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46:ルイーズの暴走
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「そんな言い方は、ひどいんじゃない?」
ルイーズは静かに言いながら、地面に倒れたまま顔を上げているダニエルの前まで歩いて行った。
ルイーズの登場は予想外だったのだろう。
すっかり青ざめてしまっているダニエルを見ていると、危うく吹き出しそうになる。
それでもなんとか堪えて、彼に手を差し出しながら微笑んだ。
「いつまでそうしているの?
さあ、早く立って」
「ル、ルイーズ……」
ダニエルは彼女の手には触れずに、自力で立ち上がると、じりじりと後ずさった。
「何しにきたんだ。
何度も言っただろう!
僕にはジュリア様という婚約者がいるんだ!」
「あら……」
ルイーズはクスクス笑った。
チラリと見れば、睨むようにこちらを見ているジュリアと目が合った。
こんな男の為に敵意剥き出しの目で睨んでくるなんて、と思うと、ニヤニヤ笑いが堪えられなかった。
私を捨てて、この可愛い婚約者様と幸せになろうなんて、ムシが良すぎるわ。
ルイーズは細めた目をダニエルに向けた。
「でもあなたは、何度も私に『愛してる』と言ってくれたじゃない。
どうにか婚約は破棄して、私と結婚するからって」
途端にジュリアの目が見開かれた。
「そ、そんなこと……!」
「あら、確かに言ったじゃない。
それに、毎日のように愛してるとも言ってくれたでしょう。
忘れたとは言わせないわ!
それに証拠の手紙だって家には沢山あるのよ。
なんだったらジュリア様に見せしましょうか?」
「うるさい!黙れルイーズ!」
ダニエルが叫んだのを聞いた時、ルイーズは頭の中で何かが切れたような気がした。
それと同時に、怒りの波が腹の底から湧き上がってくるのを感じて、気がつけば、その感情のままに声を荒げていた。
「黙らないわ!
なによ!散々私に結婚すると言っておいて、今さら捨てるのね!
私のことを弄んだなんて……ひどすぎるわ!」
ここまで言っているというのに、ダニエルはルイーズをなだめることすらしなかった。
そんなことよりも、ジュリアの反応が心配で仕方がないらしい。
この期に及んで、まだ未練がましくジュリアをチラチラ見ているダニエルを見ていると、ルイーズはなんだか急に全てがバカバカしく思えてきてしまった。
しかも、すかさずケインがジュリアの隣に滑り込むと、優しく気遣いながら背中をさすったりしているのである。
そんなところを見ていれば、いつの間にか消えた怒りの代わりに、今度は笑いが込み上げてきた。
「ああ、もう馬鹿ばっかり!」
吐き捨てるように大声で言ってから、ルイーズはケラケラと笑った。
「ダメよ、ケイン!
あなただけ上手くジュリア様に取り入って、幸せになろうなんて。
もう諦めなさい。
どうせあなたも、私たちと同罪なんだから」
「なっ……ルイーズ!」
ケインが慌ててルイーズを睨む。
「約束しただろう!?
忘れたとは言わせないぞ」
しかし、もうルイーズは約束なんて守る気はなかった。
自分が幸せになれないというのなら、ここにいる皆だって幸せになるべきではないと思ったのである。
全てをぶち壊してしまいたい欲求に、素直に従うことにしたのだ。
「ええ、もちろん約束は覚えているわ。
でもね、もうそんなのどうでもよくなっちゃった」
ルイーズは笑いながら言うと、ジュリアに顔を向けて意地悪く微笑んだ。
「ダニエルはあなたと婚約破棄して、私と結婚したかったのよ。
だからケインにお願いしたの。
あなたを誘惑して、婚約破棄するって言わせてくれってね」
あまりのことに、ジュリアは言葉も出ない様子だ。
可愛らしい顔から感情が消えていくのを、ルイーズは嬉しそうに眺めた。
「ようやく分かったかしら?
つまりね、ダニエルもケインも、それから私も、皆あなたを騙していたの。
ごめんなさいね」
「おい!ルイーズ!」
と叫びながら、ルイーズにつかみかかったのはケインだ。
ダニエルは最早、茫然自失の状態で立ちすくんでいる。
ケインに凄い形相で睨まれながらも、ルイーズは1人、笑い声を上げていた。
いかにも楽しげに。
これで良いのだと言わんばかりに。
そんな中、とうとう耐えきれなくなったらしいジュリアが、気を失って倒れ込んだ。
それに気がついたケインが慌てて駆け寄る。
ダニエルも少し遅れて走り寄っていった。
「ジュリア様!」
「しっかりして下さい!」
2人が懸命に声をかけるのを横目で見ながら、ルイーズはクスクスと笑い続けていた。
ルイーズは静かに言いながら、地面に倒れたまま顔を上げているダニエルの前まで歩いて行った。
ルイーズの登場は予想外だったのだろう。
すっかり青ざめてしまっているダニエルを見ていると、危うく吹き出しそうになる。
それでもなんとか堪えて、彼に手を差し出しながら微笑んだ。
「いつまでそうしているの?
さあ、早く立って」
「ル、ルイーズ……」
ダニエルは彼女の手には触れずに、自力で立ち上がると、じりじりと後ずさった。
「何しにきたんだ。
何度も言っただろう!
僕にはジュリア様という婚約者がいるんだ!」
「あら……」
ルイーズはクスクス笑った。
チラリと見れば、睨むようにこちらを見ているジュリアと目が合った。
こんな男の為に敵意剥き出しの目で睨んでくるなんて、と思うと、ニヤニヤ笑いが堪えられなかった。
私を捨てて、この可愛い婚約者様と幸せになろうなんて、ムシが良すぎるわ。
ルイーズは細めた目をダニエルに向けた。
「でもあなたは、何度も私に『愛してる』と言ってくれたじゃない。
どうにか婚約は破棄して、私と結婚するからって」
途端にジュリアの目が見開かれた。
「そ、そんなこと……!」
「あら、確かに言ったじゃない。
それに、毎日のように愛してるとも言ってくれたでしょう。
忘れたとは言わせないわ!
それに証拠の手紙だって家には沢山あるのよ。
なんだったらジュリア様に見せしましょうか?」
「うるさい!黙れルイーズ!」
ダニエルが叫んだのを聞いた時、ルイーズは頭の中で何かが切れたような気がした。
それと同時に、怒りの波が腹の底から湧き上がってくるのを感じて、気がつけば、その感情のままに声を荒げていた。
「黙らないわ!
なによ!散々私に結婚すると言っておいて、今さら捨てるのね!
私のことを弄んだなんて……ひどすぎるわ!」
ここまで言っているというのに、ダニエルはルイーズをなだめることすらしなかった。
そんなことよりも、ジュリアの反応が心配で仕方がないらしい。
この期に及んで、まだ未練がましくジュリアをチラチラ見ているダニエルを見ていると、ルイーズはなんだか急に全てがバカバカしく思えてきてしまった。
しかも、すかさずケインがジュリアの隣に滑り込むと、優しく気遣いながら背中をさすったりしているのである。
そんなところを見ていれば、いつの間にか消えた怒りの代わりに、今度は笑いが込み上げてきた。
「ああ、もう馬鹿ばっかり!」
吐き捨てるように大声で言ってから、ルイーズはケラケラと笑った。
「ダメよ、ケイン!
あなただけ上手くジュリア様に取り入って、幸せになろうなんて。
もう諦めなさい。
どうせあなたも、私たちと同罪なんだから」
「なっ……ルイーズ!」
ケインが慌ててルイーズを睨む。
「約束しただろう!?
忘れたとは言わせないぞ」
しかし、もうルイーズは約束なんて守る気はなかった。
自分が幸せになれないというのなら、ここにいる皆だって幸せになるべきではないと思ったのである。
全てをぶち壊してしまいたい欲求に、素直に従うことにしたのだ。
「ええ、もちろん約束は覚えているわ。
でもね、もうそんなのどうでもよくなっちゃった」
ルイーズは笑いながら言うと、ジュリアに顔を向けて意地悪く微笑んだ。
「ダニエルはあなたと婚約破棄して、私と結婚したかったのよ。
だからケインにお願いしたの。
あなたを誘惑して、婚約破棄するって言わせてくれってね」
あまりのことに、ジュリアは言葉も出ない様子だ。
可愛らしい顔から感情が消えていくのを、ルイーズは嬉しそうに眺めた。
「ようやく分かったかしら?
つまりね、ダニエルもケインも、それから私も、皆あなたを騙していたの。
ごめんなさいね」
「おい!ルイーズ!」
と叫びながら、ルイーズにつかみかかったのはケインだ。
ダニエルは最早、茫然自失の状態で立ちすくんでいる。
ケインに凄い形相で睨まれながらも、ルイーズは1人、笑い声を上げていた。
いかにも楽しげに。
これで良いのだと言わんばかりに。
そんな中、とうとう耐えきれなくなったらしいジュリアが、気を失って倒れ込んだ。
それに気がついたケインが慌てて駆け寄る。
ダニエルも少し遅れて走り寄っていった。
「ジュリア様!」
「しっかりして下さい!」
2人が懸命に声をかけるのを横目で見ながら、ルイーズはクスクスと笑い続けていた。
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