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38:ジュリアのウェディングドレス①
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「ジュリア、とても綺麗よ!」
母親のチェスター伯爵夫人が嬉しそうに言うのを聞きながら、ジュリアはぼんやりと鏡の中の自分を見つめていた。
純白のウェディングドレスに身を包んだジュリアは、母親の言葉通り、とても綺麗で美しかった。
ところが、その表情は冴えない。
何から何まで要望通りのドレスのはずなのに、いざ完成したものを身に纏っても、ちっとも嬉しくなんかなかった。
ジュリアの表情を曇らせている原因は、もちろんダニエルだ。
しかし、いまだに音沙汰のない彼に、不思議と怒りは感じていなかった。
ただただ、悲しかった。
彼に会いたい、という思いだけが彼女の中でますます大きくなっていたのである。
あまりに酷い顔をしていたせいだろう。
ドレス作りを担当したお針子が、さも不安そうな顔で訊ねてきた。
「あの……何かお気に召さないところがございましたか?
一応、全てご注文頂いた通りに仕上げたつもりだったのですが…….」
「あ、いいえ!少し考え事をしていただけです。
ドレスはとても素敵ですわ。
文句のつけようがないくらい!」
ジュリアは慌てて、ぎこちないながらも笑顔を浮かべて言った。
「それならよろしいのですが……。
お褒めの言葉ありがとうございます」
深々と頭を下げるお針子の横で、チェスター伯爵夫人は言った。
「じゃあジュリア、少し待っていてちょうだい。
私も別のドレスのことで注文があるから」
「では奥様、どうぞ別室へ。
お嬢様はこちらで少々お待ち下さい。
すぐに別の者を、着替えのお手伝いに来させますので」
チェスター伯爵夫人とお針子が出て行くと、ジュリアはため息をついて、改めて鏡の中の自分と向き合った。
ウェディングドレスを着る日をあんなにも夢見てきたというのに、まさかこんな思いで着ることになるなんて。
気を緩めれば、すぐ涙が浮かびそうになるのを必死に堪えて、ジュリアは下唇を噛んだ。
「ああ、ダニエル……会いたいわ」
そう呟きながらそっと鏡に触れた、その時だ。
ノックも無しに扉が開いたかと思うと、勢いよく誰かが飛び込んできたのである。
驚きのあまり思わずギョッとしたジュリアだったが、すぐに、着替えの手伝いに来てくれた店員だろうと思い当たった。
ところが、鏡越しにその人物の顔を見て、動けなくなってしまったのである。
大きく目を見開いてこちらを見ていたのは、紛れもなくダニエルその人だったのだから。
「ダニエル様!?」
「ジ、ジュリア様……お召替え中とは知らずに、失礼致しました」
ダニエルは謝罪の言葉を口にしつつも、頭を下げることさえ忘れた様子で、ジュリアを見つめていた。
その熱い眼差しに、頬がかっと熱くなってくる。
ずっと会いたかったはずなのに、いざこうして顔を合わせても、何も言葉が出て来なくて。
必死に頭を働かせて、気の利いた言葉の一つでもかけようとしていたところで、はたと気がついた。
そして慌ててダニエルに背を向けると、
「み、見ないで下さい!」
と叫んだ。
「え?す、すみません……」
ダニエルも言われるがまま、急いで背を向ける。
ジュリアはボソッと呟いた。
「結婚式の前に、ウェディングドレス姿を花婿に見られるのは縁起が悪いんですよ……」
母親のチェスター伯爵夫人が嬉しそうに言うのを聞きながら、ジュリアはぼんやりと鏡の中の自分を見つめていた。
純白のウェディングドレスに身を包んだジュリアは、母親の言葉通り、とても綺麗で美しかった。
ところが、その表情は冴えない。
何から何まで要望通りのドレスのはずなのに、いざ完成したものを身に纏っても、ちっとも嬉しくなんかなかった。
ジュリアの表情を曇らせている原因は、もちろんダニエルだ。
しかし、いまだに音沙汰のない彼に、不思議と怒りは感じていなかった。
ただただ、悲しかった。
彼に会いたい、という思いだけが彼女の中でますます大きくなっていたのである。
あまりに酷い顔をしていたせいだろう。
ドレス作りを担当したお針子が、さも不安そうな顔で訊ねてきた。
「あの……何かお気に召さないところがございましたか?
一応、全てご注文頂いた通りに仕上げたつもりだったのですが…….」
「あ、いいえ!少し考え事をしていただけです。
ドレスはとても素敵ですわ。
文句のつけようがないくらい!」
ジュリアは慌てて、ぎこちないながらも笑顔を浮かべて言った。
「それならよろしいのですが……。
お褒めの言葉ありがとうございます」
深々と頭を下げるお針子の横で、チェスター伯爵夫人は言った。
「じゃあジュリア、少し待っていてちょうだい。
私も別のドレスのことで注文があるから」
「では奥様、どうぞ別室へ。
お嬢様はこちらで少々お待ち下さい。
すぐに別の者を、着替えのお手伝いに来させますので」
チェスター伯爵夫人とお針子が出て行くと、ジュリアはため息をついて、改めて鏡の中の自分と向き合った。
ウェディングドレスを着る日をあんなにも夢見てきたというのに、まさかこんな思いで着ることになるなんて。
気を緩めれば、すぐ涙が浮かびそうになるのを必死に堪えて、ジュリアは下唇を噛んだ。
「ああ、ダニエル……会いたいわ」
そう呟きながらそっと鏡に触れた、その時だ。
ノックも無しに扉が開いたかと思うと、勢いよく誰かが飛び込んできたのである。
驚きのあまり思わずギョッとしたジュリアだったが、すぐに、着替えの手伝いに来てくれた店員だろうと思い当たった。
ところが、鏡越しにその人物の顔を見て、動けなくなってしまったのである。
大きく目を見開いてこちらを見ていたのは、紛れもなくダニエルその人だったのだから。
「ダニエル様!?」
「ジ、ジュリア様……お召替え中とは知らずに、失礼致しました」
ダニエルは謝罪の言葉を口にしつつも、頭を下げることさえ忘れた様子で、ジュリアを見つめていた。
その熱い眼差しに、頬がかっと熱くなってくる。
ずっと会いたかったはずなのに、いざこうして顔を合わせても、何も言葉が出て来なくて。
必死に頭を働かせて、気の利いた言葉の一つでもかけようとしていたところで、はたと気がついた。
そして慌ててダニエルに背を向けると、
「み、見ないで下さい!」
と叫んだ。
「え?す、すみません……」
ダニエルも言われるがまま、急いで背を向ける。
ジュリアはボソッと呟いた。
「結婚式の前に、ウェディングドレス姿を花婿に見られるのは縁起が悪いんですよ……」
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※「小説家になろう」、「カクヨム」でも掲載
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