162 / 178
第B章:何故異世界飯はうまそうに見えるのか
趣味と実益/1:2位はおろか最下位でも勝利できる仕組みのある日本の選挙がいかに楽か技術者は知るよしもない
しおりを挟む
シズクの立場は極めて悪い。しかし、持ち前のポジティブさかそれほど焦っているわけでもない、一方、立場がそれほど悪くもないのに焦っている男がいた。彼の名はトーマス・アルバ・エジソン。このまま当日を迎えれば、結果が敗北に終わることが明らかだったためだ。
かつて日本の技術者を震撼させた一言がある。「2位じゃダメなんですか?」と。結論から言えばダメである。勝負事を健全なスポーツのように考え、さらには優劣をつけることを嫌い手を繋いで並んでゴールテープを切るような運動会の経験を積んだものにとって、2位というのは非常に良い結果に見える。しかしこれは致命的な過ちである。
資本主義経済社会において、富は一極集中する傾向にある。資本主義とは共産主義と異なり、富むものはより富み、貧しいものはより貧しくなることを加速させるルールだ。そして明確に何かの優劣をつける機会が訪れた場合、すべての富も栄光も1位に集中する。世界1位のスーパーコンピューターを完成させれば、世界中の研究機関がそれを求めるだろう。あえて2位のスーパーコンピューターを購入する理由は妥協でしかなく、研究において妥協がいかに足を遅くさせるかは言うまでもないため、もしも間違って2位のスーパーコンピューターを選択すれば、それは1位を選んだものとの差を今以上に拡大する結果となる。すなわち、選ばれないという点において2位と最下位は事実上イコールであり、もしもどうしても事業仕分けを行いたかったのならば彼女はこういうべきだった。「1位になれる確証なく突き進むならきっぱり諦めてもらいます。1位になれるという確信を具体的に説明してください」と。
エジソンは当然このことをよく知っている。故に、このまま自分が2位で終わるという事実を前に手をこまねいているわけにはいかなかった。1位になる男の名は言うまでもない。事実上自らの生涯において一度も勝利したことがない天才、テスラである。世間は彼をライバルと呼んだが、エジソン本人にとってはライバルでもなんでもない。明らかな格上をライバル宣言するほど、彼は愚かではないのだ。
彼はこの戦いにおいて、真っ向勝負では勝てないことを当然理解していた。故にあの時と同じようにロビー戦略に切り替えた。特許の概念を作り自らの料理のレシピを惜しみなく公開した理由は、遥か後ろから追いかけるシズクへの妨害ではなく、遥か先を進むテスラに勝利するための戦略だったのだ。
だが本番一ヶ月前にして今、その連携が崩れつつある。理由は単純で、ここまでの包囲網を引いてなお、人々がテスラの料理に心を傾かせつつあるためだ。総売上という点でいえば、エジソン特許連合の売上はテスラ1人を圧倒している。だが、常に大行列で超満員のテスラの屋台に対して、こちらはまず行列ができることもない状況、売上の平均値で言えば逆に圧倒的な差がつけられているのだ。
それでもロビー戦略でしか勝てないと判断した以上手を緩めることなく突き進むしかないのだが、こんな状況が続くとなれば違約金を払ってでも連合を寝返るものが現れるのはある種の必然であった。
尤も、エジソンが経営戦略家として天才である点はここにある。すなわち、彼は負けた後のことも考えているということだ。元々この食神決戦に出場した理由は当面の発明資金を稼ぐためであり、優勝することは目的ではない。仮に敗北し参加登録時に渡した大金が没収されたとしても、それ以上の額を稼ぐことができれば目的は達成される。彼の特許連合が稼いだ額は既に十分すぎる額である。また、彼は最終的にテスラの手によって連合が瓦解することを予期していたからこそ、契約に違約金を含んでいた。予想通り連合は瓦解しつつあるが、それは想定内であり、むしろこの瓦解に伴って違約金としての大金が転がり込んでいる状況。もはやエジソンは「2位でもいい」のだ。
というのが合理的に状況を分析した事実なのだが、エジソンのエゴはこれを拒絶する。彼にとってテスラはライバルではない。いずれ倒すべき敵である。生前はついぞその機会が訪れなかったが、この死後の世界で再びそのチャンスがやってきた。だというのに、ここでも再び力の差を示されるというのは、彼のプライドが許さなかった。
故に彼は、諦めてもいい状況だというのに諦めていない。今まさに全力であがき、全力で勝利を目指している。そんなエジソンがテスラに勝利するための手段として考えて、ロビー戦略に追加されるサブプラン。それが、己の得意とする実験実証により、テスラが知らないものを発見すること。この状況においてそれは、未知の食材である。
「うっ……げほっ! げほっ……げっ……かっ……」
「ふむ。毒性があるな。もう息は……ないか。致し方ないな。約束通り死亡時違約金を上乗せしてこの男の家族に金を届けてくれ」
「わかりました」
もう何人目かもわからない処理し、エジソンはため息をつく。
