先回りなさったんですか?」
「ええ、ちょっと、東京とウラジオストック、レーダーサイトと打合せする必要がありまして」と答えた。
百田が「ここにはロシア軍の装備しかありません。我が方のメインは山頂のレーダーサイトにあります。一通り撮影されたら、レーダーサイトに行かれたほうがいいですよ。サイトには、エレーナ少佐、鈴木三佐、南禅二佐、羽生二佐が待っています」と藤田に言う。
「分かりました、基地司令。あと少々撮影したら、サイトに向かいます。ウラジミール中佐と百田基地司令は行かれませんのですか?」
「我々は、島民の退避の指揮を取ってます。迎撃はエレーナ少佐、鈴木三佐、南禅二佐、羽生二佐が指揮を取ります」
「了解です」
撮影が終了した一行は、基地を出て左折した。ここからは標高差七百メートルほど登りの道になり、大佐渡スカイラインはかなりのつづら折りの急勾配になる。かなり手前からでも六角形のガメラレーダーの白い塔屋が山頂に見える。
最後のつづら折りを右に曲がるとサイトのゲートが開いているのが見えた。ゲートすぐにサイトの建屋があり、右手に高さ35メートルのレーダーがそびえ立っていた。
山頂は台地のようになっており、その先は3メートルほどの崖で、広い空き地になっていた。そこにS-400システムが分屯基地にあるように設置されていた。
もう一台、日本製らしい見慣れぬ車輌が止まっている。高圧配線とおぼしい太い線が何本も延びて接続されている。
また、右手の方の空き地が最近土を掘り返したのか、盛り土になっていて、コンクリートの大きな板(蓋?)があった。よく見ると、イージス艦の垂直発射装置のような四角い金属製の蓋が32個、長方形に並んでいる。地下に何か埋めていたのか?
レーダー管制棟の玄関から、エレーナ少佐と日本人三名が外に出てきた。スヴェトラーナ准尉がエレーナの脇に並ぶ。少佐が「藤田アナ、卜井アナ、クルーのみなさん、よくお越しいただきました。私は現在、佐渡ヶ島臨時防衛基地のロシア軍と自衛隊合同の指揮をとっております。こちらは初めてかしら?自衛隊の南禅二佐、羽生二佐、鈴木三佐です」と自衛隊員を紹介した。
「少佐、前回お会してからずいぶん経ったような気がしますが、二日ぶりですね。お元気そうで」と藤田。卜井が「あの、ちょっと、お聞きしますが、百田基地司令は階級が二佐ですわね?南禅二佐、羽生二佐も同級。同級の自衛隊員が三人?それは、お二方は佐渡分屯基地の所属じゃないということですか?」
鈴木三佐が「ちょっと、まず、お話したいことがあります。ロシア軍は既に機密に関してオープンで、東部軍管区の許可を得ております。ただし、ロシア軍のミサイル等の詳細な配置は機密です」
「また、これから取材する内容に関しては、日本国の機密も含まれております。みなさんも知られると思いますが、日本政府からマスコミ各社のトップに既に通達が行っております。取材には期限の制限が課せられます。この戦争、そうですね、もう戦争です。それも相手は北朝鮮とその背後の人民解放軍北部戦区です。彼ら相手の戦争が終了して、政府の許可が有るまで、日露の取材した内容、映像は、問題のない内容以外、公開しないでいただきたい。リークされた場合罰則が課せられます。これらの情報が北朝鮮と人民解放軍北部戦区に漏れた場合、我が国とロシアにとって極めて不利となり、日本国民の多大な犠牲が発生することが想定されます。ご理解下さい。あ!今言ったのもオフレコですよ」
「・・・わかりました」と卜井。
「え~っと、南禅さん、どっちから説明する?」と鈴木が南禅に聞いた。「どっちの機密がでかいかだな。そっちのは、いわば政治機密だ。自民党が説明に苦労するわね。国会、国民に叩かれる。でも、鈴木の責任じゃない。こっちのは軍事技術の機密。責任は、私と羽生。さあ、どうしましょう?」「じゃあ、俺から行きますか」
「藤田アナ、あの右手の空き地が見えるでしょう?撮影してもいいですよ。公開は今はダメですが」
「ええ、最近、土木工事をして、コンクリートの遮蔽蓋を剥がした痕が見えます。そして、あれは・・・どうみてもVLS、イージス艦の垂直ミサイル発射システムの鉄蓋にしか見えないのですが」
「その通りです。まさに、あれは垂直ミサイル発射システムであり、SM-3が32基収容されていて、いつでも発射できるようになっています」
「え?ということは?」
「秋田県、山口県に設置予定で配備が断念されたシステムと同じものです。イージス・アショアです。アショアはSPY-1レーダーでミサイル防衛システムと接続されますが、同様、このガメラレーダー、J/FPS-5もSPY-1レーダーと同等、ここは事実上、イージス・アショア基地となっております」
「それは自治体の許可を取っていない、国会も、ですよね?アメリカ抜きに設置できないし、日米政府の密約?」
「後日、政治にかかわる質問は政府に直接どうぞ。私は答える立場にありませんから。じゃあ、次、南禅さん、どうぞ」
「卜井アナ、さすがにその職業をやられている専門家。仰っしゃられた通り、私と羽生は空自の佐渡基地所属ではありません。所属は、防衛省防衛装備庁航空装備研究所の装備官です。いろいろ有りましてね、実は陸自の水陸機動団が佐渡北岸に上陸してるんですが、陸自と水陸機動団を騙して、一緒に来てしまったんです。無理やりね。政府にも防衛省にも内緒で。今は首相も防衛大臣もご存じですが」
「それは思い切ったことをされましたね。懲罰会議なんかにかかるんじゃありませんか?」
「勝手に来ただけでも懲罰物ですが、実はあるものも持ち出してしまって・・・」
「あるもの?」
「あちらの空き地に、S-400があるでしょう?もう見られてますよね。その手前に電線が接続された大きなトラックがありますね?」
「軍用車両・・・自衛隊のものですね」
「ええ、あれを勝手にここに持ち込んじゃいまして」
「あれですか・・・」
「そう、あれは、改造した96式装輪装甲車で、航空装備研究所で私とここにいる羽生、尾崎という技師が開発したものなんですが、積載されているのは電磁砲なんです」
「電磁砲?」と卜井が首を傾げる。藤田が「電磁砲って、南禅二佐、それは・・・レールガン?」
「そうです。レールガンです」
「だって、開発中で、それもいろいろ障害があって、ストップしたとか・・・」
「いえ、できちゃいまして」
「動くんですか?」
「ハイ、動きます」
「発射できるんですか?」
「ハイ、北の極超音速飛翔ミサイルとか、迎撃できちゃうんですよ、たぶん」
エレーナがアナ二人に「ということで、ロシア軍のみならず、自衛隊の迎撃兵器も今ここに偶然ある、ということになります。SM-3もレールガンもイリーガルなもの、本来はここにあってはならないものですが、北朝鮮の核攻撃が予想される現在、日本国のため、佐渡ヶ島のため、この二つの兵器は非常に重要な存在と言えます。戦略上、北、中国に知られてはいけませんので、今は公開できませんが、この場を現地でタイムリーにご覧になったクルーの皆さんには、ぜひご理解を得たいと思います」
「確かに、これはあってはならないもの。でも、もし、ここに存在していなかったら、日本国民の犠牲者が増えるということですね」と藤田。
「佐渡ヶ島の防備がここまで不備で、専守防衛すらできていなかったわけですから、国民に対する問題提起になります。SM-3とレールガンに加えて、S-400まであるのですから、非常に力強い。理解いたしました」
「ありがとうございます。それに、ロシア軍の私が言うのもおかしいですが、日本だけではありません。ヨーロッパの、台湾、韓国の、地政学的現状を戦闘行為によって変更しようとする勢力、欧州ロシア、中国、北朝鮮に対して勝利しなければなりません。奴らに吠え面をかかせてやらないと。我々佐渡のロシア軍と自衛隊で、奴らのミサイルを全部撃墜してやりましょう。それが新たなこの作戦の任務です」
「作戦名は『サドガシマ作戦』でしたね?」と卜井が言うと「作戦名はさきほど日本の首相とジトコ司令官の合意で変更となりました」と鈴木が言う。
「確かに、佐渡の占領作戦じゃなくなりましたからね。新作戦名はなんというのでしょうか?」と卜井。
「新しい作戦名は『Majar Elena's Operation Sadogashima』、『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』になったんです・・・これ、困るなあ・・・彼女の名前がついちゃった・・・」
「・・・鈴木三佐、なんか、アニメのような展開になっちゃっていません?」と卜井。
「歴史に残っちゃうなあ・・・」
「この新作戦名、公開してもいいんですか?」
「・・・日本政府にお聞き下さい」
レーダー管制棟の打合せ室で、取材クルーとロシア軍、自衛隊一同が休憩をしていた。卜井と藤田は浮かない表情を浮かべていた。スヴェトラーナ准尉が「お二人とも浮かない顔をしてどうされたんです?」と二人に聞いた。
「准尉、こうもオフレコばかりだと、何も起きない両津港、学校の風景、市内の平和な様子、差し支えない部分の兵器の映像、ガメラレーダー、ここの管制室の映像ばかり。あとは私の食レポ・・・じゃないや、兵站の話題になっちゃいます。緊迫した場面がないんですよ、戦争なのに」と卜井。
「それはお気の毒ですわ。学校の様子なんかダメですか?」
「あれはちょっとねえ・・・」
「私の結婚話をネタにしてもいいのに」
「それも今ちょっとねえ・・・」
それを聞いていたエレーナが「あら、だったら、私がロシア軍東部軍管区の娘だという話を公開してもいいんですよ」
「それ、公開してもいいんですか?」と卜井。
「構いませんよ」
「確かに少佐は絵になりますが・・・」
「あ!じゃあ、これは?ヒロシ、ミーシャ、小野一尉、こっちに来て。え~、私と鈴木三佐、アデルマン大尉と小野一尉が結婚予定だ、という話題はいかがでしょう?」
「少佐、小野さんと大尉も結婚されるの?」
「そうですよ、ミーシャと小野さんも結婚を約束してます」
アニーがそれを聞いていて、あ!ちょっと!抜け駆けだよね?う~ん、どうしよ?小野寺、どこだろ?
お、いたいた。と小野寺が食事しているところに行って、小野寺を引っ張った。「アニー、何するんだ?」と小野寺。その手を引っ張って、少佐たちのところに歩いていった。
「少佐、それは抜け駆け行為であります」とアニーが言う。
「アナスタシア少尉、何が抜け駆けなの?」
「ずるいです。自分たちばっかり公にしちゃって。私も決めました!小野寺さん、結婚しましょう!」
「え?アニー、それまた、急に・・・」
「あら、私じゃダメ?」
「・・・いや、そんなことは・・・」
「じゃあ、結婚して下さい!」
「わ、わかりました」
「というわけで、卜井アナ、私、アナスタシアと小野寺一尉も結婚します。いいわね?ダーリン?」「ハ、ハイ・・」「これも公開して構いませんわ。これで、三組!」
「少尉、私もですよ。本間さんと」とスヴェトラーナ准尉。「アニータ准尉も土屋さんと結婚するそうです」
「え?これで、五組?」
「いいえ、もっと。両津中学配属の二百名の女性の内、私の聞いている限りでは八十組くらいは結婚を決めたそうです。他の四校の学校でもかなりの人数が結婚すると言ってます。アドミの担当官が『婚姻届の書類が足りない!市役所に出す日本語必要書類の準備が間に合わない!なんでこんなにたくさん結婚するの!』と半狂乱になっていました」
「何なのよ?これ?韓国の統一教会じゃないんだから・・・まったく、なんでこうなったのかなあ」とエレーナ。
准尉が「少佐がまず最初に行動されたからですわ。それで、ああ、最高司令官の娘さんでもそうしてるのなら、私たちもって。お手本を見せたのは少佐ですわ」と言った。
「・・・いいのかなあ、おめでた話で・・・戦争取材の緊張感はどこにあるのよ!」と卜井が言うと「卜井アナ、大丈夫ですわ。諜報情報によれば、非常に高い可能性で、明日、北朝鮮が韓国に南進、原発の核攻撃も予想され、日本への核弾道ミサイル、滑空ミサイルの攻撃があると思います。もうそうなったら、生放送でいくらでもどうぞ」とエレーナが答えた。
「・・・明日ですか・・・迎撃に失敗したら・・・」
「死ぬかもしれませんね」
「・・・死んじゃうのかあ・・・」
藤田が「卜井ちゃん、覚悟を決めておかないといけないようだね。取材クルーにももう一回確認しておこう。ここが北の目標地点になるのは確実だろうから」と言った。
「そうね。そうとわかったら・・・」
「そうとわかったら、何?」
「もっと食べておかないと!ダイエットなんて、もう関係ない!」
「・・・」
「あ!最後の私の発言、カットね!カットよ!」
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