「既にわしの身は地獄にある。ならばもうここより下には落ちん。あの男に勝つためならいかなる非道も悪魔との契約も辞さぬ」
天才とバカは紙一重だ。一方で、狂人とは天才の別の呼び方である。
かつて日本の技術者を震撼させた一言がある。「2位じゃダメなんですか?」と。結論から言えばダメである。勝負事を健全なスポーツのように考え、さらには優劣をつけることを嫌い手を繋いで並んでゴールテープを切るような運動会の経験を積んだものにとって、2位というのは非常に良い結果に見える。しかしこれは致命的な過ちである。
資本主義経済社会において、富は一極集中する傾向にある。資本主義とは共産主義と異なり、富むものはより富み、貧しいものはより貧しくなることを加速させるルールだ。そして明確に何かの優劣をつける機会が訪れた場合、すべての富も栄光も1位に集中する。世界1位のスーパーコンピューターを完成させれば、世界中の研究機関がそれを求めるだろう。あえて2位のスーパーコンピューターを購入する理由は妥協でしかなく、研究において妥協がいかに足を遅くさせるかは言うまでもないため、もしも間違って2位のスーパーコンピューターを選択すれば、それは1位を選んだものとの差を今以上に拡大する結果となる。すなわち、選ばれないという点において2位と最下位は事実上イコールであり、もしもどうしても事業仕分けを行いたかったのならば彼女はこういうべきだった。「1位になれる確証なく突き進むならきっぱり諦めてもらいます。1位になれるという確信を具体的に説明してください」と。
エジソンは当然このことをよく知っている。故に、このまま自分が2位で終わるという事実を前に手をこまねいているわけにはいかなかった。1位になる男の名は言うまでもない。事実上自らの生涯において一度も勝利したことがない天才、テスラである。世間は彼をライバルと呼んだが、エジソン本人にとってはライバルでもなんでもない。明らかな格上をライバル宣言するほど、彼は愚かではないのだ。
彼はこの戦いにおいて、真っ向勝負では勝てないことを当然理解していた。故にあの時と同じようにロビー戦略に切り替えた。特許の概念を作り自らの料理のレシピを惜しみなく公開した理由は、遥か後ろから追いかけるシズクへの妨害ではなく、遥か先を進むテスラに勝利するための戦略だったのだ。
だが本番一ヶ月前にして今、その連携が崩れつつある。理由は単純で、ここまでの包囲網を引いてなお、人々がテスラの料理に心を傾かせつつあるためだ。総売上という点でいえば、エジソン特許連合の売上はテスラ1人を圧倒している。だが、常に大行列で超満員のテスラの屋台に対して、こちらはまず行列ができることもない状況、売上の平均値で言えば逆に圧倒的な差がつけられているのだ。
それでもロビー戦略でしか勝てないと判断した以上手を緩めることなく突き進むしかないのだが、こんな状況が続くとなれば違約金を払ってでも連合を寝返るものが現れるのはある種の必然であった。
尤も、エジソンが経営戦略家として天才である点はここにある。すなわち、彼は負けた後のことも考えているということだ。元々この食神決戦に出場した理由は当面の発明資金を稼ぐためであり、優勝することは目的ではない。仮に敗北し参加登録時に渡した大金が没収されたとしても、それ以上の額を稼ぐことができれば目的は達成される。彼の特許連合が稼いだ額は既に十分すぎる額である。また、彼は最終的にテスラの手によって連合が瓦解することを予期していたからこそ、契約に違約金を含んでいた。予想通り連合は瓦解しつつあるが、それは想定内であり、むしろこの瓦解に伴って違約金としての大金が転がり込んでいる状況。もはやエジソンは「2位でもいい」のだ。
というのが合理的に状況を分析した事実なのだが、エジソンのエゴはこれを拒絶する。彼にとってテスラはライバルではない。いずれ倒すべき敵である。生前はついぞその機会が訪れなかったが、この死後の世界で再びそのチャンスがやってきた。だというのに、ここでも再び力の差を示されるというのは、彼のプライドが許さなかった。
故に彼は、諦めてもいい状況だというのに諦めていない。今まさに全力であがき、全力で勝利を目指している。そんなエジソンがテスラに勝利するための手段として考えて、ロビー戦略に追加されるサブプラン。それが、己の得意とする実験実証により、テスラが知らないものを発見すること。この状況においてそれは、未知の食材である。
「うっ……げほっ! げほっ……げっ……かっ……」
「ふむ。毒性があるな。もう息は……ないか。致し方ないな。約束通り死亡時違約金を上乗せしてこの男の家族に金を届けてくれ」
「わかりました」
もう何人目かもわからない処理し、エジソンはため息をつく。
「既にわしの身は地獄にある。ならばもうここより下には落ちん。あの男に勝つためならいかなる非道も悪魔との契約も辞さぬ」
天才とバカは紙一重だ。一方で、狂人とは天才の別の呼び方である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる